- 半側空間無視( USN )評価の要点: 5〜10 分スクリーニングから ADL 観察まで
- 評価の全体像:机上テスト → ADL 観察 → チーム共有
- 評価の流れ( 5〜10 分 ):最短で “取りこぼし” を減らす
- 準備( 30 秒 ):標準化チェック
- 主要テストの使い分け(早見)
- 各テストの詳しいやり方(各論):迷ったらここを参照
- ADL 観察( CBS / KF-NAP )の位置づけと導入手順
- 机上テストと ADL の “乖離” の読み方
- 半盲(視野障害)との鑑別メモ:迷いやすいポイントだけ
- 現場の詰まりどころ:よくある失敗( OK / NG 早見 )
- 判定・記録の型:チームで “同じ言葉” に揃える
- 結果からの次の一手:安全 → 介入 → 再評価
- よくある質問( FAQ )
- 参考文献
- おわりに
半側空間無視( USN )評価の要点: 5〜10 分スクリーニングから ADL 観察まで
PT の転職で迷ったら、まずは “条件の棚卸し” から。 /pt-career-guide/ を見る ※記事のテーマに関係なく、現場で詰まりやすい “働き方の選択” も一緒に整理できます。
半側空間無視( Unilateral Spatial Neglect: USN )は、机上検査で “できそう” に見えても、病棟の ADL で転倒・取りこぼしが起きることがあります。評価は「短時間スクリーニング → 机上テストの質管理 → ADL 観察(行動評価) → 記録の標準化」の順で組むと、チーム共有と再評価がスムーズです。
本記事は、まず 5〜10 分の標準化フローで取りこぼしを減らし、必要に応じて ADL 観察( CBS / KF-NAP )へつなぐ “親記事(総論)” としてまとめます。各テストの詳しい手順・判定・記録テンプレは、小記事(各論)で深掘りする前提の、現場実装寄りの内容です。
評価の全体像:机上テスト → ADL 観察 → チーム共有
USN 評価は、「検出」と「生活影響の把握」を分けると迷いません。まず短時間で “あるか・どの方向に強いか” を押さえ、次に ADL での危険場面(歩行・車椅子・更衣・摂食など)を観察して、介入と環境調整につなげます。
目安は次の通りです。① スクリーニング( 5〜10 分 )で疑いを拾う → ② 机上テストで探索・注意の偏りを確認 → ③ ADL 観察で “転倒・自己管理・退院判断” に直結する情報を集める → ④ 同じ条件で再評価して推移を共有、です。
評価の流れ( 5〜10 分 ):最短で “取りこぼし” を減らす
忙しい場面では、検査の種類を増やすよりも、条件を揃えて短時間で回す方が精度が上がります。まずは “毎回同じ流れ” を決めて、検者間差を小さくします。
推奨フローは、① 視線・頭部偏位の観察 → ② 机上の探索課題(抹消 → 線分二等分 → 描画の順が組みやすい) → ③ 二重課題(会話・移動など)で悪化の有無 → ④ その場で危険サインと条件(姿勢・用紙位置・声かけ)を記録、です。
準備( 30 秒 ):標準化チェック
“結果のブレ” は、多くが準備不足で起きます。毎回、姿勢(座位の安定)、用紙位置(体幹正中に対してどう置くか)、視覚条件(眼鏡・照明)、利き手・麻痺側、指示の言い回し(ヒントの出し方)を統一します。
特に、体幹回旋や頭部偏位が強いと、机上テストが “右寄り固定” になりやすいです。まず体幹と頭部を整えた上で、同一条件で繰り返せる形に揃えます。
主要テストの使い分け(早見)
机上テストは、探索の偏り・注意の持続・課題条件での変動を見やすい一方、ADL の危険を “そのまま” 反映しないことがあります。目的別に選ぶと、検査が増えすぎません。
| 目的 | おすすめ | 所要 | 見たいポイント |
|---|---|---|---|
| まず疑いを拾う | 短時間スクリーニング(観察+探索課題) | 5〜10 分 | 視線・頭部偏位、探索の偏り、指示での改善 |
| 探索の偏りを確認 | 抹消課題/線分二等分/描画 | 3〜8 分 | omissions、開始点、見落としの分布、二重課題で悪化 |
| ADL への影響を把握 | 行動観察尺度( CBS / KF-NAP ) | 10〜20 分 | 転倒・更衣・摂食・車椅子操作など “生活の困り” |
