- 歩行中に膝折れしたら転倒を防いで歩行を中止する
- 歩行中に膝折れした直後は安全な姿勢へ誘導する
- 最初の30秒で急な状態変化と外傷の有無を確認する
- 膝折れが起きる場面から原因を考える
- 膝折れの原因は筋力・疼痛・感覚・装具・全身状態から整理する
- 評価は安全確保後に動作・身体機能・用具・環境の順で進める
- 安全な介助は膝折れする側と方向を予測して行う
- 意識変化・胸痛・急な麻痺・支持不能があれば歩行を中止する
- 再歩行は原因と条件を修正してから短距離で行う
- 記録は膝折れした場面・脚・対応・結果を残す
- 膝折れへの対応でよくある失敗
- 歩行中の膝折れに関するよくある質問
- 次の一手は膝折れした場面を特定して介助条件を統一すること
- 参考文献
- 著者情報
歩行中に膝折れしたら転倒を防いで歩行を中止する
歩行中に患者の膝が急に折れた場合は、原因を考える前に身体を支え、転倒を防ぐことが最優先です。膝折れは、大腿四頭筋の筋力低下だけでなく、疼痛、感覚障害、疲労、起立性低血圧、装具の不適合、足部位置、新たな神経症状など、さまざまな要因によって起こります。
膝折れした直後に「もう一度歩いて確認しよう」と同じ条件で歩行を繰り返すと、転倒や外傷につながる可能性があります。まず安全な椅子・車椅子・ベッドへ誘導し、意識、呼吸、循環、疼痛、神経症状を確認したうえで、膝折れが起きた場面から原因を切り分けます。
この記事では、歩行中に膝折れした患者への初期対応、最初の30秒で確認すること、原因の見分け方、安全な介助方法、歩行の中止基準、再評価、記録・申し送り例までを臨床の流れに沿って解説します。
この記事の結論
- 膝折れしたら歩行を止め、転倒を防ぐ
- 急な意識・呼吸・循環・神経症状の変化を確認する
- 膝折れが起きた場面とタイミングから原因を考える
- 筋力だけでなく、疼痛・感覚・装具・環境も確認する
- 再歩行は条件を変更し、安全性を確認しながら行う
なお、膝折れは診断名ではなく、歩行中に下肢の支持性が失われて膝関節が急に屈曲する現象です。「膝が抜けた」「急に座り込みそうになった」と表現される場合もあります。膝関節だけに注目せず、股関節、足関節、体幹、全身状態を含めて評価することが重要です。
歩行中に膝折れした直後は安全な姿勢へ誘導する
膝折れを認めたら、その場で歩行を継続させず、患者の体幹や骨盤に近い位置を支持します。近くに椅子や車椅子がある場合は、安全を確認しながら誘導します。
膝折れが反復している、急に両下肢の支持性が失われた、意識や会話に変化がある場合は、介助者一人で歩かせ続けてはいけません。安全な座位または臥位を確保し、必要に応じて応援を要請します。
膝折れ直後に行う5つの対応
- 患者を支える:上肢だけを引かず、体幹・骨盤に近い位置で支持する
- 歩行を止める:惰性で歩かせず、その場で安全を確保する
- 安全な姿勢へ移す:椅子、車椅子、ベッドなどへ誘導する
- 急な変化を確認する:意識、呼吸、循環、疼痛、神経症状を見る
- 起きた場面を整理する:どちらの脚で、いつ、何歩目に起きたかを確認する
注意:膝折れを止めようとして患者の腋窩や上肢を強く引くと、肩関節への負担や介助者の腰痛につながります。一人で支持しきれない場合は、無理に立位を保たせず、周囲のスタッフへ応援を求めます。
最初の30秒で急な状態変化と外傷の有無を確認する
膝折れが起きた直後は、詳細な筋力評価より先に、歩行を中止して緊急対応につなげる状態かを確認します。特に、昨日まで安定して歩けていた患者が急に膝折れした場合は、単純な筋力低下と決めつけてはいけません。
| 確認項目 | 見る内容 | 注意したい変化 |
|---|---|---|
| 意識・会話 | 呼びかけへの反応、理解、受け答え | 反応低下、急な混乱、会話が成立しない |
| 顔色・発汗 | 蒼白、冷汗、苦悶様表情 | 普段と異なる顔色、冷汗、失神前症状 |
