頸神経叢とは
頸神経叢とは、主にC1〜C4の脊髄神経前枝から形成される神経ネットワークです。
首の前外側部、後頭部の一部、耳の周囲、鎖骨周囲などの感覚に関わるほか、頸部の一部の筋や横隔膜の運動にも関与します。
頸神経叢は、腕神経叢と比べると学習機会が少ない印象がありますが、頸部の解剖、呼吸、術後評価、感覚障害の理解に関わる重要な知識です。
この記事では、頸神経叢の構成、皮枝、筋枝、横隔神経、支配領域、腕神経叢との違いを整理します。
頸神経叢の構成
頸神経叢は、主にC1〜C4の前枝から構成されます。

| 神経根 | 主な関与 |
|---|---|
| C1 | 頸部筋、舌下神経との連絡 |
| C2 | 後頭部、耳周囲、頸部感覚 |
| C3 | 頸部感覚、横隔神経 |
| C4 | 鎖骨周囲感覚、横隔神経 |
大まかには、C1〜C4が首周囲の感覚・運動に関与すると理解すると整理しやすいです。
一方、上肢の神経支配は主に腕神経叢が関与します。上肢の神経支配を確認したい場合は、以下の記事も参考にしてください。
頸神経叢の皮枝4つ
頸神経叢でまず覚えたいのは、皮枝4つです。
- 小後頭神経
- 大耳介神経
- 頸横神経
- 鎖骨上神経
| 神経 | 主な支配領域 |
|---|---|
| 小後頭神経 | 後頭部外側 |
| 大耳介神経 | 耳介周囲、耳下腺周囲 |
| 頸横神経 | 前頸部 |
| 鎖骨上神経 | 鎖骨周囲、肩上部、前胸部上部 |
皮枝は、頸部や鎖骨周囲の感覚障害を整理するときに役立ちます。
小後頭神経
小後頭神経は、後頭部外側の感覚に関与します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な由来 | C2周辺 |
| 主な支配領域 | 後頭部外側 |
| 臨床での視点 | 後頭部周囲の感覚症状 |
後頭部外側のしびれや違和感をみるときに、頸神経叢の皮枝として整理しておくと理解しやすくなります。
大耳介神経
大耳介神経は、耳介周囲や耳下腺周囲の感覚に関与します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な由来 | C2〜C3周辺 |
| 主な支配領域 | 耳介周囲、耳下腺周囲 |
| 臨床での視点 | 耳周囲の感覚障害 |
耳の周囲の感覚は三叉神経だけでなく、頸神経叢の枝も関与するため、領域を分けて考えることが大切です。
頸横神経
頸横神経は、前頸部の感覚に関与します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な由来 | C2〜C3周辺 |
| 主な支配領域 | 前頸部 |
| 臨床での視点 | 頸部前面の感覚症状 |
頸部前面の感覚を整理するときに重要な皮枝です。
鎖骨上神経
鎖骨上神経は、鎖骨周囲、肩上部、前胸部上部の感覚に関与します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な由来 | C3〜C4周辺 |
| 主な支配領域 | 鎖骨周囲、肩上部、前胸部上部 |
| 臨床での視点 | 鎖骨周囲の感覚障害 |
鎖骨周囲や肩上部のしびれを確認する場面では、鎖骨上神経の領域も意識しておくとよいでしょう。
頸神経叢の筋枝
頸神経叢は感覚だけでなく、頸部の一部の筋にも関与します。
代表的に押さえたいのは、次の2つです。
- 頸神経ワナ
- 横隔神経
| 神経 | 主な役割 |
|---|---|
| 頸神経ワナ | 舌骨下筋群に関与 |
| 横隔神経 | 横隔膜の運動に関与 |
頸神経叢は首周囲の感覚だけでなく、嚥下や呼吸に関係する構造ともつながって考える必要があります。
頸神経ワナ
頸神経ワナは、頸神経叢の運動枝として舌骨下筋群に関与します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な由来 | C1〜C3周辺 |
| 主な支配 | 舌骨下筋群 |
| 臨床での視点 | 頸部筋、嚥下関連筋の理解 |
頸神経ワナは、細かい走行を最初から暗記するよりも、舌骨下筋群と関係する運動枝として理解すると整理しやすいです。
横隔神経
横隔神経は、横隔膜の運動に関与する重要な神経です。
