- ICIDH(国際障害分類)とは?(結論)|古い記録を ICF に「翻訳」するための足場
- まずここだけ| 1 分サマリー(読み替えの芯)
- ICIDH と ICF の違い(早見)|“言い換え” ではなく “分解”
- ICIDH → ICF 読み替え 5 手順(型)|迷ったらこの順に並べ替える
- 現場の詰まりどころ| b と d を混ぜない/社会的不利を 1 行で終わらせない
- 読み替え早見(運用版)|“分解の例” を先に持つ
- 読み替えの実例(短文テンプレ)|“ 1 行で再現できる” に寄せる
- よくある NG / OK|読み替えが崩れるパターンはほぼ固定
- 5 分で回す運用フロー|「 d → b/s → e → 修飾子」だけ固定
- 記録テンプレ(コピペ用)|文章構造を固定して迷いを消す
- よくある質問( FAQ )
- 次の一手|関連ページ(読む順)
- 参考文献
- 著者情報
ICIDH(国際障害分類)とは?(結論)|古い記録を ICF に「翻訳」するための足場
ICIDH は、障害を 欠損( impairment )・能力低下( disability )・社会的不利( handicap ) の 3 層で捉える枠組みです。現行の標準は ICF ですが、臨床では「古い診療録/論文の用語が ICIDH のまま」「院内様式が旧表現のまま」という場面が残ります。
本記事は、ICIDH を“暗記”するページではありません。ICIDH の文を ICF( b / s・ d・ e・修飾子)へ読み替えて、チームでブレない記録にすることに焦点を当てます。
まずここだけ| 1 分サマリー(読み替えの芯)
- ICIDH の 3 層:欠損 → 能力低下 → 社会的不利
- ICF への置き換え:欠損= b / s、能力低下= d(活動・参加)、社会的不利= d(参加)+ e(環境因子)
- 運用の順番:d から書く(何ができないか)→ b / s(原因)→ e(阻害 / 促進)→ 修飾子( P / Cap )
- 詰まりどころ:「歩けない」を b で書いてしまう/「社会的不利」を 1 つの言葉で残してしまう
ICIDH と ICF の違い(早見)|“言い換え” ではなく “分解”
| ICIDH(旧) | ICF(現行) | 読み替えのコツ | 臨床メモ |
|---|---|---|---|
| 欠損( Impairment ) | b(心身機能)/ s(身体構造) | 「原因・背景」を b / s へ | 疼痛= b280、筋力= b730、構造= s7xx など |
| 能力低下( Disability ) | d(活動 / 参加) | 「できない課題」を d に置く | 歩行= d450、更衣= d540 など |
| 社会的不利( Handicap ) | d(参加)+ e(環境因子) | 参加の制約と環境に分解する | 段差= e150(阻害)/家族支援= e310(促進)など |
| モデル | バイオ・サイコ・ソーシャル | “本人 × 環境” の相互作用 | 訓練で変える部分と、資源で補う部分が分かれる |
ICIDH → ICF 読み替え 5 手順(型)|迷ったらこの順に並べ替える
- 文を 3 つに分ける:欠損(原因)/能力低下(課題)/社会的不利(役割・場面)
- 欠損 → b / s:痛み・筋力・可動域・構造などを b / s に置く
- 能力低下 → d:「歩けない」「更衣が困難」など “課題” を d に置く(まずここが主役)
- 社会的不利 → d(参加)+ e:参加の制約は d、背景要因は e(阻害 / 促進)へ分解する
- 修飾子で “程度” を揃える:Performance / Capacity に 0–4( 8 / 9 )を付ける
現場の詰まりどころ| b と d を混ぜない/社会的不利を 1 行で終わらせない
一番多い詰まりは、「歩けない」「立てない」を原因( b )として書いてしまうことです。困っているのは “筋力” ではなく、まず課題( d )です。d(何ができない)→ b / s(なぜ)に分けるだけで、目標設定と介入の筋が通ります。
次に多いのが「社会的不利」を 1 つの言葉で残してしまうことです。ICF では、社会面は参加( d )と環境因子( e )に分けると、訓練で変える部分と資源で補う部分が見えます。
読み替え早見(運用版)|“分解の例” を先に持つ
| ICIDH っぽい記載 | まず置く( d ) | 原因( b / s ) | 環境( e ) |
|---|---|---|---|
| 「膝痛で歩行困難」 | d450(歩く) | b280(痛み)、b710(関節可動性)など | e115(補助具)、e150(段差)など |
| 「更衣ができず介助」 | d540(更衣) | b730(筋力)、b760(協調)など | e310(家族支援)、e115(自助具)など |
| 「通院できず社会参加が不利」 | d570 / d910 など(生活管理 / 地域生活) | b455(運動耐容能)など | e540(交通)、e580(サービス)など |
読み替えの実例(短文テンプレ)|“ 1 行で再現できる” に寄せる
ICIDH 記載(例):「膝痛により歩行が困難で、通院の社会参加が不利」
ICF へ分解(例): d450(歩く)P=3 / Cap=2、b280(痛み)2、(必要なら)b730(筋力)2、e115(補助具:促進)/ e150(段差:阻害)
計画(例):疼痛コントロール+下肢筋力+段差練習/ゴール=屋内 20 m( P=3 → 2 )
