線分二等分試験(USN)のやり方と判定|用紙PDF付き

評価
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線分二等分試験は「偏位」と「条件」をセットで評価する

線分二等分試験(Line Bisection Test)は、半側空間無視(USN)が疑われるときに、線の真の中心と本人が示した位置のずれを確認する机上検査です。重要なのは、単に「右へずれた・左へずれた」で終わらせず、偏位量(mm・%)、方向、実施条件をセットで残すことです。この記事では、線分二等分試験のやり方、判定値の考え方、偏位の測り方、記録・再評価までを整理し、160 mm×6本の検査用紙+記録・評価シートPDFも配布します。

USN全体の評価順を先に確認したい方へ

半側空間無視(USN)評価|5〜10分フローを見る

このページで配布する用紙は、USNの陽性・陰性を単独判定するための標準化検査ではありません。同じ160 mmの線を6本用いて偏位を定量化し、条件をそろえて再評価するためのrehabilikunblogオリジナル実務用シートです。既報のカットオフ値は、その研究で用いられた検査手順・用紙・対象とセットで解釈します。

線分二等分試験の判定|6 mmを一律の基準にしない

結論からいうと、「中心から6 mm以上ずれたらUSN」と、すべての線分二等分用紙へ一律に当てはめるのは避けます。偏位のカットオフ値は、線の本数・長さ・配置・採点方法・対象集団など、検査条件とセットで扱う必要があります。

Schenkenbergらが報告した線分二等分法では、複数の水平線を用いた特定の検査形式が使われています。その方法をもとに、真の中心から6 mmを超える偏位を基準として扱う報告があります。しかし、このページで配布する160 mm×6本の用紙は、その標準化された検査形式そのものではありません。

このPDFで「6 mm=陽性」としないでください。
本PDFでは、偏位量、方向の一貫性、評価条件、他のUSN所見を記録します。6 mm未満だからUSNを否定する、6 mmを超えたからUSNと確定する、という使い方はしません。

線分二等分では、偏位がUSN以外の要因でも生じることがあります。また、USNがあっても線分二等分で明確な異常が現れない場合があります。そのため、結果は必要に応じて抹消課題、視野の確認、探索行動、ADL観察などと照合します。

線分二等分試験のやり方|同じ条件で6本を実施する

実施は「評価条件を確認する → 用紙を体幹正中へ置く → 同じ教示で6本を行う → 偏位を測る」の順に固定します。再評価を目的とする場合は、検者が変わっても前回の条件を再現できるように記録します。

  1. 評価条件を確認する:覚醒、眼鏡、視野、教示理解、上肢運動など、結果へ影響しそうな要因を確認します。
  2. 姿勢を整える:安定した座位または車椅子座位で、可能な範囲で頭部・体幹を正中へ向けます。
  3. 用紙を配置する:用紙は体幹正中を基準に置きます。意図的に左右へずらす場合は、その距離を記録します。
  4. 教示を統一する:「この線のちょうど真ん中だと思うところに、短い縦線で印をつけてください」のように短い定型文で伝えます。
  5. 必要な練習は別紙で行う:教示理解を確認するために練習が必要な場合は別紙で行い、本試行6本は練習に使いません。
  6. 6本を本試行として実施する:本試行中は正誤のフィードバックや中心への誘導を行わず、6本終了後に測定します。

再評価では、姿勢、用紙位置、使用手、眼鏡、覚醒などをできるだけ前回とそろえます。条件が変わった場合は、偏位量の変化だけをみて単純に「改善」「悪化」とせず、条件差も所見に残してください。

線分二等分試験の検査用紙・記録用紙PDF

患者提示用の検査用紙と、検者用の記録・評価シートを2ページのPDFにまとめました。1ページ目は160 mmの水平線6本、2ページ目は評価条件、各試行の偏位、結果まとめ、他所見との整合、再評価方針を記録できる構成です。

線分二等分試験|検査用紙+記録・評価シート

  • 1ページ目:患者提示用 160 mm×6本
  • 2ページ目:検者用 記録・評価シート
  • 偏位mm・方向・偏位%を6試行分記録
  • 姿勢・用紙位置・使用手・眼鏡・覚醒・教示理解・視野・上肢影響を記録
  • 符号付き平均・絶対値平均・方向の一貫性を整理
  • 抹消課題・ADL観察・視野確認・再評価まで記録


検査用紙・記録用紙PDFを開く

PDFは「実際のサイズ/100%」で印刷する

線長を160 mmとして使用するため、印刷時に「ページに合わせる」「用紙に合わせて縮小」などを選ばないでください。実際のサイズ、または100%で印刷します。

記録・評価シート下部には100 mmの印刷確認バーがあります。初回使用時やプリンターを変更したときは、定規で100 mmになっていることを確認してください。100 mmになっていない場合は、線分も160 mmで印刷されていないため、偏位%の計算条件が変わります。

