一次運動野・一次感覚野の違い|場所と障害症状

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一次運動野・一次感覚野とは

一次運動野は中心前回にあり、主に随意運動の出力に関わります。一次感覚野は中心後回にあり、触覚や位置覚などの体性感覚処理に関わります。覚え方は、中心溝を基準に「前が運動、後ろが感覚」です。

この記事では、両者の場所と違い、ペンフィールドのホムンクルス、脳卒中で障害された場合の症状を整理します。脳画像上の病変を運動・感覚・ADL評価へつなげたいPT・OT・ST向けの記事です。

このページの位置づけ

このページは、脳ランドマークシリーズの運動・感覚野編です。脳血管支配の全体像から確認したい場合は、ACA・MCA・PCAの記事を先に読むと位置関係を整理しやすくなります。

ACA・MCA・PCAの支配領域を見る

中心前回と中心後回は中心溝をはさんで並ぶ

一次運動野と一次感覚野は、中心溝を基準に前後関係を確認すると見分けやすくなります。

中心溝の前にある中心前回には一次運動野があり、中心溝の後ろにある中心後回には一次体性感覚野があります。大脳半球の外側面だけでなく、両者は内側面の傍中心小葉へ連続しています。

一次運動野と一次感覚野の違いを示した図。中心溝を境に、中心前回が運動出力、中心後回が感覚入力に関わることを整理している。
中心前回・中心後回の位置関係
部位 中心溝との位置関係 主な領域 覚え方
中心前回 中心溝の前 一次運動野 前=運動
中心後回 中心溝の後ろ 一次体性感覚野 後ろ=感覚

最初に固定したい関係は、「中心前回=運動」「中心後回=感覚」の2点です。前頭葉・頭頂葉という名称だけで覚えるより、中心溝を基準に画像上で前後を確認する方が混同を防ぎやすくなります。

一次運動野は随意運動の出力に関わる

一次運動野は中心前回にあり、随意運動を実行するための運動出力に関わります。

解剖学的には主にBrodmann area 4に相当します。一次運動野から出る神経線維の一部は皮質脊髄路や皮質核路を形成し、脳幹や脊髄の運動系へ情報を伝えます。

多くの皮質脊髄路線維は下位で交叉するため、左大脳半球の病変では右側、右大脳半球の病変では左側の運動障害が基本となります。ただし、実際の麻痺の程度は一次運動野だけで決まらず、病変範囲、皮質下白質、内包、脳幹など運動経路への影響によって変わります。

一次運動野で押さえるポイント
項目 確認内容
場所 中心前回と傍中心小葉前部
Brodmann area 主に4野
主な役割 随意運動の実行に関わる運動出力
関連する神経路 皮質脊髄路、皮質核路
障害時の見方 反対側の随意運動低下、筋力低下、巧緻性低下

臨床では、単純な徒手筋力検査だけでなく、運動の開始、分離運動、速度、方向調整、手指の巧緻性も確認します。皮質病変では筋力低下よりも、細かな運動のぎこちなさが目立つ場合があります。

一次感覚野は体性感覚の処理に関わる

一次感覚野は中心後回にあり、反対側の身体から届く体性感覚情報の初期処理に関わります。

より正確には一次体性感覚野と呼ばれ、主にBrodmann area 3a・3b・1・2から構成されます。皮膚からの触覚、圧覚、振動覚や、筋・関節からの位置覚などは、それぞれ複数の領域で段階的に処理されます。

一次体性感覚野や周辺領域が障害されると、触覚や位置覚の低下だけでなく、刺激した場所が分かりにくい、物品の形を触って識別しにくい、二点を区別しにくいといった皮質性感覚障害がみられることがあります。

一次体性感覚野で押さえるポイント
項目 確認内容
場所 中心後回と傍中心小葉後部
Brodmann area 主に3a・3b・1・2野
主な役割 体性感覚情報の受容と初期処理
関わる感覚 触覚、圧覚、振動覚、位置覚など
障害時の見方 反対側の感覚低下、位置覚障害、識別感覚障害

なお、一次体性感覚野は感覚情報がそのまま保存される単純な受信箱ではありません。視床や頭頂連合野などを含むネットワークで情報が処理されるため、中心後回周辺の病変だけで感覚症状のすべてを説明できるとは限りません。

