胸骨上切痕の触診ポイント|位置と胸骨角の見分け方

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胸骨上切痕とは|位置と触診の結論

胸骨上切痕は、左右の鎖骨内側端の間にある、胸骨柄上縁中央のくぼみです。触診では、首の付け根を直接押すのではなく、左右どちらかの鎖骨を内側へたどり、鎖骨内側端の間にある中央のくぼみを軽く確認します。新人PT・OTが迷いやすいのは、気管、胸鎖関節、胸骨角との混同です。この記事では、胸骨上切痕の位置、再現しやすい触診手順、周囲構造との見分け方、呼吸・姿勢評価での使い方を整理します。

解剖ランドマークをまとめて確認する

胸骨上切痕だけでなく、胸骨角・剣状突起・鎖骨などを位置関係で整理すると、前胸部の触診が安定します。

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この記事でわかること

  • 胸骨上切痕の位置
  • 胸骨上切痕を探す触診手順
  • 気管・胸鎖関節・胸骨角との見分け方
  • 触れにくい場合の修正方法
  • 呼吸・姿勢評価での確認ポイント
  • 触診結果の記録例

胸骨上切痕の位置と周囲の解剖

胸骨上切痕は、胸骨を構成する胸骨柄の上縁中央にあります。

別名として「頸切痕」や「jugular notch」と呼ばれることもあります。体表から見ると、首の付け根にある左右の鎖骨内側端の間のくぼみです。

胸骨上切痕と周囲構造の位置関係
方向 主な構造
上方 頸部、気管
左右 鎖骨内側端、胸鎖関節
下方 胸骨柄
さらに下方 胸骨角、胸骨体

胸骨上切痕は「前胸部中央を上から確認するときの起点」として覚えると整理しやすくなります。

胸骨上切痕を見つける30秒フロー

胸骨上切痕は、鎖骨をたどってから中央へ移ると短時間で確認できます。

  1. 肩の力を抜いてもらう
  2. 鎖骨を外側から内側へたどる
  3. 鎖骨内側端を確認する
  4. 左右の鎖骨内側端の間へ指を移す
  5. 胸骨柄上縁中央のくぼみを軽く確認する

位置を覚える合言葉

「鎖骨を内側へたどる → 左右の間へ移る → 中央のくぼみを軽く触れる」の順です。

胸骨上切痕の触診方法

胸骨上切痕の触診では、鎖骨内側端を起点にすると位置がぶれにくくなります。

胸骨上切痕の位置と鎖骨内側端から確認する触診手順
胸骨上切痕は、鎖骨を内側へたどり、左右の鎖骨内側端の間にある中央のくぼみを軽く触れて確認します。

STEP1:姿勢を整える

対象者は座位または背臥位とし、肩をすくめず、頸部と肩の力を抜いてもらいます。

円背や頭部前方位が強い場合は、無理に頸部を伸展させず、苦しくない姿勢で行います。

STEP2:鎖骨内側端を確認する

鎖骨の骨幹部に指を置き、外側から内側へゆっくりたどります。

胸骨に近づいたところで触れる丸みのある骨性部分が鎖骨内側端です。いきなり首の付け根中央を押すより、鎖骨を線として追う方が再現しやすくなります。

STEP3:左右の鎖骨の間へ移動する

鎖骨内側端を確認したら、その内側かつ中央へ指腹を移します。

左右の鎖骨内側端に挟まれた部分が、胸骨上切痕を探す範囲です。

STEP4:中央のくぼみを軽く確認する

胸骨柄上縁にある浅いくぼみを指腹で軽く確認します。

深部には気管や軟部組織があるため、指を深く押し込む必要はありません。骨の縁とくぼみの形を表面から確かめる程度にとどめます。

触診のコツ

  • 指先ではなく指腹を使う
  • 鎖骨内側端を先に確認する
  • 点を探すより、鎖骨から連続してたどる
  • 深さではなく、骨の縁とくぼみの形を確認する
  • 対象者の表情や呼吸の変化を見ながら行う

