評価“だけ”で終わらせないための実務ガイドです。ブレーデンスコア(6–23 点)を 3 ステップでケアに接続し、再評価までを 1 枚で運用できるテンプレを用意しました。急性期/回復期/在宅のいずれでも、院内規定に沿ってカスタマイズしてください。
はじめに:この記事の使い方
臨床スキルと並行してキャリア設計の考え方もまとめています(内部リンクは同一タブで開きます)。
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本記事は「評価の総論」ではなく、ブレーデンの運用手順に特化します。弱い項目を素早く特定し、推奨ケアにマッピングして、再評価の頻度・記録方法までを 1 ページで統一。現場のフローに合わせて語句や順序を置換してご利用ください。
評価の基本やカットオフの考え方は総論記事を参照し、ここでは“使う順”に並べています(→ ブレーデンスケール総論)。
ステップ 1|スコアリングと弱点フラグ
採点は「直近 24 時間」の実態に基づき、最も当てはまる記述に丸めます。総合点と同時に最低点の項目=弱点にフラグを立てます(例:湿潤 2、摩擦・ずれ 1)。同一対象は同じ時間帯で評価し、カンファで解釈を共有してばらつきを減らします。
弱点が 2 項目以上あるときは「外力」側(摩擦・ずれ/活動・移動)を先に是正するのが近道です。移乗・離床の手順が整うと、湿潤や栄養の改善効果も波及します。
ステップ 2|弱点→推奨ケアへのマッピング
弱点ごとに“すぐやるケア”をプリセットしておくと現場実装が速くなります。下表は最小構成の例です。病棟の資機材・導線に合わせて追記してください。
弱点項目 | すぐやるケア | 補足 |
---|---|---|
湿潤(失禁・発汗) | 皮膚保護材/吸収材、失禁誘導、陰部洗浄の標準化 | マセレーション予防。夜間ルーチンを固定し逸脱を監視 |
活動・移動 | 離床メニュー設定(日内 3 回以上)、看護×リハの声かけ固定 | 活動が低いとずれ力↑。マットレス再検討も同時に |
摩擦・ずれ | スライディングシート/リフトでの持ち上げ移乗、頭高位の設定見直し | 体圧“値”だけでなく、ずれ力を必ず減らす(体圧管理の基礎) |
栄養 | 栄養スクリーニング→必要時リファー、蛋白・エネルギー最適化 | 創傷治癒のボトルネック。外来/在宅でも継続評価 |
感覚知覚 | 体位変換頻度の増加、保護具追加、痛み評価 | 覚醒レベル・鎮静で日内変動あり。時間帯を固定して採点 |
ステップ 3|再評価の頻度と記録
原則は「入院・入所時/状態変化時/転棟・転院時」。急性期は 48 時間ごと等を運用例として設定します(院内規定を最優先)。総合点の推移だけでなく、弱点項目の改善(例:湿潤 2 → 3)を短評で残すとカンファが迅速化します。
評価表は病棟カスタム版(ラミネート可)を常備し、ラウンドや処置回診に同伴させます:PDF ダウンロード
よくある落とし穴(Q&A)
Q. 留置カテ中で失禁は無い。湿潤は高得点で良い?
A. 皮膚湿潤リスクは残るため、過大評価しない(皮膚保護と観察を継続)。
Q. 15–18 点の軽度リスクは“何もしない”で良い?
A. 軽度は介入の閾値。教育・寝具・離床メニューなど、軽微でも必ず対策を。
参考文献
- Bergstrom N, Braden BJ, Laguzza A, Holman V. The Braden Scale for Predicting Pressure Sore Risk. Nurs Res. 1987;36(4):205–210. PubMed / DOI
- Agency for Healthcare Research and Quality. Preventing Pressure Ulcers in Hospitals: Braden Scale. AHRQ
- Huang C, et al. Predictive validity of the Braden Scale for pressure injury risk: systematic review and meta-analysis. Nurs Open. 2021;8(5):2194–2207. PubMed / DOI
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