Barthel Index と FIM の違い【比較・使い分け】

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Barthel Index と FIM の違いと使い分け【 ADL 評価スケールの比較 】

“比較”を臨床の成果につなげるには、評価の使い分けと説明の型を先に揃えるのが近道です。 評価を成果へつなぐ導線づくり( PT キャリアガイド )

結論:Barthel は「短時間で ADL の全体像をつかむスクリーニング・集団比較向き」、FIM は「介助量の段階化と認知を含めた個別の変化追跡に強い」尺度です。同じ ADL 評価でも、「何をどこまで知りたいか」によって得意領域が異なります。

Barthel は病棟全体の傾向把握やリハ開始時の概況確認に、FIM は退院支援や介護負担の説明といった「個別ケースの意思決定」に向いています。本記事では両者の違いと使い分けに焦点を当て、現場で迷いがちなポイントを “判断の軸” で整理します。

ADL 評価を「目的 × 病期 × 所要時間」で整理してから選びたい場合は、まず ADL 評価スケール総論 を先に確認すると、このページの “BI と FIM の使い分け” が一気に腹落ちします。

用途の違い(場面/対象/負担)

日常診療では「評価に割ける時間」「症例数」「どのアウトカムに紐づけたいか」が施設ごとに異なります。Barthel は短時間で実施できるため、回診やカンファレンス前に ADL の概況をそろえる用途に向きます。一方で FIM は 18 項目の採点が必要ですが、その分だけ介助量の差を細かく表現できます。

また、急性期〜生活期・外来・訪問など、設定によって求められる解像度も変わります。以下の表では「主目的・評価負担・対象 / 設定・アウトカム」の 4 つの観点から、どのような場面でどちらを軸にするかを比較しました。

Barthel と FIM の用途比較(要点)
観点 Barthel Index FIM
主目的 ADL の概況を簡便に把握(集団比較・スクリーニング) ADL 自立度と介助量の段階化を精密に把握(個別追跡)
評価負担 短時間で実施しやすく、他職種にも共有しやすい やや重め( 18 項目 × 7 段階 )だが再現性が高い
対象 / 設定 急性〜生活期の広範な場面、外来・訪問で ◎ 回復期〜生活期の縦断評価、退院支援・在宅導入で ◎
アウトカム利用 ベンチマーク、症例群の比較、公的報告に適合しやすい 個別ケアプラン・介助設計・リソース調整に直結

「できる ADL」と「している ADL」(評価軸の違い)

BI と FIM の違いとしてよく挙げられるのが、評価の対象となる ADL 像です。Barthel はどちらかと言えば「最大能力に近い、できる ADL」を評価しやすく、FIM は「日常的に行っている、している ADL」と介助量をセットで捉える設計になっています。

例えば、トイレ動作が「本当は見守りでいけるが、家族は心配で常に軽介助している」場合、Barthel では高得点になりやすい一方、FIM では実際の介助量が反映されます。転倒リスクや家族負担まで含めて議論したいときは FIM、能力ポテンシャルや症例群の比較には Barthel と考えると整理しやすくなります。

尺度仕様(項目数・範囲・天井効果)

仕様面では、Barthel は 10 項目・ 0–100 点の加重配点、FIM は 18 項目・ 18–126 点の合計得点という違いがあります。項目数や採点レンジの違いは、そのまま「どの程度きめ細かく状態変化を表現できるか」に関係します。

また Barthel は高機能者では満点近傍が多くなりやすく、いわゆる天井効果に注意が必要です。FIM は 7 段階評価で介助量を表現するため、特に「見守り → 最小介助 → 中等度介助」といったグラデーションの変化を拾いやすい点が強みです。

仕様比較(スコアレンジ・項目・領域)
仕様 Barthel Index FIM
項目数 10 項目(食事、移動、排泄 等) 18 項目(運動 13 + 認知 5 )
採点レンジ 0–100(加重配点/カテゴリ別) 18–126(各項目 1–7 点の合算)
認知領域 —(原則カバーなし) 理解・表出・社会的認知等を明示的に評価
天井効果 出やすい(高機能者で満点近傍) 相対的に小さい(段階化で差を拾いやすい)
所要時間 短い(数分〜) 中等度( 10–20 分目安)

