退院前訪問指導の流れ【PT向け】持ち物と 5 分チェック

制度・実務
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退院前訪問指導の結論:当日は「目的 → 代表動作 → 採寸 → 合意」で回します

退院前訪問指導がブレる原因は、見る場所が多すぎることより、「今日何を決めるか」と「どこまで見たら終わるか」が曖昧なまま現地に入ることです。まず 1〜2 個の優先課題を固定し、代表動作を見て、必要な採寸だけ残し、最後に次の担当と期限まで決める流れにすると、 60〜90 分でも結論が出しやすくなります。

本記事は、退院前訪問指導の当日運用に絞った実践ページです。対象は、初めて家屋調査を担当する新人や、毎回「見すぎて終わらない」と感じやすい療法士です。持ち物、場所別チェック、記録 3 行テンプレ、当日 5 分チェックまで一気に整理し、「何を見て、どう書いて、どう終わるか」を固定します。

関連(同ジャンル回遊):まず親で全体像 → この記事で当日運用

家屋調査チェックリスト(親)へ

退院支援の進め方(総論)
住宅改修と福祉用具の使い分け

退院前訪問指導の優先度が上がる人:全例より「ズレが大きい人」を先に見ます

退院前訪問指導は、行くこと自体を目的にするより、「病棟の条件」と「自宅の条件」にズレが大きい人へ優先的に使う方が現場では回しやすくなります。特に、転倒しやすい場面が見えている人、家族介助が新しく入る人、環境制約で動作が変わる人は、現地確認の価値が高いです。

目安としては、①転倒歴がある ②トイレ・浴室・玄関で介助条件が変わる ③補助具や住宅改修の判断が割れる ④夜間動線に不安がある、のどれかがあるケースです。逆に、病棟で安全条件が揃い、環境差が小さい場合は、親記事のチェックリストを使った机上整理で足りることもあります。

前日までの準備:当日の迷いを 3 点で潰します

訪問前に固定したいのは「今日決めること」「最大リスク」「安全条件」の 3 点です。ここが曖昧だと、現地で見た情報が増えるほど結論が出にくくなります。優先順位は 1〜2 個までに絞り、全部を一度に決めようとしない方が実務では安定します。

あわせて、本人・家族・ケアマネジャー・福祉用具担当など、誰がその場で決められるかを揃えます。写真や採寸を行うなら、共有先と共有範囲も先に確認しておくと、後日の説明や調整で詰まりにくくなります。

当日 60〜90 分の流れ:安全 → 代表動作 → 採寸 → 合意の順で回します

当日は「見えるもの」から入ると情報が散りやすいため、順番を固定するのがポイントです。最初に危険確認、次に代表動作、最後に採寸と提案へ進むと、短時間でも判断がまとまりやすくなります。大事なのは、採寸を増やすことより、結論に必要な情報だけを先に揃えることです。

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退院前訪問指導のタイムライン( 60〜90 分モデル)
時間 やること 見るポイント(最小) 終わりの判断
0〜10 分 目的共有・危険確認 今日決めること 1〜2 個/最大リスク/禁止事項 「今日は何を決める日か」が全員でそろう
10〜35 分 代表動作の観察( 2 つまで) できる条件/崩れる条件(急ぎ・疲労・片手・夜間) 見守り・介助・補助具の条件が言える
35〜70 分 場所別チェック+採寸+提案 詰まり箇所 1〜2 個/必要な数値だけ残す 用具 → 配置 → 改修の順で方向性が決まる
70〜90 分 まとめ・役割分担・次回確認 誰がいつまでに何を手配するか 連絡先と期限まで言えたら終了

持ち物リスト:測る・書く・撮る・安全の 4 系統で固定します

持ち物は「多いほど安心」ではなく、再現性が上がるものに絞る方が使いやすいです。特に、メジャーだけで終えると「どこの数値か」が曖昧になりやすいため、採寸・記録・写真が同じ場面でつながるセットにしておくと共有が速くなります。

忘れやすいのは、予備のペン、モバイルバッテリー、小型ライトです。便利グッズを増やすより、「測る」「書く」「撮る」「安全確認」が途切れないことを優先すると失敗が減ります。