一般的に、横隔神経はC3〜C5からの線維を含みます。その中でも頸神経叢との関係では、C3〜C4を中心に整理されることが多いです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な由来 | C3〜C5 |
| 主な支配 | 横隔膜 |
| 主な役割 | 呼吸運動に関与 |
| 臨床での視点 | 呼吸機能、頸部・胸部術後 |
横隔膜は呼吸の主役となる筋です。そのため、横隔神経の理解は、呼吸機能や術後のリスクを考えるうえでも重要です。
頸神経叢の支配領域まとめ
頸神経叢の支配領域は、感覚支配と運動支配に分けて整理すると理解しやすくなります。
| 分類 | 主な神経 | 主な領域 |
|---|---|---|
| 感覚 | 小後頭神経 | 後頭部外側 |
| 感覚 | 大耳介神経 | 耳介周囲、耳下腺周囲 |
| 感覚 | 頸横神経 | 前頸部 |
| 感覚 | 鎖骨上神経 | 鎖骨周囲、肩上部 |
| 運動 | 頸神経ワナ | 舌骨下筋群 |
| 運動 | 横隔神経 | 横隔膜 |
頸神経叢は、首周囲の感覚と、頸部筋・横隔膜の運動を整理するうえで重要です。
頸神経叢の覚え方
頸神経叢は、最初からすべての枝を細かく覚えるよりも、皮枝4つと筋枝2つに分けて整理すると覚えやすいです。
まずは皮枝4つです。
- 小後頭神経
- 大耳介神経
- 頸横神経
- 鎖骨上神経
次に、筋枝として頸神経ワナと横隔神経を押さえます。
- 頸神経ワナ
- 横隔神経
このように、皮枝4つ+筋枝2つで整理すると、全体像をつかみやすくなります。
頸神経叢と腕神経叢の違い
頸神経叢と腕神経叢は、どちらも頸部周囲の脊髄神経から形成されますが、支配領域が異なります。
| 項目 | 頸神経叢 | 腕神経叢 |
|---|---|---|
| 主な由来 | C1〜C4 | C5〜T1 |
| 主な支配 | 頸部、後頭部、鎖骨周囲、横隔膜 | 肩、上腕、前腕、手 |
| 代表的な枝 | 小後頭神経、大耳介神経、横隔神経 | 筋皮神経、腋窩神経、橈骨神経、正中神経、尺骨神経 |
| 臨床での視点 | 頸部感覚、呼吸、術後評価 | 上肢の運動・感覚障害 |
頸神経叢は首周囲や横隔膜、腕神経叢は上肢の運動・感覚と考えると整理しやすいです。
腕神経叢については、以下の記事で詳しく整理しています。
臨床でよくみるポイント
頸神経叢は、次のような場面で意識することがあります。
- 頸部の感覚障害
- 耳周囲や鎖骨周囲のしびれ
- 頸部術後の評価
- 横隔神経と呼吸機能の確認
- 頸部外傷後の症状整理
- 上肢症状との鑑別
特に、頸部から肩周囲にかけてのしびれや感覚鈍麻では、頸神経叢、腕神経叢、頸椎由来の神経症状を分けて考える視点が大切です。
頸神経叢を覚えるときの注意点
頸神経叢は、細かい枝の名前だけを暗記すると臨床で使いにくくなります。
まずは次の3点を押さえるとよいでしょう。
- C1〜C4から形成される
- 皮枝4つで頸部周囲の感覚を支配する
- 横隔神経を介して呼吸にも関係する
そのうえで、頸神経叢と腕神経叢の違いを整理すると、頸部から上肢にかけての神経支配が理解しやすくなります。
まとめ
頸神経叢は、主にC1〜C4の脊髄神経前枝から形成される神経ネットワークです。
まず覚えたい皮枝は、次の4つです。
- 小後頭神経
- 大耳介神経
- 頸横神経
- 鎖骨上神経
筋枝では、頸神経ワナと横隔神経が重要です。
- 頸神経ワナ:舌骨下筋群に関与
- 横隔神経:横隔膜に関与
頸神経叢は、頸部の感覚障害、鎖骨周囲のしびれ、呼吸機能、頸部術後評価などを理解するうえで重要な解剖知識です。
FAQ
頸神経叢とは何ですか?
頸神経叢とは、主にC1〜C4の脊髄神経前枝から形成される神経ネットワークです。頸部周囲の感覚や、一部の筋、横隔膜の運動に関与します。
頸神経叢の皮枝には何がありますか?
小後頭神経、大耳介神経、頸横神経、鎖骨上神経があります。
頸神経叢と腕神経叢の違いは何ですか?
頸神経叢は主にC1〜C4から形成され、頸部周囲や横隔膜に関与します。腕神経叢は主にC5〜T1から形成され、上肢の運動・感覚に関与します。
横隔神経は頸神経叢と関係しますか?
はい。横隔神経はC3〜C5からの線維を含み、横隔膜の運動に関与します。頸神経叢を学ぶうえで重要な神経です。
頸神経叢は臨床でどのような場面で重要ですか?
頸部の感覚障害、耳周囲や鎖骨周囲のしびれ、頸部術後、呼吸機能、頸部から上肢にかけての神経症状を整理する場面で重要です。