| 呼吸・胸部症状 | 呼吸苦、胸痛、動悸、会話時の息切れ | 強い呼吸苦、胸部圧迫感、会話困難 |
| 神経症状 | 麻痺、脱力、構音、顔面の左右差 | 新たな片麻痺、呂律困難、急な支持不能 |
| 疼痛 | 股関節、膝、足部、腰部の痛み | 急な強い痛み、荷重不能、外傷が疑われる痛み |
| 下肢支持性 | 左右どちらの膝が折れたか、反復の有無 | 両側性、反復、完全な支持不能 |
| 装具・補助具 | 装着位置、ベルト、ロック、杖・歩行器 | 破損、緩み、ロック不良、高さ不適合 |
| 歩行環境 | 床面、段差、障害物、履物 | 濡れた床、足部の滑り、履物の脱落 |
胸痛、強い呼吸苦、新たな麻痺、意識変化、荷重不能となる強い疼痛を伴う場合は、歩行を再開せず、施設の緊急対応手順に沿って報告します。
膝折れが起きる場面から原因を考える
膝折れを評価するときは、「膝が折れた」という結果だけでなく、いつ、どの脚で、どの動作中に起きたかを確認します。初期接地直後、荷重応答期、立脚中期、方向転換時、歩行後半では、考えられる要因が異なります。

| 起きる場面 | 考えられる要因 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 初期接地直後 | 疼痛、急な筋力低下、荷重への恐怖 | 疼痛部位、足部接地、荷重の可否 |
| 荷重応答期 | 膝伸展支持性低下、感覚障害、装具不適合 | 膝伸展保持、足底感覚、装具の状態 |
| 立脚中期 | 下肢・体幹の支持性低下、バランス障害 | 骨盤・体幹動揺、股関節支持性 |
| 方向転換時 | 足部位置不良、注意配分低下、動的バランス低下 | 回転方法、歩数、補助具の操作 |
| 歩行後半のみ | 筋疲労、持久力低下、疼痛の増悪 | 出現距離、疲労、呼吸・循環反応 |
| 毎回同じ脚 | 片側筋力低下、疼痛、感覚障害、装具 | 左右差、荷重時痛、装具の適合 |
| 起きる脚や場面が一定しない | 全身状態、注意低下、循環変動、環境 | 意識、血圧、疲労、床面、介助条件 |
初期接地直後の膝折れは疼痛と足部接地を確認する
足を床へ接地した直後に膝折れする場合は、股関節・膝関節・足部の疼痛や、荷重への恐怖が関係している可能性があります。膝だけでなく、股関節痛や足部痛によって患側への荷重を避けた結果、膝折れに見える動きが起きることもあります。
疼痛部位、発症時期、腫脹、熱感、外傷歴、荷重時の表情を確認します。急な強い疼痛や荷重不能がある場合は、歩行練習を継続せず、必要な診察につなげます。
荷重応答期の膝折れは膝伸展支持性と感覚を確認する
体重が支持脚へ移った瞬間に膝折れする場合は、膝伸展筋群の支持性低下だけでなく、足底感覚や位置覚の低下も考えます。患者が「足に力が入っているか分からない」「どこに足があるか分からない」と訴える場合は、感覚障害を含めた評価が必要です。
AFOやKAFOを使用している患者では、装着位置、ベルトの緩み、継手やロック、靴との適合を確認します。装具を装着しているだけで安全と判断せず、膝折れが起きた時点の装具状態を確認してください。
立脚中期の膝折れは股関節・体幹の支持性も確認する
立脚中期では、支持脚上に身体を保持しながら反対側の脚を振り出す必要があります。大腿四頭筋だけでなく、股関節周囲筋や体幹機能が低下していると、骨盤・体幹が大きく動揺し、膝の支持性を保てない場合があります。
膝関節の動きだけでなく、体幹の側方傾斜、骨盤下制、歩隔、上肢での過度な支持を観察します。
方向転換時の膝折れは足の踏み替えと補助具操作を確認する
方向転換では、重心移動、足の踏み替え、補助具操作を同時に行います。足を交差させる、支持脚を軸に急旋回する、歩行器を身体から離した状態で向きを変えると、支持性を失いやすくなります。
