退院時リハビリテーション指導料は「患者へ渡す1枚」を先に作ると運用しやすいです
退院時リハビリテーション指導料で止まりやすいのは、点数や対象患者の理解不足よりも、患者へ何を渡すかが院内でそろっていないことです。実際には、退院時に口頭で説明するだけでは内容がぶれやすく、患者や家族が自宅で見返せる形にしておかないと、せっかく説明しても生活場面で再現しにくくなります。
本記事では、退院時リハビリテーション指導料の総論ではなく、患者へ渡す指導書の作り方に絞って整理します。何を書けばよいか、どこまで書けば十分か、診療録に何を残すかを、実務で回しやすい形でまとめます。退院時リハビリテーション指導料そのものの算定要件や同日整理から確認したい方は、退院時リハ指導料【2026 改定】図解・記録シート付を先に読むとつながりやすいです。
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制度や記録の運用は、個人の工夫だけでは安定しないことがあります。教育体制や相談しやすさも含めて見直したいときは、先に全体像を整理しておくと動きやすくなります。
退院時リハビリテーション指導料で指導書が重要な理由
退院時リハビリテーション指導料は、入院中に疾患別リハビリテーション料等を算定した患者について、退院時に 1 回限り算定する項目です。内容としては、患者の病状、患家の家屋構造、介護力等を考慮しながら、患者または家族等へ、退院後の療養上必要と考えられるリハビリテーションの指導を行うことが求められています。つまり、病棟での説明をその場で終わらせるのではなく、退院後の生活にそのまま持ち帰れる情報にして渡すことが重要です。
さらに、個別指導や確認事項リストでは、退院時リハビリテーション指導料について指導・指示内容の要点の診療録等への記載がない、または不十分という指摘が示されています。運用としては、患者へ渡す文書を作るだけでなく、その内容の要点を診療録等へ残し、交付文書の写しを院内で管理できる形にしておくと止まりにくくなります。
先に結論|指導書は「できること・注意点・家族への介助ポイント」を1枚で渡します
退院時リハビリテーション指導料の指導書は、長く詳しい資料にするより、患者と家族が退院後すぐ見返せる 1 枚にまとめた方が使いやすいです。最初に入れたいのは、①退院後の目標、②できること、③注意点、④家族への介助ポイント、⑤福祉用具や環境調整、の 5 つです。
この 5 項目に絞ると、「退院してから何に気をつければよいか」「家族はどこを手伝えばよいか」が読み取りやすくなります。逆に、病棟での経過や評価結果をそのまま長文で転記すると、患者向け文書としては読みにくくなりやすいです。
| 項目 | 書く内容 | 短くするコツ |
|---|---|---|
| 退院後の目標 | 退院後まず目指す生活像 | 1〜2 行で「何を続けるか」を書きます。 |
| できること | 歩行、移乗、更衣、トイレなど | 患者が「してよいこと」を先に示します。 |
| 注意点 | 転倒、疲労、夜間動作、無理を避ける場面 | 危険場面を具体語で書きます。 |
| 家族への介助ポイント | 見守り位置、介助のタイミング、声かけ | 「どこで」「どう支えるか」を短くします。 |
| 福祉用具・環境調整 | 歩行補助具、手すり、浴室、ベッド周囲 | 退院直後に必要なものを優先します。 |
指導書は「患者向け」に言い換えると伝わりやすいです
退院時リハビリテーション指導料の指導書は、診療録の縮小版ではありません。患者へ渡す文書なので、専門職同士なら伝わる表現をそのまま使うより、生活の言葉に変換した方が伝わりやすいです。
たとえば「方向転換時接触介助」ではなく「トイレ前で向きを変えるときは近くで見守る」、「疲労時は活動量を調整」ではなく「疲れた日は無理に歩く距離を増やさない」のように、患者や家族がそのまま行動に移せる文にすると、指導書の価値が上がります。
| 専門職の書き方 | 患者向けの書き方 | ポイント |
|---|---|---|
| 見守り下で歩行可 | 歩くときは家族が近くで見守ってください | 誰が何をするかを明確にします。 |
| 方向転換時不安定 | トイレ前で向きを変えるときは急がないでください | 危険場面を生活場面に置き換えます。 |
| 移乗時部分介助 | ベッドから立つときは家族が横で支えてください | 介助の位置や役割が分かる表現にします。 |
| 疲労時活動量調整 | 疲れた日は歩く回数を増やしすぎないでください | 行動の目安に直します。 |
まず使うなら「患者向け 1 枚テンプレ」で十分です
院内で最初にそろえるなら、複数ページの資料より患者向け 1 枚テンプレの方が回しやすいです。退院時リハビリテーション指導料では、退院日に渡して、その後も患者や家族が自宅で見返せることが大切なので、情報量は絞った方が実用的です。
以下のような構成なら、患者への説明にも、その後の診療録転記にも使いやすいです。
患者向け 1 枚テンプレの基本構成
① 退院後の目標:家の中で安全に歩く、トイレ動作を安定して行う など
② できること:室内歩行、ベッドからの立ち上がり、更衣 など
③ 注意点:夜間歩行、浴室動作、疲れた日の過活動 など
④ 家族への介助ポイント:立ち上がり時の支え方、見守り位置 など
⑤ 福祉用具・環境調整:杖、手すり、シャワーチェア、ベッド周囲 など
退院時リハ指導書テンプレートのダウンロード
下の PDF は、患者・家族へ渡す 1 枚の退院時リハ指導書テンプレートです。退院後の目標、できること、注意点、家族への介助ポイント、福祉用具・環境調整に加えて、困るときの目安 / 相談先 / 受診や再確認のタイミングまで 1 枚で整理しやすい構成にしています。
