ICF評価点(修飾子)は「何を評価するか」から決める
ICF評価点(修飾子)は、選択したカテゴリーについて、生活機能上の問題や環境因子の影響がどの程度あるかを示す数字です。基本となる0〜4に加えて、程度を特定できない場合は8、そのカテゴリーを適用しない場合は9を使います。
結論からいうと、ICF評価点は「30m歩けたから2」「軽介助だから2」のように、距離・介助量・時間だけで機械的に決めるものではありません。最初に、心身機能・身体構造・活動と参加・環境因子のどれを扱うのかを確認し、評価尺度や判定基準、評価条件をそろえてから点数を付けます。
この記事では、PT・OT・STが迷いやすい0〜4・8・9の意味、実行状況(Performance)と能力(Capacity)の違い、評価点の付け方、記録例までを公式定義に沿って整理します。
ICF評価点0〜4・8・9の意味
ICFコードは、カテゴリーコードに評価点を付けることで、そのカテゴリーにおける問題の程度や環境因子の影響を表します。0〜4は程度を示す評価点、8は詳細不明、9は非該当です。1, 2
| 評価点 | 公式上の意味 | 大まかな範囲 | 実務での確認事項 |
|---|---|---|---|
| 0 | 問題なし | 0〜4% | 問題がないと判断した評価条件と尺度を残す |
| 1 | 軽度の問題 | 5〜24% | 採用した評価尺度や判定基準を明記する |
| 2 | 中等度の問題 | 25〜49% | 1との境界を印象ではなく基準で判断する |
| 3 | 重度の問題 | 50〜95% | 評価結果と安全面の制約を分けて記録する |
| 4 | 完全な問題 | 96〜100% | 実施不能という事実だけでなく判定条件も残す |
| 8 | 詳細不明 | 該当なし | カテゴリーは扱うが、問題の程度を特定できない |
| 9 | 非該当 | 該当なし | そのカテゴリーを本人や今回の評価目的に適用しない |
重要:8と9は、4より重い問題を示す数字ではありません。8は「程度を特定できない」、9は「カテゴリーを適用しない」という情報の状態を表します。
図で確認|ICF評価点の判断フロー
評価点で迷ったときは、いきなり0〜4を選ばず、カテゴリーの該当性から確認します。そのうえで、問題の程度を特定できるか、どの構成要素と評価点を扱うか、どの評価基準を用いるかを順番に整理します。
距離・介助量・時間は採点根拠であり共通換算表ではない
ICFには、歩行距離、介助量、所要時間を評価点へ一律に換算する共通基準は示されていません。公式の0〜4とパーセント表示は大まかな目安であり、較正された評価器具や、カテゴリーに対応した評価基準によって数量的に判定できる場合に用いる考え方です。2
したがって、次のような情報は評価点の根拠にはなりますが、それだけで点数が自動的に決まるわけではありません。
- 歩行できた距離や継続時間
- 介助量、見守り、声かけの有無
- 動作に要した時間や休憩回数
- 補助具、装具、人的支援の使用状況
- 疼痛、疲労、安全性、動作の質
- 標準値や同じ健康状態にない集団との比較
| 避けたい判定 | 問題点 | 適切な置き換え |
|---|---|---|
| 30m歩けたから評価点2 | 距離だけでは比較基準と問題の割合が分からない | 使用した歩行評価、比較基準、環境条件を示して判定する |
| 軽介助だから評価点2 | 介助量とICF評価点に公式の固定対応はない | カテゴリーに対応した尺度や施設内基準に照合する |
| 通常の倍の時間だから評価点2 | 時間延長だけでは活動全体の問題を説明できない場合がある | 時間、動作の質、支援、安全性を含めて基準に照合する |
施設独自の運用基準を作ること自体は、評価者間のばらつきを減らす方法になります。ただし、その場合は「WHO公式の換算基準」ではなく「施設内で定義した運用基準」であること、対象カテゴリー、判定条件、改訂日を明記します。
構成要素ごとに評価点の意味を分ける
同じ0〜4でも、心身機能、身体構造、活動と参加、環境因子では評価している対象が異なります。数字だけを取り出さず、必ずカテゴリーコードと評価点の種類を組み合わせて読みます。
| 構成要素 | コード | 主な評価点 | 確認する内容 |
|---|---|---|---|
