Barthel Index と FIM の違い【使い分け】

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ADL・QOL 評価
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この記事の内容
  1. 結論はシンプルです。
  2. Barthel Index(BI)は「基本 ADL の自立度」を素早く全体像として把握し、FIM は「介助量の質と量」を 7 段階で精緻に共有します。
  3. 相関は強いですが設計思想・感度・所要時間が異なるため、評価の目的に応じて使い分けることが重要です。
  4. PT の臨床判断とチーム連携に直結する要点だけを実務目線で整理します。
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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪

リハビリくんの実績
  1. rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設
  2. 2025 年 9 月時点:193 記事公開(月間 3 万 PV)
  3. 実務経験(医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリ等)
  4. 講師活動(脳卒中、褥瘡等をテーマに複数回講演)
  5. 脳卒中 認定理学療法士
  6. 褥瘡 創傷ケア 認定理学療法士
  7. 3 学会合同呼吸療法認定士
  8. 福祉住環境コーディネーター 2 級
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結論(先に使い分け)

急性~回復期の入口では BI を用いて「今どこまで している か」を素早く提示します。軽症帯は天井効果が出やすいため、IADL や歩行耐久( 6MWT など)で補完します。一方、介助設計や役割分担を詰める局面、加算・研究文脈では FIM が適します。尺度間の単純換算は避け、同一患者では可能な限り尺度の一貫性を保つのが原則です。

運用の軸は「 BI =全体像/退院方針」「 FIM =介助の内訳」です。個別の詳細は Barthel Index の解説FIM の解説 に譲り、本記事は“使い分け”に特化します。評価条件(補助具・観察期間・見守り有無)を必ず記録し、カンファでは役割分担を明示すると意思決定が安定します。

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違いの早見表(ざっくり比較)

まず構造差を 1 分で把握します。BI は 10 項目を 0–100 点( 5 点刻み)で合計し、基本 ADL の自立度を全体像として示します。FIM は 18 項目(運動 13・認知 5)を各 7 段階で評価し、監視~全介助までの「介助量の質と量」を可視化します。報告では目的と合計レンジの明記が不可欠です。

所要時間は概ね BI が短く(数分~ 10 分)、FIM はやや長い( 10–20 分)傾向です。軽症帯では BI に天井効果が出やすく、FIM は段階差を拾いやすい特性があります。退院支援の説明には BI、ケアの精緻化には FIM が向く、と理解すると運用が安定します。

観点 Barthel Index(BI) FIM
主目的 基本 ADL の自立度 介助量の質と量
構成 10 項目・ 0–100 点( 5 点刻み) 18 項目・各 7 段階(合計 18–126)
所要時間 短い(数分~ 10 分) やや長い( 10–20 分)
軽症帯 天井効果が出やすい 差を拾いやすい
主な用途 退院支援・縦断の全体像 介助設計・加算・研究

目的と設計思想の違い

BI は「ふだん している」基本 ADL を合計点で示す設計です。見守りや口頭指示が必要なら自立とは扱わず、補助具は「常用なら可」という原則で、退院支援の全体像提示に向きます。配点が明快で、経時変化の視認性も高いのが強みです。

FIM は各動作を 7 段階で段階づけし、監視・最小介助・中等度介助…といった内訳をチームで共有できます。運動/認知の小計が意思決定に有用で、ケアプランの具体化や加算要件の確認にも適します。詳細は FIM の解説 を参照ください。

採点・所要時間・運用の違い

BI には配点の異なる版( 0–100 点/ 0–20 点)があるため、報告では合計レンジ・評価日・補助具条件を明記します。所要は数分~ 10 分で回診ベースの縦断記録にも適します。退院方針の方向づけや家族説明に扱いやすいのが利点です。

FIM は情報統合と評価者訓練が前提で、所要は 10–20 分が目安です。運動 13・認知 5 の 2 ドメイン構造により、介助の「質」まで含めた共有が可能です。尺度途中切替は縦断比較を難しくするため、プロトコルに沿って一貫して用いると解釈の精度が上がります。

変化検出と天井効果

BI は 5 点刻みのため反応性が高く、臨床重要差の目安として 9–10 点程度(推定)が用いられます。軽症~ mRS 1–2 では天井効果が出やすいので、IADL(Lawton IADL)や歩行耐久( 6MWT など)を併用して取りこぼしを防ぎます。

FIM は軽症帯でも段階差を拾いやすく、在宅準備の微修正や介助設計に有効です。ただし評価者間一貫性が前提です。尺度間の換算は研究上は試みがあるものの、臨床では安易に行わず、同一尺度内での変化を追うことを推奨します。

場面別の使い分け(実務指針)

場面ごとの基本方針を表に整理しました。実際の運用では施設レジメ・加算要件・家族支援体制に合わせて微修正します。

場面 BI(全体像) FIM(介助の内訳)
急性期 初回で全体像と退院方向性を提示。数分~ 10 分で実施。 必要時に主要項目を抜粋し、介助度の質を把握。
回復期 週次の方針確認・経時変化の可視化に使用。 週次カンファで介助量の詰め・役割分担を具体化。
生活期 長期追跡の軸。IADL・歩行耐久を併用して補完。 必要に応じ該当項目を深掘りしボトルネックを特定。
患者・家族説明 「できていることの合計」を提示し理解を促進。 「どれだけ助けが要るか」を段階で説明し役割調整。

記載テンプレ(両尺度を併記する場合)

報告では「目的」「合計・内訳」「補助具」「評価日」を明記します。下記はコピペして調整できます。BI は全体像、FIM は介助の内訳を補足する形で併記すると、家族・多職種の合意が速くなります。

【BI】76/100 点
自立:食事・整容・排泄。要介助:移乗 10/15・階段 5/10
見守りあり。補助具:T 字杖。

【FIM】運動 68/91・認知 27/35・合計 95/126 点
最小介助:移乗(接触介助)、監視:更衣上・下
解釈:退院先 自宅(家族監視下)、IADL は Lawton IADL を併用

よくある落とし穴

①「できる」と「している」の混同( BI は している を評価)。②見守りを自立に含める誤り。③合計レンジの混在( 0–100 と 0–20 )。④途中で尺度を切替えて縦断比較不能。⑤外部説明での安易な換算。⑥軽症帯を BI のみで評価して IADL・歩行耐久を取りこぼす、などです。

評価条件(補助具・手すり有無・観察期間)をカルテに残すとスコア解釈が安定します。カンファでは「 BI =全体像」「 FIM =介助設計」という役割分担を明示し、患者・家族への説明資料は早見表を用いると理解が進みます。

参考文献(主要・外部は新規タブ)

  1. Mahoney FI, Barthel DW. Functional evaluation: The Barthel Index. Md State Med J. 1965;14:61–65. PubMed
  2. Shah S, Vanclay F, Cooper B. Improving the sensitivity of the Barthel Index. J Clin Epidemiol. 1989;42(8):703–709. DOI
  3. Keith RA, Granger CV, Hamilton BB, Sherwin FS. The Functional Independence Measure: a new tool for rehabilitation. Adv Clin Rehabil. 1987;1:6–18. PubMed
  4. Ottenbacher KJ, et al. The reliability of the Functional Independence Measure. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77:1226–1232. PubMed
  5. Stineman MG, et al. The FIM: tests of scaling assumptions, structure, and reliability. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77:115–123. PubMed
  6. Kwon S, et al. Disability measures in stroke: Relationship among the BI, FIM, and mRS. Stroke. 2004;35(4):918–923. DOI
  7. Rehabilitation Measures Database. Functional Independence Measure. Web
  8. StrokEngine. Functional Independence Measure. Web

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