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結論(先に使い分け)
急性~回復期の入口では BI を用いて「今どこまで している か」を素早く提示します。軽症帯は天井効果が出やすいため、IADL や歩行耐久( 6MWT など)で補完します。一方、介助設計や役割分担を詰める局面、加算・研究文脈では FIM が適します。尺度間の単純換算は避け、同一患者では可能な限り尺度の一貫性を保つのが原則です。
運用の軸は「 BI =全体像/退院方針」「 FIM =介助の内訳」です。個別の詳細は Barthel Index の解説 と FIM の解説 に譲り、本記事は“使い分け”に特化します。評価条件(補助具・観察期間・見守り有無)を必ず記録し、カンファでは役割分担を明示すると意思決定が安定します。
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違いの早見表(ざっくり比較)
まず構造差を 1 分で把握します。BI は 10 項目を 0–100 点( 5 点刻み)で合計し、基本 ADL の自立度を全体像として示します。FIM は 18 項目(運動 13・認知 5)を各 7 段階で評価し、監視~全介助までの「介助量の質と量」を可視化します。報告では目的と合計レンジの明記が不可欠です。
所要時間は概ね BI が短く(数分~ 10 分)、FIM はやや長い( 10–20 分)傾向です。軽症帯では BI に天井効果が出やすく、FIM は段階差を拾いやすい特性があります。退院支援の説明には BI、ケアの精緻化には FIM が向く、と理解すると運用が安定します。
観点 | Barthel Index(BI) | FIM |
---|---|---|
主目的 | 基本 ADL の自立度 | 介助量の質と量 |
構成 | 10 項目・ 0–100 点( 5 点刻み) | 18 項目・各 7 段階(合計 18–126) |
所要時間 | 短い(数分~ 10 分) | やや長い( 10–20 分) |
軽症帯 | 天井効果が出やすい | 差を拾いやすい |
主な用途 | 退院支援・縦断の全体像 | 介助設計・加算・研究 |
目的と設計思想の違い
BI は「ふだん している」基本 ADL を合計点で示す設計です。見守りや口頭指示が必要なら自立とは扱わず、補助具は「常用なら可」という原則で、退院支援の全体像提示に向きます。配点が明快で、経時変化の視認性も高いのが強みです。
FIM は各動作を 7 段階で段階づけし、監視・最小介助・中等度介助…といった内訳をチームで共有できます。運動/認知の小計が意思決定に有用で、ケアプランの具体化や加算要件の確認にも適します。詳細は FIM の解説 を参照ください。
採点・所要時間・運用の違い
BI には配点の異なる版( 0–100 点/ 0–20 点)があるため、報告では合計レンジ・評価日・補助具条件を明記します。所要は数分~ 10 分で回診ベースの縦断記録にも適します。退院方針の方向づけや家族説明に扱いやすいのが利点です。
FIM は情報統合と評価者訓練が前提で、所要は 10–20 分が目安です。運動 13・認知 5 の 2 ドメイン構造により、介助の「質」まで含めた共有が可能です。尺度途中切替は縦断比較を難しくするため、プロトコルに沿って一貫して用いると解釈の精度が上がります。
変化検出と天井効果
BI は 5 点刻みのため反応性が高く、臨床重要差の目安として 9–10 点程度(推定)が用いられます。軽症~ mRS 1–2 では天井効果が出やすいので、IADL(Lawton IADL)や歩行耐久( 6MWT など)を併用して取りこぼしを防ぎます。
FIM は軽症帯でも段階差を拾いやすく、在宅準備の微修正や介助設計に有効です。ただし評価者間一貫性が前提です。尺度間の換算は研究上は試みがあるものの、臨床では安易に行わず、同一尺度内での変化を追うことを推奨します。
場面別の使い分け(実務指針)
場面ごとの基本方針を表に整理しました。実際の運用では施設レジメ・加算要件・家族支援体制に合わせて微修正します。
場面 | BI(全体像) | FIM(介助の内訳) |
---|---|---|
急性期 | 初回で全体像と退院方向性を提示。数分~ 10 分で実施。 | 必要時に主要項目を抜粋し、介助度の質を把握。 |
回復期 | 週次の方針確認・経時変化の可視化に使用。 | 週次カンファで介助量の詰め・役割分担を具体化。 |
生活期 | 長期追跡の軸。IADL・歩行耐久を併用して補完。 | 必要に応じ該当項目を深掘りしボトルネックを特定。 |
患者・家族説明 | 「できていることの合計」を提示し理解を促進。 | 「どれだけ助けが要るか」を段階で説明し役割調整。 |
記載テンプレ(両尺度を併記する場合)
報告では「目的」「合計・内訳」「補助具」「評価日」を明記します。下記はコピペして調整できます。BI は全体像、FIM は介助の内訳を補足する形で併記すると、家族・多職種の合意が速くなります。
【BI】76/100 点
自立:食事・整容・排泄。要介助:移乗 10/15・階段 5/10
見守りあり。補助具:T 字杖。
【FIM】運動 68/91・認知 27/35・合計 95/126 点
最小介助:移乗(接触介助)、監視:更衣上・下
解釈:退院先 自宅(家族監視下)、IADL は Lawton IADL を併用
よくある落とし穴
①「できる」と「している」の混同( BI は している を評価)。②見守りを自立に含める誤り。③合計レンジの混在( 0–100 と 0–20 )。④途中で尺度を切替えて縦断比較不能。⑤外部説明での安易な換算。⑥軽症帯を BI のみで評価して IADL・歩行耐久を取りこぼす、などです。
評価条件(補助具・手すり有無・観察期間)をカルテに残すとスコア解釈が安定します。カンファでは「 BI =全体像」「 FIM =介助設計」という役割分担を明示し、患者・家族への説明資料は早見表を用いると理解が進みます。
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参考文献(主要・外部は新規タブ)
- Mahoney FI, Barthel DW. Functional evaluation: The Barthel Index. Md State Med J. 1965;14:61–65. PubMed
- Shah S, Vanclay F, Cooper B. Improving the sensitivity of the Barthel Index. J Clin Epidemiol. 1989;42(8):703–709. DOI
- Keith RA, Granger CV, Hamilton BB, Sherwin FS. The Functional Independence Measure: a new tool for rehabilitation. Adv Clin Rehabil. 1987;1:6–18. PubMed
- Ottenbacher KJ, et al. The reliability of the Functional Independence Measure. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77:1226–1232. PubMed
- Stineman MG, et al. The FIM: tests of scaling assumptions, structure, and reliability. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77:115–123. PubMed
- Kwon S, et al. Disability measures in stroke: Relationship among the BI, FIM, and mRS. Stroke. 2004;35(4):918–923. DOI
- Rehabilitation Measures Database. Functional Independence Measure. Web
- StrokEngine. Functional Independence Measure. Web