廃用症候群リハビリテーション料の算定要件・点数・記録例

制度・実務
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廃用症候群リハビリテーション料は「廃用による能力低下」を制度上整理する区分です

廃用症候群リハビリテーション料は、急性疾患等に伴う安静により、基本動作、ADL、言語聴覚能力などが低下した患者に対して、個別療法としてリハビリテーションを行う場合に算定する区分です。この記事では、PT・OT・STが迷いやすい算定対象、点数、標準的算定日数、施設基準、他区分との分け方、記録例を整理します。

廃用症候群そのものの評価、離床、運動療法を知りたい場合は、臨床面を整理した 廃用症候群のリハビリ を確認してください。本記事では、制度上の算定判断と記録の残し方に絞って解説します。

先に全体像を確認したい方へ

疾患別リハ 5 区分の全体像を見る

関連:標準的算定日数とは?

対象患者は「急性疾患等に伴う安静」と「一定以上の能力低下」で確認します

廃用症候群リハビリテーション料の対象は、急性疾患等に伴う安静によって、基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力、日常生活能力の低下を来している患者です。治療開始時に FIM 115 以下、BI 85 以下の状態等が、一定程度以上の能力低下の目安として示されています。

ただし、FIM や BI の点数だけで機械的に判断するのは危険です。臨床では、発症前 ADL、入院までの安静期間、治療開始時の能力低下、廃用により低下した動作、リハビリで改善を狙う活動を並べて確認します。

点数は I・II・III の3区分で確認します

廃用症候群リハビリテーション料は、施設基準に応じて I・II・III に分かれます。令和 8 年度の医科点数表では、1 単位あたり I は 180 点、II は 146 点、III は 77 点です。PT・OT・STが実施する場合だけでなく、医師が直接訓練を実施した場合も、それぞれの区分に応じて算定できます。

現場では、点数だけでなく、自施設がどの施設基準を届け出ているかを確認することが先です。廃用症候群リハビリテーション料は、脳血管疾患等リハビリテーション料の届出状況と連動して整理されます。

廃用症候群リハビリテーション料の区分と点数
区分 1単位あたりの点数 確認ポイント
廃用症候群リハビリテーション料 I 180 点 脳血管疾患等リハ I の届出状況と職種配置を確認する
廃用症候群リハビリテーション料 II 146 点 脳血管疾患等リハ II の届出状況と職種配置を確認する
廃用症候群リハビリテーション料 III 77 点 脳血管疾患等リハ III の届出状況と実施体制を確認する

施設基準は脳血管疾患等リハビリテーション料の届出と合わせて見ます

廃用症候群リハビリテーション料の施設基準は、脳血管疾患等リハビリテーション料 I・II・III の届出と連動して整理されます。たとえば、廃用症候群リハビリテーション料 I では、脳血管疾患等リハビリテーション料 I を届け出ていることが前提になります。

実務では「廃用のために別の体制を新たに作る」というより、自施設の脳血管リハ届出区分、専任医師、専従・専任療法士、計画書説明体制、データ提出加算の有無を確認する流れになります。医事課、リハ科、施設基準担当で同じ前提を持っておくと、算定判断のズレを減らせます。

標準的算定日数は120日です

廃用症候群リハビリテーション料は、廃用症候群の診断または急性増悪から 120 日を限度として算定します。120 日を超えても、治療継続により状態の改善が期待できると医学的に判断される場合など、別に定める場合には算定できることがあります。

120 日を超える場合は、漫然と継続するのではなく、改善見込み、FIM・BI の変化、継続理由、介護保険リハへの移行可能性を記録に残します。制度上の上限と、臨床上の必要性を分けて説明できる状態にしておくことが重要です。

廃用症候群リハビリテーション料の算定日数と記録の整理
時期 制度上の見方 現場で残したい記録
開始時 急性疾患等に伴う安静と能力低下を確認 発症・急性増悪、安静期間、FIM・BI、廃用による低下
120日以内 標準的算定日数内として算定 実施内容、開始・終了時刻、目標、月ごとの評価
120日超 条件により継続可。単位数の整理が必要 継続理由、改善見込み、FIM・BI の変化、介護保険移行の検討

入院初日から算定できる場合もあります

廃用症候群リハビリテーション料では、急性疾患等に伴う安静が、必ずしも入院後に生じている必要はありません。疑義解釈では、入院前に発症した疾患による安静期間により、入院時点で FIM 等の要件を満たす廃用を認めた場合、入院初日であっても算定できると整理されています。

