FSST 運用プロトコル:解釈と介入

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臨床手技・プロトコル
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この記事の趣旨(運用に特化)

本稿は Four Square Step Test( FSST )を「どう活かすか」に特化した運用プロトコルです。安全管理・中止基準、記録テンプレ、結果の読み解きから介入設計、在宅や狭小空間への落とし込み、二重課題・不安定支持面の発展までを 1 ページで整理します。

測定手順そのものは既存記事に委ねます。まずは FSST の評価法(測定手順) を参照し、運用面の判断は本稿で統一すると、チーム内の再現性が高まります。評価は単独判定を避け、他検査と束ねて縦比較を重視します。

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安全管理・中止基準(SOP)

準備:歩行帯、監視者 1 名以上、転倒ハイリスクは介助者追加。環境は明るく、床は滑りにくく、杖は平置きで 4 区画を構成。補助具は日常歩行に準じて使用可(記録に明記)。

  • 中止基準:失神前駆・胸痛・著明な息切れ( Borg 7 以上)・顔面蒼白・不整脈自覚・姿勢制御の破綻・被検者の中止希望。
  • 失敗の扱い:順序誤り・杖接触・バランス喪失は失敗として再試行。
  • 比較条件:同一時間帯・同一補助具・同一声かけで再検し、再現性を担保。

記録テンプレ(貼るだけ)

S) 切り返しで足がもつれる不安(台所・トイレ)
O) FSST 最良 12.4 s(試行1 13.1 / 試行2 12.4)補助具なし・歩行帯あり
   手順遵守:◯(順序/両足接地/前向き) 杖接触:なし 転倒:なし
   観察:後退→側方で減速、方向転換でリード脚の切替に遅れ
A) 高齢者の目安はクリア。切り返し時の減速が ADL での慎重さと一致
P) 多方向ステップ(前-側-後)→ターン反復、狭所の切り返し課題を週3回
   2週後に同一条件で FSST 再検、時間・減速の質的観察も再評価
  • 必須変数:最良/各試行タイム、補助具、監視/介助、順序・両足接地の遵守、失敗有無。
  • 観察の着眼:後退時のリード脚、方向転換の減速、踏み損ね、注意の逸れ、足部の引っかかり。

解釈から介入設計へ(テンプレ)

FSST 結果から介入へつなぐ早見(成人・2025 年版)
所見想定される要因介入の方向性(例)
後退区間で顕著な減速 足部のリード切替の拙劣・恐怖心・固縮 前-側-後の段階的ステップ練習、後退歩行の壁面ガイド、視覚キュー
方向転換での踏み損ね 注意配分・遂行機能低下、末梢感覚低下 ターン課題の分節化→結合、足位置マーカー、注意の口頭キュー
全体的に極端な減速 下肢筋力・反応時間・恐怖回避 下肢筋力( MMT 弱点群)と俊敏性ドリル、成功体験で恐怖軽減
失敗(順序誤り・杖接触) 理解不足・練習不足・注意散漫 デモと練習 1 回を固定、声かけスクリプトの統一、簡易図示

在宅・狭小空間への翻訳

FSST の弱点が出やすいのは、家屋内の切り返し(台所・トイレ・廊下の角)です。家の動線を確認し、危険ポイントを「前→側→後」の順に段階化して練習へ接続します。足位置マーカー(テープ)や家具配置の微調整で、転倒リスクを工程で減らします。

家族には声かけの統一を共有します(例:「各マスで両足」「前向きで」「落ち着いて」)。補助具の有無、時間帯、照度などは再評価時に同一条件で比べられるよう記録に残してください。

発展:二重課題・不安定支持面

二重課題(計算・ワーキングメモリ)やフォームパッド上の FSST は、現実場面に近い高負荷です。導入は安全第一で段階化し、倒れやすい症例は避けます。フォーム条件は素材・厚みを固定し、再現性を担保します。

導入基準の一例:通常条件で失敗なく完遂、最良タイムが目安内、注意の維持が観察で可能。この 3 条件を満たす症例に限定し、まずは二重課題のみ→その後に不安定支持面へと進めます。

よくある運用ミス(OK / NG 早見)

FSST 運用で陥りやすいミスと対策(成人・2025 年版)
NG理由OK(対策)
練習なしで本試行 学習効果・順序誤りで再現性が低下 デモ 1 回+練習 1 回を SOP に固定
院内で声かけがバラバラ 比較不能・再評価の妨げ 開始/終了定義・声かけ文をスクリプト化
単独で転倒リスク判定 妥当性の限界(対象により AUC が限定) TUG ・ 6MWT 等と束で解釈し、縦比較を優先

関連記事(束で使う)

参考文献(一次情報優先)

  1. Dite W, Temple VA. A clinical test of stepping and change of direction to identify multiple falling older adults. Arch Phys Med Rehabil. 2002;83(11):1566-1571. PubMedDOI
  2. Whitney SL, et al. Reliability and validity of the FSST for vestibular disorders. Arch Phys Med Rehabil. 2007;88(1):99-104. PubMed
  3. Duncan RP, Earhart GM. FSST performance in Parkinson disease. J Neurol Phys Ther. 2013;37(1):2-8. PubMed
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