HOOS とは?股関節 OA の症状・ ADL ・ QOL 評価スケール

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HOOS( Hip disability and Osteoarthritis Outcome Score )とは?股関節 OA の症状・ ADL ・ QOL をみる評価スケール

HOOS は、股関節の痛み・症状、日常生活( ADL )、高負荷活動( Sport/Rec )、股関節関連 QOL を 5 つの下位尺度で整理できる股関節特異的 PROM です。WOMAC を土台に拡張された設計のため、股関節 OA や THA の術前後で「どこが良くなり、どこが残ったか」を患者さんの言葉で追いやすいのが強みです。

本記事は、設問を並べるのではなく、①条件を固定して回す②スコアを迷わず出す③解釈を次の一手に変換する、の運用に絞って整理します(点数そのものより「同じ条件で追跡して変化を読む」ことを優先します)。

回遊の三段(同ジャンル)

運動器 PROM ハブで全体像を確認する

親記事(総論 / 標準手順):評価ハブ(評価設計の全体像)

子記事(各論 / 代表):WOMAC( OA の定番 PROM )

HOOS は何を見ている? 5 下位尺度で「困りごとの場所」を分ける

HOOS は 5 つの下位尺度( Pain / Symptoms / ADL / Sport/Rec / QOL )を別々に算出し、各下位尺度を 0〜100 点( 0=問題が大きい、100=問題がない )で表します。合計 1 点に丸めずに、どの領域が詰まっているかを分解して共有できるのが HOOS の価値です。

臨床では「 Pain は改善したが ADL が伸びない」「 ADL は戻ったが Sport/Rec と QOL が頭打ち」など、回復の段差が見えます。段差が見えれば、荷重・可動域・筋力・活動量・恐怖回避など、次に触るべき要素が決まります。

HOOS の下位尺度と臨床で拾いやすい困りごと(成人・股関節)
下位尺度 何を押さえる? 点が動きやすい場面(例) 次の一手(例)
Pain 荷重・動作に伴う痛みの全体像 歩行、階段、立ち座り、夜間 荷重調整、疼痛教育、可動域・筋力の優先順位づけ
Symptoms こわばり、引っかかり感などの症状 起床後、活動後、可動時 可動域評価と介入の当たりをつける(関節・筋・動作)
ADL 日常生活の活動制限 歩行、階段、靴下・靴、しゃがみ 生活動作の再学習、補助具、活動量の段階づけ
Sport/Rec 高負荷活動での制限 ジョギング、跳躍、切り返し、重作業 高負荷へ戻す条件設定(筋力・耐容能・フォーム)
QOL 股関節の問題が生活に与える影響 不安、煩わしさ、満足度 目標の再定義、活動の意味づけ、セルフマネジメント

評価手順:まず「条件固定」を先に決める

HOOS は、点数計算よりも 測る条件 がブレると価値が落ちます。最初に「対象期間(想起)」「回収方法」「補助の有無」を固定し、次回も同じ条件で回すだけで、経過の読み取りと説明が一気にラクになります。

おすすめは、初回に 3 点だけカルテへ固定文で残すことです:①対象期間(例:直近 1 週)②記入方法(本人記入/聞き取り)③補助の有無(代理回答の有無)。この 3 点が揃うと、スコア変化の解釈がブレにくくなります。

HOOS をブレずに回すための「条件固定」メモ(そのまま転記用)
固定する項目 決め方(例) カルテ記載(例)
対象期間 質問票の指定期間に合わせる HOOS:対象期間=直近 1 週
回収方法 本人記入を原則(困難時は聞き取り) 回収=本人記入(必要時のみ聞き取り)
補助の有無 代理回答が入ると解釈が変わるため明記 補助=なし(代理回答なし)

スコアリング: 0〜4 を 0〜100 に換算し「下位尺度ごと」に並べる

HOOS は各設問を 5 段階( 0〜4 )で回答し、下位尺度ごとに 0〜100 点へ正規化します。得点が高いほど状態が良好(問題が少ない)です。下位尺度は独立して報告できるため、臨床では Pain / ADL / Sport/Rec / QOL を横並び にすると、改善と残存が一目で分かります。

運用で迷いやすいのが欠測です。欠測があるときは「その下位尺度が計算できる最小回答数」を下回らないかを先にチェックし、下回る場合は無理に出さない(次回に条件を整える)ほうが安全です。

欠測があるときの計算可否チェック(最小回答数の目安)
下位尺度 最小回答数(目安) 下回ったとき 実務の対処
Pain 5 項目中 5 その下位尺度は算出しない 回収手順(本人記入・時間確保)を見直す
Symptoms 5 項目中 3 その下位尺度は算出しない 空欄になりやすい設問の説明を標準化する
ADL 17 項目中 9 その下位尺度は算出しない 外来なら待ち時間で回収するなど導線を固定
Sport/Rec 4 項目中 2 その下位尺度は算出しない 目的に合わない場合は短縮版も検討する
QOL 4 項目中 2 その下位尺度は算出しない 共有したい時期(意思決定の節目)だけ回すのもあり