一次運動野と一次感覚野の違い

一次運動野は「動かすための出力」、一次体性感覚野は「身体から届いた情報の処理」と整理すると違いが明確になります。

両者は中心溝をはさんで隣接し、実際の運動では相互に情報をやり取りしています。たとえば、コップを持つ動作では、運動出力だけでなく、指にかかる圧や関節位置の感覚を利用して握る力を調整しています。

一次運動野と一次体性感覚野の比較
項目 一次運動野 一次体性感覚野
場所 中心前回 中心後回
大脳葉 前頭葉 頭頂葉
主な役割 随意運動の出力 体性感覚の受容・処理
代表的な障害 随意運動低下、筋力・巧緻性低下 感覚低下、位置覚・識別感覚障害
臨床評価 随意性、筋力、分離運動、巧緻性 表在感覚、深部感覚、皮質性感覚

運動野と感覚野は分けて評価しますが、ADLでは両者を統合して判断します。筋力が保たれていても位置覚が低下していれば、閉眼時の立位、足部の接地、手元を見ない上肢操作が不安定になることがあります。

ペンフィールドのホムンクルスは体部位局在を示す

ペンフィールドのホムンクルスは、一次運動野と一次体性感覚野における身体部位の対応関係を示したものです。

大まかには、大脳半球の内側に下肢、外側へ進むにつれて体幹・上肢・手・顔面が配置されます。手指や口唇、顔面は、実際の身体の大きさに比べて広い皮質領域で表現されます。

一次運動野と一次感覚野の体部位局在と臨床評価を示した図。下肢・足、体幹・上肢、手・手指、顔面・口唇・舌に対応する評価ポイントを整理している。
ホムンクルスの体部位局在
大脳皮質上の位置 対応しやすい身体部位 臨床での見方
大脳半球内側面 下肢、足部 ACA領域の病変では下肢症状を確認する
外側面上部 体幹、肩、上肢 支持性、到達動作、分離運動を見る
外側面中部 手、手指 巧緻動作や物品操作を見る
外側面下部 顔面、口唇、舌 顔面運動、発話、口腔運動を確認する

ただし、ホムンクルスを身体部位が境界線で完全に分かれた固定地図として扱うのは適切ではありません。実際の皮質表現には重なりや個人差があり、運動は複数の筋や関節を組み合わせたネットワークとして制御されます。

臨床では細かな境界を暗記するよりも、内側は下肢、外側は上肢・手・顔面という大枠を、ACA・MCAの支配領域と結びつける方が実用的です。

脳卒中では病変部位と反対側の症状を確認する

一次運動野や一次体性感覚野の病変では、基本的に病変と反対側の身体に運動障害や感覚障害が現れます。

ただし、脳卒中の病変が一次領域だけに限局するとは限りません。隣接する運動前野、補足運動野、頭頂連合野、皮質下白質などへ及ぶと、運動開始、運動企画、身体認知などの問題が重なることがあります。

障害部位と症状の見方
病変の見方 起こりやすい問題 リハで確認すること
中心前回周辺 反対側の随意運動低下、巧緻性低下 随意性、筋力、分離運動、速度、巧緻性
中心後回周辺 反対側の感覚低下、位置覚・識別感覚障害 触覚、位置覚、振動覚、局在、立体覚
内側面寄り 下肢優位の運動・感覚障害 下肢支持性、立位、歩行、足部接地
外側面寄り 顔面・上肢優位の運動・感覚障害 上肢操作、手指巧緻性、顔面・口腔機能
広範囲・周辺領域 運動・感覚・高次脳機能の複合障害 ADL、歩行、安全性、認知・言語機能

症状の強さや分布がホムンクルスの説明と合わない場合は、内包、視床、脳幹、末梢神経など別の部位も含めて考えます。皮質の位置関係だけで症状を決めつけず、画像所見と神経学的所見を照合することが重要です。

臨床では場所・症状・動作の3段階で確認する

臨床では、画像上の場所を確認したあと、予想される症状と実際の動作を順に照合します。

一次運動野・一次感覚野を評価へつなげる3ステップ

  1. 場所を確認する:中心溝、中心前回、中心後回、内側面・外側面を確認する
  2. 症状を予測する:運動か感覚か、上肢優位か下肢優位かを考える
  3. 動作で照合する:検査所見を歩行、移乗、上肢操作、安全性と結びつける

療養病棟では、明らかな麻痺よりも、感覚障害による足部接地の不安定さや、手元を見続けないと物品を扱えない様子が問題になることがあります。筋力検査だけで終えず、視覚代償の有無や閉眼による変化も確認します。

