はじめに:この記事の使い方
この記事は、Braden スコアを付けたあとに「何を優先し、どう記録し、いつ見直すか」をそろえるための実務ガイドです。採点だけで終わらせず、弱点項目をそのままケアと申し送りに変える流れを整理し、ラウンドで使える 1 枚の記録シートまでつなげます。
本記事は Braden 関連 3 本立てのうち「運用プロトコル編」です。採点の基本や点数の見方は総論、スコア帯ごとの優先順位は別記事に任せ、本稿では弱点項目 → 即時ケア → 記録 → 再評価の順番を迷わず回すことに絞ります。
評価の型は、個人の努力だけで自然にそろうとは限りません。教育体制が薄い、相談相手が少ない、記録の見本がそろっていない環境では、採点後の運用が人によってずれやすくなります。
本稿では、病棟や在宅でそのまま使いやすいように、弱点項目を残す → 今日の 1 手を決める → 1 行で共有するという実務順に沿って整理します。関連する評価スケールの全体像は 評価ハブ にまとめています。
ステップ 1|スコアリングと弱点フラグ
採点は「直近 24 時間」の実態に基づき、最も当てはまる記述に丸めます。総合点だけで終わらせず、最低点の項目=弱点に必ず印を付けてください。たとえば「湿潤 2」「摩擦・ずれ 1」のように、弱点項目と点数をセットで残すと、その後のケアと記録がそろいやすくなります。
同一対象は同じ時間帯で評価し、解釈が割れやすい項目はカンファレンスで確認します。まずは「何点だったか」よりも「どこが一番ボトルネックか」をチームで共有することが重要です。
現場の詰まりどころ:弱点は分かるのに “ 次の一手 ” が揃わない
運用が止まる典型は 3 つです。①弱点が複数あると優先順位が揺れる、②看護とリハで手順がずれる、③記録が「何をしたか」で止まり「効いたか」につながらない。本稿はこの詰まりを、弱点 → ケア → 記録 → 再評価の順番固定で解消します。
ステップ 2|弱点→推奨ケアへのマッピング
弱点ごとに「すぐやるケア」を決めておくと、ラウンド後の手戻りが減ります。下表は、病棟共通で回しやすい最小構成の例です。資機材や導線に応じて微調整しつつ、まずは病棟内で言葉をそろえることを優先してください。
| 弱点項目 | すぐやるケア | 補足(チェック観点) |
|---|---|---|
| 感覚知覚 | 痛み・違和感の確認、体位変換頻度の見直し、保護具の追加 | 覚醒レベルや鎮静で日内変動が出やすいため、評価時間帯をそろえて変化を追います。 |
| 湿潤 | 皮膚保護材、吸収材、失禁誘導、洗浄と保護の手順固定 | 失禁だけでなく、発汗や洗浄後の湿りも含めて見ます。夜間ルーチンを固定すると逸脱を減らしやすくなります。 |
| 活動/可動性 | 離床量の確認、体位変換手順の統一、姿勢崩れの早期修正 | 「動けない」だけでなく「同じ場所に圧が残る」状態を捉え、保持の質まで確認します。 |
| 栄養 | 栄養スクリーニング、必要時リファー、摂取量と体重の確認 | 創傷治癒の土台になるため、経口摂取量、体重変化、補助食品の使用状況をあわせて見ます。 |
| 摩擦・ずれ | スライディングシートやリフトでの持ち上げ移乗、頭高位設定の見直し | 体圧の数値だけでなく、前滑りや擦れのルートを減らせているかを優先して確認します。 |
よくある失敗:湿潤だけ強化して “ ずれ ” が置き去りになる
湿潤対策は始めやすい一方で、離床、移乗、頭高位設定が未整備だと、外力で皮膚が壊れるルートが残ります。弱点が複数あるときは、まず摩擦・ずれ/活動・可動性のような「外力」に関わる項目を整え、そのうえで湿潤と栄養を積むほうが結果につながりやすいです。
ステップ 3|再評価の頻度と記録
再評価の基本は、入院・入所時、状態変化時、転棟・転院時です。急性期では 48 時間ごとなど、現場ルールをテンプレに最初から印字しておくと迷いません。総合点だけでなく、どの弱点がどう変わったかを追うと、カンファレンスの質が上がります。
