膝内側側副靱帯(MCL)はどこ?触診方法・浅層と深層の違い・外反ストレステスト

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膝内側側副靱帯(MCL)はどこ?位置・走行と触診方法

膝内側側副靱帯(medial collateral ligament:MCL)は、膝関節内側に位置し、主に外反ストレスに対する安定性を担う靱帯です。浅層MCLは大腿骨内側上顆の近位後方付近から脛骨内側へ走行し、深層MCLは関節包や内側半月板と密接に関連します。

触診では、大腿骨内側上顆・内側関節裂隙・脛骨内側を基準に、浅層MCLの走行を推定します。ただし、膝内側の圧痛だけでMCL損傷を確定することはできません。

この記事では、新人PT・OT向けに、MCLの解剖と触診手順、鵞足・内側半月板との違い、外反ストレステスト、急性膝外傷の安全確認、臨床記録例を解説します。

解剖ランドマークを体系的に確認したい方へ

骨性指標から靱帯や腱の走行を理解したい場合は、解剖ライブラリも参考にしてください。膝内側の触診に必要な位置関係を整理する際に役立ちます。

MCLの位置と付着部|浅層・深層の違い

MCLは単一の帯状構造として捉えるだけでなく、浅層MCLと深層MCLに分けて理解することが重要です。さらに、膝後内側には後斜靱帯(POL)などの支持機構があります。

膝内側側副靱帯(MCL)の解剖と触診位置を示す図。右膝内側の浅層MCL、深層MCL、内側半月板、内側関節裂隙、大腿骨内側上顆、脛骨側付着部、鵞足部の位置関係と、触診ランドマークをまとめた模式図。
膝内側側副靱帯(MCL)の解剖と触診位置。浅層MCL(青)と深層MCL(橙)の位置関係、内側関節裂隙、脛骨側付着部、鵞足部を示しています。付着部の距離はLaPradeら(2007)の解剖学的報告に基づく平均値です。図は模式的な位置関係を示したもので、靱帯の正確な形態・深さ・付着範囲を再現したものではありません。体表から深層MCLを直接同定したり、ミリ単位で付着部を特定したりできることを意味しません。
構造 位置・特徴 主な役割
浅層MCL(sMCL) 大腿骨内側上顆近傍から脛骨内側へ走行。脛骨側に近位・遠位の付着を持つ 外反ストレスに対する主要な制動
深層MCL(dMCL) 浅層MCLの深部にあり、半月大腿靱帯部と半月脛骨靱帯部から構成される 外反・脛骨外旋などの制動に関与
後斜靱帯(POL) 膝後内側の関節包と関連する靱帯性構造 伸展位での外反・回旋安定性に関与

浅層MCLの大腿骨側付着部

LaPradeらの解剖学研究では、浅層MCLの大腿骨側付着部は、内側上顆を基準として平均3.2mm近位、4.8mm後方に位置すると報告されています。

つまり、浅層MCLの大腿骨側付着部は内側上顆そのものの中心ではなく、やや近位後方にあります。

ただし、この数値は解剖標本で測定された平均値です。生体の体表からミリ単位で正確に触診できることを意味するものではありません。

浅層MCLの脛骨側付着部

浅層MCLには、脛骨側に近位付着部と遠位付着部があります。

付着部 解剖学的な位置
近位付着部 関節裂隙から平均約12.2mm遠位。主に半膜様筋腱の前方への延長部付近の軟部組織と関連する
遠位付着部 関節裂隙から平均約61.2mm遠位の脛骨内側

これらはLaPradeらの研究に基づく解剖学的な位置関係です。体格や個体差があるため、触診では数値だけを頼りにせず、骨性指標と周囲軟部組織を確認します。

深層MCLは直接触診できる?

深層MCLは浅層MCLの深部に位置し、内側半月板や関節包と密接に関連します。半月大腿靱帯部と半月脛骨靱帯部に分けられますが、体表から両者を直接分離して同定することは困難です。

内側関節裂隙に圧痛がある場合も、深層MCL、内側半月板、関節包など複数の構造が関与する可能性があります。

MCLの触診方法|5ステップで確認する

MCLの触診では、内側上顆と内側関節裂隙を先に確認し、浅層MCLの推定走行を近位から遠位へ追います。目的は靱帯の正確な境界を同定することではなく、疼痛部位と周囲構造の位置関係を整理することです。

