FACTとは?評価方法・採点・解釈|脳卒中の体幹評価

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FACTとは?脳卒中の体幹機能を端座位でみる評価です

FACT(Functional Assessment for Control of Trunk)は、脳卒中患者の体幹機能を、端座位での課題遂行から評価する尺度です。静的な座位保持だけでなく、重心移動、体幹回旋、四肢運動に伴う姿勢制御まで確認できるため、「どこで体幹制御が崩れるか」を整理しやすい評価です。

FACTは10項目・合計20点で採点します。点数だけでなく、上肢支持、反動、骨盤後傾、胸郭の過緊張、左右の座骨荷重差などの代償パターンを一緒に見ることで、次の介入につなげやすくなります。

FACTの特徴

FACTの特徴は、端座位での体幹機能を、臨床の動作に近い形で確認できることです。単に「座れるか」だけではなく、動きの中で体幹がどのように働いているかを見ます。

特に、移乗や歩行が伸びにくい症例では、下肢筋力だけでなく、骨盤・体幹の安定性、重心移動、回旋、上肢運動時の姿勢制御が影響していることがあります。FACTは、そのような体幹機能のボトルネックを整理する入口として使いやすい評価です。

FACTの基本情報
項目 内容
評価対象 主に脳卒中患者の体幹機能
評価姿勢 端座位
項目数 10項目
合計点 0〜20点
見たいこと 座位保持、重心移動、体幹回旋、姿勢制御、代償

FACTが向いている場面

FACTは、離床初期から回復期にかけて、体幹機能の変化を追いたい場面で使いやすい評価です。特に、座位は保てるけれど移乗や歩行で崩れる、下肢筋力だけでは説明しにくい、体幹のどこを介入すべきか迷う場合に役立ちます。

  • 脳卒中患者の体幹機能を評価したい
  • 端座位での重心移動や回旋を確認したい
  • 歩行や移乗が伸びにくい理由を整理したい
  • 体幹介入の前後比較をしたい
  • 点数だけでなく代償パターンも記録したい

一方で、端座位そのものが安全に保てない場合、強い疼痛や起立性低血圧がある場合、指示理解の影響が大きい場合は、無理に実施せず安全を優先します。実施できなかった理由も重要な所見になります。

実施前にそろえる測定条件

FACTは最大能力をみる評価です。そのため、座面、足底支持、介助位置、声かけなどの条件が変わると、点数の意味も変わりやすくなります。

再評価で比較しやすくするために、実施前に条件をそろえておきます。特に足底支持座面の高さ・硬さはブレやすいポイントです。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

FACTの測定条件チェック
項目 そろえたい条件 よくあるズレ 現場での調整
座位姿勢 端座位で、可能な範囲で両足底を床に接地 つま先接地、片脚が浮く、踵が浮く 足台や台位置で足底支持を確保し、左右差も記録する
座面条件 一定の硬さと高さ 柔らかいベッド端、沈み込みが大きい 可能なら治療台を使用し、難しければ条件を記録する
安全管理 ずり落ち・転倒リスクを先に確認する 疲労で後半に崩れる 介助位置を統一し、中止理由も記録する
指示の出し方 短く具体的に伝える 説明が長くなり理解が落ちる 必要に応じてデモやジェスチャーを併用する

FACTの実施手順

FACTは、決められた順序で進めるほど再評価が安定します。前半は座位の安定性、後半は動的制御や回旋、四肢運動に伴う姿勢制御へと負荷が上がります。

重要なのは、単にできたかどうかではなく、どの課題で崩れたか、どのような代償が出たかを一緒に観察することです。

FACT評価の流れ。条件をそろえる、10項目を実施、採点する、解釈する流れを整理した図
図:FACTは条件固定、実施、採点、解釈の順で整理すると、点数と代償を介入につなげやすくなります。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

FACTの5分運用フロー
手順 やること 見るポイント 記録に残す一言
1. 開始前 座面・足底支持・介助位置を固定する ずり落ち、後方転倒、疲労の出やすさ 足底接地あり、介助なし
2. 指示 短い言葉で課題を説明する 理解のズレ、注意の切れ、過緊張 口頭+デモで理解良好
3. 実施 10項目を順に進める どこで崩れたか、代償が出たか 項目6で上肢支持が増加
4. 採用 施設ルールに沿って採用する 再現性のある成功か 最大パフォーマンスを採用
5. まとめ 合計点、止まった課題、代償を整理する 次回介入で何を変えるか ボトルネックは回旋

FACTの採点と解釈

FACTは10項目・合計0〜20点で、得点が高いほど体幹機能が高いことを示します。ただし、臨床では「何点だったか」だけではなく、止まった課題代償パターンをセットで見ることが重要です。

同じ12点でも、骨盤コントロール不足で止まるのか、回旋で止まるのか、上肢支持で逃げているのかによって、次の介入は変わります。

歩行との関係では、亜急性期入院患者で歩行自立のカットオフが9点、入院時FACTで退院時歩行自立をみた研究では8点が報告されています。ただし、対象時期やアウトカムが異なるため、カットオフを絶対視せず、症例の安全性、介助量、代償、経過と合わせて解釈します。

注意:FACTの点数は重要ですが、点数だけで介入方針を決めないことが大切です。合計点、止まった課題、代償、安全性、次回の狙いをセットで記録すると、治療につながりやすくなります。

