福祉住環境コーディネーター2級の取り方【2026年版】

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はじめに|2026 年に福祉住環境コーディネーター 2 級を目指す理由

専門資格をキャリアにどう活かすか整理する( PT キャリアガイド )

福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障害者が安全に暮らすための「住環境(住宅・福祉用具・生活動線)」を、医療・介護・建築の視点から総合的にコーディネートできる人材を認定する民間資格です。等級は 3 級(基礎)・ 2 級(実務)・ 1 級(高度)に分かれ、現場レベルでは在宅支援や住宅改修で使いやすい 2 級がメインターゲットになります。リハ職・ケアマネ・福祉用具専門相談員・住宅改修業者など、多職種が同じ土台で「住まいの課題」を話せる点が、この資格の大きな価値です。

試験は IBT(自宅等の PC 受験)/ CBT(テストセンター受験)方式で年複数回実施され、働きながらでも挑戦しやすい仕組みになっています。一方で、医療職にとっては建築用語や法律、図面の読み方など、普段あまり触れない内容も含まれるため、「どこから手を付けるか」「いきなり 2 級で良いのか」悩むケースも多いです。本記事では、2026 年に 2 級の合格を目指す医療・介護職を想定し、資格の位置づけ・試験制度・取得までのステップ・勉強ロードマップ・現場での活かし方を一気通貫で整理します。

福祉住環境コーディネーターとは?(1・2・3 級の違い)

福祉住環境コーディネーターは、東京商工会議所が主催する認定試験で、「高齢者や障害者の自立支援と QOL 向上のために、住環境をどう整えるか」を体系的に学べる資格です。等級構成は 3 級・ 2 級・ 1 級の 3 段階で、3 級は高齢者福祉や住環境整備の基礎知識、2 級は具体的な住宅改修や福祉用具選定、介護保険との関わりなど実務的な内容、1 級はまちづくりレベルの計画や専門家チームのコーディネートなど高度な内容が中心になります。

試験そのものは民間資格ですが、在宅・訪問リハ、ケアマネジメント、住宅改修、福祉用具貸与・販売などの場面で、「住環境の専門用語を共通言語として使える」「医療・介護と建築の橋渡しができる」点が現場では大きな武器になります。実務で役立てる目的であれば、まずは 2 級を取ることで、評価から提案、制度の理解まで一通り押さえられるイメージです。

試験のしくみと IBT/CBT 方式(2026 年のイメージ)

福祉住環境コーディネーター 2 級・ 3 級の試験は、IBT(Internet Based Testing)/CBT(Computer Based Testing)方式で実施されます。IBT は自宅や職場などの PC から受験する形式、CBT はテストセンターに来場して受験する形式で、いずれも試験時間は 90 分・マークシート式( 4 択など)が基本です。合格基準は 100 点満点中 70 点以上を目安としており、年度ごとの試験回や問題難易度によって多少の調整が入ることがあります。

出題範囲は、公的年金や介護保険制度、高齢者・障害者の特性、住居構造・バリアフリー、住宅改修の手順、福祉用具の種類と選び方、事例問題など多岐にわたります。申込期間と受験期間が複数設定されるため、働きながらでもスケジュール調整しやすい一方で、「いつでも受けられるから」と先延ばしになってしまうリスクもあります。2026 年に合格を狙う場合は、公式サイトに掲載される試験日程を確認し、「この期間で 1 回は必ず受ける」と具体的に決めてから勉強計画を立てるのがおすすめです。

取得までの 5 ステップ(2026 年版の流れ)