気管・胸鎖関節・胸骨角との見分け方

胸骨上切痕は「くぼみ」、気管は「正中の軟部組織」、胸鎖関節は「左右の境目」、胸骨角は「下方の段差」と分けると判断しやすくなります。

胸骨上切痕と気管・胸鎖関節・胸骨角の位置関係を示した図版
胸骨上切痕を中心に、上方の気管、左右の胸鎖関節、下方の胸骨角との位置関係を整理した図です。
胸骨上切痕と混同しやすい構造の見分け方
構造 位置 触れ方 見分けるポイント
胸骨上切痕 左右の鎖骨内側端の間 浅いくぼみ 胸骨柄上縁の中央にある
気管 胸骨上切痕の上方から頸部正中 軟部組織として触れる 骨性のくぼみではない。強く圧迫しない
胸鎖関節 胸骨上切痕の左右 鎖骨内側端と胸骨柄の境目 肩甲帯運動に伴う鎖骨の動きを確認できる
鎖骨内側端 胸骨上切痕の左右外側 丸みのある骨性隆起 鎖骨を外側から内側へたどった終点
胸骨角 胸骨上切痕より下方 横方向の骨性段差 胸骨柄と胸骨体の移行部で、第2肋骨を探す起点

胸鎖関節そのものや鎖骨内側端の見分け方を詳しく確認する場合は、胸鎖関節の触診ポイントで役割を分けて整理してください。

胸骨上切痕が触れにくいときの修正方法

触れにくい場合は、押す力を強くするのではなく、姿勢・起点・指の方向を修正します。

肩がすくんでいる

肩に力が入ると、胸鎖乳突筋や鎖骨周囲の軟部組織が緊張し、鎖骨内側端とくぼみの境界が分かりにくくなります。

息を吐いてもらい、肩を軽く下げた状態で再確認します。

いきなり中央を探している

首の付け根中央だけを探すと、気管や周囲の軟部組織を押しやすくなります。

鎖骨の骨幹部から内側端までたどり、その後に中央へ移動します。

指先で押し込んでいる

指先で深く押すと、不快感が出るだけでなく、表面の骨性輪郭を捉えにくくなります。

指腹を寝かせ、皮膚表面を軽く滑らせるように確認します。

頸部を伸ばしすぎている

頸部を強く伸展させると、対象者によっては息苦しさ、疼痛、めまいなどが生じる可能性があります。

胸骨上切痕の確認に大きな頸部伸展は必要ありません。楽な中間位を基本とします。

体格や軟部組織の影響がある

皮下組織の厚さや頸部形態によって、くぼみが明瞭に見えないことがあります。

見た目だけで判断せず、左右の鎖骨内側端を触れて、その間にある胸骨柄上縁を確認します。

胸骨上切痕を臨床でどう使うか

胸骨上切痕は、単独で異常を判断する部位ではなく、前胸部や頸部の位置関係をそろえる基準点として使います。

胸郭上部の位置を確認する

胸骨上切痕を起点にすると、胸骨柄、胸骨角、胸骨体へと正中をたどりやすくなります。

胸郭の回旋や左右非対称を観察するときは、胸骨上切痕だけで決めず、肩峰、鎖骨、胸骨、肋骨弓なども合わせて確認します。

呼吸補助筋の活動を観察する

努力性呼吸では、胸骨上切痕周囲そのものを押すのではなく、胸鎖乳突筋や斜角筋の収縮、鎖骨の挙上、上部胸郭の動きを観察します。

療養病棟では、呼吸数、SpO2、呼吸困難感、努力性呼吸、胸郭左右差などを先に確認し、必要な範囲で触診を加える方が安全です。

頭頸部と胸郭の位置関係をみる

頭部前方位や円背姿勢では、下顎、頸部、鎖骨、胸骨上切痕の位置関係が変化します。

胸骨上切痕は、頭頸部と胸郭をつなぐ正中の基準点として使えます。ただし、胸骨上切痕の位置だけで姿勢異常を判断せず、側面・前面から全体を観察します。

気管の正中性を確認する起点にする

胸骨上切痕の上方は、気管の位置を確認するときの起点になります。

ただし、気管偏位の確認は身体所見の一つであり、胸骨上切痕の触診だけで原因を判断することはできません。呼吸状態の急変、胸痛、著しい左右差、呼吸音の非対称などを伴う場合は、リハビリを中止し、速やかに医師・看護師へ報告します。

触診時の注意点と中止判断

胸骨上切痕は浅く触れるだけで位置を確認できるため、強い圧迫は不要です。

  • 気管方向へ指を深く押し込まない
  • 頸部を無理に伸展させない
  • 呼吸困難感や咳込みを誘発した場合は中止する
  • 疼痛、めまい、悪心、強い不安が出た場合は中止する
  • 外傷後、術後、腫脹、発赤、著明な圧痛がある場合は慎重に行う
  • 呼吸状態が不安定な場合は触診より全身状態の確認を優先する

