補装具費支給の評価依頼|装具・義肢でリハ職が返す情報
補装具費支給に関連して装具・義肢の評価を依頼されたPT・OTは、ROMやMMTを一通り測ることよりも、「何の判断に使う評価か」を確認し、身体所見と実際の使用場面をつないで返すことが重要です。
基本は、依頼内容を確認する → 必要な身体所見を評価する → 動作・生活場面への影響を確認する → 条件を付けて医師・依頼元へ返すという流れです。この記事では、補装具費支給のうち装具・義肢に絞り、評価依頼を受けたリハ職が何を確認し、何をどう返すかを整理します。
診断書・意見書などの評価依頼に共通する「書類・対象欄・評価条件・返却方法」の確認は、書類作成のためのROM・MMT・ADL評価依頼で詳しく解説しています。本記事では、補装具費支給の装具・義肢に必要な部分へ絞ります。

まず押さえたいこと|リハ職は「意見書を書く人」ではなく「判断に使える評価情報を返す人」
補装具費支給意見書は医師が作成し、PT・OTが支給の可否を決めるものではありません。リハ職の役割は、依頼内容に応じて身体機能、活動、使用条件などを評価し、医師や依頼元が判断しやすい情報として返すことです。
補装具費支給では、市町村が支給決定を行い、種目や状況によっては更生相談所の判定が関わります。身体障害者の義肢・装具の新規支給では、更生相談所の判定対象となるため、現場では「誰が最終判断するか」と「リハ職が何を返すか」を分けて考えることが大切です。
また、装具・義肢の評価依頼で重要なのは、数値を羅列することではありません。「どの条件で評価したか」「その所見がどの動作に影響しているか」「補装具を使うと何が変わるか」まで整理されていると、意見書や判定に転記しやすい情報になります。
評価前に確認する5項目
最初に確認するのは評価項目そのものではなく、依頼の目的と条件です。「装具の評価をお願いします」とだけ言われて測定を始めると、必要のない評価が増えたり、依頼元が知りたい情報が抜けたりします。
| 確認項目 | 確認する内容 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| ① 対象種目 | 装具か義肢か、部位・種類は何か | 必要な身体所見と動作評価が変わるため |
| ② 依頼内容 | 新規、再支給、修理など、何の判断に使う評価か | 同じ補装具でも確認すべき内容が異なるため |
| ③ 使用目的・場面 | 歩行、立位、ADL、就労、屋内外など | 身体所見を生活上の必要性へつなげるため |
| ④ 評価条件 | 補装具あり/なし、靴、杖、歩行器、疼痛、疲労など | 異なる条件の結果を混同しないため |
| ⑤ 返却先と期限 | 医師、依頼部署など、どの情報をいつまでに返すか | 依頼元が実際に使える情報へ絞るため |
特に、新規支給なのか、現在使用中の補装具について再支給や変更を検討しているのかは最初に確認します。既存の補装具がある場合は、現在の補装具で何ができ、どこに問題があるのかも重要な評価情報になります。
返す情報は「条件・所見・生活への影響・補装具使用時の変化」で整理する
リハ職からの返却は、身体所見だけで終わらせず、その所見が活動へどう影響しているかまでつなげます。さらに、試用中・使用中の補装具がある場合は、装着によって何が変化したかを分けて記録します。
| 情報 | 返す内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 評価条件 | 体位、靴、杖、補装具の有無、疲労など | 「靴あり、T字杖使用、装具なしで評価」 |
| 身体所見 | 依頼目的に関係するROM、筋力、疼痛、皮膚など | 「足関節背屈制限、足関節背屈筋力低下あり」 |
| 生活への影響 | 立位、歩行、移乗、ADLなどで生じる問題 | 「遊脚期に足尖が接触し、方向転換時に不安定」 |
| 補装具使用時の変化 | 改善した点、残る問題、疼痛・皮膚所見など | 「装着後は足尖接触が減少するが、足背に発赤あり」 |
ここでのポイントは、リハ職側で「この装具を支給すべき」と結論づけることではありません。医師や依頼元が判断できるよう、観察した事実と評価条件を整理して返すことを優先します。
装具の評価依頼で確認したいこと
装具では、固定・免荷・矯正・機能補助など、何を目的に使うのかによって必要な評価が変わります。すべての関節ROMや筋力を網羅するのではなく、装具の目的と動作上の問題に関係する項目を選びます。
| 領域 | 確認する内容 | 返却時のポイント |
|---|---|---|
| 関節可動域 | 関連関節のROM、拘縮、疼痛、筋緊張など | 角度だけでなく体位・自動/他動・制限因子を添える |
| 筋力・運動機能 | 目的に関係する筋力、随意運動、代償動作 | MMT値だけで動作能力を推定しない |
| アライメント | 立位・荷重時の関節位置、変形、支持性 | 非荷重時と荷重時の違いがあれば分ける |
| 動作 | 立ち上がり、立位、歩行、階段など | 崩れる場面と補助具・介助条件を明記する |
| 疼痛・皮膚 | 疼痛、発赤、圧迫部位など | 部位と発生条件、装着時間を具体化する |
| 装着前後の変化 | 動作、安全性、疼痛などの変化 | 装具なし/ありの所見を混ぜずに記録する |
