コンフォートカフ II の使い方|人工呼吸器併用(ALS・筋ジス)での排痰を安全に回すコツ

臨床手技・プロトコル
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コンフォートカフ II(排痰補助装置)の要点|人工呼吸器併用( ALS ・筋ジス )で「安全に回す」ための結論

臨床の不安は「手順」より先に、判断軸(安全基準・観察・記録)をそろえると早いです。 PT キャリアガイドを見る(全体の流れ)

コンフォートカフ II は、陽圧→陰圧の切り替えで咳を補助する MI-E( mechanical insufflation-exsufflation )の一種で、分泌物の排出を助ける装置です。オシレーション(振動)や Cough-Sync(同調)などの機能も搭載され、患者さんの状態に合わせた使い分けができます。

人工呼吸器を併用している ALS/筋ジスの患者さんでは、意思疎通が難しいことも多く、「設定の正解」よりも ① 事前準備、② バイタルと呼吸の観察、③ 失敗パターンの回避、④ 吸引まで含めた一連の流れを標準化したほうが安全に回ります。

コンフォートカフ II でできること(機能の整理)

本装置は、気道へ陽圧と陰圧を交互に供給して咳を補助し、気道内分泌物の移動と排出を促します。適応は「自力で痰を出しにくい成人・小児」で、医療施設および在宅での使用が想定されています(詳細は公式資料を参照してください)。

  • MI-E(自動/手動):陽圧→陰圧の切り替えで咳を補助します。
  • オシレーション(振動):吸気・呼気・両方に振動を付加して分泌物の移動を促します。
  • Cough-Sync(同調):自動モードで患者さんの呼吸に合わせ、同調性を高めます。
  • パーカッサー:エアパルスで振動を与え、必要に応じて胸部ラップ(ベスト)も併用します。

参考:製品概要(メーカー)/添付文書(概要)
排痰補助装置 コンフォートカフ II(製品ページ)添付文書(概要 PDF)

人工呼吸器併用( ALS ・筋ジス )で「特に効きやすい」場面

神経筋疾患では咳嗽力が低下し、分泌物の貯留が無気肺や感染の引き金になりやすいです。MI-E は cough peak flow( CPF )が低い患者さんで用いられ、在宅・長期管理でも使用パターンが報告されています。

  • 人工呼吸器併用で 気道クリアランスが追いつかない
  • 吸引しても 奥の分泌物が上がってこない/無気肺を繰り返す
  • 湿性嗄声、呼吸音の粗さ、 SpO2 の落ち込みなど 貯留のサインがある
  • 意思疎通困難で「出せた感」が確認できず、観察指標が必要

禁忌・注意事項と「中止基準」の考え方

MI-E は概ね忍容性が高いとされますが、病態によりリスクが上がるため、禁忌と注意事項を先に押さえるのが安全です。小児向けの院内ガイドラインでは、少なくとも「気胸」「上気道手術直後」を絶対禁忌として挙げ、循環動態不安定や術後などを注意事項としています。

  • 絶対禁忌の例:気胸、上気道手術直後
  • 注意事項の例:循環動態不安定、肋骨・顔面骨折、逆流、術後(腹部など)、過去の圧外傷など

意思疎通が難しい患者さんほど、中止基準(見た目とバイタル)をチームで共有しておくと安全です。

中止・中断を検討する目安(成人の現場用)
観察 目安 まずやること
SpO2 急な低下、回復が遅い 休止、酸素化・換気・回路リーク確認、吸引・体位調整
循環 著明な頻脈/徐脈、血圧変動、冷汗 中断し報告(迷走神経反射も念頭)
胸部症状 急な胸痛、呼吸困難の悪化 中断し評価(気胸など除外)
気道反応 喘鳴増悪、上気道閉塞が疑わしい 圧・時間を下げる/同調を調整/別手段へ切替
分泌物 血痰増加、粘稠痰で詰まりやすい 中断し吸引・加湿・水分・薬剤・手技を見直す

関連:呼吸リハの全体像(体位・呼吸介助・排痰の組み立て)は 呼吸療法(コンディショニング) で整理しています。

人工呼吸器併用での「運用フロー」|設定より先に決める 6 つのこと

装置の操作手順そのものは施設ルールと取扱説明書が優先です。本稿では、現場で事故が起きやすい「詰まりどころ」を潰すために、運用フロー(前提条件)を先にそろえます。

  1. 目的:分泌物を「奥から動かす」のか「上がった痰を出し切る」のか
  2. インターフェース:気管切開(直結)か、マスクか(リークと耐圧が変わる)
  3. 呼吸器との関係:併用方法(回路の切替、加湿、 PEEP 影響)と役割分担
  4. 前処置:加湿・ネブライザ・体位ドレナージ・胸郭可動性の準備
  5. 吸引の準備:カテ、陰圧、カフ管理、閉鎖式の有無、吸引のタイミング
  6. 観察と記録: SpO2 /呼吸音/痰量・性状/呼吸器アラーム/表情・努力感

設定は「弱く始めて、目的に合わせて上げる」|意思疎通困難でも崩れにくい考え方

MI-E は「圧」と「時間」と「同調(トリガ)」の組み合わせで効果と負担が変わります。最初から強くするより、弱めから開始して、痰の動きとバイタルで段階的に調整するほうが、意思疎通が難しいケースでも安全です。

