DADの評価方法|認知症ADL・IADLの遂行をみる尺度
DAD(Disability Assessment for Dementia)は、認知症のある人のADL・IADLを「できるか」だけでなく、開始・段取り・実行まで分けて確認する評価尺度です。この記事では、DADの特徴、採点方法、実施時の注意点、Barthel Index・Lawton IADL・Katzとの使い分けを、臨床で記録に落とし込みやすい形で整理します。
ADL評価全体の位置づけを先に確認したい場合は、ADL評価スケールまとめもあわせて確認してください。
DADとは|認知症による生活動作の遂行障害をみる尺度
DADは、認知症のある人の生活動作を、介助量だけでなく遂行機能の視点から評価する尺度です。
対象となるのは、基本ADL、IADL、余暇活動などです。特徴は、単に「できる・できない」を見るのではなく、生活動作を開始、計画と段取り、実行に分けて確認できる点です。
臨床では、身体機能としては可能に見えても、実生活では「自分から始めない」「手順がつながらない」「最後まで安全に終えられない」という場面があります。DADは、そのような認知症による生活上の詰まりを整理しやすい評価です。
DADを使う場面|認知症のADL低下理由を具体化したいとき
DADは、認知症のある人のADL・IADL低下の背景を具体化したいときに使いやすい尺度です。
特に、次のような場面で役立ちます。
- 在宅復帰前に、生活動作の支援ポイントを整理したい
- 家族へ声かけや環境調整の方法を説明したい
- 「できる能力」と「実際にしている生活」の差を確認したい
- IADLの低下が、開始・段取り・実行のどこで起きているか見たい
療養病棟や生活期の現場では、ADL点数だけでは支援内容が決まりにくいことがあります。DADを使うと、「何を介助するか」だけでなく、「どこで促しが必要か」まで共有しやすくなります。
DADの構造と採点|Yes・No・N/Aを割合で読む
DADは、介護者への面接を通して、直近2週間の実際の遂行状況を確認します。
採点は、各項目を以下のように判断します。
| 採点 | 意味 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| Yes | 1点 | 助けや促しなしに実際に行っている |
| No | 0点 | 行っていない、または助け・促しが必要 |
| N/A | 非該当 | 生活上その動作が該当しない |
点数は、Yesの合計 ÷ 該当項目数 × 100で百分率として読みます。N/Aは分母から除外します。そのため、DADは単純な合計点ではなく、「該当する生活動作のうち、どの程度自立して遂行できているか」を見る尺度です。
DADの強み|開始・段取り・実行に分けて見られる

DADの強みは、認知症によるADL・IADLの低下を、開始・段取り・実行に分けて考えられることです。
| 視点 | 見ること | 臨床での例 |
|---|---|---|
| 開始 | 自分から始められるか | 食事を前にしても食べ始めない |
| 計画と段取り | 手順や準備を組み立てられるか | 更衣の順番が乱れる、必要物品を準備できない |
| 実行 | 最後まで安全に完了できるか | 途中で止まる、確認や見守りが必要になる |
この視点があると、「ADL自立」「一部介助」だけでは伝わりにくい生活上の問題を、家族指導やカンファレンスで共有しやすくなります。
実施方法|介護者に直近2週間の実際を確認する
DADは、本人への質問ではなく、介護者への面接で実施します。
確認するのは、「能力としてできるか」ではなく、直近2週間に、助けや促しなしで実際に行っていたかです。ここがDADで最もブレやすいポイントです。
たとえば、「声をかければ入浴できる」「準備すれば服薬できる」という場合は、DADの判断ではYesにならない可能性があります。実際に自発的に始め、段取りし、完了しているかを確認することが大切です。
記録例|割合だけでなく詰まり場面を残す
DADは、割合だけでなく、どの生活場面で詰まっているかを一緒に記録すると臨床で使いやすくなります。
記録では、次の4点を入れると伝わりやすくなります。
- DADの割合
- 低下している領域
- 開始・段取り・実行のどこで止まるか
- 代表的な生活場面
記録例:DAD 68%。基本ADLは概ね保たれるが、IADLで低下あり。服薬管理と買い物で開始・段取りに支援を要する。声かけ、物品準備、手順の見える化が必要。
このように書くと、点数の意味だけでなく、次に必要な支援まで共有しやすくなります。
DAD・Barthel Index・Lawton IADL・Katzの使い分け
DADは、他のADL尺度と目的が異なります。