| 退院・安全管理に直結 | 病棟場面での観察(移乗・歩行・病室動線) | 随時 | 衝突・ブレーキ忘れ・左側見落とし・セルフケアの抜け |
各テストの詳しいやり方(各論):迷ったらここを参照
親記事では “流れと標準化” を優先し、各テストの細かな手順・判定・集計・記録テンプレは、下記の各論で深掘りします。必要なところだけ参照して、親記事のフローに戻す運用がおすすめです。
- 抹消課題(キャンセレーション):見落とし( omissions )の分布、開始点、集計と記録の型まで整理
- 線分二等分試験( Line Bisection Test ):偏位量の残し方、条件統一、所見テンプレの作り方
- 二重同時刺激( DSS ):extinction の見方と、病棟で悪化しやすい場面の拾い方
- CBS( Catherine Bergego Scale ):ADL 観察での見落とし・衝突・置き去りをスコア化して共有する方法
ADL 観察( CBS / KF-NAP )の位置づけと導入手順
机上テストで軽そうでも、病棟では “左側にぶつかる/左腕が置き去り/食べ残しが偏る” などが起きます。ここを拾うのが、行動観察系( CBS / KF-NAP )です。机上テストと違い、実際の ADL での危険と介助量に直結します。
導入はシンプルで、① 観察する場面(更衣・整容・移動・摂食など)を決める → ② “いつも通り” の動作を見て、必要最小限の声かけに留める → ③ 見落とし・衝突・身体の置き去り・探索の偏りを記録 → ④ チームで同じ言葉に揃えて申し送り、です。
机上テストと ADL の “乖離” の読み方
USN は “課題が簡単・静的・注意が向いている” と改善して見えることがあります。一方、ADL は二重課題(姿勢制御+探索+判断)になり、負荷が上がるほど症状が目立ちます。机上で軽く見えても、病棟で危険が多いときは、ADL 観察の比重を上げます。
乖離が大きいケースでは、① 病識(気づき)不足、② 注意の持続低下、③ 体幹・頭部の偏位、④ 疲労・時間帯、⑤ 環境(騒音・人の動き)などが絡みます。再評価は “同じ条件” を守り、変数(時間帯・課題負荷・声かけ)を記録すると、介入効果が説明しやすくなります。
半盲(視野障害)との鑑別メモ:迷いやすいポイントだけ
USN は “見えていても注意が向かない” 側面があり、半盲は “そもそも入力が欠ける” ことが主です。ただし臨床では併存もあり、単純に割り切れません。迷ったら、視線誘導で改善するか、探索の開始点が固定されるか、身体(左上肢)の扱いが置き去りになるか、などをセットで見ます。
机上検査だけで結論を急がず、病棟動作(移動・車椅子・更衣)での衝突やセルフケアの抜けを観察して、必要なら追加評価へつなげます。
現場の詰まりどころ:よくある失敗( OK / NG 早見 )
| よくある NG | 何が起きる? | OK のやり方 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 用紙位置が毎回違う | 右寄りに置くほど “軽く” 見える | 体幹正中を基準に配置を固定 | 用紙位置(正中/右偏位など) |
| 声かけが多い | 誘導で成績が上がり、再現性が落ちる | 指示文を定型化し、ヒントは段階化 | 声かけの有無・内容・回数 |
| 姿勢が崩れたまま実施 | 頭部偏位が固定され、探索が偏る | 座位を整えてから開始 | 頭部・体幹の偏位 |
| 机上だけで判断する | ADL の危険(衝突・転倒)が残る | 病棟の ADL 観察を併用 | 危険場面(どこで/何が) |
| 再評価条件が違う | 改善か条件差か判断できない | 同じ時間帯・同じ課題・同じ環境で比較 | 時間帯・疲労・環境 |
判定・記録の型:チームで “同じ言葉” に揃える
記録は、点数よりも “再現できる情報” を残すのがコツです。最低限、① 実施条件(姿勢・用紙位置・声かけ)、② 所見(偏位・ omissions・開始点・二重課題での変動)、③ ADL の危険場面(衝突・置き去り・セルフケア抜け)、④ 次の一手(介入・環境調整・見守り)をセットで書くと、申し送りが通ります。
また、机上テストと ADL 観察の結果を並べて書くと、乖離が説明しやすくなります(例:「机上は軽度、病棟では左側衝突が頻回」)。