方向転換時に膝折れする場合は、小さな歩幅で複数歩に分けて回る、歩行器と身体の位置関係を整える、声かけを一工程ずつにするなど、動作条件を単純化します。
歩行後半の膝折れは出現距離と疲労を確認する
歩き始めは安定していても、一定距離を歩いた後に膝折れする場合は、筋疲労や全身持久力低下が関係している可能性があります。
「病棟まで歩けたか」だけでなく、何m付近から歩幅が短くなったか、上肢支持が増えたか、介助量が変化したかを記録します。休憩によって改善するかも、負荷量を設定する重要な情報です。
膝折れの原因は筋力・疼痛・感覚・装具・全身状態から整理する
膝折れの原因は一つとは限りません。高齢患者や複数疾患を持つ患者では、筋力低下、疼痛、感覚障害、装具の不適合、疲労などが重なっていることがあります。
| 原因 | 特徴 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 膝伸展筋力・支持性低下 | 荷重時に膝を保持できない | MMT、立ち上がり、段差、反復による変化 |
| 股関節・体幹機能低下 | 骨盤・体幹動揺を伴う | 片脚支持、骨盤、体幹の位置 |
| 疼痛 | 荷重直後に逃避的に膝が曲がる | 疼痛部位、荷重との関係、腫脹・熱感 |
| 感覚障害 | 足底接地や膝位置を認識しにくい | 表在感覚、位置覚、荷重感覚 |
| 関節可動域・アライメント | 膝伸展不足、足関節位置の影響 | 膝伸展、足関節背屈、立位姿勢 |
| 装具不適合 | 装着時のみ、特定の靴で悪化する | ベルト、継手、ロック、高さ、靴との適合 |
| 疲労・持久力低下 | 歩行後半に出現しやすい | 歩行距離、休憩、呼吸・循環反応 |
| 循環・全身状態 | 両脚の脱力、めまい、冷汗を伴う | 血圧、脈拍、意識、食事・水分、発熱 |
| 新たな神経症状 | 急な麻痺・脱力・運動失調 | 左右差、構音、顔面、上肢症状 |
評価は安全確保後に動作・身体機能・用具・環境の順で進める
膝折れ後の評価では、再び危険な歩行を行って現象を再現することが目的ではありません。安全に確認できる範囲で、膝折れが起きた条件を整理し、再発を防ぐための情報を集めます。
評価の基本的な流れ
- 普段との差を確認する:前回の歩行状態や病棟での介助量と比較する
- 膝折れした場面を特定する:歩き始め、立脚中期、方向転換、歩行後半などに分ける
- 症状と全身状態を見る:疼痛、めまい、呼吸苦、バイタル、神経症状を確認する
- 身体機能を確認する:筋力、感覚、関節可動域、バランスを見る
- 装具・補助具を確認する:適合、破損、高さ、操作方法を見る
- 環境を確認する:床面、履物、障害物、歩行経路を見る
- 条件を下げて再評価する:必要な場合のみ高い介助量・短距離で確認する
動作評価では膝折れの直前に起きた変化を見る
膝折れそのものだけでなく、直前の変化を観察します。
- 歩幅が急に短くなっていないか
- 体幹が前方・側方へ大きく傾いていないか
- 足部がつまずいていないか
- 歩行器を身体から離していないか
- 支持脚への荷重を避けていないか
- 上肢支持が急に増えていないか
- 会話や注意課題で歩行が変化していないか
筋力はMMTだけでなく荷重場面での支持性を見る
MMTは重要ですが、非荷重位で発揮できる筋力と、歩行中に身体を支える能力は同じではありません。立ち上がり、立位保持、軽い荷重移動など、安全な課題で支持性を確認します。
疼痛や感覚障害がある場合は、筋力が保たれていても歩行中に膝を保持できないことがあります。MMTの数値だけで歩行再開を判断しないことが重要です。
感覚は足底と膝関節の位置認識を確認する
足底感覚や位置覚が低下していると、患者自身が荷重の程度や膝関節の位置を把握できません。閉眼での評価や高難度の課題を無理に追加せず、安全な座位・臥位で左右差を確認します。
装具は装着状態・継手・靴まで確認する
AFOやKAFOを使用している場合は、次の項目を確認します。