ステップ1:安楽な体位を設定する

背臥位または座位で下肢を支持し、膝を軽度屈曲させます。急性外傷後や疼痛が強い場合は、無理に膝を曲げず、患者が保持できる肢位を優先します。

ステップ2:大腿骨内側上顆を確認する

膝内側の大腿骨遠位部を触れ、内側上顆の位置を確認します。近傍には内転筋結節などの骨性隆起もあるため、触れた隆起をすべて内側上顆と判断しないよう注意します。

ステップ3:内側関節裂隙を確認する

大腿骨内側顆と脛骨内側関節面の間を確認します。関節裂隙は、浅層MCLの中間部や内側半月板との位置関係を整理する基準になります。

急性期に強い骨圧痛がある場合は、繰り返し圧迫せず、骨折などの評価を優先してください。

ステップ4:浅層MCLの走行を推定する

内側上顆のやや近位後方から、関節裂隙をまたいで脛骨内側へ向かう領域を確認します。

近位部・関節裂隙付近・遠位部に分けて触診すると、疼痛部位を記録しやすくなります。ただし、浅層MCLの線維をすべて指先で明瞭に識別できるわけではありません。

ステップ5:圧痛と周囲所見を記録する

軽い圧で圧痛を確認し、患者が普段感じている痛みと一致するかを尋ねます。必要に応じて、腫脹、熱感、皮下出血、左右差、関節可動域も確認します。

強い圧迫や外反ストレスを加えて痛みを再現することは避けてください。

触診で確認する3つの領域

領域 位置の目安 確認内容
近位部 内側上顆の近位後方付近 局所圧痛、骨性指標との位置関係
中間部 内側関節裂隙をまたぐ領域 圧痛、関節裂隙痛、周囲軟部組織の所見
遠位部 脛骨内側の浅層MCL推定領域 圧痛の広がり、鵞足部との位置関係

MCLと内側半月板・鵞足の違い

膝内側痛では、圧痛の位置だけで原因組織を確定することはできません。MCL、内側半月板、鵞足部は近接するため、受傷機転や症状の特徴を合わせて判断します。

構造 位置の目安 評価の視点
MCL 内側上顆近傍から脛骨内側への走行上 外反受傷機転、靱帯走行上の圧痛、外反不安定性
内側半月板 内側関節裂隙付近 関節裂隙痛、引っかかり、ロッキング、回旋時症状
鵞足部 脛骨近位内側の前方寄り 腱付着部周囲の圧痛、運動時痛
変形性膝関節症 内側関節裂隙を含む広い範囲 慢性的な荷重時痛、可動域制限、変形、画像所見

内側半月板との違い

内側半月板は関節裂隙に位置し、深層MCLや関節包と解剖学的に関連しています。そのため、関節裂隙の圧痛だけでMCL損傷と半月板損傷を区別することはできません。

受傷時の回旋負荷、ロッキング、引っかかり、関節腫脹などを確認し、必要に応じて医師による評価や画像検査につなげます。

鵞足部との違い

鵞足は縫工筋・薄筋・半腱様筋の腱が脛骨近位内側に付着する構造です。浅層MCLの遠位部と近接しますが、走行や深さが異なります。

鵞足部に圧痛がある場合も、MCL遠位部の疼痛と混同しないよう、脛骨内側の前後方向と関節裂隙からの距離を確認します。

外反ストレステスト|30°屈曲位と伸展位の違い

外反ストレステストは、膝内側支持機構の機械的安定性を評価する検査です。約30°屈曲位ではMCLを中心とした支持機構を評価し、伸展位で明らかな開大があれば複合損傷を考慮します。

検査は骨折や脱臼などの可能性が評価され、負荷を加えても安全と判断された場合に実施します。急性期に強い疼痛や防御がある場合は無理に行いません。

30°屈曲位の外反ストレステスト

膝を約30°屈曲させ、下腿に外反方向の負荷を加えた際の内側関節裂隙の開大、終末感、疼痛を確認します。

この肢位では浅層MCLを中心とした内側支持機構の評価に適していますが、陽性所見だけで損傷組織を確定できるわけではありません。

伸展位の外反ストレステスト

伸展位ではMCLに加えて、後内側支持機構、関節包、十字靱帯などが膝関節の安定性に関与します。

伸展位でも明らかな内側関節裂隙の開大がある場合は、MCL単独ではなく、後内側支持機構やACL・PCLなどを含む複合損傷を疑う必要があります。

検査肢位 主な評価対象 解釈
約30°屈曲位 MCLを中心とした内側支持機構 開大や終末感の異常はMCL損傷を疑う材料
伸展位 MCL、後内側支持機構、関節包、十字靱帯など 明らかな開大は複合損傷の可能性を考慮