短縮版( HOOS-12 / HOOS JR ):忙しい現場は「目的に合わせて軽くする」

HOOS は情報量が多い一方で、回収と入力が重くなりがちです。忙しい現場では「術後の置き土産として短く追う」「登録で指定の短縮版がある」など、目的に応じて短縮版を検討します。

考え方はシンプルで、①何を比較したいか(術前後/経時)②どこまで拾うか( QOL まで必要か) を先に決めます。短縮版に切り替える場合も、条件固定(対象期間・回収方法)は同じです。

HOOS のバリエーション早見(目的別)
指標 向いている場面 強み 注意点
HOOS(原版) 症状〜 QOL を領域別に追う ADL と Sport/Rec と QOL の段差が見える 回収・入力が重いので導線が必要
HOOS-12 短時間で股関節の困りを押さえたい 運用が軽く、経時で回しやすい 細かな領域差は原版ほどは出ない
HOOS JR 股関節置換の術前後で要点を追う 比較的シンプルに追跡できる 所定の手順に沿って算出する

スコアの読み方:まず「どの下位尺度が動いたか」を見る

HOOS は「合計で何点」より、どの下位尺度が変わったか が臨床の意思決定に直結します。たとえば Pain だけが改善し ADL が残るなら、動作の負荷調整や生活動作の再学習が主戦場です。Sport/Rec と QOL が残るなら、高負荷への戻し方や “できそう” の感覚づくりが鍵になります。

また、HOOS は WOMAC の設問を含む構造のため、OA 症例で WOMAC と比較したい場面でも接続しやすいです。股関節を深く追うなら HOOS、OA を共通言語で追うなら WOMAC、下肢を横断して追うなら LEFS、という役割分担にするとブレません。

下位尺度スコアを「原因→次の一手」へ変換する早見(症例説明・カンファ向け)
下位尺度 点が低いときの臨床像(例) よくある原因(例) 次の一手(評価+介入+再評価)
Pain 歩行や階段で痛みが先行し活動量が落ちる 荷重回避、可動域制限、筋力低下、恐怖回避、炎症増悪 荷重量と課題を段階化/疼痛教育/ ROM と筋力の優先順位づけ/再評価は同条件で歩行・階段を 1 指標に固定
Symptoms こわばり・引っかかり感で動き始めがつらい 関節可動域低下、軟部組織の硬さ、動作のクセ、活動後の反応 ROM のどこが詰まるかを特定(方向と終末感)/セルフケアを標準化/再評価は起床後や活動後の条件を揃える
ADL 靴下・靴、階段、立ち座りが詰まり “生活” が戻らない 屈曲位での疼痛、外転筋弱化、動作戦略の未獲得、補助具の不適合 困る動作を 1〜2 個に絞って再学習/補助具と環境調整/再評価は対象動作(階段や靴下)を固定して変化を見る
Sport/Rec 速歩・小走り・重作業で痛みや不安が出て戻れない 筋力・耐容能不足、フォーム不安定、活動量の急増、再受傷不安 高負荷に戻す “条件” を作る(筋力・反復・疼痛反応)/課題を小刻みに進める/再評価は高負荷課題を 1 つだけ選ぶ
QOL 点数は改善しても満足度が低く不安が残る 目標のズレ、再発不安、活動の意味づけ不足、期待値の不一致 目標と優先順位を再定義/セルフマネジメント(悪化時の対処)を共有/再評価は “残った不安” を 1 行で言語化して追う

他指標との組み合わせ: HOOS を “主観の軸” にして客観を 1 つ足す

PROM は 1 つに絞ったほうが回ります。HOOS を主観の軸にするなら、客観は 1 つだけ足すのがおすすめです(歩行速度、 TUG、階段、立ち上がりなど)。評価が増えすぎると、回収と再評価が回らず、結果的に “続かない” になりやすいからです。

股関節では、画像や可動域だけでは説明しづらい “生活の困り” を HOOS で拾い、客観は「その困りに直結する 1 指標」に絞ると、説明と介入が噛み合います。関連:股関節の整形外科テスト一覧(客観評価の軸づくり)

現場の詰まりどころ: HOOS が回らない 3 つの原因

HOOS が続かない原因は、能力の問題ではなく「仕組み」の問題であることがほとんどです。詰まりどころは、だいたい 3 つに集約されます:①回収導線がない(忙しいと空欄)②条件がブレる(比較できない)③解釈が点数止まり(次の一手に変わらない)。

よくある失敗:点数が “使えないデータ” になるパターン

失敗で多いのは「前回と条件が違う」ことです。対象期間が変わる、記入者が変わる、聞き取りで誘導が入る――このズレがあると、スコア差が “臨床の変化” なのか “条件差” なのか分からなくなります。