  • 圧(陽圧・陰圧):陰圧を相対的に強める運用が報告されますが、上気道閉塞や不快感、気道反応も考慮が必要です。
  • 時間:吸気より呼気をやや長くする運用が報告されています。
  • 同調:自発呼吸が残る患者さんでは同調が有用なことがあります。
  • オシレーション:機種により搭載されますが、総説では「有効性を支持する根拠が十分でない」点にも触れられています。使う場合は目的(痰をゆるめる/動かす)を明確にし、反応を見て継続可否を判断します。

「効いたかどうか」を意思疎通に頼れないときは、痰の出現(吸引量)呼吸音の変化 SpO2 の安定呼吸器アラームの減少など、チームで合意した指標で評価します。

よくある失敗と対策(人工呼吸器併用で詰まりやすいポイント)

コンフォートカフ II 運用で起きやすい失敗と対策(呼吸器併用を想定)
失敗(よくある) 起きる理由 対策
痰が上がらない 前処置不足、体位が合わない、粘稠痰、加湿不足 体位・呼吸介助・加湿・ネブライザを先に整える。必要なら一時的に「動かす手技」を追加する。
リークで圧が乗らない マスクフィット不良、回路接続の甘さ、カフ不十分 密閉を最優先。気管切開ならカフ管理と接続確認、マスクならフィットとサイズ調整。
SpO2 が下がる 分泌物が移動して一時的に閉塞、過換気、同調不良 回数・強度を下げて休止を入れる。吸引タイミングを早める。必要時は医師へ報告し方針調整。
上気道がつぶれる感じ(特に球麻痺) 喉頭反応・上気道閉塞の関与 圧・時間・同調を調整し、耐えられる範囲で最適化する。評価(喉頭)も検討する。
「やりっぱなし」で吸引が遅れる 上がった痰を回収できない 最初に吸引準備を完成させる。 1 セットごとに「回収」を挟む。

多職種で分担すると安全| PT が握ると強い領域

  • PT :体位・胸郭の使い方・排痰フロー設計、反応の観察と再評価、記録の標準化
  • 看護:吸引と気管切開管理、急変時の初動
  • 医師:適応・リスク判断、禁忌の除外、呼吸器設定方針
  • 臨床工学技士:呼吸器回路・安全管理、併用手順の整備

意思疎通が難しい患者さんほど、「中止基準」「吸引のタイミング」「記録項目」の合意が安全に直結します。

よくある質問( FAQ )

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Q1. オシレーション(振動)は毎回使ったほうがいいですか?

「毎回が正解」ではありません。総説では、オシレーションの有効性を支持する根拠が十分でない点にも触れられています。まずは「痰を動かしたいのか」「出し切りたいのか」を決め、反応(痰量・呼吸音・ SpO2 )で継続可否を判断します。

Q2. 意思疎通が難しい患者さんで、効果判定は何を見ればいいですか?

痰の回収(吸引量・性状)、呼吸音(粗さの軽減)、 SpO2 の安定、呼吸器アラームの減少、表情・努力感の変化を「チームで決めたセット」で評価します。単一指標に寄せず、複数の観察を束ねるほうが安全です。

Q3. 気管切開とマスクで考え方は変わりますか?

変わります。密閉性(リーク)と気道抵抗の条件が変わるため、同じ設定でも効果・負担が変わります。まずはリークを減らし、弱めから反応を見て調整するのが安全です。

Q4. 「痰が上がるのに苦しそう」なときはどうしますか?

中断し、休止を入れて回収(吸引)まで含めて流れを見直します。過換気や同調不良、分泌物移動による一時的閉塞が起きることがあるため、回数・強度を下げて再評価し、必要なら医師へ報告して方針を再設定します。

まとめ|「禁忌の除外→準備→段階設定→回収→記録→再評価」で安全に回す

コンフォートカフ II は、呼吸器併用の ALS/筋ジス患者さんで「分泌物の移動→回収」を助ける強力な選択肢です。一方で、意思疎通が難しいほど設定の正解探しは危険になりやすいので、禁忌・中止基準、吸引まで含めたフロー、観察と記録を先に標準化するのが安全です。

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参考文献・資料

  1. Chatwin M, Wakeman RH. Mechanical Insufflation-Exsufflation: Considerations for Improving Clinical Practice. J Clin Med. 2023;12(7):2626. doi: 10.3390/jcm12072626. ( PubMed : 37048708
  2. Willis LD. 2022 Year in Review: Mechanical Insufflation-Exsufflation. Respir Care. 2023. doi: 10.4187/respcare.10423. ( PubMed : 39889140
  3. Chatwin M, et al. Long-Term Mechanical Insufflation-Exsufflation Cough Assistance in Neuromuscular Disease: Patterns of Use and Lessons for Application. Respir Care. 2020;65(2):135-143. doi: 10.4187/respcare.06882. ( PubMed : 31690614
  4. Sydney Children’s Hospitals Network. Mechanical Insufflation-Exsufflation ( MI-E ) use in Physiotherapy. Guideline No: 2020-130 v2.0. 2025. PDF
  5. カフベンテックジャパン株式会社. 排痰補助装置 コンフォートカフ II(製品情報). 公式ページ
  6. コンフォートカフ II 添付文書(概要). PDF

著者情報

rehabilikun(理学療法士) rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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