再評価のポイント:
PDFの版、印刷倍率、姿勢、用紙位置などをそろえてください。用紙だけ同じでも、印刷倍率が違えば線長は変わります。

偏位の測り方|160 mm線では中心は80 mm

各線は160 mmなので、真の中心は左右どちらの端から測っても80 mmの位置です。その真の中心から、本人が付けた標記までの水平距離を測ります。

線分二等分試験で残す3点(偏位量・方向・条件固定)をまとめた図版
線分二等分試験では、偏位量・方向・条件固定をセットで残すと、再評価やチーム共有が安定します。

本PDFでは、記録上のルールとして右への偏位を+、左への偏位を−とします。この符号は記録を統一するための本シート上のルールであり、すべての線分二等分試験に共通する公式表記ではありません。

  • 真の中心より右:+
  • 真の中心より左:−
  • 真の中心と一致:0 mm

例:真の中心より8 mm右へ標記した場合は「+8 mm」と記録します。

偏位%の計算|160 mm固定なら「mm×0.625」

偏位率は、偏位量が線全体の長さに対してどの程度かを示すための値です。

偏位(%)= 偏位(mm)÷ 160 × 100

160 mm固定では、次のように簡略化できます。

偏位(%)= 偏位(mm)× 0.625

たとえば、右へ8 mm偏位した場合は、8 × 0.625 = +5.0%です。

160 mm線の偏位mm・%早見表
偏位mm 偏位%
2 mm 1.25%
4 mm 2.5%
6 mm 3.75%
8 mm 5.0%
10 mm 6.25%
16 mm 10.0%

この早見表の6 mm=3.75%は換算値であり、USNの陽性基準を示すものではありません。

記録で残す3点|偏位量・方向・評価条件

再評価に必要なのは、数値だけではありません。「何mmずれたか」「どちらへずれたか」「どの条件で実施したか」の3つをセットで残します。

線分二等分試験で固定して記録する3要素
要素 記録する内容 記載例
偏位量 真の中心から標記までの距離 +8 mm、5.0%
方向 右+/左−、6本中何本が同方向か 右偏位5/6本
評価条件 姿勢、用紙位置、使用手、眼鏡、覚醒、教示理解、視野、上肢影響 座位、用紙正中、右手、眼鏡あり、覚醒良好

符号付き平均と絶対値平均は役割が違う

符号付き平均は「全体としてどちらへ偏っているか」、絶対値平均は「方向を問わずどれだけずれているか」を見るために使います。

  • 符号付き平均:右+/左−を含めて平均する
  • 絶対値平均:+/−を外し、偏位量の大きさだけを平均する

たとえば右偏位と左偏位が混在すると、符号付き平均では互いに相殺されます。そのため、平均値だけでなく6本それぞれの値と「方向が一貫しているか」も確認します。

結果の解釈|偏位だけでUSNを確定・除外しない

線分二等分の結果は、「偏位の一貫性」「評価条件」「他所見との整合」の3段階で解釈します。偏位があってもUSN以外の要因が混在することがあり、反対に線分二等分で目立つ偏位がなくてもUSNを否定できるわけではありません。

線分二等分試験の結果を読む3ステップ
確認 見ること 次の判断
1. 偏位 左右どちらへ偏位したか、6本で方向が一貫するか 平均値だけでなく各試行を見る
2. 評価条件 視野、眼鏡、教示理解、覚醒、姿勢、使用手、上肢運動 結果へ影響した要因を併記する
3. 整合 抹消課題、探索行動、ADLでの一側見落としなど 線分二等分単独で確定・除外しない

半盲・視野障害が疑われる場合

半盲などの視野障害とUSNは異なる病態ですが、併存する場合があります。線分二等分の偏位だけから両者を切り分けず、視野の確認、眼鏡の使用、探索の仕方、他の机上課題などを組み合わせます。

教示理解が不安定な場合

失語、注意低下、覚醒変動などで教示理解が安定しない場合は、偏位値そのものの解釈に注意が必要です。記録用紙では「教示理解:良好/再教示あり」「覚醒:良好/変動あり」を残し、条件を結果と分けて記載します。

上肢運動の影響がある場合

失調、振戦、巧緻運動低下などによって標記位置がぶれる場合もあります。使用手と上肢運動の影響を記録し、必要に応じて別課題との整合を確認します。

記録用紙の「評価成立」はUSNの陽性・陰性ではない

記録・評価シートにある「評価成立:概ね良好/解釈に注意」は、USNの陽性・陰性を示す欄ではありません。線分二等分の結果を、そのまま解釈しやすい条件で実施できたかを整理するための欄です。

  • 概ね良好:教示理解や覚醒などに大きな問題がなく、今回の偏位値を評価所見として扱いやすい
  • 解釈に注意:視野、教示理解、覚醒、上肢運動、姿勢などの影響があり、偏位値だけで判断しにくい