- 踵が装具の奥まで入っているか
- ベルトの締め方と順序が適切か
- 継手・ロックが正しく作動するか
- 装具に亀裂や変形がないか
- 靴のサイズと装具が適合しているか
- 足部が装具内でずれていないか
- 装着前後で膝折れの出方が変化するか
装具の調整や修理が必要と考えられる場合は、その場で無理な変更を行わず、義肢装具士や担当者へ相談します。
安全な介助は膝折れする側と方向を予測して行う
膝折れがある患者の歩行介助では、強く抱えることよりも、どちらの脚が、どの場面で、どの方向へ崩れるかを予測することが重要です。
介助者は膝折れする側を支持できる位置に立つ
基本的には患者の斜め後方に位置し、膝折れしやすい側の骨盤・体幹と下肢を支持できる位置を選びます。患者の体格、麻痺側、補助具、歩行経路によって介助位置を調整します。
膝だけを前方から押さえると、体幹や骨盤の崩れに対応できない場合があります。膝折れと同時に体幹が前方・側方へ崩れる患者では、骨盤と体幹を含めて支持します。
補助具は患者が操作できるかを含めて選ぶ
杖から歩行器へ変更すると支持基底面は広がりますが、歩行器を過度に前へ押す、方向転換で足と歩行器が交差する場合は、かえって危険になることがあります。
補助具を変更する際は、次の項目を確認します。
- 補助具の高さが合っているか
- 歩行器を身体から離しすぎないか
- 杖の使用側が適切か
- 方向転換を安全に行えるか
- ブレーキや前輪を操作できるか
- 上肢支持に頼りすぎて疲労していないか
介助量は膝折れ後に一段階高く設定する
見守りで歩いていた患者に膝折れが起きた場合は、同じ見守り条件で再開しません。軽介助、二人介助、歩行器、車椅子追従など、安全側へ条件を変更します。
介助者一人で膝折れと体幹の崩れを制御できない場合は、歩行練習を中止し、二人介助や移乗機器を検討します。
歩行距離と速度を下げて再評価する
疲労に伴う膝折れでは、歩行距離を短くし、休憩を早めに設定します。方向転換や障害物、二重課題は一度外し、直線・短距離から反応を確認します。
介助の判断:「歩かせられるか」ではなく、膝折れが起きたときに安全に支持し、椅子や車椅子へ戻せるかで介助量を判断します。
意識変化・胸痛・急な麻痺・支持不能があれば歩行を中止する
膝折れが起きた後の歩行継続は、膝の状態だけでなく、症状、全身状態、普段との差、施設基準を合わせて判断します。
| 分類 | 主なサイン | 初期対応 |
|---|---|---|
| 意識 | 反応低下、失神、急な混乱、会話困難 | 歩行中止、安全な姿勢を確保して応援を呼ぶ |
| 循環 | 胸痛、強い動悸、冷汗、蒼白、強いめまい | 安静、バイタル確認、施設手順に沿って報告 |
| 呼吸 | 強い呼吸苦、チアノーゼ、会話困難 | 安静を確保し、呼吸状態を確認する |
| 神経 | 新たな麻痺、構音障害、顔面の左右差、急な失調 | 再歩行させず、緊急評価につなげる |
| 運動 | 反復する膝折れ、両下肢の支持不能、介助で制御できない | 歩行中止、車椅子移動や介助方法を再検討する |
| 疼痛 | 急な強い疼痛、荷重不能、外傷が疑われる | 荷重を中止し、必要な診察へつなげる |
| 装具・用具 | 装具破損、ロック不良、歩行器の故障 | 使用を中止し、安全な代替手段へ変更する |
数値が施設基準内であっても、胸痛、意識変化、新たな神経症状、強い呼吸苦、支持不能がある場合は歩行を継続しません。
再歩行は原因と条件を修正してから短距離で行う
膝折れ後に再歩行を行う場合は、同じ条件で繰り返してはいけません。介助量、補助具、装具、距離、速度、歩行経路などを変更し、短距離から安全性を確認します。
再歩行前の確認項目
- 意識と会話が普段の状態である
- 胸痛、めまい、強い呼吸苦がない
- 急な麻痺や支持不能がない
- 荷重不能となる疼痛がない
