浮腫・腫脹の周径測定:再現性を上げる標準手順(結論)
周径は「同じ条件で測る」だけで、評価の精度が一段上がります。 評価 → 記録 → 再評価の流れを復習する( PT キャリアガイド #flow )
浮腫・外傷後の腫脹は、見た目だけだと「増えた/減った」が曖昧になりやすいです。周径測定は、器具がメジャー 1 本でも客観的な増減(モニタリング)を残せるのが最大の強みです。
ただし周径は、測る人・場所・張力・時間帯で数 mm 簡単に変わります。結論としては、①条件固定 → ②ランドマーク固定 → ③張力固定の 3 点だけ押さえると、臨床で “使えるデータ” になります。
周径測定が効く場面
周径測定が特に役立つのは、次のように「変化の方向」を早く掴みたい場面です。
- 浮腫の経時変化(体位・離床・圧迫・利尿などの反応)
- 外傷・術後の腫脹(荷重・運動量の調整、過負荷のサイン)
- リンパ系の腫脹の疑い(左右差の持続、圧痕性の変化の追跡)
テープ法での周径から体積(容積)を推定する方法は、妥当性・信頼性が報告されており、臨床のフォロー指標として実装しやすいのもポイントです。
測定条件を固定する(再現性のコア)
まず “数値のブレ” を減らします。最初に決めた条件は、できる限り同じにしてください。
| 項目 | 固定の目安 | 理由(ブレの原因) |
|---|---|---|
| 時間帯 | 同じ時間帯(例:午前の介入前) | 日内変動(重力・活動量)で変わります |
| 体位 | 仰臥位/座位などを固定 | 静水圧が変わり、末梢の水分が移動します |
| 安静 | 測定前に 5〜10 分の安静 | 直前の歩行・運動で一時的に増減します |
| 圧迫 | 着衣・包帯の有無、外した場合は “外してからの時間” を記録 | 外した直後はリバウンドで数値が動きます |
| 皮膚状態 | 発赤・熱感・疼痛・圧痕性の有無を同時に記録 | 炎症やうっ血の変化が、周径の背景になります |
現場の詰まりどころは「忙しくて毎回条件が揃わない」点です。その場合は、条件を揃えられない理由も含めて記録してください(例:「午後・離床後」「弾性包帯を外して 30 分後」)。同じ数字でも “意味” が変わります。
ランドマークの決め方(上肢・下肢の実務)
次に “どこを測るか” を固定します。おすすめは、解剖学的ランドマーク基準です(毎回同じ位置に戻りやすい)。
| 部位 | 測定ポイント例 | コツ |
|---|---|---|
| 上肢 | 手背/手関節(橈骨茎状突起レベル)/前腕最大周径/肘(肘頭・肘窩レベル)/上腕最大周径 | 点数を絞って “毎回同じ 6 点” にすると運用が続きます |
| 下肢 | 足背/足関節(内果レベル)/下腿最大周径/膝蓋骨上縁レベル/大腿最大周径 | 下腿は “最大周径” がズレやすいので、距離(例:脛骨粗面から 10 cm 下)も併記すると安定します |
| 術後・外傷 | 腫脹中心の近位・遠位(例:中心 ± 10 cm ) | 中心点(瘢痕・最大腫脹点)を写真やスケッチで残すと再現しやすいです |
測定点は “多ければ良い” ではありません。継続できる点数に絞り、同じ点を繰り返す方が、臨床判断に直結します。
測定手順:メジャーの張力をそろえる
周径測定の誤差の多くは「メジャーを引っ張りすぎる/ゆるい」です。以下の手順で張力を一定にします。
- 皮膚に対して水平にメジャーを回します(斜めは NG です)。
- メジャーは皮膚に接触させますが、食い込ませません(圧痕が出るなら強すぎです)。
- 読取は視線を目盛りと同じ高さに合わせます(パララックスを避けます)。
- 迷う場合は同一点を2 回測って平均にします(差が大きいなら “ランドマークずれ” を疑います)。
- 測定者が複数いるときは、可能な範囲で測定者を固定します(引き継ぐ場合は手順を紙で共有します)。
必要なときだけ:周径から体積(容積)を推定する
「点の変化」だけで判断が難しいときは、周径の連続測定から体積変化を推定します。臨床では、四肢をいくつかの区間に分け、各区間を “台形(切頭円錐)” とみなして足し合わせる考え方が使われます。
ここで大事なのは数式そのものではなく、同じ区間(同じ間隔)で測り続けることです。例えば “ 5 cm 間隔” と決めたら、次回も同じ間隔で測ることで、体積推定の意味が安定します。
記録テンプレ(そのまま使える表)
測定値は、単体より “前回との差” が価値になります。最低限、条件(時間帯・体位・圧迫)と一緒に残してください。
| 日付 | 時間帯 | 体位 | 部位 | 測定点(ランドマーク) | 周径( cm ) | 所見メモ(圧痕・熱感・疼痛・圧迫) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ____/__/__ | 午前・午後 | 仰臥位・座位・立位 | 右・左 | 例:内果レベル | ____.__ | 例:圧痕 2+/包帯あり(外して 30 分後) |
| ____/__/__ | 午前・午後 | 仰臥位・座位・立位 | 右・左 | 例:下腿最大周径(脛骨粗面から 10 cm 下) | ____.__ | 例:熱感なし/疼痛 NRS 2/離床後 |
