FABQ の評価方法|採点・解釈を PT 向けに解説

評価
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FABQ は「動くと悪くなるかも」という恐怖回避を整理する評価です

FABQ( Fear-Avoidance Beliefs Questionnaire )は、腰痛患者さんが身体活動や仕事を「痛みを悪化させるもの」とどの程度とらえているかを整理する質問票です。腰痛の臨床では、痛みの強さや可動域だけでは説明しにくい “ 動けなさ ” に出会うことがあります。前屈や持ち上げ動作が極端に怖い、症状以上に活動を避ける、復職の話になると不安が強くなる、といった場面では、恐怖回避の視点を入れるだけで評価の解像度がかなり上がります。

FABQ の強みは、「痛い」ではなく「動くのが怖い」「仕事が悪化要因に感じる」という信念を数値化できることです。ODI や RDQ が “ 生活障害の大きさ ” をみる尺度なのに対し、FABQ は “ なぜ障害が長引きやすいのか ” を考える入口になります。腰痛 PROM 全体の整理は 腰痛 PROM の選び方|RDQ・ODI・PSFS を 5 分で決める もあわせて確認してください。

FABQ は FABQ-PA と FABQ-W の 2 つの視点で恐怖回避信念を整理することを示した図版
FABQ は、身体活動への恐怖と仕事への恐怖を分けて整理し、高得点を “ 重症度 ” ではなく “ 回避の背景 ” として読む評価です。

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FABQ とは

FABQ は、腰痛に関連する fear-avoidance beliefs をみる 16 項目の患者報告型評価です。各項目は 0〜6 点で評定され、点数が高いほど恐怖回避信念が強いと解釈します。実務で中心になるのは合計点よりも、身体活動に関する FABQ-PA と、仕事に関する FABQ-W の 2 つの下位尺度です。

ここで大切なのは、FABQ が痛みの原因を診断する尺度ではないことです。画像所見や整形外科的テストの代わりにはなりません。得意なのは、「動作や就労のどこで不安や回避が強いか」を整理し、説明・段階づけ・負荷設定を考える材料にすることです。

スマホでは表を横スクロールできます。
FABQ の基本構造(成人・腰痛場面の実務向け整理)
項目 内容 実務ポイント
主目的 身体活動・仕事に対する恐怖回避信念を把握する 「痛みの強さ」とは別の詰まりを整理できる
項目数 16 項目 各項目 0〜6 点で回答する
主な見方 FABQ-PA と FABQ-W 合計点より下位尺度でみると使いやすい
実施時間 5〜10 分程度 初診や再評価日に組み込みやすい
位置づけ 心理社会面を含むスクリーニング 診断や red flags 評価の代用にはしない

採点方法

FABQ の採点で混乱しやすいのは、16 項目すべてを単純に合計して終わりにしてしまうことです。原著や SRALab の整理では、実務で中心になるのは 2 つの下位尺度です。FABQ-PA は items 2〜5 の合計で 0〜24 点、FABQ-W は items 6、7、9〜12、15 の合計で 0〜42 点になります。

つまり、全体の “ 心理的しんどさ ” をざっくりみるより、身体活動への恐怖が強いのか、仕事への恐怖が強いのか を切り分ける方が臨床では有用です。特に就労している患者さんや復職がテーマになる患者さんでは FABQ-W、日常動作や運動への回避が前面に出ている場合は FABQ-PA が参考になります。

FABQ 採点の最小ルール
確認する点 ルール 実務メモ
回答形式 各項目 0〜6 点 高得点ほど恐怖回避信念が強い
FABQ-PA items 2〜5 の合計( 0〜24 点 ) 身体活動への恐怖をみる
FABQ-W items 6、7、9〜12、15 の合計( 0〜42 点 ) 仕事への恐怖や回避をみる
合計点 16 項目を総和すると 0〜96 点 実務では下位尺度を優先して読む
比較条件 同じ説明・同じ場面設定で比較する 急性増悪直後かどうかを残す

解釈のコツ

FABQ の点数は、高いほど悪い人という単純なラベルにしないことが大切です。点数が高いときは、「動くと壊れると思っている」「仕事が悪化要因だと強く感じている」「痛みの説明と本人理解にズレがある」など、回避の背景を具体化する入口として使います。つまり、評価のゴールは点数を読むことではなく、回避が起きている文脈を見つけることです。

また、FABQ には万能な 1 本のカットオフがあるわけではありません。文献では FABQ-PA や FABQ-W の高値を “ elevated ” として扱うことがありますが、就労状況、病期、補償の有無、急性か慢性かで意味づけは変わります。まずは本人が避けている動作・仕事場面と結びつけて読むことを優先すると、点数に振り回されにくくなります。

FABQ の practical な読み方
見方 読み方 次に確認したいこと
FABQ-PA が高い 身体活動や運動への恐怖が強い可能性 前屈、歩行、持ち上げ、運動課題の回避
FABQ-W が高い 仕事動作や復職への不安が強い可能性 勤務内容、持ち上げ、立位時間、復職不安
両方高い 日常生活と就労の両方で回避が強い 説明理解、活動量低下、目標設定のズレ
点数が下がった 恐怖回避の改善を示す可能性 実際の活動量や困り動作も改善したか

STarT Back・ODI とどう組み合わせるか

FABQ だけでは、生活障害の大きさや予後リスク全体までは十分に見えません。そこで役割分担をはっきりさせると使いやすくなります。STarT Back は「長引きやすさ」の層別化、ODI / RDQ は生活障害の量、FABQ は恐怖回避の中身 をみる、という並びです。