- 装具と補助具に破損・装着不良がない
- 必要な介助者数を確保している
- 短距離・低速度・単純な経路へ変更している
- 椅子や車椅子へすぐ戻れる環境を確保している
| 確認された問題 | 変更する条件 | 再評価する内容 |
|---|---|---|
| 歩行後半に膝折れ | 距離を短くし、早めに休憩する | 膝折れが出現する距離と介助量 |
| 方向転換で膝折れ | 小刻みな複数歩で回る | 足部位置と補助具操作 |
| 装具がずれている | 安全な座位で正しく再装着する | 装具装着後の支持性 |
| 歩行器が遠い | 身体との距離を調整する | 体幹前傾と上肢支持 |
| 一人介助では制御困難 | 二人介助または車椅子移動へ変更する | 患者・介助者双方の安全性 |
| 強い疼痛・急な脱力 | 再歩行を行わず報告する | 診察・全身状態の評価を優先する |
記録は膝折れした場面・脚・対応・結果を残す
「歩行中に膝折れあり」とだけ記録しても、次の担当者は危険な場面や必要な介助方法を判断できません。どちらの脚で、どの場面で、何m歩いた後に起きたかを具体的に記録します。
| 項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| 歩行条件 | 補助具、装具、介助量、履物、歩行場所 |
| 出現場面 | 歩き始め、立脚中期、方向転換、歩行後半 |
| 患側・方向 | 右・左・両側、体幹が崩れた方向 |
| 具体的所見 | 反復回数、疼痛、つまずき、足部位置、疲労 |
| 症状・全身状態 | めまい、胸痛、息切れ、意識、バイタル |
| 対応 | 歩行中止、休憩、介助量・補助具・装具の変更 |
| 結果 | 再歩行の可否、再発の有無、次回の安全条件 |
記録例
記録例:AFO・四点杖を使用し、左後方軽介助で病棟歩行を実施。開始時は安定していたが、約12mの方向転換時に左荷重応答期で膝折れを認めた。介助により転倒を回避し、椅子へ誘導した。意識・会話に変化なく、胸痛・めまいなし。左膝痛は認めず、AFOの踵部に軽度の浮きを認めたため再装着した。歩行器・二人介助・直線5mへ条件変更したが、左膝折れが再度出現したため歩行を終了。病棟移動は車椅子とし、医師・看護師へ状態変化を共有した。
申し送り例
現在の移動方法:本日は車椅子移動です。
危険場面:方向転換と左脚への荷重時に膝折れが出ます。
介助方法:立位・移乗時は左膝と骨盤を支持し、二人介助で行ってください。
中止条件:再度の膝折れ、急な疼痛、めまい、脱力があれば立位・歩行を中止して共有してください。
膝折れへの対応でよくある失敗
膝折れを大腿四頭筋の筋力低下だけで説明すると、疼痛、感覚障害、装具、全身状態などの原因を見落とす可能性があります。
| よくある失敗 | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 同じ条件ですぐ再歩行する | 膝折れが再発し、転倒につながる | 原因と条件を修正してから短距離で確認する |
| 筋力低下と決めつける | 疼痛、感覚、循環、神経症状を見落とす | 普段との差と急な症状を先に確認する |
| 膝だけを見る | 股関節・体幹・足部の問題を見落とす | 全身のアライメントと支持性を観察する |
| 装具を確認しない | 装着不良や破損による不安定性が残る | 踵・ベルト・継手・靴を確認する |
| 歩けた距離だけを記録する | 膝折れが出る条件を共有できない | 出現距離・場面・脚・介助量を記録する |
| 一人介助で歩行を続ける | 患者と介助者双方が転倒する危険がある | 二人介助、車椅子、移乗機器へ変更する |
| 患者の上肢を強く引く | 肩関節への負担が大きく体幹を制御できない | 骨盤・体幹に近い位置を支持する |
歩行中の膝折れに関するよくある質問
Q1.膝折れは大腿四頭筋の筋力低下が原因ですか?