最初から完璧な院内様式を目指すより、まずは 1〜2 症例で使ってみて、院内で必要な欄だけ微調整する運用がおすすめです。患者へ交付する文書として使いながら、その写しを診療録等に残す前提で運用すると整理しやすくなります。
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指導書の記載例
ここでは、患者へ渡す文書として読みやすい記載例を 3 つ示します。ポイントは、評価結果の羅列ではなく、退院後の行動がイメージできる文にすることです。
また、患者本人だけでなく家族が読むことも想定して、誰が支えるのか、どこで注意するのかが見える形にすると、説明の再現性が上がります。
記載例 1|歩行とトイレ動作が中心のケース
退院後は、室内を歩いてトイレへ行く生活を目標にします。歩くときは杖を使い、夜間はあわてて立たず、家族が近くで見守ってください。トイレ前で向きを変えるときにふらつきやすいため、急がずゆっくり動いてください。
記載例 2|移乗と家族介助が中心のケース
ベッドから立つときは、家族が体の横に立って支えてください。立ち上がったあとすぐに歩き出さず、姿勢が安定してから動きます。疲れた日は無理に回数を増やさず、休みながら行ってください。
記載例 3|浴室と福祉用具調整が中心のケース
入浴は、浴室入口の段差でつまずきやすいため家族の見守り下で行ってください。シャワーチェアを使い、浴槽をまたぐ動作は急がずゆっくり行います。浴室手すりの設置を検討し、困るときは外来や担当先へ相談してください。
診療録には何を残すか
患者へ文書を渡したら、それで終わりではありません。個別指導や確認事項リストでは、退院時リハビリテーション指導料について、指導・指示内容の要点を診療録等へ記載することが重視されています。運用上は、少なくとも「誰に」「何を」「どのように」説明したかを残しておくと整理しやすいです。
また、主な指摘事項では、交付した文書の写しを診療録に添付していない例も挙がっています。したがって、患者へ渡した指導書は交付用だけでなく、院内で控えを残せる形にしておくのがおすすめです。これは別紙様式の指定があるという意味ではなく、個別指導で止まりにくい運用上の整理です。
| 置き場所 | 残したい内容 | 実務メモ |
|---|---|---|
| 診療録 | 指導内容の要点、説明相手、退院後の注意点 | 長文より、要点を 2〜3 行で残す方が使いやすいです。 |
| 交付文書の写し | 患者へ渡した指導書の控え | 紙でも電子でも、あとから確認できる形を優先します。 |
| 院内メモ | 説明日、説明者、家族同席の有無 | 請求前確認や監査対応で役立ちます。 |
現場の詰まりどころ/よくある失敗
よくある失敗は、患者へ渡す文書なのに、専門職向けの表現をそのまま並べてしまうことです。これでは説明した内容が患者や家族に残りにくくなります。もうひとつ多いのは、交付した事実はあるのに、診療録記載や写しの管理が弱いことです。
対策はシンプルで、患者向け 1 枚テンプレと、診療録 2〜3 行テンプレをセットで運用することです。これだけでも、説明内容のばらつきはかなり減ります。
| 失敗 | なぜ止まりやすいか | 直し方 |
|---|---|---|
| 専門用語が多すぎる | 患者・家族が見返しにくいです。 | 生活の言葉に置き換えます。 |
| 情報を詰め込みすぎる | 重要点がぼやけます。 | 1 枚で「目標・注意点・介助ポイント」に絞ります。 |
| 診療録記載が薄い | 何を指導したかが残りません。 | 説明相手と要点を 2〜3 行で残します。 |
| 文書の写しが残らない | あとで確認しにくくなります。 | 交付用とは別に控えを保存します。 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
退院時リハビリテーション指導料の指導書は、長く詳しく書いた方がよいですか?
長いことより、患者と家族が退院後に見返して行動へ移せることが大切です。まずは 1 枚で「できること」「注意点」「介助ポイント」を整理すると使いやすいです。
患者本人だけでなく家族向けの内容も入れた方がよいですか?
はい。退院後の生活では、家族が介助や見守りを担うことが多いため、家族への介助ポイントが入っている方が実務向きです。
文書の写しは必ず残した方がよいですか?
個別指導の主な指摘事項では、交付した文書の写しを診療録に添付していない例が挙がっています。運用としては、交付文書の控えを残せる形にしておく方が安全です。
診療録には何を最小限残せばよいですか?
誰に説明したか、何を説明したか、退院後の注意点は何か、の 3 点が読める形をまず固定すると使いやすいです。
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このページは「患者へ渡す指導書」の記事です。算定要件の総論や同日整理まで含めて見直したいときは、関連ページをつなげて読むと実務に落としやすくなります。
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参考情報
- 厚生労働省. 別添 1 医科診療報酬点数表に関する事項. B006-3 退院時リハビリテーション指導料. 公式 PDF
- 厚生労働省. 入院医療等の調査・評価分科会資料. 退院時リハビリテーション指導料の概要. 公式 PDF
- 厚生労働省. 保険診療確認事項リスト(医科)令和 6 年度改定. 退院時リハビリテーション指導料. 公式 PDF
- 東海北陸厚生局. 令和 6 年度に実施した個別指導における主な指摘事項(医科). PDF
- 近畿厚生局. 個別指導(医科)における主な指摘事項. PDF
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


