DLCO(肺拡散能検査)とは?
DLCO(肺拡散能検査)とは、肺胞から血液へガスがどれくらい移動しやすいかをみる呼吸機能検査です。
日本語では「肺拡散能」と呼ばれ、英語では diffusing capacity of the lung for carbon monoxide と表現されます。検査では一酸化炭素を用いて、肺胞から肺毛細血管血液へのガス移動のしやすさを評価します。
ざっくり言うと、DLCOは「酸素を血液へ取り込む力を間接的にみる指標」です。
スパイロメトリーでは、肺活量や1秒率などから「空気を出し入れする力」を確認します。一方で、DLCOでは「肺胞まで届いた空気中のガスが、血液へ移動できているか」を確認します。
そのため、DLCOは間質性肺炎、肺気腫、肺血管障害、貧血などを考えるうえで重要な指標になります。
DLCO検査で何がわかる?
DLCOで主にわかるのは、肺胞と血液の間でガス交換がどれくらい行いやすいかです。
酸素は、肺胞から肺胞壁を通って血液中へ移動します。この移動が妨げられると、息を吸えていても血液中に酸素が取り込まれにくくなります。
| 視点 | 意味 | 考え方 |
|---|---|---|
| 肺胞の表面積 | ガス交換できる面積 | 肺気腫などで低下しやすい |
| 肺胞壁・間質 | ガスが通る膜の状態 | 間質性肺炎などで低下しやすい |
| 肺毛細血管血液量 | ガスを受け取る血液側の条件 | 肺血管障害や貧血で影響を受ける |
| ガス交換の余力 | 労作時の酸素化の余裕 | 息切れやSpO2低下と合わせてみる |
DLCOが低下している場合、肺胞の表面積が減っている、肺胞と血液の間の膜が厚くなっている、血液側の受け取り能力が低下している、などを考えます。
DLCOは、労作時息切れや低酸素血症の原因を考えるときにも役立ちます。
DLCOの正常値の考え方
DLCOは、年齢、性別、身長、ヘモグロビン値、喫煙状況、測定条件などの影響を受けます。
そのため、実測値そのものだけでなく、予測値に対する割合として%DLCOを見ることが一般的です。
| 項目 | 意味 | 見方 |
|---|---|---|
| DLCO | 肺拡散能の実測値 | ガス移動のしやすさを示す |
| %DLCO | 予測値に対する割合 | 低下の有無を判断しやすい |
| DLCO/VA | 肺胞気量で補正した値 | 肺容量の影響を考えるときに参考 |
一般に、%DLCOが低下している場合は、ガス交換能力の低下を疑います。ただし、検査施設や基準式によって表示や判定が異なることがあるため、検査結果票の基準範囲と合わせて確認します。
また、ヘモグロビン値が低いとDLCOは低く出やすくなります。貧血がある場合は、呼吸器だけの問題として見ないことが大切です。
DLCOが低下する原因
DLCO低下でまず考えたいのは、肺胞側、間質側、血管・血液側のどこでガス交換が妨げられているかです。
代表的な原因は次の通りです。

| 原因 | 起こること | 代表例 |
|---|---|---|
| 肺胞表面積の減少 | ガス交換できる面積が減る | 肺気腫、COPD |
| 間質の障害 | ガスが通る膜が厚くなる | 間質性肺炎、肺線維症 |
| 肺血管床の減少 | 血液側で受け取れる量が減る | 肺高血圧症、肺塞栓後 |
| ヘモグロビン低下 | 一酸化炭素を結合できる量が減る | 貧血 |
| 喫煙の影響 | 測定値に影響することがある | 喫煙、COHb上昇 |
DLCO低下は、間質性肺炎や肺気腫だけでなく、肺血管障害や貧血でも起こります。
そのため、DLCOが低い場合は「肺が硬いから」と単純に考えず、スパイロメトリー、画像所見、血液検査、症状を合わせて判断します。
肺気腫・COPDでDLCOが低下する理由
肺気腫では、肺胞壁が破壊され、ガス交換に使える肺胞表面積が減少します。
その結果、肺胞まで空気が入っていても、血液へガスを移動させる面積が少なくなり、DLCOが低下しやすくなります。
| 所見 | 意味 | 考え方 |
|---|---|---|
| 1秒率低下 | 息を吐き出しにくい | 閉塞性換気障害を疑う |
| DLCO低下 | ガス交換面積が減っている可能性 | 肺気腫性変化を考える |
| 労作時SpO2低下 | 運動時に酸素化が保ちにくい | 活動量・負荷量調整の参考 |
