- 急性期理学療法士の初期評価は「見る順番」が重要
- 急性期初期評価は「全部見る」より優先順位を決める
- 急性期PT初期評価シートPDF
- 評価漏れを防ぐ初回5分チェック
- 急性期理学療法士が確認する初期評価項目
- ①医師指示・治療内容・活動制限を確認する
- ②バイタル・呼吸状態・意識を評価する
- ③ライン・ドレーン・酸素療法を確認する
- ④疼痛・ROM・筋力・感覚を必要範囲で評価する
- ⑤基本動作は介助量と全身反応をセットで評価する
- ⑥介入後の反応まで評価して初期評価を完結させる
- 問題点・目標・次回評価をつなげる
- 初回介入では後回しにできる評価
- 新人PTが急性期初期評価で迷いやすいポイント
- 急性期初期評価の記録例
- 急性期理学療法士の初期評価でよくある質問
- 次の一手|安全性・動作・反応の順に整理する
- 参考文献
- 著者情報
急性期理学療法士の初期評価は「見る順番」が重要
急性期の初期評価では、ROMやMMTをすべて測定することよりも、医師の指示、安静度、荷重制限、呼吸循環動態、意識状態、ライン・ドレーン類を先に確認することが重要です。患者の状態が短時間で変化しやすいため、評価項目を埋めることではなく、当日に安全に実施できる動作範囲を判断し、介入後の反応まで記録する必要があります。
本記事では、新人理学療法士や急性期へ異動したPTに向けて、初期評価で確認したい項目、見る順番、後回しにできる評価、記録につなげるポイントを整理します。記事内では、確認項目をA4・1枚にまとめた「急性期PT初期評価シート」PDFも配布しています。
急性期の初期評価は、①指示と制限、②呼吸循環と意識、③デバイス、④身体機能、⑤基本動作、⑥介入後の反応の順に整理すると、評価漏れを防ぎやすくなります。
理学療法士の評価シート・現場ツール集では、急性期・回復期・療養病棟などで使える臨床ツールを順次整理しています。
急性期初期評価は「全部見る」より優先順位を決める
急性期では、身体機能を網羅的に測定することよりも、安全に介入できる条件がそろっているかを先に判断します。診断名が同じ患者でも、術後経過、循環動態、酸素療法、意識状態、疼痛、ライン・ドレーン類によって、その日に実施できる内容は異なります。
初回介入の目的は、すべての評価を完了することではありません。まず安全性と離床可能範囲を確認し、その日の介入で得られた情報を次回の評価へつなげます。

| 優先度 | 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 最優先 | 医師指示、安静度、禁忌、荷重・可動域制限 | 実施できる動作範囲を決めるため |
| 最優先 | バイタル、意識、呼吸状態、症状 | 介入開始時の安全性を判断するため |
| 最優先 | 点滴、酸素、ドレーン、カテーテル類 | 抜去、屈曲、牽引、接続外れを防ぐため |
| 優先 | 疼痛、ROM、筋力、感覚、運動麻痺 | 動作を阻害する要因を絞るため |
| 優先 | 寝返り、起き上がり、座位、立位、移乗 | 現在の介助量と病棟生活の可否を判断するため |
| 必要時 | 歩行速度、持久力、詳細なADL評価 | 全身状態が安定した後の予後予測や目標設定に使うため |
急性期PT初期評価シートPDF
急性期の初回介入で確認したい項目を、A4縦・1枚にまとめました。医師指示、活動制限、バイタル、意識、ライン・ドレーン、身体機能、基本動作、解釈、次回確認を、上から順に記入できます。
- 初回介入前の安全確認を整理
- チェック欄と手書き記入欄を確保
- 基本動作と介入時反応を記録
- 解釈・申し送り・次回確認まで整理
本シートは、情報収集と評価漏れ防止を補助する資料です。正式な診療録の代わりにはなりません。患者の状態、医師の指示、所属施設の開始・中止基準、個人情報管理の規定に従って使用してください。