実務の使い分け(回復期/外来/施設)

現場では「常にどちらか一方だけを使う」というより、病期や目的に応じて主役と脇役を切り替えながら併用するケースが多い印象です。回復期では FIM を軸にしつつ、病院全体のベンチマークや他施設との比較には Barthel を用いる、といった使い分けが現実的です。

退院支援で FIM / BI を「介助量の言語化」「退院先の要件」「家族説明」まで落とし込むには、得点を “行動と介助” に変換する視点が有効です(具体テンプレは記事末の「次の一手」で案内しています)。

現場の使い分け(主役/脇役の切り替え)
場面 主役にしやすい 脇役で補う 記録のコツ
回復期病棟 FIM(縦断・退院調整に直結) Barthel(病棟全体の傾向把握) 「介助量%」の運用ルールをチームで固定(見守り/最小/中等度の境界)
外来・訪問 Barthel(短時間で水準把握) FIM(必要項目のみ抜粋で追跡) 変化を追う “ボトルネック項目” を先に決め、条件(補助具/環境)を固定
介護施設 Barthel(群としてのモニタリング) FIM(介助設計・配置調整に反映) 「している ADL」基準で採点し、申し送り用の具体行動(介助手順)もセットで残す

現場の詰まりどころ(よくある失敗)

BI / FIM は “尺度そのもの” よりも、採点条件のブレで解釈が崩れやすいのが落とし穴です。特にチーム運用では「できる/している」「安全配慮で介助を上乗せしている」などが混ざると、得点は上がっているのに介護負担が減らない、といったズレが起きます。

よくある失敗と対策(採点ブレを減らす)
失敗パターン 起きやすい理由 対策(運用ルール) 記録ポイント
「できる」と「している」が混在 評価者/場面で基準が変わる 院内では “している ADL” 基準に寄せる(例:カンファ用は FIM ) 採点基準(実施環境・介助者・補助具)を 1 行で固定
安全配慮の上乗せが得点に直結しない 転倒恐怖・家族不安で介助が増える 「安全配慮」由来か「能力」由来かを分けて書く “見守り理由” を具体化(ふらつき/判断/注意)
BI が満点付近で変化が見えない 天井効果(高機能帯) FIM の該当項目で段階化して追う(必要最小限で OK ) 「どの項目が 1 段階上がったか」を優先して残す

FAQ(バイアス/並行運用/変化検出)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. Barthel と FIM の主な違いは?

A. Barthel は簡便で集団比較・スクリーニングに強く、FIM は介助量の段階化と認知領域を含めた縦断評価に強い点が大きな違いです。前者は「どのくらい自立しているかの概況把握」、後者は「どの程度の介助がどの場面で必要かの具体化」に向いています。

Q2. 並行運用はあり?

A. 並行運用は十分にありです。スクリーニングや行政・学会報告には Barthel を、ケア方針や退院支援の設計には FIM を用いるなど、役割分担を明確にすると評価負担を増やし過ぎずに済みます。

Q3. 変化検出力は?

A. 高機能帯では Barthel は天井効果が出やすく、変化が得点に反映されにくいことがあります。FIM は各項目 7 段階で介助量を表現するため、「見守り → 最小介助 → 中等度介助」といった細かなステップの変化や、認知機能の変化も把握しやすいです。

次の一手(関連)

参考文献

  • Mahoney FI, Barthel DW. Functional Evaluation: The Barthel Index. Md State Med J. 1965;14:61–65.
  • Shah S, Vanclay F, Cooper B. Improving the sensitivity of the Barthel Index. J Clin Epidemiol. 1989;42(8):703–709. doi:10.1016/0895-4356(89)90065-6.
  • Keith RA, Granger CV, Hamilton BB, Sherwin FS. The Functional Independence Measure. Adv Clin Rehabil. 1987;1:6–18. PubMed
  • Graham JE, et al. The Uniform Data System for Medical Rehabilitation. Arch Phys Med Rehabil. 2014;95(11):2103–2113. PMC

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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