運動・感覚・ADLを分けて確認する例
評価段階 確認項目 観察例
運動機能 随意性、筋力、分離性、速度、巧緻性 動かせるが遅い、指を個別に動かせない
感覚機能 触覚、位置覚、振動覚、識別感覚 刺激位置が分からない、関節位置を誤る
統合動作 立位、歩行、移乗、物品操作 足元を見続ける、物を落とす、閉眼で不安定になる

よくある失敗

最も多い失敗は、中心前回と中心後回を名前だけで暗記し、臨床症状と結びつけないことです。

  • 失敗1:中心溝を確認せず、中心前回と中心後回を取り違える
  • 失敗2:運動麻痺だけを評価し、位置覚や識別感覚を確認しない
  • 失敗3:ホムンクルスを境界の固定された地図として覚える
  • 失敗4:一次運動野の病変だけで麻痺の程度を説明しようとする
  • 失敗5:画像所見と歩行・上肢操作・ADLを照合しない

画像上の部位と症状が一致しない場合は、理解不足と決めつけるのではなく、病変範囲、皮質下経路、既往障害、評価条件を再確認します。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

一次運動野はどこにありますか?

一次運動野は中心溝の前にある中心前回に位置し、内側面では傍中心小葉前部へ続きます。解剖学的には主にBrodmann area 4に相当します。

一次感覚野はどこにありますか?

一次感覚野は中心溝の後ろにある中心後回に位置し、内側面では傍中心小葉後部へ続きます。より正確には一次体性感覚野と呼ばれ、主にBrodmann area 3a・3b・1・2から構成されます。

中心前回と中心後回の覚え方はありますか?

中心溝を基準に「前が運動、後ろが感覚」と覚えます。中心前回は一次運動野、中心後回は一次体性感覚野です。

一次運動野が障害されると必ず片麻痺になりますか?

必ず同じ程度の片麻痺になるわけではありません。随意運動や巧緻性の低下が中心となる場合もあり、症状は病変の大きさ、皮質下白質や皮質脊髄路への影響によって変わります。

一次感覚野の障害では何を評価しますか?

触覚や位置覚だけでなく、刺激部位の局在、二点識別、立体覚なども確認します。検査結果は、立位、歩行、上肢操作、視覚代償の有無と照合します。

まとめ

一次運動野は中心前回にあり、随意運動の出力に関わります。一次体性感覚野は中心後回にあり、身体から届く触覚や位置覚などの処理に関わります。中心溝を基準に「前が運動、後ろが感覚」と覚えるのが基本です。

ホムンクルスでは、内側に下肢、外側に上肢・手・顔面が配置されます。ただし、実際の皮質表現には重なりや個人差があります。臨床では、場所を確認し、症状を予測し、運動・感覚検査とADL動作を照合する順番で活用しましょう。

次の一手

一次運動野・一次感覚野の位置を理解したら、血管支配と他の皮質ランドマークを確認すると、脳画像と症状をさらに結びつけやすくなります。


参考文献

  1. Penfield W, Boldrey E. Somatic motor and sensory representation in the cerebral cortex of man as studied by electrical stimulation. Brain. 1937;60(4):389-443. doi:10.1093/brain/60.4.389
  2. Penfield W, Rasmussen T. The Cerebral Cortex of Man: A Clinical Study of Localization of Function. New York: Macmillan; 1950.
  3. Standring S, ed. Gray’s Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice. 42nd ed. Elsevier; 2020.
  4. Kandel ER, Koester JD, Mack SH, Siegelbaum SA, eds. Principles of Neural Science. 6th ed. McGraw Hill; 2021.
  5. Purves D, Augustine GJ, Fitzpatrick D, et al. The somatic sensory cortex. In: Neuroscience. 2nd ed. Sinauer Associates; 2001. NCBI Bookshelf
  6. Sanchez-Panchuelo RM, Besle J, Beckett A, Bowtell R, Schluppeck D, Francis S. Within-digit functional parcellation of Brodmann areas of the human primary somatosensory cortex using functional magnetic resonance imaging at 7 tesla. J Neurosci. 2012;32(45):15815-15822. doi:10.1523/JNEUROSCI.2501-12.2012

著者情報

この記事は、脳卒中認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、褥瘡・創傷ケア認定理学療法士の資格を持ち、療養病棟で脳卒中・高齢者リハに携わる理学療法士が執筆しています。画像診断そのものではなく、病変部位と運動・感覚・ADL評価を結びつけるための脳ランドマークとして整理しています。