DTI / DU の見分け方:深さ( D )の判断で迷わない
結論:DESIGN-R® 2020 の「深さ( D )」で迷いやすいのは、深部損傷が疑われる状態( DDTI )と、壊死で創底が見えず深さを決められない状態( DU )の切り分けです。
本記事では、見た目だけで決め打ちせず、①創底が見えるか/②急性の深部損傷らしさが強いかの 2 軸で判断できるように整理します。
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- 続けて読む(標準手順):7 項目の意味と記録の型を先に固定
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なぜ DTI / DU で迷うのか(現場の詰まりどころ)
DTI / DU の迷いは「見た目が紛らわしい」より、判定の根拠がチームで共有されず、翌日に評価が更新されないことから増えます。
迷いを減らすコツは、当日の暫定ラベルを付けたら、24〜 48 時間で更新する約束までをセットにすることです(判断は 1 回で完結しません)。
- よくある失敗へ(アンカー)
- 30 秒フローへ(アンカー)
- 記録の整え方も一緒に:褥瘡予防の基本(記録と共有まで)
DESIGN-R® 2020 で変わった “ D(深さ)” の要点
改定のキモは、深部損傷を疑う病態を拾うために DDTI が追加された点と、DU が「壊死で創底が見えず深さ判定ができない状態」として整理された点です。
つまり、DU は “深い” を意味する記号ではなく、深さのラベルを貼れない状況を示します。D の基本は従来どおり「最も深い部位」で判断します。
迷ったら 30 秒:DTI / DU の最短判断フロー
“決め打ち” を避け、以下の順に当てはめます。ポイントは、創底(最深部)が見えるかを最初に確認することです。
※スマホでは表が横スクロールできます。
| 最初に見る | YES のとき | NO のとき | 記録の考え方 |
|---|---|---|---|
| 創底(最深部)が “見える” | D3〜 D5 を判定(最深部で) | 次の行へ | 深さは「見える組織」で決める |
| 壊死で創底が “見えない” | DU を検討 | 次の行へ | DU は深さそのものではなく「深さ判定不能」 |
| 深部損傷を疑う “急性サイン” が強い | DDTI を検討 | 経過観察で再評価 | 疼痛・硬さ・温冷感、暗赤〜紫色調、水疱など |
このフローで “当日の暫定ラベル” を決めたら、次に重要なのは 24〜 48 時間の経過です。DTI 系は目に見える変化より前に組織損傷が進むことがあり、所見が “遅れて出る” ことがあります。
DDTI(深部損傷を疑う)を疑う所見と見方
DDTI は「深い」ではなく、深部損傷を疑うという暫定ラベルです。発生状況(圧迫・ずれ・時間)とセットで判断するとブレが減ります。
見方のコツは、色調だけでなく、触って分かる変化(硬さ・温度差・疼痛)を拾い、再評価で更新する前提で記録することです。
DDTI を疑うチェック(ベッドサイド)
- 暗赤〜紫色調(局在)
- 硬さ( firm )または浮腫状( boggy )
- 疼痛(訴えが取れる場合)
- 温度差( warmer / cooler )
- 水疱、表皮剥離などの “遅れて出る” 変化
DDTI を “固定” しない:再評価の約束をセットで書く
DDTI は “疑い” です。「 DDTI と書いたら、いつ・何を見るか」までを先に約束すると、翌日の評価更新が揃います。
目安は 翌日〜 48 時間。色調の拡大、硬さ、温度差、疼痛、表皮変化、水疱、滲出液の変化を比較します。
DU(壊死で深さ判定不能)の判断:どこまでを DU と書くか
DU は、壊死などで創底(最深部)が見えず、深さの判定が “推測” になる状態です。
壊死が一部にあっても、最深部が見えて深さを判定できるなら、原則は D3〜 D5 を判断し、壊死の量や性状は別軸で表現します。
DU と判断しやすい状態
- 厚い壊死( slough / eschar )で創底が見えない
- 最深部が “隠れている” ため、深さが推測になる
- 創底が確認できた時点で深さを更新する前提で運用する
DU のよくある誤り(失敗パターン)
- 「壊死がある= DU 」として、創底が見えているのに DU を使う
- DU を “深い” ラベルとして固定し、深さ更新をしない
- 根拠(創底が見えない)を残さず、翌日の判定が揺れる
症例ミニ 2 例:DDTI / DU は「翌日更新」までがセット
DTI / DU は見た目だけで決め打ちすると、チーム内の解釈が割れやすくなります。ここでは「発生状況 → 所見 → 翌日の更新」までを 1 セットにして、現場で迷いが減る書き方を例示します。
症例 1:DDTI(深部損傷を疑う)
発生状況:長時間の同一姿勢+ずれが疑われる(体動少なく、骨突出部に圧迫が集中)。
初日の所見(視診・触診):暗赤〜紫色調が局在。周囲皮膚と比べて硬さ( firm )があり、圧迫しても色が戻りにくい。疼痛の訴えが取れる場合は痛みあり。
初日の判断( D ):DDTI(疑い)。再評価は 24〜 48 時間以内と決め、翌日比較を前提に記録する。
翌日の更新:色調の拡大/水疱・表皮剥離の出現/硬さ・温度差の変化を確認。所見が進展して創底が明確になれば、深さを再判定( D を更新)する。
症例 2:DU(壊死で深さ判定不能)
発生状況:創部の中央が厚い壊死で覆われ、最深部の視認ができない。
初日の所見(視診):壊死( slough / eschar )が付着し、創底(最深部)が見えない。周囲皮膚の炎症所見(発赤・浸軟)や滲出液の有無は別軸で記録。
初日の判断( D ):DU(深さ判定不能)。DU は「深い」ではなく「見えない」ため、創底が確認できた時点で深さを再判定する。