次に多いのは「下位尺度をまとめてしまう」ことです。HOOS の価値は分解にあります。Pain は動いたのに ADL が動かない、ADL は動いたのに Sport/Rec と QOL が残る――この段差が見えれば、次に触るべき場所が決まります。

HOOS 運用で起きやすいミスと対策(現場向け)
ミス 何が起きる? 対策(最小) 記録ポイント
対象期間が毎回違う 点数差の意味が崩れる 初回に対象期間を固定し、毎回同じ文言で確認 「対象期間=直近 1 週」を固定文で残す
回収導線がない 空欄・欠測で計算できない 待ち時間で回収、回収場所を固定 回収方法(本人記入/聞き取り)を明記
下位尺度をまとめる どこが残ったか分からない Pain / ADL / Sport/Rec / QOL を横並びで記載 例:「 Pain 72 / ADL 65 / Sport 40 / QOL 45 」
点数で終わる 介入と再評価が噛み合わない 「段差→仮説→次回の 1 手」を 1 行で残す 例:「 Pain 改善、ADL 停滞→立ち上がり動作を再設計 」

回避の手順: 5 分でできる “回る運用” チェック

HOOS を回すコツは、点数計算の工夫より「回収→入力→共有」を 1 本の導線にすることです。まずは下のチェックを 5 分で整えるだけで、再評価が “続く” 形になります。

HOOS 運用チェック(外来/病棟 共通:最小セット)
項目 OK の条件 NG のサイン 最小の修正
回収の場所 毎回同じ場所・同じタイミング 「時間がなくて次回に」になりがち 待ち時間で回収する導線に固定
条件固定 対象期間・回収方法・補助の有無が固定 前回と比べづらい 固定文をカルテに 1 回だけ作る
記録の型 下位尺度を横並びで残す 合計や一言で終わる Pain / ADL / Sport/Rec / QOL を並べる
解釈の 1 行 段差→仮説→次の 1 手が書けている 点数だけで終わる 残った下位尺度を 1 つだけ選び理由を書く

よくある質問( FAQ )

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Q1. HOOS は「合計点」を作らず、下位尺度だけでいい?

A. はい。HOOS は下位尺度を独立して扱える設計なので、臨床では下位尺度を横並びで見るほうが意思決定に直結します。合計に丸めると「どこが残ったか」が消えるため、Pain / ADL / Sport/Rec / QOL の段差を残す運用がおすすめです。

Q2. 欠測があるときは平均で補完していい?

A. まずは「その下位尺度が計算できる最小回答数」を満たすかを確認します。満たさない場合は無理に出さず、次回の回収導線を整えるほうが安全です(待ち時間で回収、配布タイミング固定など)。

Q3. WOMAC と HOOS はどちらを使う?

A. 迷ったら「深さ」と「比較相手」で決めます。股関節を領域別( Sport/Rec や QOL まで)に深く追うなら HOOS、OA を膝・股で共通言語として追い研究ともつなげたいなら WOMAC が現場向きです。運用は 1 つに絞って “同じ条件で回す” を優先します。

Q4. HOOS-12 / HOOS JR はいつ使う?

A. 回収と入力が重くて “続かない” ときに検討します。短縮版に切り替える場合も、対象期間と回収方法は固定し、同じ条件で経時変化を追うのがコツです。

Q5. 再評価の頻度はどれくらいが現実的?

A. 外来なら 2〜4 週、入院なら 1〜2 週など、チームの回る頻度に合わせて固定するのがおすすめです。「次回の再評価日を先に決める」だけで、PROM が続きやすくなります。

次の一手:運用を整え、共有の型を作り、環境も点検する

教育体制・人員・記録文化など “環境要因” を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  1. Nilsdotter AK, Lohmander LS, Klässbo M, Roos EM. Hip disability and osteoarthritis outcome score ( HOOS )–validity and responsiveness in total hip replacement. BMC Musculoskelet Disord. 2003;4:10. doi: 10.1186/1471-2474-4-10 / PubMed: 12777182
  2. Roos EM, Toksvig-Larsen S. KOOS and HOOS—validation and responsiveness in total joint replacement. Health Qual Life Outcomes. 2003;1:17. doi: 10.1186/1477-7525-1-17
  3. Satoh M, Masuhara K, Goldhahn S, Kawaguchi T. Cross-cultural adaptation and validation of the Japanese version of HOOS in hip OA. Osteoarthritis Cartilage. 2013;21(4):570-573. PubMed: 23376014
  4. HOOS User’s Guide. PDF
  5. HOOS-12 User Guide. PDF
  6. HOOS, JR Scoring Instructions. PDF

著者情報

rehabilikun(理学療法士)のアイコン

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・じょくそうなどで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • じょくそう・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、じょくそう・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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