Trendelenburg テストの陽性と記録シート

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Trendelenburg テスト|陽性の定義と 30 秒標準化

Trendelenburg テストは、片脚立位で骨盤の安定性を確認し、股関節外転筋機能や荷重時の代償を整理するための基本テストです。ただし、陽性だけで病態を確定する検査ではありません。臨床では、対側骨盤の低下に加えて、体幹側屈、膝の内側偏位、痛み部位まで同じ条件で記録することで、再評価と次の検査選択につなげやすくなります。

この記事では、Trendelenburg テストを「 30 秒手順 → 陽性の定義 → よくある失敗 → 解釈分岐 → 記録例」の順に整理します。片脚立位での骨盤低下を見たあと、何を残し、どの評価へ進むかを決めるための記事です。

股関節テストは “ 最小セット ” で運用すると、迷いと抜けが減ります。 股関節テスト一覧に戻る

関連:標準フロー( 5 分運用 ) / 続けて読む:FADIRFABER

30 秒でできる:手順の最小セット

再現性を上げるコツは、立位条件を固定し、観察点を「骨盤・体幹・膝」の 3 つに絞ることです。毎回違う姿勢で実施すると、骨盤低下なのか、体幹代償なのか、痛みによる逃避なのかが混ざってしまいます。

まずは 10 秒保持を基本にして左右を比較し、必要に応じて 3 回反復します。疲労で崩れる症例では、何秒で崩れたか、何回目で代償が強くなったかまで残すと、再評価で変化を追いやすくなります。

Trendelenburg テストで見る場所3点(骨盤・体幹側屈・膝内側偏位)を整理した図版
Trendelenburg テストは「骨盤・体幹側屈・膝内側偏位」の 3 点を同条件で観察すると、記録と再評価が安定します。
Trendelenburg テスト| 30 秒手順(成人・臨床運用)
手順 見る場所 記録(最小)
① 両手は腰、正面を見る。片脚立位へ 骨盤(腸骨稜) 対側骨盤:上がる / 変わらない / 下がる
② 10 秒保持(左右) 体幹 体幹側屈:なし / あり(支持側へ)
③ 余裕があれば 3 回反復 膝・足部 膝内側偏位:なし / あり

Trendelenburg テスト記録シート

Trendelenburg テストは、骨盤低下の有無だけでなく、体幹側屈、膝の内側偏位、痛み部位、保持時間を同じ型で残すと再評価しやすくなります。臨床でそのまま使えるように、A4 1 枚の記録シートを用意しました。

印刷して使う場合は、評価前の条件、左右差、陽性所見、代償、痛み、再評価メモを 1 枚で整理できます。

A4 1 枚で、Trendelenburg テストの所見を記録できます。

PDFを開く(記録シート)

陽性の定義|骨盤低下だけで終わらせない

Trendelenburg の陽性は、片脚立位で支持脚と反対側の骨盤が下がる所見として整理します。ただし、体幹を支持側へ倒して骨盤低下を隠す症例や、痛みを避けるために荷重を逃がす症例もあります。そのため、陽性・陰性だけでなく、代償と痛みを一緒に残すことが重要です。

臨床記録では、骨盤、代償、痛み部位の 3 点を最小セットにします。これにより、股関節外転筋の機能低下を疑う入口として使いながら、歩行観察、圧痛、誘発テスト、筋力評価へ進む判断がしやすくなります。

Trendelenburg テスト|陽性時の最小記録テンプレ
項目 書き方(例) 読み取りの方向性
① 骨盤 右支持で左骨盤低下( 10 秒で出現 ) 股関節外転筋機能低下を疑う入口
② 代償 体幹は右側屈あり 骨盤低下が隠れる / 過大に見える要因
③ 痛み 右大転子周囲に荷重時痛あり 筋・腱・滑液包・股関節周囲痛の整理へつなぐ

現場の詰まりどころ|判定がブレる理由を 3 つに絞る

Trendelenburg テストがブレる主因は、骨盤低下そのものよりも、体幹・膝・足部の代償が混ざることです。判定が安定しないときは、検査を増やす前に、条件固定と観察点の整理から見直します。

→ よくある失敗へ→ 回避のチェックへ

関連:検査条件をそろえる考え方は、ROM テストの標準化でも共通します。可動域、筋力、片脚立位を同じ考え方で記録すると、再評価の比較がしやすくなります。

よくある失敗(まずここだけ)