翌日の更新:壊死の変化(付着の程度、軟化、境界の明瞭化)と、創底が見えるかを確認。創底が確認できれば、DU を外して深さを更新( D を確定)する。
記録テンプレ 2 パターン(SOAP/経過記録)
DTI / DU は「根拠」と「再評価予定」をセットで残すと、翌日の判断が揃います。ここでは SOAP と経過記録(観察ログ)の 2 形式を例示します。
テンプレ 1:SOAP(例)
S:疼痛の訴え(取れる場合):NRS ○/10。違和感の有無。
O:所見(色調:暗赤〜紫/壊死の付着あり/硬さ firm・boggy/温度差 warmer・cooler/水疱・表皮剥離/滲出液)。創底が見えるか( YES / NO )。
A:D:DDTI(疑い)/DU(深さ判定不能)/(創底が見える場合は深さ判定)。判断根拠を 1 行で固定(例:暗赤〜紫+firm+疼痛、あるいは壊死で創底不可)。
P:再評価:24〜 48 時間以内に色調・硬さ・疼痛・温度差・表皮変化・創底確認を行い、D を更新。体位・除圧・ずれ対策を実施。
テンプレ 2:経過記録(観察ログ型)
【本日】創底:見える/見えない。色調:○○。触診:硬さ○○、温度差○○。疼痛:○○。表皮変化:水疱/剥離あり・なし。滲出液:○○。
【判定】D:DDTI(疑い)/DU(判定不能)/(深さ確定)。根拠:○○。
【次回確認(期限)】○月○日( 24〜 48 時間以内):色調・硬さ・疼痛・温度差・表皮変化・創底確認 → D を更新。
【介入/共有】除圧・体位調整・ずれ対策。申し送り:判定根拠+次回確認項目。
よくある間違い( Do / Don’t )
DTI / DU は「ラベル」を当てるほど、運用が止まりやすい領域です。ここは OK / NG で潰すと、チームのブレが一気に減ります。
※スマホでは表が横スクロールできます。
| 場面 | NG(起きやすい失敗) | OK(回避の型) | 記録の一言例 |
|---|---|---|---|
| DDTI | 色だけで DDTI を固定し、翌日更新がない | 根拠(色・硬さ・疼痛・温度差)+再評価期限をセットにする | DDTI 疑い(暗赤+firm)。24〜 48 時間で再評価し D 更新。 |
| DU | 壊死が少しあるだけで DU にしてしまう | 最深部が見えるかで判断。見えるなら D3〜 D5、見えないなら DU | 創底不可(厚い壊死付着)。DU とし、創底確認で D を更新。 |
| 混在 | “混在” の 1 語で片づけ、根拠が残らない | 創底の可視性を優先し、深部損傷サインは所見として具体化 | 創底不可 → DU 軸。周囲に暗赤+硬さあり、翌日再評価。 |
よくある質問(FAQ)
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Q1.DDTI と判断したら、いつ再評価すべきですか?
基本は “翌日〜 48 時間” を目安に、色調、硬さ、疼痛、温度差、表皮剥離や水疱の有無、滲出液の変化を追います。DDTI は「疑い」なので、経過で所見がはっきりしてくる前提で、再評価の時点を最初から約束しておくと運用が安定します。
Q2.壊死が少しあるだけでも DU にしていいですか?
目安は「最深部が見えるかどうか」です。壊死が一部でも、創底の最深部が見えて深さを判定できるなら、原則は D3〜 D5 を判断し、壊死の量は別の観察・評価で表現します。最深部が壊死で隠れて “推測” しかできないときに DU を使うと、後の再判定がスムーズです。
Q3.DDTI と DU が混在するように見えるときは?
まず「深さが判定できるか」を優先し、創底が見えないなら DU を軸に考えます。その上で、周囲皮膚に深部損傷らしいサイン(硬さ、温度差、疼痛、暗赤〜紫色調)が強い場合は、所見として具体的に記録し、再評価で D を更新します。混在を “ 1 語で片づける” より、観察所見を丁寧に残す方がチームの合意が取りやすいです。
Q4.画像検査は必須ですか?
必須ではありませんが、深部損傷が疑われ、臨床経過と整合しない場合や、合併症リスクが高い場合は補助的に検討されます。現場ではまず、発生状況(圧迫・ずれ・時間)、視診、触診、経過の 4 点セットで “疑いの強さ” を揃えることが実務的です。
次の一手:運用を整える → 共有の型を作る → 環境も点検する
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。/pt-career-guide/
参考文献
- 日本褥瘡学会.改定 DESIGN-R® 2020(資料).https://jspu.org/medical/books/docs/design-r2020_doc.pdf
- 日本褥瘡学会.改定 DESIGN-R® 2020 練習問題(資料).https://www.jspu.org/medical/design-r/docs/design-r2020_traning.pdf
- National Pressure Injury Advisory Panel (NPIAP). Pressure Injury Stages(PDF).https://cdn.ymaws.com/npiap.com/resource/resmgr/online_store/npiap_pressure_injury_stages.pdf
- Edsberg LE, Black J, Goldberg M, McNichol L, Moore L, Sieggreen M. Revised National Pressure Ulcer Advisory Panel Pressure Injury Staging System. J Wound Ostomy Continence Nurs. 2016;43(6):585-597. doi:10.1097/WON.0000000000000281. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