評価漏れを防ぐ初回5分チェック
カルテを開いた直後から患者に触れるまでに、次の5項目を確認します。実際には5分以上必要な場合もありますが、確認する順番を固定しておくことで、重要な制限やデバイスを見落としにくくなります。
- 医師指示と治療内容
安静度、離床可否、荷重制限、術式、禁忌、当日の検査・処置予定を確認します。 - 現在の呼吸循環状態
血圧、脈拍、SpO₂、呼吸数、体温、酸素投与条件、直近の変化を確認します。 - 意識・症状・疼痛
覚醒、指示理解、せん妄の可能性、胸痛、呼吸苦、めまい、悪心、疼痛を確認します。 - ライン・ドレーン類
挿入部位、固定、長さ、排液、接続状態、移動可能範囲を確認します。 - 直前の病棟情報
看護師から、夜間の変化、排泄、食事、転倒、鎮痛薬使用、離床状況を確認します。
バイタルサインは重要ですが、患者ごとの基礎値、数値の推移、症状、薬剤、病態、運動負荷に対する反応を合わせて判断します。施設の開始基準・中止基準がある場合は、その運用を優先してください。
急性期理学療法士が確認する初期評価項目
初期評価は、情報収集、リスク管理、身体機能、基本動作、生活機能、介入後の反応に分けると整理しやすくなります。患者の状態に応じて、必要な項目から選択してください。
| 領域 | 主な確認項目 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 基本情報 | 診断、発症・受傷日、術式、既往歴、入院前生活 | 今回の機能低下と入院前からの問題を分ける |
| 指示・制限 | 安静度、離床範囲、荷重、可動域、装具、禁忌 | 曖昧な指示は介入前に確認する |
| 呼吸循環 | 血圧、脈拍、SpO₂、呼吸数、酸素、心電図、呼吸様式 | 安静時だけでなく負荷前後の変化を見る |
| 神経・認知 | 意識、指示理解、運動麻痺、感覚、せん妄徴候 | 安全行動と学習可能性を確認する |
| 身体機能 | 疼痛、ROM、筋力、筋緊張、浮腫、皮膚状態 | 動作を阻害する主要因に絞る |
| 基本動作 | 寝返り、起き上がり、座位、立位、移乗、歩行 | 介助量、症状、代償、バイタル反応を残す |
| 生活機能 | 食事、排泄、更衣、整容、病棟内移動 | 実際の病棟生活での介助量を確認する |
| 環境・退院 | 住環境、家族、介護力、仕事、福祉用具 | 早期から退院先と必要動作を意識する |
①医師指示・治療内容・活動制限を確認する
患者に触れる前に、診断名だけでなく、現在行われている治療と活動制限を確認します。特に術後患者では、術式、術後日数、荷重条件、関節運動の制限、創部、装具の着脱条件によって介入内容が変わります。
介入前に確認する項目
- 診断名、発症日、受傷日、手術日、術式
- 安静度、離床許可、病棟内の活動範囲
- 荷重制限、可動域制限、装具・固定の条件
- 禁忌動作、創部保護、体位制限
- 当日の手術、検査、透析、輸血、処置予定
- 鎮痛薬、降圧薬、昇圧薬、鎮静薬などの使用状況
- 採血、画像、心電図などの直近所見
「離床可」と記載されていても、どの範囲まで可能なのかが明確とは限りません。端座位まで、車椅子移乗まで、歩行可能など、必要な範囲を具体的に確認します。
入院前の生活機能を分けて把握する
現在の介助量だけでは、急性疾患による機能低下の程度を判断できません。入院前の歩行手段、ADL、認知機能、介護サービス、転倒歴を確認し、今回新たに生じた問題と以前からの問題を分けます。
入院前は屋内独歩、屋外は杖使用。ADL自立。今回の肺炎入院後、起き上がりに軽介助、立位でふらつきと呼吸数増加を認める。入院後の活動量低下と呼吸苦が基本動作低下に影響していると考える。