結果からの次の一手:安全 → 介入 → 再評価
USN は “評価して終わり” になりやすいので、次アクションを固定します。まず安全(移動・車椅子・ベッド周囲)を確保し、次に探索の促し・環境配置・身体の気づき支援を行い、最後に同一条件で再評価します。
介入の効果は、短時間スクリーニング(同一条件)と ADL 観察の両方で追うと、患者さん・家族・チームに説明しやすくなります。
よくある質問( FAQ )
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Q1. まずは机上テストだけでいいですか?
A. 初回は “まず拾う” 目的で机上中心でも構いませんが、転倒や衝突が疑われる場合は ADL 観察を早めに入れるのがおすすめです。机上で軽く見えるほど、病棟での二重課題で悪化していることがあります。
Q2. 5〜10 分フローの中で、何を最優先にしますか?
A. 「条件を揃える(姿勢・用紙位置・声かけ)」が最優先です。次に、探索課題で “開始点・偏り・見落としの分布” を確認し、最後に病棟動作で危険サイン(衝突・置き去り)を観察します。
Q3. 改善をどう判断しますか?
A. 同じ条件で再評価し、変数(時間帯・疲労・環境・声かけ)を記録して比較します。点数だけでなく、病棟での危険場面が減ったか(衝突・転倒・セルフケアの抜け)も合わせて追います。
Q4. 半盲があるときはどう見ればいいですか?
A. 併存もあり得るので、机上だけで断定せず、視線誘導での変化、探索の開始点、身体の置き去り、病棟動作での衝突などをセットで見ます。必要に応じて追加評価や他職種所見も統合します。
参考文献
- Azouvi P, Olivier S, de Montety G, Samuel C, Louis-Dreyfus A, Tesio L. Behavioral assessment of unilateral neglect: study of the psychometric properties of the Catherine Bergego Scale. Arch Phys Med Rehabil. 2003;84(1):51-57. DOI: 10.1053/apmr.2003.50062
- Chen P, Chen CC, Hreha K, Goedert KM, Barrett AM. Kessler Foundation Neglect Assessment Process uniquely measures spatial neglect during activities of daily living. Arch Phys Med Rehabil. 2015;96(5):869-876.e1. DOI: 10.1016/j.apmr.2014.10.023
- Wilson B, Cockburn J, Halligan P. Development of a behavioral test of visuospatial neglect. Arch Phys Med Rehabil. 1987;68(2):98-102. PubMed: PMID: 3813864
- Fullerton KJ, McSherry D, Stout RW. Albert's test: a neglected test of perceptual neglect. Lancet. 1986;1(8478):430-432. DOI: 10.1016/S0140-6736(86)92381-0
- Grattan ES, Woodbury ML. Do Neglect Assessments Detect Neglect Differently? Am J Occup Ther. 2017. PubMed Central: PMC5397095
おわりに
USN 評価は「条件を揃えて短時間で拾う → 病棟の危険場面を観察 → 記録を標準化 → 同一条件で再評価」というリズムを作ると、介入とチーム共有が一気に楽になります。
机上テストだけで軽く見えたときほど、ADL での衝突・置き去り・セルフケアの抜けを丁寧に拾い、次の一手(安全・環境・声かけ・課題設定)につなげていきましょう。


