退院前訪問指導の間取り図の書き方|引き戸・開き戸の描き分け

臨床手技・プロトコル
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退院前訪問指導の間取り図は「扉の描き分け」から決める

退院支援の運用だけでなく、働き方や職場選びも整理したい方へ

退院前訪問指導は、個人の工夫だけでは安定しないことがあります。教育体制や相談しやすさも含めて整理したいときは、先に全体像を押さえておくと動きやすいです。

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退院前訪問指導の間取り図で止まりやすいのは、家の広さよりも「引き戸をどう描くか」「開き戸の向きをどう表すか」「トイレや浴室で何を図に残せば伝わるか」が曖昧なことです。特に家屋調査では、建築図面のような厳密さを目指しすぎるより、家族・病棟スタッフ・ケアマネジャーに“どこで困るか”が伝わる図にする方が実務では役立ちます。

本記事では、 PT が退院前訪問指導で使いやすい間取り図の書き方を、引き戸・開き戸・折れ戸の描き分けを中心に整理します。訪問全体の段取りから先に確認したい方は、退院前訪問指導の流れと持ち物もあわせて確認してください。

先に結論|間取り図は「扉の種類」「動線」「数値」の 3 つで伝わる

結論からいうと、退院前訪問指導の間取り図は、① 扉の種類がわかる、② どの動線で困るかがわかる、③ 段差や幅などの数値が入っている の 3 点でほぼ決まります。逆に、部屋名だけ書いてある図や、寸法だけ並んでいて動作場面が見えない図は、院内共有でも家族説明でも使いにくくなります。

現場では「きれいに描けたか」より、開けにくい扉・狭い場所・夜間に危ない場所が一目で伝わることが重要です。まずは扉の描き分けを固定し、そのうえで主動線・夜間動線・段差・最狭部を追記すると、見取り図の再現性が一気に上がります。

まず覚える記号は 6 つだけです

扉の記号は細かく覚え始めると混乱しやすいため、退院支援では最初に使う種類を固定すると迷いにくくなります。ポイントは、開き戸は「どちらに開くか」、引き戸は「どこへ逃げるか」を描くことです。

下の図版は、本文の内容を一枚で見返せるようにまとめた早見図です。記事を読みながら使っても、訪問前の確認用として見返しても使いやすい構成にしています。

退院前訪問指導の間取り図で使う扉の描き分け早見図。開き戸、引き戸、折れ戸、段差、最狭部、主動線、夜間動線を一枚で整理した図版。
図 1.退院前訪問指導の間取り図|扉の描き分け早見図

スマホでは表を横スクロールできます。

退院前訪問指導で先に固定したい扉記号の早見表
種類 図で伝えたいこと 書き方のコツ 臨床で見る点
片開き戸 開く方向と扉の干渉 蝶番側を軸にして扇形の軌跡を書く 補助具を持ったまま開閉できるか、開閉で後退しないか
両開き戸 左右に開くことと有効開口 中央から左右に開く線を描く 片側だけで十分か、全開が必要か
引き戸 横へ滑る方向 扇形は書かず、戸が動く方向を直線で示す 握りやすさ、開閉抵抗、途中で止まりやすくないか
片引き戸 片側の壁へ寄ること 戸が寄る側を明確にする 戸を寄せた先に手すりや家具が干渉しないか
引き違い戸 複数枚が重なって動くこと 左右どちらの戸を主に使うかもメモする 片手で開けやすい側はどちらか、開口が十分か
折れ戸 折りたたんで開くこと 折れる向きとたたまれる位置を書く 浴室や収納で前方スペースが足りるか

開き戸の書き方|扇形で「干渉」を見せる

開き戸でいちばん大事なのは、どちらに開くかを明確にすることです。退院支援では、開き戸そのものよりも、開ける瞬間に体がどこへ動くか、補助具や介助者と干渉しないかが重要になります。そのため、片開き戸は扇形の軌跡を描き、必要なら「内開き」「外開き」を文字で補足すると共有しやすくなります。

特にトイレや脱衣所では、開き戸の軌跡が立ち位置や旋回とぶつかりやすいです。図には扉の軌跡+立ち位置+把持点をセットで残すと、「入れない」「閉められない」「中で向きを変えにくい」といった失敗条件が伝わります。

開き戸で図に残したい観察ポイント

  • 蝶番の位置と開く方向
  • 全開しないと通れないか、半開でも通れるか
  • 歩行器・杖・介助者が入る余地があるか
  • 扉を開けたあとに把持が切れないか
  • 便器や洗面台に扉が当たらないか