②バイタル・呼吸状態・意識を評価する
バイタルサインは、単回の測定値だけでなく、普段の値、直近の推移、体位変換や運動による変化を確認します。数値が基準範囲内でも、急な変化や症状を伴う場合は慎重な判断が必要です。
確認するバイタルと症状
- 血圧:基礎値、左右差、体位変換後の変化、降圧薬・昇圧薬との関係
- 脈拍:安静時値、リズム、運動負荷に対する増加、回復過程
- SpO₂:酸素投与条件、安静時値、会話・動作時の変化、回復時間
- 呼吸数:頻度、深さ、努力性呼吸、呼吸補助筋の使用
- 体温:発熱の推移、悪寒、感染徴候、運動耐容能への影響
- 自覚症状:胸痛、呼吸苦、動悸、めまい、悪心、冷汗、強い疲労
SpO₂だけを見て「呼吸状態は安定」と判断しないことも重要です。呼吸数の増加、会話の途切れ、努力性呼吸、表情、末梢冷感なども合わせて観察します。
意識・指示理解・せん妄徴候
意識レベルはJCSやGCSなど、施設で用いる方法に沿って記録します。ただし点数だけでなく、開眼、会話、指示理解、注意の持続、日内変動、危険行動の有無を確認します。
覚醒が不十分な患者やせん妄が疑われる患者では、立位能力があっても安全な離床が難しい場合があります。運動機能と安全行動を分けて評価してください。
| 場面 | 記録する内容 |
|---|---|
| 介入前 | 安静時値、酸素条件、症状、意識、当日の変化 |
| 体位変換後 | 血圧、脈拍、SpO₂、呼吸数、めまい、顔色 |
| 最高負荷時 | 実施動作、介助量、症状、最大変化 |
| 介入後 | 回復値、回復時間、残存症状、病棟への共有事項 |
③ライン・ドレーン・酸素療法を確認する
急性期では、患者の身体能力だけでなく、デバイスの配置によって動作方法と必要なスタッフ数が変わります。患者に接続されているものを列挙するだけではなく、挿入部位、固定状態、移動可能範囲、管理者を確認します。
確認したい主なデバイス
- 末梢静脈ライン、中心静脈カテーテル、PICC
- 酸素カニューレ、酸素マスク、人工呼吸器回路
- 胸腔・腹腔・胆道などのドレーン
- 尿道カテーテル
- 経鼻胃管、胃瘻、持続栄養ライン
- 心電図モニター、動脈ライン
- 創部陰圧閉鎖療法などの機器
離床前に、それぞれのルートがどちら側から出ているか、ベッドからどの程度離れられるか、クランプや設定変更が必要かを確認します。判断に迷う場合は、看護師や担当職種と役割分担を決めてから実施します。
立ち上がってから点滴台やドレーンの位置を直す、誰がデバイスを管理するか決めずに移乗を始める、酸素チューブの長さを確認せずに歩き出す、といった進め方は避けます。
④疼痛・ROM・筋力・感覚を必要範囲で評価する
身体機能評価は、すべての関節や筋を詳細に測定するのではなく、その日の基本動作を妨げる要因を見つける目的で行います。初回はスクリーニングを中心にし、必要な部位を次回以降に詳しく評価する方法が現実的です。
疼痛
疼痛の部位と強度だけでなく、安静時・動作時の違い、増悪動作、鎮痛薬使用後の変化、創部との関係を確認します。疼痛による防御性収縮や恐怖心が、筋力低下のように見えることがあります。
関節可動域
可動域制限がある場合は、疼痛、浮腫、固定、筋緊張、既存の拘縮など、原因を分けて考えます。術後の可動域制限や禁忌肢位がある患者では、測定よりも指示範囲を守ることを優先します。
筋力
MMTの段階を細かく決めることより、抗重力位で保持できるか、立ち上がりや立位保持に必要な出力があるか、左右差があるかを先に確認します。疼痛、呼吸苦、理解力、安静度によって最大努力が得られないことも記録します。
感覚・運動麻痺