臨床での優先順位

呼吸苦がある対象者では、「ランドマークを正確に触ること」よりも、呼吸数、SpO2、意識状態、呼吸音、胸郭左右差などの確認と報告を優先します。

胸骨上切痕周囲の記録例

記録では、胸骨上切痕を触れた事実だけでなく、体位、観察目的、得られた所見、次の対応を残します。

胸骨上切痕周囲を確認したときの記録例
評価場面 記録例
ランドマーク確認 端座位にて胸骨上切痕を触知。左右鎖骨内側端の間に位置を確認した。
姿勢評価 端座位で頭部前方位および胸椎後弯を認める。胸骨上切痕を基準に、鎖骨・胸骨の位置関係を観察した。
呼吸評価 安静時呼吸数24回/分。吸気時に両側胸鎖乳突筋の活動と鎖骨挙上を認めた。
左右差 胸骨上切痕を基準に胸郭上部を観察。右上部胸郭の動きが左側より小さい。
気管位置の確認 胸骨上切痕上方で気管位置を軽く確認。明らかな左右差は触知せず。他の呼吸所見と合わせて経過観察とした。
中止・報告 呼吸苦増強および呼吸数上昇を認めたため評価を中止。看護師へ報告した。

「著明な左右差なし」だけでは何の左右差か伝わりにくいため、鎖骨高、胸郭運動、気管位置など、観察した対象を明記します。

新人が間違えやすいポイント

胸骨上切痕の触診では、位置を一発で当てようとすることが失敗につながります。

  • 首の付け根中央をいきなり強く押す
  • 鎖骨内側端と胸鎖関節を同じ場所として扱う
  • 気管を骨性ランドマークだと捉える
  • 胸骨上切痕と胸骨角を混同する
  • 肩がすくんだまま触診する
  • 左右差だけを記録し、何を比較したかを書かない
  • 呼吸状態が悪い対象者に触診を優先する

実際の現場では、触れた部位をすぐ評価所見として扱うのではなく、「骨性ランドマークの位置確認」と「症状や機能の評価」を分けて考えることが大切です。

胸骨上切痕のFAQ

胸骨上切痕はどこにありますか?

左右の鎖骨内側端の間にある、胸骨柄上縁中央のくぼみです。首の付け根中央で確認できます。鎖骨を外側から内側へたどって探すと位置を捉えやすくなります。

胸骨上切痕と頸切痕は同じですか?

一般的には同じ部位を指します。英語ではsuprasternal notchまたはjugular notchと表記されます。

胸骨上切痕は強く押してもよいですか?

強く押す必要はありません。深部に気管や軟部組織があるため、指腹で骨の縁と浅いくぼみを軽く確認します。咳込み、苦しさ、痛みが出た場合は中止します。

胸骨上切痕と胸骨角はどう違いますか?

胸骨上切痕は胸骨柄の上縁中央にあるくぼみです。胸骨角はそこから下方にある、胸骨柄と胸骨体の移行部の段差で、第2肋骨を探す起点になります。

胸骨上切痕から気管偏位を判断できますか?

胸骨上切痕は気管位置を確認する起点になりますが、触診だけで原因や疾患を判断することはできません。左右差が疑われる場合は、呼吸状態、胸郭運動、呼吸音、画像所見などと合わせて医師・看護師へ共有します。

まとめ

胸骨上切痕は、左右の鎖骨内側端の間にある、胸骨柄上縁中央のくぼみです。

  • 鎖骨を内側へたどってから中央へ移る
  • 指腹で浅いくぼみを軽く確認する
  • 気管方向へ深く押し込まない
  • 胸鎖関節は左右、胸骨角は下方にある
  • 呼吸・姿勢評価では周囲所見と合わせて使う
  • 異常を疑う場合は触診だけで判断しない

新人PT・OTは、「鎖骨内側端を確認する」「左右の間へ移る」「中央のくぼみを軽く触れる」の3段階に固定すると、位置を再現しやすくなります。

次の一手

胸骨上切痕を確認できたら、胸骨正中を下方へたどり、胸骨角と剣状突起まで続けて触診すると、前胸部の位置関係を立体的に整理できます。


参考文献

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  6. Razzouk J, et al. A CT-based study of the sternal notch and sternal angle in relation to thoracic vertebral levels. Clin Anat. 2024. PubMed

著者情報

rehabilikun

理学療法士。療養病棟での臨床経験をもとに、PT・OT・STが現場で使いやすい評価方法、臨床手順、記録例を発信しています。

保有資格:脳卒中認定理学療法士、褥瘡・創傷ケア認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、福祉住環境コーディネーター2級。