疼痛・関節開大・終末感を分けて記録する

外反ストレステストでは、次の3つを区別します。

  • 疼痛:外反負荷によって膝内側の痛みが誘発されるか
  • 関節開大:反対側と比較して内側関節裂隙の開大が増加するか
  • 終末感:負荷の終わりに明瞭な制動が得られるか

「外反ストレスで痛みがある」ことと「機械的不安定性がある」ことは同義ではありません。疼痛のみを陽性と記録するのではなく、何が確認できたかを具体的に記載します。

なお、徒手検査での開大の程度は検者や負荷量の影響を受けます。ミリ単位の損傷分類を徒手触診のみで確定することは避けてください。

急性膝外傷の安全確認|Ottawa Knee Rule

急性膝外傷では、MCLの触診や外反ストレステストを行う前に、骨折・脱臼・神経血管障害などの可能性を確認します。Ottawa Knee Ruleは、適用対象となる急性膝外傷患者において、膝X線検査の必要性を判断するための臨床判断ルールです。

Ottawa Knee Ruleの5項目

適用対象となる患者で、以下のいずれか1項目を認める場合は、膝X線検査を検討します。

  1. 55歳以上である
  2. 腓骨頭に骨圧痛がある
  3. 膝蓋骨に限局した骨圧痛がある(ほかの膝周囲の骨圧痛を伴わない)
  4. 膝を90°まで屈曲できない
  5. 受傷直後と診察時の両方で4歩荷重できない

4歩荷重とは、左右の下肢へそれぞれ2回ずつ体重を移しながら歩けるかを確認するものです。跛行があっても4歩進める場合は、荷重不能とは扱いません。

Ottawa Knee Ruleは骨折に対する画像検査の必要性を判断するためのものであり、MCL損傷や半月板損傷を診断するルールではありません。

適用上の注意点

Ottawa Knee Ruleは、すべての膝痛患者に一律に適用できるものではありません。慢性膝痛、評価が困難な患者、意識障害、神経障害、多発外傷などでは、ルールだけで画像検査の要否を判断しないでください。

また、ルールが陰性であっても、靱帯・半月板などの軟部組織損傷を否定できるわけではありません。高リスクの受傷機転や明らかな異常所見がある場合は、医師の判断を優先します。

評価を中止・保留する場面

  • 明らかな変形や脱臼を疑う所見がある
  • 強い骨圧痛や荷重不能がある
  • 急激な腫脹や著明な関節血腫を疑う
  • 足部の冷感・蒼白・脈拍異常・感覚障害がある
  • 膝のロッキングや著しい可動域制限がある
  • 外反ストレスによって強い疼痛や防御が生じる
  • 複数靱帯損傷が疑われる

膝関節脱臼が疑われる場合は、自然整復されて外見上の変形が目立たなくても、血管損傷の可能性があります。神経血管障害を疑う所見がある場合は、緊急性を考慮して対応してください。

MCL損傷を疑う場合の評価フロー

臨床では、触診所見だけで判断せず、受傷機転、安全確認、局所所見、安定性評価、再評価の順に情報を整理します。

  1. 受傷機転:膝外側からの接触、外反負荷、回旋、着地、方向転換などを確認する。
  2. 安全確認:変形、骨圧痛、荷重能力、神経血管症状を確認する。
  3. 局所観察:膝内側の圧痛、腫脹、皮下出血、可動域を確認する。
  4. MCL推定領域の触診:近位部・中間部・遠位部に分けて圧痛を記録する。
  5. 安定性評価:安全な条件で30°屈曲位・伸展位の外反ストレス所見を検討する。
  6. 関連損傷:内側半月板、ACL・PCL、後内側支持機構などの関与を考慮する。
  7. 再評価:疼痛、腫脹、荷重能力、可動域、不安定感の変化を確認する。