脳卒中や神経疾患が疑われる場合は、運動麻痺、表在感覚、深部感覚、視野、失認、失行などを状態に応じて確認します。一般内科や術後患者でも、しびれや新たな左右差がないかをスクリーニングします。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 疼痛 | 右股関節術創部痛あり。安静時2、立ち上がり時5。荷重時に増悪。 |
| ROM | 右膝伸展制限あり。疼痛と術後腫脹の影響が考えられる。 |
| 筋力 | 両下肢は抗重力運動可能。右下肢は疼痛により十分な抵抗評価困難。 |
| 感覚 | 明らかな左右差なし。足底の接地感覚を確認できる。 |
⑤基本動作は介助量と全身反応をセットで評価する
基本動作では「できた・できない」だけでなく、必要な介助量、使用した環境、症状、代償動作、動作後のバイタル変化を記録します。同じ軽介助でも、筋力不足、疼痛、呼吸苦、注意障害では介助の意味が異なります。
寝返り・起き上がり
- ベッド柵や電動ベッド機能の使用
- 体幹・下肢の介助部位
- 疼痛、呼吸苦、めまいの出現
- ライン・ドレーンへの注意
- 動作後の座位保持能力
端座位
座位保持時間だけでなく、足底接地、体幹の傾き、上肢支持、覚醒状態、血圧変化、呼吸状態を確認します。初回は短時間から開始し、症状やバイタル変化を見ながら負荷を調整します。
立ち上がり・立位・移乗
立ち上がりでは、座面高、上肢支持、前方への重心移動、下肢荷重、介助部位を確認します。立位後は、膝折れ、ふらつき、荷重左右差、姿勢、症状を観察します。
移乗が可能でも、患者が一人で実施できるとは限りません。病棟で再現できる方法か、看護師や介護職が安全に介助できる方法かを確認し、必要な介助人数や福祉用具を共有します。
歩行
急性期初回の歩行では、距離や速度よりも、歩行開始の安全性、介助量、補助具、症状、バイタル反応、方向転換の安定性を優先します。
- 歩行補助具と酸素・点滴台の配置
- 開始時と歩行中の介助量
- 膝折れ、ふらつき、足部クリアランス
- 呼吸苦、疼痛、めまい、疲労
- 終了後の回復時間
端座位は見守りで5分保持可能。立ち上がりは前方から軽介助。歩行器を使用し、病室内5mを軽介助で歩行した。歩行中に呼吸数増加を認めたが、胸痛・めまいなし。着座後に呼吸状態は改善した。
⑥介入後の反応まで評価して初期評価を完結させる
急性期の初期評価は、動作を実施した時点では終わりません。介入後に呼吸循環状態が回復したか、疼痛や疲労が残っていないか、病棟生活へどのようにつなげるかを確認します。
介入後に確認する項目
- 血圧、脈拍、SpO₂、呼吸数の回復
- 胸痛、呼吸苦、めまい、悪心、疼痛の残存
- 覚醒度、表情、会話、疲労
- 創部、出血、ドレーン排液、ライン固定
- 離床後の座位姿勢とナースコールの位置
- 次の移動方法、介助人数、補助具
離床後に車椅子へ座って過ごす場合は、何分程度を目安とするか、誰がベッドへ戻すか、症状が出た場合の対応を病棟スタッフと共有します。
問題点・目標・次回評価をつなげる
初期評価で得られた情報は、問題点を並べるだけでなく、介入方針と再評価項目へつなげます。急性期では病状が変化しやすいため、長期目標だけでなく「次回何を確認するか」を具体的にしておくことが重要です。
問題点の整理方法
問題点は、次のように階層を分けると整理しやすくなります。
- 安全性に関する問題:血圧変動、呼吸苦、意識変動、ライン管理など
- 活動を妨げる問題:疼痛、筋力低下、運動麻痺、バランス低下など
- 病棟生活の問題:移乗介助、排泄動作、転倒リスク、離床不足など
- 退院に関する問題:歩行、階段、家族支援、住環境など
急性期で設定しやすい目標
- 安全に端座位を保持できる
- 病棟スタッフの介助で車椅子へ移乗できる
- 適切な補助具を用いて病室内を移動できる
- 離床時の症状とバイタル変化が軽減する
- 退院先で必要な移動能力を獲得する