引き戸・片引き戸・引き違い戸の書き方|「どこへ逃げるか」を見せる

引き戸は、開き戸のような扇形を書かず、戸がどの方向へ移動するかを直線で示します。臨床では、引き戸は「省スペースで使いやすい」と一括りにしがちですが、実際には引き手の位置、戸の重さ、最後まで引き切れるかで使いやすさが変わります。図には、どちらへ寄るか、どちら側から操作するかを残しておくと伝わりやすくなります。

片引き戸や引き違い戸は、見た目は似ていても「開口がどこまで確保できるか」が違います。退院支援の見取り図では、建具の正式名称を厳密に使い分けることより、「この戸はここへ寄る」「実際に通れる幅はここまで」が伝わることを優先すると十分実用的です。

引き戸系で描き分けたいポイント

片引き戸は、1 枚の戸が片側へ寄ることを示します。戸が寄る先の壁に手すりやスイッチがある場合は、干渉も書き込んでおくと有用です。

引き違い戸は、2 枚以上の戸が重なりながら左右へ動く形です。押し入れや和室境のように、左右どちらを主に使うかで使いやすさが変わる場面では、「右側を主使用」などの一言を足すと院内共有しやすくなります。

引き込み戸は、戸が壁の中へ入るタイプです。見た目はすっきりしますが、戸を全部引き込めるか、壁内の引き残しがないか、引き手に届くかを確認したい場面があります。

折れ戸の書き方|「開く」より「たたまれる位置」を残す

折れ戸は浴室や収納でよく見ますが、現場では引き戸や開き戸より書き方が曖昧になりやすい扉です。折れ戸で重要なのは、開いたときに扉が前方へ少し出ることと、たたまれた扉がどこに残るかです。浴室入口では、このわずかな前方スペースがつま先や歩行器と干渉することがあります。

そのため、折れ戸は「折れて寄る位置」と「出入りの向き」をセットで残します。浴室前で後方介助が必要な人では、扉を開けたあとに介助者の立ち位置が確保できるかまで確認し、図にメモしておくと実用的です。

トイレ・浴室・洗面・キッチンは「設備の位置」より「使い方」を描く

退院支援で使う間取り図では、設備を細かく美しく描くことより、どの向きで使うかが伝わる方が大切です。たとえばトイレなら便器の位置だけでなく、どちらから近づくか、立ち上がりでどこを持つか、介助者がどこに入るかまで見えると説明しやすくなります。

浴室も同じで、浴槽・洗い場・出入口の位置だけでは不十分です。またぐ方向、洗体の位置、濡れた状態での立ち座りまで想像できるように、矢印や短い注記を加えると、改修前に「まず用具で試す」「手順を先に変える」判断もしやすくなります。

スマホでは表を横スクロールできます。

設備まわりで図に追記したい情報
場所 最低限書くこと あると伝わること 失敗しやすい点
トイレ 便器の向き、入口扉、段差 近づく方向、立ち上がり側、手すり位置 扉を閉めると介助位置が消える
浴室 出入口、浴槽、洗い場 またぎ方向、椅子位置、濡れ条件 洗い場の余白を見落とす
洗面 洗面台、入口、立ち位置 片手支持の場所、足元スペース 車椅子や歩行器の前寄せを見落とす
キッチン シンク、調理台、出入口 立位時間、振り向き動作、物品配置 家事動線を描かずに終わる
玄関 上がり框、たたき、靴箱 手すり、ベンチ、1 歩目の向き 段差高だけで判断する

間取り図に必ず書き足したい 7 つの情報

見取り図の価値は、部屋の形そのものより、退院後の生活で失敗しやすい条件が載っているかで決まります。とくに、扉の種類だけを書いて終わると、あとから「実際はどこが危ないのか」が共有しにくくなります。

退院前訪問指導では、次の 7 つを追記すると、単なる間取り図が「生活の評価図」に変わります。

  1. 主動線(玄関 → 居室 → トイレ → 浴室)
  2. 夜間動線(寝室 → トイレ)
  3. 段差の場所と高さ
  4. 最狭部の幅
  5. 手すりの有無・位置
  6. 便座高・浴槽高など重要な高さ
  7. 短いコメント(例:旋回でふらつく、扉前で停止が必要)

数値は「全部」より「意味がある場所」を優先する

数値を書き始めると多くなりすぎるため、実際に失敗につながる数値から優先して残すと実務向きです。たとえば、廊下の全長よりも最狭部、浴室全体の広さよりも出入口幅や浴槽高、トイレ全体寸法よりも便器前・横の余白の方が、介助量や動作の成否に直結しやすいです。