よくある NG / OK|読み替えが崩れるパターンはほぼ固定
| 場面 | NG(起きがち) | OK(直し方) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 原因と課題 | 「歩けない」を b に置く | 歩けない= d、原因= b / s に分ける | d を 1 行目に置く |
| 社会面 | 社会的不利を 1 語で終える | 参加( d )+ 環境( e )に分解 | 訓練で変える / 資源で補うを分ける |
| e 因子 | 促進 / 阻害の区別が曖昧 | 促進・阻害を “言葉” として明記 | 要因は 1 つに絞る(多すぎると読めない) |
| 修飾子 | d を書いたが程度が揃わない | Performance / Capacity を同じ基準で付ける | 迷うなら “条件” を先に固定 |
5 分で回す運用フロー|「 d → b/s → e → 修飾子」だけ固定
- d:何ができない / どこで困る(課題)
- b / s:なぜ起きる(原因・背景)
- e:何が妨げる / 助ける(環境)
- 修飾子:程度( P / Cap )を同条件で付ける
- 最後に 1 行:次の介入(訓練)と、資源で補う点を分けて書く
※ ICF の書き順や記載例を “完成形の文章” まで揃える場合は、実務版で 「 d → b / s → e → 修飾子」の書き方をまとめています。続けて読む:ICF の書き方・記載例(実務版)
記録テンプレ(コピペ用)|文章構造を固定して迷いを消す
- ICIDH → ICF(基本形):(日付)ICIDH 文を ICF へ分解: d__( P=_ / Cap=_ )。b__=_、s__=_。e__(阻害 / 促進)。計画=__。ゴール=__( P=_ → _ )。
- 短縮形(カンファ用):d__( P=_ / Cap=_ )|原因= b / s__|環境= e__|次=__
よくある質問( FAQ )
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Q1. ICIDH は今も使うべきですか?
現行の標準は ICF です。ICIDH は、古い文献や過去の診療録を読むとき、または院内様式を ICF に更新するときの “橋渡し” として限定的に参照するのが現実的です。新規の評価・記録は ICF で統一した方が、多職種共有が安定します。
Q2. 「社会的不利」は ICF でどう書けばよい?
参加の制約( d )と、背景要因( e )に分けます。たとえば「買い物に行けない」は d620、「近くに店がない」は e210、「付き添いがいない」は e310 など、課題と環境を分けると介入と資源の役割分担が明確になります。
Q3. 欠損・能力低下・社会的不利の対応を覚えられません。
まずは「欠損= b / s、能力低下= d、社会的不利= d(参加)+ e」で十分です。実務では、d から書く(困りごと)→ b / s(原因)→ e(環境)→ 修飾子、の順で並べ替える方が迷いが減ります。
次の一手|関連ページ(読む順)
参考文献
- World Health Organization. International classification of impairments, disabilities, and handicaps: a manual of classification relating to the consequences of disease. Geneva: WHO; 1980. WHO IRIS
- World Health Organization. International Classification of Functioning, Disability and Health ( ICF ). Geneva: WHO; 2001. PDF
- Stucki G, Cieza A, Ewert T, et al. Application of the International Classification of Functioning, Disability and Health ( ICF ) in clinical practice. Disabil Rehabil. 2002;24(5):281-282. doi: 10.1080/09638280110105222. PubMed
- Stucki G, Ewert T, Cieza A. Value and application of the ICF in rehabilitation medicine. Disabil Rehabil. 2002;24(17):932-938. doi: 10.1080/09638280210148594. PubMed
- Simeonsson RJ, Lollar D, Hollowell J, Adams M. Revision of the International Classification of Impairments, Disabilities, and Handicaps: developmental issues. J Clin Epidemiol. 2000;53(2):113-124. doi: 10.1016/S0895-4356(99)00133-X. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