入院初日から算定する場合ほど、入院前の経過を丁寧に残す必要があります。発症日、入院までの安静期間、入院時 ADL、FIM・BI、廃用と判断した理由、他区分ではなく廃用症候群リハで整理する理由を、医師の判断とリハ評価の両方で確認しておきます。

脳血管リハ・運動器リハ・呼吸器リハとは「主たる治療対象」で分けます

廃用症候群リハビリテーション料で迷いやすいのは、他の疾患別リハビリテーション料との境界です。基本は、患者の疾患や状態を総合的に見て、最も適切な区分を算定します。

現場では「廃用があるか」ではなく、「今回のリハビリで主に何を治療対象としているか」で整理すると判断しやすくなります。肺炎後の全身低下、術後安静による ADL 低下、急性疾患後の移乗・歩行能力低下などは廃用で説明しやすい一方、麻痺、高次脳機能障害、骨折部位、呼吸障害そのものが主課題であれば、他区分を優先して考えます。

廃用症候群リハと他の疾患別リハの分け方
迷う場面 廃用症候群リハで考えやすい場合 他区分を優先しやすい場合 記録のポイント
肺炎後に活動性が低下 安静後の筋力低下、移乗・歩行・ADL 低下が主課題 呼吸困難、喀痰、換気障害など呼吸障害への介入が主課題 安静期間、呼吸状態、ADL 低下の主因を分けて書く
脳梗塞後に ADL が低下 神経症状は軽微で、安静による全身機能低下が主課題 麻痺、感覚障害、高次脳機能障害、嚥下障害が主課題 神経症状と廃用による低下を分けて評価する
骨折・術後に離床が遅れた 原疾患よりも安静後の全身性低下が主課題 骨折部位、術後機能、荷重制限への介入が主課題 運動器疾患としての治療対象と廃用を区別する
入院前から寝たきり傾向 急性疾患等に伴う安静で入院時にさらに能力低下を認める 慢性的な低活動のみで、急性疾患等との関連が弱い 発症前 ADL、入院時 ADL、低下幅を明確にする

診療録・計画書・評価表では「廃用と判断した理由」を残します

疾患別リハビリテーションでは、機能訓練の内容の要点、実施時刻、リハビリテーション実施計画書、効果判定などを記録します。廃用症候群リハビリテーション料では、これに加えて、廃用症候群に係る評価表を用いて月ごとに評価し、診療報酬明細書に添付する、または同様の情報を摘要欄に記載し、その写しを診療録に添付することが示されています。

療養病棟や地域包括ケア病棟では、肺炎後、術後、感染症後などで活動性が落ちた患者に対して「廃用」と表現する場面が多くあります。しかし、記録上は「廃用あり」だけでは弱いため、急性疾患等、安静の経過、能力低下、FIM・BI、個別療法の目的、月ごとの変化をつなげて記載します。

廃用症候群リハビリテーション料で残したい記録の型
記録項目 書く内容 記載例
急性疾患等 廃用の契機となった疾患、急性増悪、治療経過 肺炎加療に伴い臥床時間が増加
安静期間 入院前・入院後を含めた活動制限の経過 発症後 5 日間、病前より歩行機会が大幅に減少
能力低下 FIM・BI、基本動作、ADL、移乗、歩行など BI 80 点。移乗と歩行で介助量増加
区分選択 他区分ではなく廃用で整理する理由 呼吸症状は安定し、主課題は安静後の筋力低下と ADL 低下
月ごとの評価 廃用症候群に係る評価表、改善度、継続理由 BI 80→90 点。歩行耐久性改善を認め、屋内歩行自立を目標に継続

5分確認フロー:廃用で算定してよいか迷うときの見方

廃用症候群リハビリテーション料でよくある失敗は、「廃用があるから廃用で算定する」と短絡してしまうことです。多くの入院患者には何らかの活動性低下がありますが、制度上は、急性疾患等に伴う安静、一定以上の能力低下、主たるリハビリ対象、他区分との関係を整理する必要があります。

医師、療法士、医事課で判断が分かれる場合は、以下の順番で確認すると、記録の抜けを減らしやすくなります。

廃用症候群リハビリテーション料の算定判断5分フロー
廃用症候群リハビリテーション料で算定判断に迷うときの5分確認フロー
廃用症候群リハビリテーション料の 5 分確認フロー
順番 確認すること 判断の目安
1 急性疾患等に伴う安静があるか 入院前を含め、疾患・治療経過に伴う活動制限を確認
2 能力低下が一定以上あるか FIM 115 以下、BI 85 以下などを確認
3 主課題が廃用に関連する症状か 筋力低下、耐久性低下、移乗・歩行・ADL 低下などを整理
4 他区分を優先すべき病態がないか 脳血管、運動器、呼吸器などの主病態と比較
5 月ごとの評価と継続理由を残せるか 評価表、FIM・BI、目標、改善見込みを記録