福祉住環境コーディネーター 2 級を 2026 年に取得するイメージで、流れを 5 つのステップに分けてみます。

  1. ステップ 1:受験級とスケジュールを決める
    医療・介護職であれば、いきなり 2 級から挑戦しても十分現実的です。まずは公式サイトで 2026 年の試験日程・IBT/CBT の実施期間を確認し、「この期間で必ず 1 回は受ける」というターゲット回を決めましょう。
  2. ステップ 2:公式テキストと過去問題集を準備する
    2 級を狙う場合は、2・3 級共通テキスト+ 2 級用公式テキスト、あるいは市販の 2 級対策テキストと過去問題集のセットを用意します。基礎知識は 3 級の範囲と重なるため、時間に余裕がなければ 3 級用テキストを飛ばして 2 級テキスト+過去問から入る方法でも問題ありません。
  3. ステップ 3:半年〜 3 か月前までに「全体像」を一巡する
    まずは公式テキストをざっと一巡し、どの分野が得意で、どの分野が苦手かを把握します。医療職は介護保険や高齢者の心身特性は得意でも、建築用語・構造・図面に苦手意識を持ちやすいため、そこを意識してマーカーを引いておくと、後半の勉強が楽になります。
  4. ステップ 4:過去問で「出題パターン」に慣れる
    受験 2〜3 か月前からは過去問題集を中心に勉強を進めます。解いてみて間違えた問題は、そのままスルーせず、テキスト該当箇所に戻ってチェックし、なぜその選択肢が誤りなのかまで確認しておくと、似た問題にも対応しやすくなります。
  5. ステップ 5:直前 2 週間で「頻出分野」を総ざらい
    直前期は、介護保険制度・住宅改修の手順・手すり位置や勾配など具体的な数値・代表的な福祉用具の特徴など、頻出分野に絞って総復習します。90 分で最後まで解き切る感覚を掴むために、通しで 1 回本番同様に解いておくと安心です。

働きながらの勉強では、「平日は 1 日 30 分〜 1 時間」「休日は過去問を 1 回分」というペースでも、数か月積み重ねれば十分合格ラインを狙えます。学び方の流れを整理したいときは、一度キャリア全体の学習設計も含めて学び方の流れを見直しておくと、他の資格とのバランスも取りやすくなります。

公式テキスト+過去問を使った勉強ロードマップ

勉強の中心になるのは、「公式テキスト」と「過去問題集」の 2 本柱です。まずはテキストを読みながら、介護保険や障害者総合支援法などの制度、バリアフリー住宅の基本構造、段差・勾配・手すり高さなどの具体的な基準値をざっくり押さえます。この段階では、細かい数値をすべて暗記しようとするより、「どういう発想でこういう数値が設定されているのか」をイメージすることが大切です。

そのうえで、過去問題集を使って問題演習を行うと、「このテーマは毎回のように出る」「この数値は頻出」といった傾向が見えてきます。医療職にとっては聞き慣れない建築用語も多いですが、図やイラストとセットで覚えると定着しやすくなります。また、在宅や訪問リハの現場で実際に目にした住宅改修・手すり・福祉用具と結びつけながら学ぶと、単なる暗記ではなく「臨床の引き出し」として残りやすくなります。

リハ職・介護職が現場でどう活かせるか

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとって、福祉住環境コーディネーターで学ぶ内容は、「動作評価」と「住環境」を結びつけるための基礎になります。ベッドからの立ち上がり、トイレ動作、浴室出入り、玄関段差、屋外歩行など、それぞれの動作において「どこまで環境側で補えるか」「どこから先は訓練や福祉用具で補うべきか」を、多職種と同じ言語で検討できるようになります。また、ケアマネ・住宅改修業者との打ち合わせでも、手すり位置・段差解消・スロープ勾配などを具体的な数値で提案できるようになる点もメリットです。

介護福祉士や訪問介護士にとっては、事故予防の観点から「危ない環境」を早期に見つけ、専門職に相談する力が強化されます。福祉用具専門相談員や住宅改修業者にとっては、医療職の視点を理解しやすくなるため、「ただ段差をなくす」「ただ手すりを付ける」といった単発の対応から、「生活全体を見据えた提案」に踏み込めるようになります。民間資格ではありますが、在宅・地域包括ケアの現場では、多職種の共通基盤として十分に意味のある学びです。

現場の詰まりどころ

医療・介護職がつまずきやすいポイントとして、まず「建築・法律パートへの苦手意識」が挙げられます。普段は診察室や病棟で働くことが多いと、構造や法規の細かい条文はどうしてもとっつきにくく感じられます。この部分については、完璧主義を手放して、「頻出テーマ(段差・勾配・手すり位置・通路幅)」から優先的に押さえる割り切りも必要です。特に数値は、過去問に何度も出てくるものから覚えていくと、効率よく得点源にできます。