また、建築図面のようにきれいな寸法線を多用しなくても、見取り図では「段差 60 mm」「最狭部 720 mm」などの短い注記で十分伝わります。数値は評価の根拠、コメントは生活場面の意味づけとして使い分けると読みやすくなります。

現場の詰まりどころ|描けないのではなく、何を省いてよいかが曖昧

間取り図が苦手に感じるとき、多くは描画スキルの問題ではありません。実際には、「どこまで描けば十分か」が決まっていないことが原因です。部屋の角度や縮尺を完璧に合わせようとすると進みませんが、退院支援で必要なのは「動作の失敗条件が伝わる図」です。

迷ったら、扉・動線・段差・最狭部・設備の向きの 5 つだけ先に書き、細部はあとから足す順番にすると止まりにくくなります。評価の全体像を先に整理したいときは、評価ハブから関連テーマをまとめて確認しておくと、訪問時に見る項目をそろえやすくなります。

よくある失敗と直し方

「描いたのに伝わらない」図には共通点があります。よくある失敗は、扉の種類が曖昧、動線がない、数値が多すぎるか少なすぎる、の 3 つです。次の表のように直すと、図が一気に読みやすくなります。

スマホでは表を横スクロールできます。

退院前訪問指導の間取り図でよくある失敗と修正の方向性
よくある失敗 なぜ伝わらないか 直し方
引き戸なのに開き戸のように描く 開閉方法が誤って伝わる 扇形を消し、戸が寄る方向を直線で示す
開き戸の向きが逆 介助位置や家具干渉の判断が狂う 蝶番側を先に確認し、扉軌跡を描き直す
トイレや浴室の向きがない 立ち座り・またぎの評価につながらない 便器の向き、浴槽のまたぎ方向を矢印で補足する
寸法だけ多く、意味が見えない 数値の優先順位がわからない 最狭部、段差、便座高など生活に直結する数値へ絞る
動線がない どこで困るかが想像できない 主動線と夜間動線を線で 2 本だけ入れる
コメントが抽象的 再現性が低い 「危ない」ではなく「旋回で右手支持が切れる」と書く

そのまま真似しやすい見取り図テンプレの考え方

最初からきれいに描こうとせず、部屋の外枠 → 扉 → 設備 → 動線 → 数値 → コメントの順で足すと作りやすくなります。見取り図の用紙を院内で統一するなら、部屋名や設備名を書く欄よりも、段差や所見を書く欄を少し広めに確保した方が、退院支援では使いやすいです。

最低限のテンプレ項目は、部屋名、扉種別、段差、最狭部、手すり、コメントです。コメント欄には「夜間トイレで急ぎ条件あり」「浴室前で方向転換に接触介助」など、生活場面と結びついた一言を残すと、図だけ見ても困りごとが思い出しやすくなります。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

どこまで正確に描けば十分ですか?

退院前訪問指導の見取り図では、建築図面のような厳密さまでは不要です。まずは、扉の種類、主動線、段差、最狭部、設備の向きが伝わることを優先してください。縮尺が多少ずれても、生活上の危険や介助場面が伝わる図の方が実務では役立ちます。

引き戸か開き戸かわからないときはどうすればよいですか?

迷ったときは、実際に触って「押して開くか」「横へ滑るか」を確認し、その場で小さくメモします。図に正式名称まで自信がない場合でも、「横へ引く」「内開き」などの補足を書けば共有には十分です。

建築図面がなくても見取り図は作れますか?

はい。退院支援では、建築図面がなくても手書きの外枠と実測で十分実用的です。むしろ、実際に通れる幅や、歩行器を持ったときの干渉、夜間動線などは、現場で見た情報を足した見取り図の方が役立つことがあります。

家族説明用と院内共有用は同じ図でよいですか?

基本は同じで問題ありません。ただし、院内共有用では「接触介助」「片手条件」などの臨床メモを多めにし、家族説明用では「どこに手すりをつけると安心か」「何を先に試すか」を見やすく整理すると伝わりやすくなります。

図に数字をたくさん入れた方がよいですか?

すべての寸法を入れる必要はありません。最狭部、段差、便座高、浴槽高など、動作の成否に直結する数字を優先すると、図が読みやすくなります。数字は多さよりも意味づけを意識すると実務で使いやすいです。

次の一手

間取り図だけで終わらせず、訪問の段取り・算定要件・記録までつなげると、院内で運用しやすくなります。続けて読むなら次の 3 本がおすすめです。


参考情報

著者情報

rehabilikun のプロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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