記録例:肺炎後の廃用で算定を検討する場合

肺炎治療に伴う臥床で移乗・歩行能力が低下した患者では、呼吸症状への直接的な介入が主課題なのか、安静後の全身性低下と ADL 低下が主課題なのかを分けて書きます。呼吸状態が安定し、主な介入目標が基本動作・歩行・ADL の再獲得であれば、廃用症候群リハビリテーション料として整理しやすくなります。

一方、酸素化不良、喀痰、換気障害、呼吸困難への介入が中心であれば、呼吸器リハビリテーション料を検討する場面もあります。記録では、単に「肺炎後廃用」とせず、何を治療対象にしているかを具体化することが大切です。

廃用症候群リハビリテーション料の記録例
場面 記録例 補足
初回評価 肺炎加療に伴い臥床時間が増加。病前は屋内独歩自立であったが、入院時は移乗見守り、歩行は軽介助を要する。BI 80 点。 病前 ADL と入院時 ADL の差を示す
区分選択 呼吸状態は安定し、主課題は安静後の筋力低下、立位耐久性低下、歩行能力低下であるため、廃用症候群リハビリテーション料で介入する。 他区分との違いを残す
月次評価 BI 80 点から 90 点へ改善。移乗は自立、歩行は病棟内見守りまで改善。屋内歩行自立と退院後生活動作の安定を目標に継続する。 改善度と継続理由をつなげる

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

廃用症候群リハビリテーション料は入院初日から算定できますか?

入院初日でも算定できる場合があります。入院前に発症した疾患による安静期間により、入院時にすでに FIM 等の要件を満たす廃用を認めた場合は、入院初日であっても算定できると整理されています。ただし、入院前の経過、安静期間、入院時 ADL、FIM・BI、廃用と判断した理由を記録に残すことが重要です。

FIM 115 以下または BI 85 以下であれば必ず算定できますか?

いいえ。FIM 115 以下、BI 85 以下は、一定程度以上の能力低下を示す目安ですが、それだけで機械的に算定できるわけではありません。急性疾患等に伴う安静、廃用による能力低下、個別療法の必要性、他の疾患別リハとの関係を合わせて確認します。

脳血管疾患等リハビリテーション料と迷う場合はどう考えますか?

麻痺、高次脳機能障害、嚥下障害など、脳血管疾患に直接関連する障害への介入が主であれば、脳血管疾患等リハビリテーション料を優先して検討します。一方、神経症状は軽微で、急性疾患等に伴う安静による筋力低下、耐久性低下、移乗・歩行・ADL 低下が主課題であれば、廃用症候群リハビリテーション料として整理しやすくなります。

120日を超えたらリハビリは算定できませんか?

120日を超えても、別に定める患者について、治療継続により状態の改善が期待できると医学的に判断される場合などは算定できる場合があります。ただし、単位数の上限や要介護被保険者等への取り扱いを確認し、改善見込み、FIM・BI、継続理由、介護保険リハへの移行可能性を記録します。

廃用症候群に係る評価表は毎回必要ですか?

毎回の実施記録とは別に、月ごとの評価として整理します。廃用症候群リハビリテーション料では、廃用症候群に係る評価表を用いて月ごとに評価し、診療報酬明細書への添付、または摘要欄への記載と診療録への写しの添付が示されています。

次の一手

廃用症候群リハビリテーション料を整理したら、次に確認したいのは、疾患別リハ全体の区分選択と標準的算定日数です。まずは 疾患別リハビリテーション料の 5 区分 で全体像を確認し、120日を超える患者では 標準的算定日数と13単位の考え方 を合わせて確認してください。

臨床面では、算定区分だけでなく、廃用による能力低下をどう評価し、どのように離床・ADL練習へつなげるかが重要です。実施内容の整理には、廃用症候群のリハビリ もあわせて確認すると、制度と臨床記録をつなげやすくなります。


参考文献

  1. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. 2026.
  2. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定 医科点数表. 2026.
  3. 厚生労働省保険局医療課. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号). 2026.
  4. 厚生労働省保険局医療課. 疑義解釈資料の送付について(その1)(令和8年3月23日事務連絡). 2026.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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