大腿四頭筋の支持性低下は代表的な要因ですが、それだけではありません。疼痛、感覚障害、股関節・体幹機能、足部位置、装具不適合、疲労、循環変動、新たな神経症状も確認します。
Q2.膝折れが1回だけなら歩行を続けてもよいですか?
一度歩行を止め、安全な姿勢で状態を確認します。軽微に見えても、急な変化や新たな症状がある場合は再歩行しません。原因を整理でき、赤旗がなく、介助量や条件を安全側へ変更できる場合のみ短距離で再評価します。
Q3.膝折れがある側の膝を前から押さえれば安全ですか?
膝の支持だけでは、体幹や骨盤の崩れに対応できない場合があります。膝折れが起きる側と崩れる方向を予測し、骨盤・体幹を含めて支持します。一人で制御できない場合は二人介助や別の移動方法へ変更します。
Q4.AFOを使用していても膝折れは起こりますか?
起こる可能性があります。装具の設定や適合、踵の浮き、ベルトの緩み、足関節角度、靴との相性によって膝の動きが変化します。装具の有無だけでなく、装着状態と歩行中の反応を確認します。
Q5.歩行後半だけ膝折れする場合はどう対応しますか?
筋疲労や全身持久力低下を疑い、出現距離、歩行速度、休憩前後の変化、呼吸・循環反応を確認します。距離を短くし、休憩を早め、必要に応じて介助量や補助具を変更します。
Q6.病棟スタッフには何を共有すればよいですか?
現在の移動方法、膝折れする脚、出現する場面、必要な介助者数、使用する装具・補助具、介助者の位置、中止条件を共有します。「膝折れあり」だけでなく、同じ対応を再現できる具体的な表現にします。
次の一手は膝折れした場面を特定して介助条件を統一すること
歩行中に膝折れしたら、まず歩行を止め、患者を安全な姿勢へ誘導します。その後、意識、呼吸、循環、神経症状、疼痛を確認し、歩き始め、荷重応答期、立脚中期、方向転換、歩行後半のどこで膝折れしたかを整理します。
筋力低下だけでなく、疼痛、感覚障害、装具不適合、足部位置、疲労、全身状態を確認し、再歩行する場合は介助量・補助具・距離・速度を安全側へ変更します。記録と申し送りでは、膝折れした脚と場面、変更した条件、再評価の結果まで残すことが重要です。
膝折れ以外のふらつきや体幹動揺を含めた対応は、歩行時にふらつく患者への対応|原因・評価・安全な介助・中止基準で詳しく解説しています。
参考文献
- Perry J, Burnfield JM. Gait Analysis: Normal and Pathological Function. 2nd ed. Thorofare, NJ: SLACK Incorporated; 2010.
- Neumann DA. Kinesiology of the Musculoskeletal System: Foundations for Rehabilitation. 3rd ed. St Louis: Elsevier; 2017.
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- Montero-Odasso M, van der Velde N, Martin FC, et al. World guidelines for falls prevention and management for older adults: a global initiative. Age Ageing. 2022;51(9):afac205. doi:10.1093/ageing/afac205
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著者情報
rehabilikunblog編集部
理学療法士が、病院・施設で実践しやすい評価、臨床判断、介助方法、制度・実務情報を整理しています。本記事は医療・介護専門職への情報提供を目的としており、個々の患者に対する診断や治療、所属施設の緊急対応手順を代替するものではありません。患者の基礎疾患、医師の指示、装具の個別設定、施設基準を優先してください。