初回評価で十分な検査ができない場合は、無理にすべての検査を実施する必要はありません。未実施理由と次回の確認項目を記録します。

MCLの記録例|所見と解釈を分ける

記録では、実際に観察・測定した所見と、そこから考えられる臨床的解釈を分けます。特に疼痛と不安定性、実施した検査と未実施の検査を混同しないことが重要です。

記録例1:MCL推定領域に圧痛がある場合

所見:「右大腿骨内側上顆近傍から内側関節裂隙にかけて圧痛あり。局所に軽度腫脹を認める。」

解釈:「浅層MCL推定領域に一致するが、触診のみでは損傷組織の確定は困難。受傷機転と関連所見を合わせて評価する。」

記録例2:外反ストレスで疼痛がある場合

所見:「右膝約30°屈曲位での外反ストレスにより内側痛あり。明らかな内側関節裂隙の開大は確認されず。」

解釈:「疼痛所見のみでは機械的不安定性を判断できない。症状と関連所見を継続確認する。」

記録例3:外反ストレステストを保留する場合

所見:「右膝内側に疼痛・腫脹あり。急性外傷後で骨折および複合靱帯損傷の評価が未完了。」

対応:「外反ストレステストは未実施。医師への報告と安全確認を優先する。」

記録例4:再評価する場合

所見:「右膝内側の局所圧痛は前回より軽減。歩行時痛も軽減傾向。」

計画:「荷重能力、膝関節可動域、不安定感を継続評価し、必要に応じて安定性検査の実施可否を判断する。」

これらは記録形式の例です。実際に確認していない所見や判断を患者記録へ転記しないでください。

よくある質問

MCLは膝のどこにありますか?

MCLは膝関節内側にあります。浅層MCLは大腿骨内側上顆のやや近位後方から脛骨内側へ走行します。触診では内側上顆・内側関節裂隙・脛骨内側を目印に位置を推定します。

浅層MCLと深層MCLは触診で区別できますか?

体表から正確に分離して同定することは困難です。浅層MCLの走行は骨性指標から推定できますが、深層MCLは関節包や内側半月板と関連する深部構造です。

MCLと内側半月板の痛みはどう見分けますか?

圧痛部位だけでは確定できません。受傷機転、関節裂隙痛、ロッキング、腫脹、外反ストレス所見などを組み合わせ、必要に応じて医師の評価や画像検査につなげます。

外反ストレステストで痛みがあればMCL断裂ですか?

疼痛だけでMCL断裂とは判断できません。関節裂隙の開大、終末感、左右差などの機械的所見と合わせて評価します。

外反ストレステストは30°屈曲位だけで十分ですか?

30°屈曲位はMCLを中心とした内側支持機構の評価に用いられます。伸展位での開大は複合損傷を疑う所見となるため重要ですが、急性期には安全性を優先して実施を判断します。

まとめ|MCLは位置・圧痛・不安定性を分けて評価する

膝内側側副靱帯(MCL)は、膝関節の外反安定性を担う重要な靱帯です。浅層MCLは大腿骨内側上顆の近位後方付近から脛骨内側へ走行し、深層MCLは関節包や内側半月板と関連します。

触診では内側上顆、内側関節裂隙、脛骨内側を基準に走行を推定します。ただし、圧痛だけでMCL損傷を確定することはできません。

外反ストレステストでは、30°屈曲位と伸展位の違いを理解し、疼痛・関節開大・終末感を分けて記録します。急性外傷では骨折や複合損傷の可能性を先に確認し、安全な条件で評価を進めることが重要です。

次の一手

A:骨性ランドマークを復習する

膝内側の触診位置を整理したい場合は、解剖ライブラリで骨・筋・腱・靱帯の位置関係を確認してください。

B:臨床評価につなげる

膝内側痛では、MCLだけでなく内側半月板・鵞足部・後内側支持機構なども考慮します。圧痛部位と負荷時の症状を整理し、必要な追加評価を選択してください。

参考文献

  1. LaPrade RF, Engebretsen AH, Ly TV, et al. The anatomy of the medial part of the knee. J Bone Joint Surg Am. 2007;89(9):2000-2010. DOI
  2. Medial-Sided Ligamentous Injuries of the Athlete’s Knee: Evaluation and Management. PubMed Central
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  4. Diagnosis and treatment strategies of the multiligament injured knee: a scoping review. Br J Sports Med. DOI
  5. Stiell IG, Greenberg GH, Wells GA, et al. Derivation of a decision rule for the use of radiography in acute knee injuries. Ann Emerg Med. 1995;26(4):405-413. PubMed検索
  6. NSW Agency for Clinical Innovation. Ottawa knee rules (adult). 公式資料

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを運営し、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に向けて、臨床で活用できる評価方法やリハビリテーションの実務情報を発信しています。

脳卒中、褥瘡・創傷ケア、呼吸リハビリテーションなどの臨床経験を踏まえ、評価所見をどのように解釈し、次の判断につなげるかを重視しています。

保有資格:脳卒中認定理学療法士、褥瘡・創傷ケア認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、福祉住環境コーディネーター2級

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