Trendelenburg テスト|よくある失敗と修正
失敗 起きること 直し方( 1 つだけ )
体幹側屈が強い 骨盤が落ちにくく見える / 荷重が逃げる 壁や鏡を使い、体幹を中間位に近づける
膝が内側へ入る 股関節外転筋以外の要素が混ざる 膝を第 2 趾方向に合わせる
支持脚が回旋している 骨盤線が読みづらい つま先と腸骨稜を正面へそろえる

回避の手順(再現性チェック)

  • 腸骨稜が見える服装、または目印を使う
  • 左右とも同条件(手の位置、視線、足幅)で実施する
  • 10 秒保持を固定し、同じタイミングで観察する

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、検査手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。

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解釈の早見|痛み部位と次に見る 1 個

Trendelenburg テストは、単独で病態を決めるよりも、次の評価へつなぐ分岐として使うと臨床で活かしやすくなります。外側痛、鼠径部痛、代償の強さを分けて、次に見る評価を 1 つだけ選びます。

とくに、骨盤低下があるから外転筋トレーニングだけに進むのではなく、痛み、荷重回避、歩行時の代償、関節可動域制限を合わせて確認します。所見を組み合わせることで、介入の優先順位が決めやすくなります。

Trendelenburg 所見からの分岐(臨床の使い分け)
主所見 よくある訴え 次に見る 1 個
骨盤低下+外側痛 歩くと股関節外側が痛い 大転子周囲の圧痛整理+歩行観察
骨盤低下+代償強い 片脚が不安 / ふらつく 鏡や壁で条件固定して片脚立位を再評価
骨盤は保てるが鼠径部痛あり 股関節前方が詰まる / 痛い FADIR で誘発の有無を確認

記録例|陽性・代償・痛みを 1 行で残す

記録は長く書くより、同じ型で短く残す方が比較しやすくなります。Trendelenburg テストでは、支持側、骨盤、代償、痛み、保持時間の順に並べると、次回評価で変化を追いやすくなります。

Trendelenburg テスト|カルテ記録例
場面 記録例
陽性 Trendelenburg テスト:右支持 10 秒で左骨盤低下あり。体幹右側屈を伴う。右大転子周囲痛あり。
代償優位 左支持では骨盤低下は軽度だが、体幹左側屈が強く、膝内側偏位を伴う。
陰性に近い 左右とも 10 秒保持可能。明らかな対側骨盤低下なし。右支持時に軽度ふらつきあり。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Trendelenburg “ サイン ” と歩行での所見は同じですか?

同じ意味で使われることもありますが、臨床では分けて整理すると安全です。サインは片脚立位での骨盤低下、歩行では立脚期の骨盤制御破綻として記録します。歩行は速度、痛み、疲労の影響を受けるため、片脚立位の所見とセットで比較します。

骨盤が落ちないのに “ 弱い ” と判断されることはありますか?

あります。体幹を支持側へ倒す代償で、骨盤低下が見えにくくなるためです。骨盤だけでなく、体幹側屈、膝内側偏位、痛みの逃避を一緒に残すと、外転筋機能低下を見逃しにくくなります。

保持時間は何秒で統一すればよいですか?

臨床運用では 10 秒固定が使いやすいです。疲労で崩れる症例では 3 回反復し、何回目・何秒で骨盤低下や代償が出たかを記録すると、再評価に反映しやすくなります。

Trendelenburg テストだけで股関節外転筋低下と判断してよいですか?

単独で断定するのは避けます。Trendelenburg テストは入口として使い、徒手筋力、痛み部位、歩行、片脚立位の安定性、必要に応じた誘発テストと組み合わせて解釈します。

最小限の記録は何を書けば十分ですか?

支持側、対側骨盤の変化、体幹側屈、痛み部位、保持時間の 5 点があれば十分です。例として「右支持 10 秒で左骨盤低下あり。体幹右側屈あり。右大転子周囲痛あり」と残します。

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参考文献

  1. Youdas JW, Madson TJ, Hollman JH. Usefulness of the Trendelenburg test for identification of patients with hip joint osteoarthritis. Physiother Theory Pract. 2010;26(3):184-194. DOI: 10.3109/09593980902750857 / PubMed: 20331375
  2. McCarney L, Andrews A, Henry P, Fazalbhoy A, Selva Raj I, Lythgo N, Kendall JC. Determining Trendelenburg test validity and reliability using 3-dimensional motion analysis and muscle dynamometry. Chiropr Man Therap. 2020;28:53. DOI: 10.1186/s12998-020-00344-3 / PubMed: 33076947
  3. Kline PW, Christiansen CL, Judd DL, Mañago MM. Clinical utility of the Trendelenburg Test in people with multiple sclerosis. Physiother Theory Pract. 2023;39(5):1016-1023. DOI: 10.1080/09593985.2022.2030446 / PubMed: 35073816

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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