起立時のめまいと血圧低下により歩行評価は未実施。次回は離床前後の水分・薬剤・血圧推移を確認し、段階的な座位・立位負荷に対する反応を再評価する。
初回介入では後回しにできる評価
患者の全身状態が不安定な場面や介入時間が限られる場面では、すべての評価を初回に実施する必要はありません。安全な離床と病棟で必要な動作の確認に直結しない項目は、状態が安定してから実施します。
| 初回に優先する | 状態安定後でもよい | 判断の考え方 |
|---|---|---|
| 医師指示、安静度、荷重制限 | 詳細な関節可動域測定 | 当日の活動範囲を先に決める |
| 呼吸循環、意識、症状 | 全筋群の詳細なMMT | 離床の安全性を優先する |
| 寝返り、起き上がり、移乗 | 歩行速度、TUG、6分間歩行 | まず病棟で必要な動作を確認する |
| 入院前の移動・ADL | 詳細な家屋評価 | 退院先の方向性が決まってから深める |
ただし、後回しにできる項目でも、その患者の治療方針や退院判断に直結する場合は優先度が上がります。固定的な順番ではなく、目的に応じて入れ替えてください。
新人PTが急性期初期評価で迷いやすいポイント
すべての評価を埋めようとする
評価用紙の空欄を埋めることが目的になると、医師指示や病態の変化など、優先すべき情報が薄くなります。初回は必要項目を選び、未評価の理由と次回の確認予定を残します。
バイタルの数値だけを見る
数値が一定範囲にあることだけで安全とは判断できません。基礎値からの変化、体位変換への反応、症状、呼吸様式、薬剤の影響を合わせて確認します。
デバイス確認を動作直前に行う
患者が起き上がってからラインの位置を確認すると、抜去や牽引の危険が高まります。ベッド上でデバイスの全体像を確認し、スタッフ間で役割を決めてから動作を開始します。
歩けた距離だけを記録する
歩行距離だけでは、次に誰がどのように介助すればよいか分かりません。補助具、介助量、症状、バイタル変化、方向転換、終了理由まで簡潔に記録します。
理学療法室内だけで評価を完結する
急性期では病棟生活への反映が重要です。移乗方法、トイレ移動、離床時間、必要な介助人数などを看護師や他職種と共有し、実際の生活場面で再現できる方法にします。
| 失敗 | 対策 |
|---|---|
| 評価項目を詰め込みすぎる | 安全性と当日の動作判断に必要な項目へ絞る |
| 安静時バイタルだけ記録する | 負荷前・負荷中・負荷後の変化を残す |
| 介助量だけを書く | 介助部位、症状、代償、環境も記録する |
| 未評価項目を放置する | 未実施理由と再評価予定を明記する |
| 病棟へ方法を共有しない | 移乗・歩行条件と中止時の対応を共有する |
急性期初期評価の記録例
記録では、所見を並べるだけでなく、安全性、動作能力、阻害要因、今後の方針が読み取れるようにします。
情報・安全性:肺炎にて入院3日目。酸素1L/分を鼻カニューレで投与中。安静度は病棟内離床可。介入前は意識清明、会話可能。安静時に強い呼吸苦なし。
身体機能:四肢は抗重力運動可能。明らかな左右差なし。下肢筋力低下と全身持久力低下を認める。疼痛なし。
基本動作:起き上がりは軽介助、端座位は見守り。立ち上がりは前方から軽介助。歩行器を使用し病室内5mを軽介助で歩行。歩行中に呼吸数増加と軽度呼吸苦を認めたため終了した。
解釈:入院後の活動量低下と呼吸器症状により、基本動作能力と運動耐容能が低下している。歩行は可能だが、呼吸状態の観察と介助が必要である。
計画:病棟内での離床機会を確保し、呼吸状態を確認しながら移乗・短距離歩行を継続する。次回は歩行負荷後の回復時間と病棟での移乗状況を再評価する。
急性期理学療法士の初期評価でよくある質問
初回介入でROMやMMTをすべて測定する必要がありますか?