スコア帯が変わったときは、Braden スコア別の優先順位に沿って、ケアの強さと責任分担も更新します。大事なのは「点数が変わった」だけで終わらせず、「次に何を変えるか」まで 1 行で残すことです。
記録の型: “ 弱点(点数)→ ケア → 変化 ” を 1 行で残す
記録は「弱点(点数)→ 実施ケア → 変化」の 1 行型にすると、引き継ぎが速くなります。たとえば、摩擦・ずれ 1:移乗を持ち上げへ統一+頭高位 20° に固定 → 発赤の拡大なし、翌日も再評価のように書くと、申し送りが「やったこと」だけでなく「効いたか」までつながります。
運用 4 ステップ図版と 5 分フロー記録シート(PDF)
まずは図版で全体像をつかみ、そのあとに PDF で実際の記録へ落とし込む流れがおすすめです。図版は、弱点 → ケア → 記録 → 再評価の 4 ステップを一目で確認するための要約版として使えます。
今回の配布物は、弱点 → ケア → 記録 → 再評価を 1 枚でそろえるためのフロー型シートです。ラウンドや処置回診に持ち出しやすいように、採点、弱点整理、即時ケア、今日の記録、再評価・申し送りまでを A4 1 枚にまとめています。
紙で回す場合も、最低限「弱点項目」「今日のケア」「1 行記録」が残るようにしておくと、電子記録への転記が楽になります。配布ページは記事から使う前提にし、検索には載せすぎない運用が安全です。
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よくある落とし穴(Q&A)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
留置カテ中で失禁は無い。湿潤は高得点で良い?
皮膚湿潤リスク自体は残るため、過大評価しないようにします。失禁がなくても、発汗、微量の漏れ、洗浄後の湿りは起こりえます。迷うときは「皮膚所見の実態」を優先し、日内で最も多い状態に合わせて丸めます。
15〜18 点の軽度リスクは “ 何もしない ” で良い?
軽度は「まだ大丈夫」ではなく、介入を始める合図です。教育、寝具、離床メニュー、移乗手順の固定など、負担の小さい対策でも 1 つは実施し、次回の弱点点数で効いたかを確認します。
弱点が 3 つ以上あるとき、どれから手を付ける?
原則は「外力 → 皮膚環境 → 体の材料」の順です。まず摩擦・ずれ、活動・可動性を整え、それから湿潤、最後に栄養へ進むと、対策の方向がぶれにくくなります。
点数が同じなら、ケアも毎回同じで良い?
同じ点数でも、離床量、体位変換の質、皮膚所見、夜間の湿潤状況が変われば、必要なケアは変わります。総合点だけでなく、どの弱点が残っているかを見て、今日の 1 手を更新することが重要です。
次の一手(行動)
このページで運用の型を押さえたら、次は全体フローとスコア帯別の優先順位を確認すると迷いにくくなります。
参考文献
- Bergstrom N, Braden BJ, Laguzza A, Holman V. The Braden Scale for Predicting Pressure Sore Risk. Nurs Res. 1987;36(4):205-210. PubMed / DOI
- Agency for Healthcare Research and Quality. Preventing Pressure Ulcers in Hospitals: Braden Scale. AHRQ
- Huang C, Ma Y, Wang C, Jiang M, Yuet Foon L, Lv L, et al. Predictive validity of the Braden Scale for pressure injury risk assessment in adults: a systematic review and meta-analysis. Nurs Open. 2021;8(5):2194-2207. PubMed / DOI
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