実務では、初診で STarT Back を取り、障害の把握に ODI か RDQ を使い、そのうえで “ 動けない背景 ” が気になるときに FABQ を足す流れが自然です。これなら、予後、障害、心理社会面のそれぞれを別の尺度に任せられるので、1 本の質問票に役割を背負わせすぎずに済みます。

FABQ と STarT Back / ODI の使い分け
尺度 主にみるもの 向いている場面 ひとことで言うと
FABQ 恐怖回避信念 動作回避、復職不安、説明が入りにくい場面 なぜ動けないかをみる
STarT Back 予後リスクの層別化 初診、方針決め、説明の濃さ調整 長引きやすさをそろえる
ODI 生活障害の割合 外来、継続評価、障害の共有 どれだけ困っているかをみる

現場の詰まりどころ

FABQ がうまく回らなくなるのは、採点よりも聞き方と意味づけがぶれるときです。たとえば、患者さんに「気持ちの問題ですね」と受け取られるような説明をしてしまうと、回答が防衛的になったり、関係性が崩れたりしやすくなります。FABQ は心理評価ではありますが、責めるための尺度ではなく、回復を妨げている信念を一緒に整理するための尺度です。

まずは 3 点だけ固定すると安定します。① FABQ は痛みの真偽判定ではない、② 身体活動と仕事で分けて読む、③ 点数の後に “ 実際に避けている動作 1 つ ” を残す。この 3 点で、数字だけで終わる失敗をかなり減らせます。

よくある失敗

FABQ 運用でよくある失敗と回避策
失敗 何が困るか 回避策
合計点だけで終える 身体活動と仕事の違いが見えない FABQ-PA と FABQ-W を分けてみる
高得点を性格の問題にする 患者さんとの関係が悪くなる 説明と経験が作る回避として整理する
就労状況を無視して FABQ-W を読む 解釈がずれる 勤務内容、休職状況、復職課題を確認する
点数だけ記録する 次回の介入目標が曖昧になる 避けている動作と説明ポイントを 1 行残す

記録の残し方

FABQ の記録は、FABQ-PA / FABQ-W / 避けている動作 / 仕事上の不安 / 次の説明ポイント までを 1 セットで残すと使いやすくなります。点数だけでは “ で、何が引っかかっているのか ” が見えないため、必ず具体的な場面と結びつけるのがコツです。

たとえば、「 FABQ-PA 高値。前屈・持ち上げで再発不安が強く、活動回避あり。FABQ-W は中等度で、復職よりも日常動作への恐怖が前景。今日は痛みと損傷の誤解を修正し、段階的な前屈課題を提示。次回は ODI とあわせて活動量の変化も確認する 」 のように残すと、評価と介入がつながりやすくなります。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. FABQ は ODI や RDQ の代わりになりますか?

なりません。FABQ は恐怖回避信念、ODI / RDQ は生活障害をみる尺度です。FABQ だけで生活障害の大きさまでは十分にわからないため、役割を分けて使う方が実務では安定します。

Q2. FABQ の高得点は「重症」という意味ですか?

そうではありません。高得点は、身体活動や仕事に対する恐怖回避信念が強い可能性を示します。器質的重症度や画像所見を直接表すものではないため、整形外科的所見や red flags とは別で考えてください。

Q3. FABQ-W は就労していない患者さんにも同じように使えますか?

就労状況や仕事上の課題が薄い場合は、FABQ-W の解釈に注意が必要です。復職や仕事動作がテーマなら有用ですが、日常生活の活動回避が中心なら FABQ-PA を主にみる方が臨床的に自然です。

Q4. 点数の cut-off はありますか?

文献では FABQ-PA や FABQ-W の高値を示す目安が使われることがありますが、病期、就労状況、補償の有無などで意味づけは変わります。まずは cut-off を絶対視するより、避けている動作や仕事場面と結びつけて読む方が安全です。

次の一手

FABQ を入れると、腰痛評価は “ 痛みの強さ ” と “ 動けない背景 ” を分けて整理しやすくなります。次は、予後リスクと生活障害をみる記事へつないでください。


参考文献

  1. Waddell G, Newton M, Henderson I, Somerville D, Main CJ. A Fear-Avoidance Beliefs Questionnaire (FABQ) and the role of fear-avoidance beliefs in chronic low back pain and disability. Pain. 1993;52(2):157-168. DOI
  2. Matsudaira K, Kikuchi N, Murakami A, Isomura T. Psychometric properties of the Japanese version of the Fear-Avoidance Beliefs Questionnaire (FABQ). J Orthop Sci. 2014;19(1):26-32. DOI
  3. George SZ, Fritz JM, McNeil DW. Fear-avoidance beliefs as measured by the Fear-Avoidance Beliefs Questionnaire: Change in Fear-Avoidance Beliefs Questionnaire is predictive of change in self-report of disability and pain intensity for patients with acute low back pain. Clin J Pain. 2006;22(2):197-203. PubMed / DOI
  4. George SZ, Calley D, Valencia C, Beneciuk JM. Clinical investigation of pain-related fear and pain catastrophizing for patients with low back pain. Clin J Pain. 2011;27(2):108-115. PubMed / DOI
  5. Shirley Ryan AbilityLab. Fear-Avoidance Beliefs Questionnaire. Rehabilitation Measures Database. 公式ページ
  6. Cleland JA, Fritz JM, Brennan GP. Predictive validity of initial fear avoidance beliefs in patients with low back pain receiving physical therapy: is the FABQ a useful screening tool for identifying patients at risk for a poor recovery? Eur Spine J. 2008;17(1):70-79. PubMed

著者情報

rehabilikun のプロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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