| ____/__/__ | 午前・午後 | 仰臥位・座位・立位 | 右・左 | (追記) | ____.__ | (追記) |
よくある失敗と対策(OK / NG 早見)
| NG | 起きやすいズレ | 対策(OK) |
|---|---|---|
| 毎回、測定点が微妙に違う | 最大周径が “移動” して見える | ランドマーク+距離(例:骨指標から 10 cm )を併記して固定 |
| メジャーを強く引く/ゆるい | 数 mm 単位で増減が逆転 | 皮膚に “接触” まで、食い込みは NG / 2 回測って差が出るなら張力を見直す |
| 時間帯・体位がバラバラ | 重力・活動量で増減 | 同じ時間帯・同じ体位を優先。揃わない日は条件を必ず記録 |
| 圧迫の条件が記録されていない | 外した直後の値を “増悪” と誤解 | 圧迫の有無/外してからの時間を一言で残す |
| 片側だけ測って終わる | 個人内変動が読めない | 基本は左右セット。左右差は鑑別のヒントになります |
よくある質問(FAQ)
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Q1. 何 mm 変わったら「意味がある変化」ですか?
A. 目安は “ 1 回の測定誤差” を上回る変化かどうかです。誤差は測定点や張力で変わるため、まずは同一点を 2 回測って差を確認し、施設内で “この手順ならこのくらいブレる” を掴むのが実務的です。急に変化が大きいときは、条件(時間帯・離床・圧迫)や皮膚所見(熱感・疼痛)も合わせて解釈してください。
Q2. 最大周径が分かりにくいです。どう固定しますか?
A. 最大周径は日によって “場所がズレる” ので、骨指標からの距離を併記します。例として下腿なら「脛骨粗面から 10 cm 下」のように固定すると、追跡が安定します。腫脹中心を追う場面は「中心 ± 10 cm 」のような “相対距離” が便利です。
Q3. 周径点は何点くらいが現実的ですか?
A. 継続できる点数が正解です。上肢・下肢ともに “ 5〜6 点” に絞ると運用が続きやすいです。目的が「全体の変化」なら少なく、「局所の変化」なら中心点を追加する、という設計がおすすめです。
Q4. 周径でリンパ浮腫を判断できますか?
A. 周径だけで確定はしませんが、左右差の持続や、圧痕性の変化、皮膚所見と合わせて “疑い” を強める材料になります。疑わしいときは、周径の “同条件での経時変化” を残しておくと、次の評価や連携がスムーズです。
参考文献
- Taylor R, Jayasinghe UW, Koelmeyer L, Ung O, Boyages J. Reliability and validity of arm volume measurements for assessment of lymphedema. Phys Ther. 2006;86(2):205-214. PubMed
- Sharkey AR, King SW, Kuo RY, Bickerton SB, Ramsden AJ, Furniss D. Measuring Limb Volume: Accuracy and Reliability of Tape Measurement Versus Perometer Measurement. Lymphat Res Biol. 2018;16(2):182-186. DOI
- Sun F, Skolny MN, Narsipur SS, et al. Perometry versus simulated circumferential tape measurement for the detection of breast cancer-related lymphedema. Lymphat Res Biol. 2018. PMC
- International Society of Lymphology. The Diagnosis and Treatment of Peripheral Lymphedema: 2023 Consensus Document of the International Society of Lymphology. Lymphology. 2023;56:133-151. PDF
- Lennihan R Jr, Mackereth M, Carder HM. Calculating volume changes in a swollen extremity from surface measurements. Am Heart J. 1973;86(4):514-520. DOI
著者情報
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに
周径測定は「条件固定 → ランドマーク固定 → 張力固定」の 3 点だけで、評価の再現性が一気に上がります。迷ったら、安全の確保 → 条件をそろえる → 数値と所見をセットで記録 → 次回同条件で再評価のリズムに戻してください。
現場での記録が詰まりやすいときは、面談準備チェックと職場評価シートをまとめた /mynavi-medical/#download も一緒に整えると、行動が止まりにくくなります。

