BADLS と DAD の違い
BADLS と DAD は、どちらも認知症のある人の ADL / IADL を考えるときに使われる評価ですが、役割は同じではありません。 BADLS は生活機能の支障を家族・介護者の視点で広く把握しやすい尺度で、 DAD は ADL / IADL のどこで遂行が崩れているかを整理しやすい尺度です。
そのため、似た評価としてまとめて扱うのではなく、BADLS は全体像を拾う、 DAD は崩れ方を分ける と理解すると使い分けしやすくなります。すでに DAD の各論記事を読んでいる方は、この記事で「なぜ BADLS を別に使うのか」が整理しやすくなります。
BADLS の特徴
BADLS は、認知症のある人の生活機能を、家族や介護者などの情報をもとに整理する尺度です。食事、更衣、整容、排泄などの基本 ADL だけでなく、飲み物の準備、家事、電話、金銭管理などの生活行為も含めて、日常生活全体の支障を幅広く把握しやすいのが特徴です。
特に、本人をその場で直接みただけでは分かりにくい「在宅での困りごと」や「家族がどこで手をかけているか」を拾いやすいため、退院支援、外来、訪問、通所などの場面で使いやすくなります。 BADLS の単独記事で全体像を確認したい場合は、 BADLS の評価方法|20 項目と DAD との違い もあわせて読むと整理しやすいです。
DAD の特徴
DAD は、認知症のある人の ADL / IADL における機能障害を把握するための尺度です。特徴は、単に「できる / できない」をみるだけでなく、生活行為の中で 始められないのか、段取りが崩れるのか、実行が続かないのか を考えやすい点にあります。
このため、介入設計や家族指導では DAD が役立つ場面が多くなります。本人の生活障害を広く把握するというより、どこでつまずいているかを分けて考える のが DAD の強みです。 DAD の詳しい見方は、 DAD の評価方法|認知症の ADL / IADL 遂行・発動の見方 で深掘りできます。
BADLS と DAD の比較表
BADLS と DAD の違いは、まず「何をみたいか」で整理すると分かりやすくなります。生活障害の全体像を広く拾いたいなら BADLS 、生活行為のどこで崩れているかを分けて考えたいなら DAD が向きます。
図版で全体像をつかんだうえで、下の比較表を見ると役割の違いを整理しやすくなります。比較記事では「似た尺度」ではなく、広く拾う尺度と深く分ける尺度として読むのがポイントです。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 比較軸 | BADLS | DAD |
|---|---|---|
| 主にみるもの | 認知症に伴う生活障害の全体像 | ADL / IADL の遂行の崩れ方 |
| 情報源 | 家族・介護者などの他者評価が中心 | 本人と家族の情報をもとに機能障害を整理 |
| 強み | 在宅生活の困りごとを広く拾いやすい | 開始・段取り・実行のどこで止まるかを考えやすい |
| 向く場面 | 退院支援、在宅支援、家族聴取 | 介入設計、原因分析、家族指導 |
| 読み方のコツ | 合計点 + 支障が強い項目 | 行為全体 + どの過程で崩れるか |
どんな場面で使い分けるか
退院支援や在宅復帰支援では、まず BADLS で生活機能の全体像を広く拾うと、家族がどこで困っているかをつかみやすくなります。特に「病棟ではできそうに見えるが、家では回らない」といったズレを整理したいときに向いています。
一方、介入の焦点を絞りたいときは DAD が役立ちます。たとえば、更衣や服薬管理が難しいときに、「開始が難しいのか」「段取りが崩れるのか」「最後まで続かないのか」を考えると、練習や家族指導の内容を具体化しやすくなります。認知症の公的な生活ランクもあわせて確認したい場合は、 認知症高齢者の日常生活自立度|Ⅰ〜M の見方 もつながりやすい記事です。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 場面 | 向きやすい尺度 | 理由 |
|---|---|---|
| 退院支援 | BADLS | 在宅生活の困りごとを家族視点で広く拾いやすいからです。 |
| 家族聴取 | BADLS | 普段の生活でどこに手がかかるかを整理しやすいからです。 |
| 介入設計 | DAD | 生活行為のどこで崩れているかを分けて考えやすいからです。 |
| 原因分析 | DAD | 遂行過程のつまずきを整理しやすいからです。 |
| 在宅生活の全体像把握 | BADLS | IADL を含めた生活障害を広く把握しやすいからです。 |
よくある失敗
よくある失敗の 1 つ目は、 BADLS と DAD を「どちらも認知症の ADL 評価だから同じ」と考えてしまうことです。実際には、 BADLS は生活障害を広く拾う尺度、 DAD は遂行の崩れ方を深く分ける尺度なので、役割を分けたほうが実務で使いやすくなります。
2 つ目は、 BADLS を合計点だけで終えてしまうことです。 3 つ目は、 DAD に生活全体の困りごと把握まで求めてしまうことです。広く拾うか、深く分けるかを最初に決めておくと、評価後の流れがぶれにくくなります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 失敗 | なぜずれるか | 回避策 |
|---|---|---|
| 同じ尺度として扱う | 役割差が見えなくなる | BADLS は広く拾う、 DAD は深く分けると整理します。 |
| BADLS を合計点だけでみる | 生活上の弱点が見えにくくなる | 支障が強い項目も一緒に確認します。 |
| DAD で生活全体を拾おうとする | 在宅生活の広がりが見えにくい | 生活全体の把握は BADLS も併用します。 |
| 身体要因と認知要因を混ぜる | 支援の焦点が曖昧になる | 身体機能と認知面を分けて記録します。 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
BADLS と DAD はどちらも認知症の ADL 評価ですか?
はい。ただし役割は同じではありません。 BADLS は生活障害を広く把握しやすく、 DAD は遂行の崩れ方を分けて考えやすい尺度です。
退院支援ではどちらが向いていますか?
在宅生活の困りごとを広く拾いたいなら BADLS が向きます。そのうえで、具体的な介入設計までつなげたいときに DAD を使うと整理しやすくなります。
家族説明に向いているのはどちらですか?
生活全体の支障や介護負担を共有しやすいのは BADLS です。どこで行為が止まるかまで説明したいときは DAD が役立ちます。
片方だけ使えば十分ですか?
目的によります。全体像を広く把握したいだけなら BADLS でも足りますが、介入設計や原因分析まで行いたいなら DAD も併用したほうが使いやすくなります。
次の一手
BADLS と DAD の違いを整理したら、次は それぞれの各論記事 と 公的ランクの整理 へつなぐと、認知症の生活機能評価がぶれにくくなります。同テーマで続けて読むなら、次の 3 本がつながりやすいです。
評価の回し方や共有の型を、個人だけでなく職場全体で整えたいときは、環境面の詰まりも点検しておくと動きやすくなります。無料チェックシートを見る
参考文献
- Bucks RS, Ashworth DL, Wilcock GK, Siegfried K. Assessment of activities of daily living in dementia: development of the Bristol Activities of Daily Living Scale. Age Ageing. 1996;25(2):113-120. PubMed
- Gelinas I, Gauthier L, McIntyre M, Gauthier S. Development of a functional measure for persons with Alzheimer’s disease: the disability assessment for dementia. Am J Occup Ther. 1999;53(5):471-481. PubMed
- DAD の評価方法|認知症の ADL / IADL 遂行・発動の見方
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