COPDでは、すべての症例でDLCOが大きく低下するわけではありません。気道病変が主体なのか、肺気腫性変化が強いのかによって、DLCOの見え方は変わります。
閉塞性換気障害の基本は、閉塞性換気障害の評価方法で整理しています。
間質性肺炎・肺線維症でDLCOが低下する理由
間質性肺炎や肺線維症では、肺胞の周囲にある間質が障害され、肺が硬くなったり、肺胞と血液の間の距離が広がったりします。
その結果、ガスが血液へ移動しにくくなり、DLCOが低下しやすくなります。
| 所見 | 意味 | 臨床で見る点 |
|---|---|---|
| %VC低下 | 肺が広がりにくい | 拘束性換気障害を疑う |
| DLCO低下 | ガス交換が低下している | 労作時低酸素に注意 |
| 労作時息切れ | 活動時に酸素需要が増える | 歩行・階段でSpO2を確認 |
| 画像所見 | 間質性変化の確認 | CT所見と合わせて判断 |
間質性肺疾患では、スパイロメトリーの変化が目立つ前にDLCO低下が問題になることもあります。
肺活量や%肺活量の基本は、肺活量・%肺活量の見方で確認できます。
肺血管障害・貧血でDLCOが低下する理由
DLCOは、肺胞側だけでなく、血液側の条件にも影響を受けます。
肺血管床が減少したり、肺毛細血管の血流が十分でなかったりすると、一酸化炭素を受け取る血液側の能力が低下し、DLCOが下がることがあります。
また、ヘモグロビンは一酸化炭素と結合するため、貧血があるとDLCOは低く出やすくなります。
| 要因 | DLCOへの影響 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 肺高血圧症 | 低下しやすい | 息切れ、心エコー、BNPなど |
| 肺塞栓後 | 低下することがある | 既往、画像、Dダイマーなど |
| 貧血 | 低く出やすい | Hb値、疲労感、息切れ |
| 喫煙 | 測定値に影響することがある | 喫煙歴、測定前条件 |
DLCO低下を見たときは、呼吸器疾患だけでなく、循環器・血液側の要因も視野に入れます。
DLCOが高値になることはある?
DLCOは低下が注目されやすい検査ですが、高値になることもあります。
代表的には、肺毛細血管血液量が増える状態や、ヘモグロビン量が多い状態などで高く出ることがあります。
| 状態 | 考え方 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 喘息 | 高値になることがある | 症状変動、可逆性、治療反応 |
| 多血症 | Hb量が多く影響する | 血液検査、Hb値 |
| 肺胞出血 | 一酸化炭素の取り込みが増えることがある | 喀血、画像、炎症所見 |
| 運動直後など | 肺血流量の変化が影響することがある | 測定条件、再現性 |
高値の場合も、DLCO単独で判断せず、症状や血液検査、画像所見、測定条件を確認します。
他の呼吸機能検査と組み合わせて見る
DLCOは、単独で病名を決めるための検査ではありません。
スパイロメトリー、肺活量、1秒率、フローボリューム曲線などと組み合わせることで、呼吸機能の全体像をつかみやすくなります。
| 組み合わせ | 考えやすい状態 | 例 |
|---|---|---|
| 1秒率低下+DLCO低下 | 閉塞性+ガス交換低下 | 肺気腫を伴うCOPDなど |
| %VC低下+DLCO低下 | 拘束性+ガス交換低下 | 間質性肺炎、肺線維症など |
| スパイロ正常+DLCO低下 | 早期病変や血管・血液側要因 | 早期間質性肺疾患、肺血管障害、貧血など |
| DLCO正常+1秒率低下 | 気道病変主体の可能性 | 喘息、慢性気管支炎など |
スパイロメトリー全体の読み方は、スパイロメトリーの評価方法と解釈も参考になります。
1秒率の基本は、1秒率(FEV1/FVC)の見方で整理しています。
リハビリ場面でDLCOを見るポイント
リハビリ場面では、DLCOの数値だけで運動可否を決めるのではなく、労作時の反応と合わせて考えることが重要です。
DLCOが低下している場合、安静時は問題が目立たなくても、歩行や階段などでSpO2が低下しやすいことがあります。
- 労作時息切れがあるか