もう一つの詰まりどころは、「勉強と臨床が頭の中で分離してしまう」ことです。資格勉強をしていると、つい机上の知識に偏りがちですが、実際には在宅訪問や退院前カンファレンスで見ている住宅・歩行器・手すり・スロープなどが、テキストの内容と直結しています。日々の訪問リハや退院前訪問の場面で、「この住宅改修は福祉住環境コーディネーターの観点だとどう説明されているか」を意識してみると、自然と記憶に残りやすくなります。

よくある質問

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医療職ですが、3 級を飛ばしていきなり 2 級を受けても大丈夫ですか?

多くの医療・介護職にとって、いきなり 2 級を受験することは十分現実的です。3 級は基礎的な内容が中心で、2 級のテキストや過去問を使う中で自然にカバーできる部分も多いためです。ただし、福祉分野や制度に初めて触れる場合は、時間に余裕があれば 3 級テキストの前半だけでも目を通しておくと理解がスムーズになります。試験制度としては、3 級合格を必須とせず 2 級からの受験が認められているため、自分の背景と勉強時間に合わせて選ぶと良いでしょう。

どれくらい勉強すれば合格できますか?合格率は高いですか?

必要な勉強時間はバックグラウンドや受験級によって異なりますが、医療・介護の基礎知識がある方であれば、2〜3 か月程度の学習(平日 30〜60 分+休日にまとめて過去問)でも合格が見えてきます。公式発表の合格率は年度によって変動しますが、2 級で 40〜60% 前後のことが多く、「しっかり準備すれば十分合格を狙える」レベルです。テキストを一読して過去問を 2 周以上こなすことを目安に、計画的に進めるのがポイントです。

民間資格なので、取得しても給与や評価に直結しない気がします。

たしかに、福祉住環境コーディネーターに手当や昇格を直接紐づけている事業所はまだ多くありません。ただ、在宅・訪問系の現場では、「住環境を含めて提案できるリハ職・看護職・ケアマネ」というだけで、利用者・家族・他職種からの信頼が大きく変わります。また、住宅改修業者や福祉用具業界への転職を視野に入れる場合にも、住環境整備への関心と基礎知識を示す材料になります。資格そのものだけでなく、学びの過程で得られる視点とネットワークをどう活用するかが重要です。

1 級まで取るメリットはありますか? 2 級だけで十分でしょうか?

基本的な住宅改修・福祉用具の提案や、医療・介護現場での連携という意味では、2 級で必要な知識は十分カバーされています。一方で、地域包括ケアや自治体の住宅政策、まちづくりレベルでのバリアフリー推進に関わりたい場合や、コンサルティング的な立場を目指す場合には 1 級が活きてくる場面もあります。まずは 2 級を取得し、自分の仕事の中でどこまで活かせるかを試してみたうえで、必要性を感じたタイミングで 1 級にチャレンジするのがおすすめです。

おわりに

福祉住環境コーディネーター 2 級は、「動きやすい住まい」「安全な生活動線」をチームで考えるための共通言語を手に入れられる資格です。その一方で、建築や法律パートへの苦手意識、仕事との両立、試験日程の調整など、現実的なハードルもあります。まずは 2026 年の試験スケジュールを確認し、自分のライフイベントや仕事の繁忙期と照らし合わせながら、「このタイミングで一度挑戦してみる」という仮決めをしてみてください。決めてしまえば、あとはそこに向けて日々の臨床と勉強を少しずつ積み重ねるだけです。

働き方やキャリアの軸を考え直したいときには、資格取得だけでなく、「どんな患者さん・利用者さんと、どんな環境で働きたいか」を言語化することも大切です。その際に使える面談準備チェック( A4 ・ 5 分)と職場評価シート( A4 )を無料公開しています。住宅改修や在宅リハに強い職場を探すときの物差しとしても活用できますので、詳しくはマイナビ医療介護のお役立ち資料ページを確認してみてください。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下、住環境整備

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