Barthel Indexは基本ADLの介助量、Katzは基本ADLの簡便なスクリーニング、Lawton IADLは在宅生活行為の自立度を見ます。一方でDADは、認知症によってADL・IADLがなぜ回らないのかを、遂行機能の視点で整理する尺度です。
| 尺度 | 主に見るもの | 強み | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| DAD | 認知症のADL・IADL遂行 | 開始・段取り・実行を分けて見られる | 認知症の在宅支援、家族指導、生活期評価 |
| Barthel Index | 基本ADLの介助量 | 全体像を短時間で把握しやすい | 急性期、回復期、療養病棟のADL把握 |
| Katz Index | 基本ADLの簡便評価 | スクリーニングとして使いやすい | 高齢者の基本ADL確認 |
| Lawton IADL | IADLの自立度 | 家事、買い物、服薬管理などを広く見られる | 在宅復帰、生活期、外来フォロー |
実務では、基本ADLの介助量はBarthel IndexやKatzで確認し、在宅生活行為はLawton IADLで整理します。そのうえで、認知症による遂行障害まで見たい場合にDADを追加すると、評価の役割分担が明確になります。
よくある失敗|「できそう」をYesにしない
DADで最も多い失敗は、「能力としてできそう」をYesにしてしまうことです。
| 場面 | NG | OK |
|---|---|---|
| 聞き取り | 手伝えばできるをYesにする | 助けや促しなしに実際にしているかで判断する |
| 期間 | 最近の印象で判断する | 直近2週間にそろえて確認する |
| 解釈 | 割合だけで重症度を決める | 開始・段取り・実行のどこが弱いかを見る |
| 共有 | 点数だけ記録する | 詰まり場面と必要な支援も残す |
新人PTでは、ADL評価を「動作ができるか」に寄せて考えがちです。しかしDADでは、実生活で自発的に始め、段取りし、最後まで行えているかを確認します。この違いを押さえると、家族指導や環境調整の提案が具体的になります。
よくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。
DADは本人に聞く評価ですか?
基本は介護者への面接で行います。本人の能力評価ではなく、直近2週間の実際の生活遂行を介護者から確認します。
DADは何分くらいで実施できますか?
目安は15分程度です。静かな環境で、介護者と1対1で確認すると進めやすくなります。
DADは身体障害が強い人にも使えますか?
身体障害がADL低下の主因となる場合は、DADだけで判断せず、Barthel Indexなど身体機能面を反映しやすいADL評価と併用して解釈します。
DADは点数が高ければ支援不要ですか?
点数だけで判断しません。割合が高くても、服薬、買い物、金銭管理など特定のIADLで開始や段取りに支援が必要な場合があります。
次の一手|ADL評価クラスターで使い分けを固める
DADの位置づけがつかめたら、次はADL評価全体の中で使い分けを整理すると理解しやすくなります。
- ADL評価全体を確認する:ADL評価スケールまとめ
- 在宅生活行為を広く見る:Lawton IADLの評価方法
参考文献
- Gélinas I, Gauthier L, McIntyre MC, Gauthier S. Development of a functional measure for persons with Alzheimer disease: the Disability Assessment for Dementia. Am J Occup Ther. 1999;53(5):471-481. PubMed.
- Feldman H, Sauter A, Donald A, et al. The disability assessment for dementia scale: a 12-month study of functional ability in mild to moderate severity Alzheimer disease. Alzheimer Dis Assoc Disord. 2001;15(2):89-95. doi:10.1097/00002093-200104000-00008. PubMed.
- Gélinas I, Gauthier L. Disability Assessment for Dementia(DAD)User’s Guide. McGill University. PDF.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