必ずしもすべてを測定する必要はありません。まず安全性と基本動作に影響する部位をスクリーニングし、詳細評価が必要な部位を次回以降に測定します。術後制限や疼痛がある場合は、その条件を優先してください。
離床の開始・中止はバイタルの数値だけで判断できますか?
数値だけでは判断できません。基礎値からの変化、病態、薬剤、意識、呼吸様式、胸痛・めまい・呼吸苦などの症状を合わせて判断します。施設で定められた開始基準・中止基準がある場合は、その運用に従ってください。
初回から歩行評価まで行うべきですか?
患者の状態と目的によります。指示、呼吸循環、意識、デバイス、座位・立位能力を確認し、安全に実施できる条件がそろっていれば歩行を検討します。条件がそろわない場合は、端座位や移乗までの反応を評価し、次回へつなげます。
入院前ADLはなぜ最初に確認するのですか?
現在の機能低下が今回の疾患によるものか、以前から存在したものかを分けるためです。入院前の歩行手段、ADL、認知機能、介護サービスを把握すると、回復目標や退院支援を考えやすくなります。
評価シートを使えば診療録を書かなくてもよいですか?
評価シートは情報整理を補助するものであり、正式な診療録の代わりにはなりません。実施内容、患者の反応、評価結果、臨床判断、今後の方針は、所属施設の規定に従って記録してください。
次の一手|安全性・動作・反応の順に整理する
急性期の初期評価では、項目を網羅することよりも、当日の安全性と実施可能な動作範囲を判断することが重要です。まず医師指示と制限を確認し、呼吸循環・意識・デバイスを評価してから、必要な身体機能と基本動作へ進みます。
介入後は、バイタルや症状が回復したかを確認し、病棟での移動方法と次回の再評価項目を共有してください。未評価の項目があっても、理由と今後の予定が明確であれば、初回評価として整理できます。
急性期PT初期評価シートPDFを開く
参考文献
- 日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会.日本版重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023(J-ReCIP 2023).日本集中治療医学会雑誌.2023.
- Unoki T, et al. Japanese Clinical Practice Guidelines for Rehabilitation in Critically Ill Patients 2023. J Intensive Care. 2023.
- Hodgson CL, et al. Expert consensus and recommendations on safety criteria for active mobilization of mechanically ventilated critically ill adults. Crit Care. 2014;18:658.
- Schaller SJ, et al. Guideline on positioning and early mobilisation in the critically ill by an expert panel. 2024.
本記事と配布シートは、急性期理学療法の一般的な初期評価を整理したものであり、個別患者の離床可否や治療内容を一律に決めるものではありません。医師の指示、病態、所属施設の基準、多職種との協議を優先してください。
著者情報
rehabilikunblog編集部
療養病院で勤務する理学療法士が、臨床現場での評価、記録、リスク管理、新人教育に活用しやすい情報を発信しています。急性期から回復期、療養病棟まで、病期ごとの目的に合った評価方法と現場ツールを整理します。