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退院前訪問指導の持ち物(最小セット)
カテゴリ 必須 あると強い 忘れると起きやすいこと
測る メジャー、メモ レーザー距離計、簡易水平器 高さや幅が「だいたい」になり、後日ズレる
書く チェック用紙、ペン クリップボード、付箋、予備ペン 数字は残るが、どこの数値か伝わらない
撮る スマホ モバイルバッテリー、同一アングルの目印 後日比較や説明がしにくくなる
安全 滑りにくい靴、ライト(小) 手袋、簡易消毒、注意表示 暗所や浴室で確認中に転倒リスクが上がる
検証 普段の靴・装具(可能なら) 高さ調整クッション、試用できる用具 「いつもの条件」で評価できない

場所別の観察・採寸:環境ではなく「その場で崩れる動作」を見ます

家屋調査は、家の情報を集める日ではなく、その環境で動作がどう変わるかを確かめる日です。先に代表動作を 2 つに絞り、各場所で「どこで詰まるか」を当てにいくと、採寸や提案がブレにくくなります。

図として残す場面が多い方は、扉や動線の表し方を 退院前訪問指導の間取り図の書き方 で先に固定しておくと、写真と記録のつながりが作りやすくなります。

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場所別チェック(観察 → 採寸 → 提案の方向性)
場所 観察(動作) 採寸(最小) よくある危険 最初の提案
玄関 上がり框、靴の着脱、方向転換 框の高さ、踏面の奥行き 片手保持でふらつく/急ぎで転倒 手すり位置、椅子、段差処理、動線変更
廊下・動線 歩行、停止、方向転換、すれ違い 幅、曲がり角、敷居段差 補助具が当たる/旋回で足が止まる 家具配置、手すり、可逆性の高い用具から試す
トイレ 立ち座り、方向転換、更衣 便座高、前方・側方スペース、手すり高さ 急ぎで介助量が増える 手すり、便座高調整、動線の単純化
浴室 出入り、またぎ、洗体姿勢 段差、扉幅、洗い場の有効幅 濡れ+疲労で一気に危険 まず用具(椅子・マット)→ 必要なら改修
寝室 起き上がり、立ち上がり、夜間移動 ベッド高、動線幅、照明位置 夜間トイレ動線で転倒 配置変更、足元灯、ポータブルトイレ検討
階段・屋外 昇降、手すり把持、休憩 段差高、踏面、手すり形状 雨天・逆光で段差が消える 手すり、休憩点、動線の複線化

記録の書き方:3 行で「再評価できる形」にします

記録は長さよりも、同じ条件で比較できるかが重要です。おすすめは、各場所で「条件 → 結果 → 危険」の 3 行に固定する方法です。これだけで、家族説明、ケアマネ共有、業者相談のスピードが上がります。

数値だけ並べると意味が伝わりにくいので、結果には「詰まる瞬間」を短く入れます。たとえば「 2 回目で膝折れ」「旋回で右手が離れる」のように、崩れ方まで一言で残すと再評価しやすくなります。

家屋調査の最小記録テンプレ( 3 行)
書くこと
条件 場所/補助具/見守り・介助/時間帯 玄関: T 字杖、見守り、夕方
結果 できる/できない+詰まる瞬間 上がり框: 1 回目は可能、 2 回目に膝折れ
危険 転倒・介助増の条件( 1 つ) 急ぎ+片手で靴を持つと支持が抜ける

現場の詰まりどころ:情報が多い日ほど「失敗」と「終わり方」を先に固定します

現場で詰まりやすいのは、見た情報が多すぎて結論が出ないことです。そんな日は、最初に「失敗しやすい前提」と「どこまで見たら終わるか」を決めておくと、訪問中の迷いが減ります。

ここまで整えても毎回同じ所で詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方は、 PT キャリアガイドも参考になります。

PT キャリアガイドを見る

よくある失敗:工事より「前提条件のズレ」で手戻りします

失敗は、手すりや段差処理そのものより、評価の前提条件がズレたときに起こります。疲労、夜間、急ぎ、片手、介助者の動きまで見ないと、当日はよく見えても退院後に詰まりやすくなります。

