STarT Backの採点方法|腰痛の予後リスク分類

評価
記事内に広告が含まれています。

STarT Back は腰痛の「長引きやすさ」を分けるスクリーニングです

STarT Back Screening Tool は、腰痛患者さんを「いま痛みが強いか」ではなく、今後の障害が残りやすいかという視点で low / medium / high risk に層別化する質問票です。この記事では、STarT Back の目的、採点方法、risk 分類、ODI・RDQ との使い分け、記録例を臨床向けに整理します。腰痛評価全体の選び方は 腰痛 PROM の選び方 もあわせて確認してください。

STarT Backのlow・medium・high risk分類と介入方針の整理図
STarT Back は、腰痛の予後リスクを low / medium / high risk に分け、初期対応の濃さを整理する評価です。

STarT Back とは

STarT Back は、腰痛の診断ではなく、予後不良リスクを短時間で層別化するための評価です。

9 項目の質問から、合計点と心理社会的サブスコアを確認し、low / medium / high risk に分類します。可動域や神経症状だけでは拾いにくい、恐怖回避、悲観的思考、活動制限の残りやすさを整理しやすい点が特徴です。

臨床では、STarT Back を「重症度の判定」として使うより、初回からどの程度手厚い説明・支援・セルフマネジメント指導が必要かを考える入口として使う方が実務に合います。

スマホでは表を横スクロールできます。
STarT Back の基本構造
項目 内容 実務ポイント
目的 腰痛の予後リスクを層別化する 診断ではなく、長引きやすさを見る
項目数 9 項目 初診でも導入しやすい
得点 合計 0〜9 点、サブスコア 0〜5 点 2 つの得点で risk を分類する
分類 low / medium / high risk 介入の濃さを考える入口にする

STarT Back の採点方法

STarT Back は、合計点と心理社会的サブスコアの 2 つを使って分類します。

全 9 項目の合計が total score で 0〜9 点、後半 5 項目の合計が sub score で 0〜5 点です。high risk は total score だけで決まるのではなく、心理社会的サブスコアが重要になります。

STarT Back の採点と層別化ルール
分類 基準 解釈
Low risk Total score 0〜3 点 予後不良リスクは比較的低い
Medium risk Total score 4 点以上 かつ Sub score 3 点以下 身体面・活動制限の影響を整理する
High risk Sub score 4 点以上 心理社会的因子の関与を含めて考える

STarT Back の解釈

STarT Back は、点数が高いほど単純に「重症」と読む尺度ではありません。

low risk では、安心づけ、活動継続、セルフマネジメントを過不足なく伝えることが重要です。medium risk では、生活動作や仕事動作でどこが止まっているかを具体化します。high risk では、不安、恐怖回避、悲観的思考、痛みに対する誤解が回復を妨げていないかを確認します。

実際の現場では、high risk を見て「気持ちの問題」と短絡しないことが大切です。痛みの説明、目標設定、段階的な活動量調整、多職種連携まで含めて考えると、評価結果を介入に結びつけやすくなります。

Risk 別の読み方
Risk 読み方 次に確認したいこと
Low 予後不良リスクは比較的低い 過剰安静や誤解がないか
Medium 活動制限が残りやすい可能性 立ち上がり、前屈、歩行、就労場面
High 心理社会的因子の関与が強い可能性 恐怖回避、悲観、回避行動、説明理解

ODI・RDQ との使い分け

STarT Back は予後リスク、ODI・RDQ は生活障害を見る尺度として使い分けます。

STarT Back だけでは、具体的にどの生活動作で困っているかまでは十分に見えません。そのため、初診で STarT Back を使ってリスクを層別化し、継続評価では ODI や RDQ で生活障害の変化を追うと整理しやすくなります。

STarT Back と ODI・RDQ の使い分け
尺度 主に見るもの 向いている場面
STarT Back 予後リスク 初診、方針決定、説明の濃さ調整
ODI 生活障害の割合 外来、重症例、説明重視の場面
RDQ 腰痛による生活制限 短時間評価、反復評価、変化の確認

よくある失敗

STarT Back の失敗は、採点よりも「何を見ている尺度か」の誤解で起こりやすいです。

STarT Back 運用でよくある失敗と回避策
失敗 何が困るか 回避策
High risk を重症度と読む 心理社会的因子の意味づけを誤る 予後リスクの分類として説明する
STarT Back だけで終える 具体的な生活障害が見えない ODI・RDQ や動作評価を併用する
赤旗評価の代わりにする 危険な見落としにつながる red flags と神経症状は別で確認する
点数だけ記録する 次回介入の焦点が曖昧になる 困り動作と次の説明ポイントを残す

記録の残し方

STarT Back の記録は、total score、sub score、risk 分類、困り動作、次の説明ポイントまで残すと使いやすくなります。

記録例は以下です。

STarT Back 6 / 9、sub 4 / 5 で high risk。前屈と立ち上がりで痛み回避行動あり。痛み=損傷という誤解が強く、活動回避が目立つ。本日は安心づけと負荷設定を中心に説明し、次回は ODI で生活障害も確認する。

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

Q1. STarT Back は ODI や RDQ の代わりになりますか?

なりません。STarT Back は予後リスクの層別化、ODI・RDQ は生活障害の把握が主な役割です。初診で STarT Back、継続評価で ODI または RDQ を使うと整理しやすくなります。

Q2. High risk は重症という意味ですか?

重症度そのものを示す分類ではありません。High risk は、心理社会的因子を含む予後不良リスクが高い可能性を示します。

Q3. どのタイミングで使うのがよいですか?

初診や初回介入時に使いやすい尺度です。目的は、初期対応でどの程度手厚い説明や支援が必要かを整理することです。

Q4. 赤旗評価の代わりになりますか?

なりません。STarT Back は予後リスクのスクリーニングであり、red flags や神経学的評価は別に確認する必要があります。

次の一手

STarT Back で予後リスクを整理したら、次は腰痛評価全体の使い分けや生活障害の評価につなげてください。


参考文献

  1. Hill JC, Dunn KM, Lewis M, Mullis R, Main CJ, Foster NE, Hay EM. A primary care back pain screening tool: identifying patient subgroups for initial treatment. Arthritis Rheum. 2008;59(5):632-641. DOI
  2. Hill JC, Whitehurst DGT, Lewis M, Bryan S, Dunn KM, Foster NE, et al. Comparison of stratified primary care management for low back pain with current best practice: the STarT Back trial. Lancet. 2011;378(9802):1560-1571. DOI
  3. Traeger A, McAuley JH. STarT Back Screening Tool. J Physiother. 2013;59(2):131. DOI
  4. NICE. STarT Back Screening Tool with matched treatment options. 公式ページ

著者情報

rehabilikun のプロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信しています。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