「評価成立:概ね良好」でもUSN陽性を意味しません。また、「解釈に注意」だから結果を捨てるのではなく、何が影響した可能性があるかを所見として残すことが重要です。

線分二等分試験でよくある失敗

最も避けたいのは、検査条件が違うのに数値だけを比較することです。特に次の点を確認してください。

線分二等分試験でよくある失敗と修正
失敗 問題 修正
6 mmだけで判定する 別の検査形式の基準を自作用紙へ流用してしまう 偏位・方向・条件・他所見をまとめて解釈する
印刷倍率を確認しない 160 mmの線長が変わり、%計算の前提が崩れる 100%印刷+100 mm確認バーを測る
符号付き平均だけを見る 右偏位と左偏位が相殺される 絶対値平均と6試行の方向も見る
用紙位置が変わる 再評価時に条件差と経時変化を分けにくい 体幹正中を基準にし、変更時は距離を記録する
本試行中に修正する 後半の反応がフィードバックの影響を受ける 必要な練習は別紙で行い、本試行中は誘導しない
偏位がなければUSNなしとする 他の課題・生活場面で表れるUSNを見逃す可能性がある 必要に応じて抹消課題やADL観察を追加する

カルテ記録例|次回に同じ条件を再現できるように残す

カルテには偏位の平均値だけでなく、条件・方向の一貫性・他所見・再評価方針まで残します。次回の検者が同じ条件を再現できる内容になっているかがポイントです。

線分二等分試験のカルテ記載例
項目 記載例
評価条件 座位、用紙体幹正中、右手、眼鏡あり、覚醒良好、教示理解良好
結果 160 mm×6本。右偏位5/6本。符号付き平均+8 mm、絶対値平均8 mm
所見 複数試行で右偏位を認め、方向は概ね一貫。線分二等分単独では判定せず他所見と整合を確認する。
次の一手 同条件で再評価。抹消課題およびADL場面で左側探索を確認する。

なお、上記の「+8 mm」などは記載形式を示す例です。個々の症例でUSNの有無を決める共通カットオフとして使用するものではありません。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

線分二等分試験は6 mm以上ずれたら陽性ですか?

すべての用紙で一律に「6 mm以上=USN」とは扱いません。6 mmという値は特定の線分二等分法で用いられてきた基準であり、線の本数、長さ、配置、手順などが異なる本PDFへそのまま適用するものではありません。本PDFでは、偏位量、方向の一貫性、評価条件、他所見をセットで記録します。

なぜ検査用紙の線を160 mmに固定したのですか?

A4用紙で印刷余白を確保しながら同一線長で6試行を実施し、経時比較しやすくするための本シート上の設計です。160 mm固定では、偏位%を「偏位mm×0.625」で計算できます。ただし、160 mm×6本そのものが標準化されたUSN検査という意味ではありません。

PDFは「ページに合わせる」で印刷してもよいですか?

避けてください。線長が160 mmでなくなる可能性があります。「実際のサイズ」または100%で印刷し、記録用紙下部の100 mm確認バーを定規で測ってください。

線分二等分でほとんど偏位がなければUSNを否定できますか?

否定できません。線分二等分と抹消課題などでは結果が一致しない場合があり、机上検査では目立たなくても生活場面で一側への見落としが現れることがあります。USNが疑われる場合は、他の机上課題やADL観察を組み合わせます。

次の一手|探索課題と生活場面へつなげる

線分二等分で偏位を定量化したら、次は「探索するときにどちら側を見落とすか」「生活場面で安全上の問題が起きているか」を確認すると、机上所見を臨床判断へつなげやすくなります。


参考文献

  1. Schenkenberg T, Bradford DC, Ajax ET. Line bisection and unilateral visual neglect in patients with neurologic impairment. Neurology. 1980;30(5):509-517. doi: 10.1212/WNL.30.5.509
  2. Ferber S, Karnath HO. How to assess spatial neglect-line bisection or cancellation tasks? J Clin Exp Neuropsychol. 2001;23(5):599-607. doi: 10.1076/jcen.23.5.599.1243
  3. Wilson B, Cockburn J, Halligan P. Development of a behavioral test of visuospatial neglect. Arch Phys Med Rehabil. 1987;68(2):98-102. PubMed: 3813864
  4. Kwon S, Park W, Kim MY, Kim JM. Relationship Between Line Bisection Test Time and Prognosis of Hemispatial Neglect in Stroke Patients: A Prospective Pilot Study. Ann Rehabil Med. 2020;44(4):292-300. doi: 10.5535/arm.19112
  5. Luvizutto GJ, Fogaroli MO, Theotonio RM, Moura Neto ED, Nunes HRDC, Bazan R. Norm scores of cancelation and bisection tests for unilateral spatial neglect: data from a Brazilian population. Clinics (Sao Paulo). 2020;75:e1468. doi: 10.6061/clinics/2019/e1468

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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