特に、全部を一度に決めようとする、数値だけ残して意味を書かない、最初から改修を決め打ちする、の 3 つは手戻りの原因になりやすいです。

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よくある失敗( OK / NG 早見)
場面 NG(起きがち) OK(こう直す) 記録ポイント
目的設定 全部見る 今日決めること 1〜2 個に絞る 冒頭に「今日決めたこと」を残す
観察 環境だけ見て動作を見ない 代表動作を 2 つに固定して見る 詰まる瞬間を 1 行で書く
採寸 数値だけで終わる 数値+何のための採寸かをセットで残す 便座高=立ち座り条件、のように意味を書く
提案 最初から改修を決め打ちする 用具 → 配置 → 改修の順で試す 試す順番まで書く
夜間 日中だけで判断する 夜間動線と照明を必ず見る 夜間転倒の条件を 1 行残す

当日 5 分チェック:入室前に「終わり方」を決めます

現地で迷わないために、入室前に 5 分だけ確認します。ここが揃うと、 60〜90 分で結論を出しやすくなります。逆に、この確認がないと、見た情報が増えるほど終わりにくくなります。

当日 5 分チェック(入室前)
項目 確認すること そろうとどうなるか
今日決めること 優先順位 1〜2 個(例:トイレ動線、玄関) 見る範囲を絞って開始できる
最大リスク 転倒/介助破綻/夜間のどれか 観察の焦点がぶれにくい
安全条件 禁止動作、見守りの範囲、代替案 「ここまで見たら終わる」が決まる
役割分担 本人・家族・ケアマネ・業者の役割 手配の手戻りが減る
記録の型 条件 → 結果 → 危険( 3 行) 共有が速くなる

配布用チェックシート:当日確認を 1 枚で回したい方へ

当日の流れを現場で見返しやすいように、退院前訪問指導の配布用チェックシートを用意しました。印刷して使う前提で、持ち物、場所別確認、終了前確認を書き込みやすい構成にしています。

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よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 当日はどこまで見たら終わりにしてよいですか?

A. 目安は「代表動作 2 つ」と「詰まり箇所 1〜2 個」です。全部を見ると情報量が増え、結論が出にくくなります。最後に「誰が、いつまでに、何をするか」が言えれば、その訪問は十分に役割を果たしています。

Q2. 写真は何を撮ると共有しやすいですか?

A. 段差、幅、手すり位置、照明・スイッチ、動線の詰まりの 5 点が残る写真が使いやすいです。採寸だけでは現場イメージが伝わりにくいため、全体がわかる写真と、段差や手すりの寄りの写真をセットで残すと共有しやすくなります。

Q3. 福祉用具と住宅改修はどちらを先に考えるべきですか?

A. 迷ったら、まずは可逆性の高い手段からです。用具や配置変更で失敗場面が減るかを確認し、それでも固定化が必要なところだけ改修へ進むと、退院直後のズレや手戻りを減らしやすくなります。

Q4. 家族が同席できないときはどう共有すればよいですか?

A. 「最大リスク」「禁止事項」「見守りの範囲」を 3 行テンプレで残し、後日電話やカンファレンスで同条件の説明を行うと共有しやすくなります。家族介助が新しく入るケースでは、次回の確認機会を早めに作る方が安全です。

次の一手:親記事で全体像をそろえ、次に図で伝える型を固めます


参考文献

  1. Lockwood KJ, Harding KE, Boyd JN, Taylor NF. Pre-discharge home assessment visits in assisting patients’ return to community living: A systematic review and meta-analysis. J Rehabil Med. 2015;47:289–299. doi: 10.2340/16501977-1942( PubMed: 25782842
  2. Clemson L, Lannin NA, Wales K, Salkeld G, Rubenstein L, Gitlin L, et al. Occupational Therapy Predischarge Home Visits in Acute Hospital Care: A Randomized Trial. J Am Geriatr Soc. 2016;64(10):2019–2026. doi: 10.1111/jgs.14287( PubMed: 27603152
  3. Kirchner-Heklau U, Krause K, Saal S. Effects, barriers and facilitators in predischarge home assessments to improve the transition of care from the inpatient care to home in adult patients: an integrative review. BMC Health Serv Res. 2021;21:540. doi: 10.1186/s12913-021-06386-4

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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