FACT自動計算ツール

合計点をすぐ確認したい場合は、自動計算ツールが便利です。全10項目を入力すると合計点が自動で表示されます。

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自動計算ツールの結果だけで臨床判断を確定するものではありません。安全性、代償、介助量、症例背景と合わせて解釈してください。

FACTでよくある代償と観察ポイント

FACTは簡便ですが、代償が強い症例では「できたように見える」落とし穴があります。点数だけで判断すると、反動が増えただけなのに改善と読んでしまうことがあります。

点数と一緒に、代償の出方を固定して観察すると、再評価のブレを減らしやすくなります。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

FACT実施時のよくある代償と観察ポイント
場面 典型的な代償 見逃しやすい観察ポイント 次の一手
端座位保持 胸郭挙上・頚部過伸展で安定を作る 骨盤後傾、左右の座骨荷重差、足底支持のロス 足底支持を整え、骨盤前傾の誘導から始める
側方重心移動 肩甲帯の過活動、上肢支持で逃げる 支持側座骨のずれ、骨盤挙上の混入 小さな可動域から骨盤主導の移動を練習する
体幹回旋 肩甲帯だけが回り、体幹が回らない 骨盤固定の安定性、胸郭との分離 骨盤固定下で胸郭の分離を練習する
上肢運動 腰椎伸展や肋骨外反で代償する 体幹前面の支持低下、肩甲帯の過緊張 呼気と下位胸郭のコントロールを整える

FACTの記録例

FACTの記録は、合計点だけでは不十分です。おすすめは、合計点、止まった課題、代償、安全性、次回の狙いを1〜2行で残す方法です。

記録例

FACT 11点。項目6以降で骨盤後傾と上肢支持が増加。足底支持あり、介助なし。次回は骨盤固定下での側方移動と回旋を優先。

FACT記録シートPDF

記録用紙をすぐ使いたい方向けに、A4 1枚のFACT記録シートを用意しました。評価条件、合計点、止まった課題、代償パターン、安全性、次回の狙い、再評価メモを1枚で残せる構成です。

PDFを開く(FACT記録シート)

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PDFが表示されない場合は、こちらから開いてください

FACT・TCT・TISの使い分け

体幹評価は、目的に合わせて使い分けると整理しやすくなります。短時間で体幹機能の成立を確認したい場合はTCT、体幹機能の質的変化を細かく追いたい場合はTIS、端座位での課題遂行と介入の当たりをつけたい場合はFACTが使いやすいです。

  • 短時間で体幹機能の成立を見たい:TCT
  • 端座位でどこが崩れるか見たい:FACT
  • 下位尺度で質的変化を追いたい:TIS

FACT・TCT・TISの違いはこちら

よくある質問

Q1. FACTはTCTやTISとどう使い分けますか?

A. 目的で分けると整理しやすいです。短時間で成立確認をしたいならTCT、FACTは「どこで崩れるか」を見て介入の当たりを作りたいとき、TISは下位尺度で質の変化を追いたいときに向きます。

Q2. 端座位が不安定で開始できない場合はどうしますか?

A. まず安全を優先します。座面、足底支持、介助位置を調整したうえで、どこまでなら実施できたかを所見として残します。中止理由や介助量も記録しておくと次回比較がしやすくなります。

Q3. 点数が上がらないとき、どこを見直せばよいですか?

A. 条件固定が前回と同じか、代償が増えていないか、ボトルネック課題に対して介入が合っていたかを確認します。点数が同じでも、代償が減って質が上がっていれば臨床的には前進です。

Q4. FACTの評価用紙はどこで確認できますか?

A. 原著論文や関連論文の図表で確認できます。自施設の運用では、設問そのものだけでなく、条件、所見、次の狙いを同じ書式で残せる記録様式を整えると再評価しやすくなります。

Q5. FACTは歩行自立の予測に使えますか?

A. FACTと歩行自立の関連を示した研究はあります。ただし、カットオフは対象時期やアウトカムにより変わるため、点数だけで判断せず、介助量、安全性、代償、下肢機能、認知面などと合わせて解釈します。

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参考文献

  1. 奥田 裕, 荻野 禎子, 小澤 佑介, ほか. 臨床的体幹機能検査(FACT)の開発と信頼性. 理学療法科学. 2006;21(4):357-362. doi:10.1589/rika.21.357
  2. Sato K, Maeda K, Ogawa T, et al. The functional assessment for control of trunk(FACT): An assessment tool for trunk function in stroke patients. NeuroRehabilitation. 2021;48(1):59-66. doi:10.3233/NRE-201533 / PubMed
  3. Okuda Y, Owari G, Harada S, et al. Validity of functional assessment for control of trunk in patients with subacute stroke: a multicenter, cross-sectional study. J Phys Ther Sci. 2023;35(7):520-527. doi:10.1589/jpts.35.520 / PubMed
  4. 益子 寛人, 金子 明紀, 加藤 大貴, 呉 和英, 池澤 里香. Functional Assessment for Control of Trunk(FACT)の尺度特性について—急性期脳卒中者における妥当性の検討—. 理学療法学. 2025;52(5):276-284. doi:10.15063/rigaku.25-12626
  5. Sato K, Ogawa T, et al. Functional Assessment for Control of the Trunk Predicts Independent Walking in Patients with Stroke. JMA J. 2025;8(1):226-233. doi:10.31662/jmaj.2024-0212 / PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床で使いやすい評価・制度・リハビリ情報を発信しています。

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、リハ栄養、シーティング、摂食・嚥下

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