AFOそのものの機能選択や、遊脚期・立脚期から必要な制御を考える方法は、下垂足の装具(AFO)の選び方で分けて解説しています。本記事では、補装具費支給に関連して依頼元へ返す評価情報に絞って整理します。
義肢の評価依頼で確認したいこと
義肢では、切断端の状態だけでなく、義肢を装着してどのような活動を行うのかまで確認します。切断端・関節機能・全身状態と、装着操作、立位・歩行などを分けて評価すると整理しやすくなります。
| 領域 | 確認する内容 | 返却時のポイント |
|---|---|---|
| 切断端 | 皮膚、疼痛、腫脹・容量変化など | 所見が出る部位と条件を具体的に記録する |
| 関節機能 | 関連関節のROM、筋力、拘縮など | 義肢使用に影響する所見を選ぶ |
| 装着操作 | 着脱、ライナー等の管理、手順理解 | 自立か介助が必要かだけでなく、難しい工程を示す |
| 立位・歩行 | 支持性、歩行距離、補助具、介助、疲労 | 安全性が低下する場面まで記録する |
| 義肢使用後の所見 | 疼痛、発赤、ずれ、動作の変化など | 観察所見として共有し、適合判断は関係職種と連携する |
| 生活環境 | 屋内外、段差、仕事、移動距離など | どの場面で義肢を使用するのかを明確にする |
義肢では、切断端の皮膚状態や疼痛だけでなく、長距離歩行や疲労後に問題が出るかも確認します。自己判断で適合を断定するのではなく、観察した事実を医師や義肢装具士へ具体的に共有することが重要です。
返却メモは「事実 → 生活への影響 → 使用時の変化」で短くまとめる
返却メモでは、長い評価結果をそのまま貼るより、依頼目的に関係する情報を3段階でまとめた方が読み取りやすくなります。以下は公式様式ではなく、rehabilikunによる実務上の情報整理例です。実際には依頼医師、施設内の書式、自治体等の様式を優先してください。
| 順序 | 書くこと | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 評価条件と身体所見 | 何を、どの条件で確認したか |
| 2 | 生活への影響 | 歩行やADLのどこに問題が出ているか |
| 3 | 補装具使用時の変化・残る問題 | 改善点と疼痛・皮膚・安全上の問題を分ける |
装具の返却メモ例
評価条件・所見:靴あり・T字杖使用。装具なしでは足関節背屈制限と背屈筋力低下を認める。
生活への影響:歩行の遊脚期に足尖接触がみられ、方向転換時に不安定となる。
装着時の変化:AFO装着時は足尖接触が減少。装着後に足背部の発赤を認めるため、皮膚状態の確認を要する。
義肢の返却メモ例
評価条件・所見:義足装着は自立。切断端に皮膚損傷はないが、歩行後に前面の発赤と疼痛を認める。
生活への影響:T字杖併用で屋内歩行可能。歩行距離の延長に伴い支持性が低下する。
義肢使用時の所見:疲労後に歩容の崩れと切断端痛が増加するため、関係職種への共有が必要。
例文の数値や条件をそのまま使うのではなく、実際に評価した事実へ置き換えてください。特に「必要」「適合している」といった判定そのものと、リハ職が観察した事実は分けて記録します。
評価依頼で避けたい4つの返し方
装具・義肢の評価依頼では、数値不足よりも「その数値をどう解釈すればよいか分からない返却」が問題になりやすくなります。
| 避けたい返し方 | 問題 | 修正 |
|---|---|---|
| ROM・MMTの数値だけを並べる | 補装具の使用目的との関係が分からない | 生活への影響を1行添える |
| 装具あり/なしの所見を混ぜる | どの条件で得た結果か分からない | 評価条件ごとに分けて記載する |
| 「歩行困難」「介助必要」だけで終える | 何が問題なのか判断できない | 距離、補助具、崩れる場面、介助内容を具体化する |
| リハ職が支給可否まで断定する | 評価情報と制度上の判定を混同する | 観察事実と生活への影響を返す |
よくある質問
Q1. 補装具費支給意見書はPT・OTが作成しますか?
補装具費支給意見書は医師が作成します。PT・OTは、依頼に応じてROM、筋力、動作、使用条件などの評価情報を医師・依頼元へ返します。リハ職が評価結果を共有することと、制度上の意見書や支給判定を行うことは分けて考えます。
Q2. 装具あり/なしのどちらで評価すればよいですか?
まず依頼目的を確認します。現在の身体機能を確認する評価と、装具装着による変化を確認する評価では条件が異なります。両方を見る場合は、「装具なし」「装具あり」を分けて記録し、所見を混在させないことが重要です。
Q3. 車いす・座位保持装置の評価も同じ考え方ですか?
依頼内容と使用場面を確認して返す基本原則は共通しますが、車いす・座位保持装置では座位保持、皮膚、移乗、操作、使用環境などが中心になります。詳しくは補装具費支給の評価依頼|車いす・座位保持で返す所見で整理しています。
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参考文献
- 厚生労働省・こども家庭庁.補装具費支給事務取扱指針について(令和8年3月30日一部改正).
- 厚生労働省.補装具費支給制度の概要.
- e-Gov法令検索.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