- 歩行中にSpO2が低下するか
- 回復に時間がかかるか
- 会話しながら動けるか
- 階段や入浴で息切れが強いか
- 貧血や心疾患の影響がないか
| 場面 | 確認すること | 考え方 |
|---|---|---|
| 歩行 | SpO2、息切れ、歩行速度 | 距離・速度・休息を調整する |
| 階段 | 呼吸数、回復時間、下肢疲労 | 段数や休息間隔を調整する |
| ADL | 更衣・入浴時の息切れ | 座位動作や動作分割を検討する |
| 再評価 | 同じ条件でのSpO2変化 | 活動耐容能の変化を見る |
DLCO低下は、リハビリの中止基準そのものではありません。ただし、労作時低酸素や回復遅延がある場合は、負荷量や休息の入れ方を丁寧に調整します。
DLCOでよくある誤解
DLCOを見るときは、次のような誤解に注意します。
| 誤解 | 実際の考え方 |
|---|---|
| DLCO低下=間質性肺炎 | 肺気腫、肺血管障害、貧血などでも低下する |
| スパイロ正常なら問題ない | スパイロが大きく崩れる前にDLCOが低下することもある |
| DLCOだけで診断できる | 画像、血液検査、症状、他の呼吸機能検査と合わせて判断する |
| DLCOが低いと運動できない | 労作時SpO2や息切れを見ながら負荷量を調整する |
DLCOは重要な指標ですが、数値だけで判断せず、「なぜ低いのか」「生活動作でどう表れているか」を合わせて考えることが大切です。
まとめ
DLCO(肺拡散能検査)は、肺胞から血液へガスが移動しやすいかをみる検査です。
- DLCOはガス交換能力を間接的にみる指標
- 低下すると、肺気腫、間質性肺炎、肺血管障害、貧血などを考える
- 高値になることもあり、喘息、多血症、肺胞出血などを考える
- 1秒率や%肺活量と組み合わせると解釈しやすい
- リハでは労作時SpO2、息切れ、回復時間を見る
- DLCO単独ではなく、症状・画像・血液検査と合わせて判断する
DLCOを理解するポイントは、「空気を吸えるか」ではなく、「肺胞から血液へガスを渡せているか」を見ることです。
呼吸機能検査の数値を生活動作や労作時の反応とつなげることで、リハビリ場面でも評価の意味を理解しやすくなります。
よくある質問
DLCOとは何ですか?
DLCOとは、肺胞から血液へガスがどれくらい移動しやすいかをみる呼吸機能検査です。肺拡散能とも呼ばれます。
DLCOが低いと何を疑いますか?
肺気腫、間質性肺炎、肺線維症、肺血管障害、肺高血圧症、貧血、喫煙の影響などを考えます。DLCOだけで診断せず、症状、画像、血液検査、他の呼吸機能検査と合わせて判断します。
DLCOとスパイロメトリーは何が違いますか?
スパイロメトリーは、肺活量や1秒率などから空気の出し入れを評価します。DLCOは、肺胞から血液へガスが移動しやすいかを評価します。
DLCOが低いとリハビリは危険ですか?
DLCOが低いだけでリハビリが禁忌になるわけではありません。ただし、労作時SpO2低下、息切れ、回復遅延が出やすい場合があるため、負荷量や休息を調整します。
DLCOが高いこともありますか?
あります。喘息、多血症、肺胞出血などで高値になることがあります。高値の場合も、症状や血液検査、画像所見、測定条件と合わせて判断します。
参考文献
- Graham BL, Brusasco V, Burgos F, et al. 2017 ERS/ATS standards for single-breath carbon monoxide uptake in the lung. European Respiratory Journal. 2017.
- Stanojevic S, Kaminsky DA, Miller MR, et al. ERS/ATS technical standard on interpretive strategies for routine lung function tests. European Respiratory Journal. 2022.
- Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of COPD.
- 日本呼吸器学会肺生理専門委員会. 日本人のスパイログラム基準値に関するステートメント.