| 心身機能 | b | 機能障害の程度 | 生理的・心理的機能が標準からどの程度異なるか |
| 身体構造 | s | 第1評価点は構造障害の程度 | 必要に応じて、構造変化の性状や部位を追加評価点で示す |
| 活動と参加 | d | 第1評価点は実行状況、第2評価点は能力 | 現在の環境での遂行と、標準化した環境での遂行能力を分ける |
| 環境因子 | e | 阻害因子または促進因子の程度 | 小数点は阻害因子、プラス記号は促進因子として表す |
例えば、e130.2は中等度の阻害因子、e130+2は中等度の促進因子を示します。同じ数字でも、小数点とプラス記号では意味が反対になるため注意が必要です。2
なお、個人因子はICFの背景因子に含まれますが、年齢、生活歴、価値観などの個人因子を分類するコードはICFに設定されていません。
実行状況(Performance)と能力(Capacity)の違い
活動と参加のカテゴリーでは、実行状況と能力を分けて評価します。実行状況は、補助具、人的支援、物理的環境、社会的環境などを含む「現在の環境」で実際に行っていることです。能力は、環境の影響をできるだけそろえた「標準化された環境」で、その人が課題を遂行する能力を表します。1, 2
| 項目 | 実行状況(Performance) | 能力(Capacity) |
|---|---|---|
| 基本となる環境 | 本人が現在生活している実際の環境 | 影響をそろえた標準化・画一化された環境 |
| 見る内容 | 普段、実際にしていること | 一定条件で遂行できる能力 |
| 含まれる要素 | 普段使っている補助具、人的支援、環境上の促進・阻害 | 定義した評価環境と補助具・人的支援の条件 |
| 記録の要点 | 場所、時間帯、支援者、補助具、実際の結果 | 標準化した条件、使用尺度、比較基準、到達した結果 |
「病棟で見たから実行状況」「訓練室で見たから能力」と場所だけで決めることはできません。病棟でも標準化した条件で能力を評価する場合があり、訓練室でも普段の支援環境を再現して実行状況を確認する場合があります。どちらを評価したかは、場所ではなく環境の定義と評価目的で判断します。
コードの読み方
d450.23と記載した場合、d450は「歩行」、小数点以下の最初の2は「実行状況に中等度の問題」、次の3は「能力に重度の問題」があることを示します。これはコード表記の例であり、特定の歩行距離や介助量から2・3が自動的に決まるという意味ではありません。
実行状況と能力に差があるときは、現在の環境が促進的または阻害的に作用している可能性を検討できます。ただし、点数の差だけで原因を断定せず、補助具、人的支援、建物、周囲の態度、疲労などを個別に確認します。
8と9の違い|詳細不明と非該当を混同しない
8と9の使い分けは、「まだ評価していないか」だけでなく、そのカテゴリーを本人へ適用するかどうかで考えます。
| 評価点 | 判断 | 主な使用場面 | 記録する内容 |
|---|---|---|---|
| 8 | 詳細不明 | カテゴリーは評価対象だが、情報不足などにより程度を特定できない | 不足している情報、評価できなかった理由、次回の確認方法 |
| 9 | 非該当 | 本人の生活状況や今回の評価目的に、そのカテゴリーを適用しない | 非該当と判断した対象範囲と理由 |
未評価は8を使う理由の一つですが、「未評価なら必ず8」という意味ではありません。診療録、本人・家族への聞き取り、観察などから問題の程度を特定できる場合は、直接評価を実施していなくても0〜4を判断できることがあります。反対に、評価を試みても信頼できる情報が得られなければ8になります。
また、8から2へ変わった場合は、必ずしも状態が悪化または改善したとはいえません。最初は詳細不明だった情報が、追加評価によって中等度と特定された可能性があるためです。経時変化を判断するときは、同じ評価点の種類、尺度、条件で付けた0〜4同士を比較します。
ICF評価点の付け方|5ステップ
臨床で評価点を付けるときは、次の順番にすると判断根拠を整理しやすくなります。
- 評価目的とカテゴリーを決める:何を把握し、支援や目標設定にどう使うのかを確認してから、該当するb・s・d・eコードを選びます。
- 評価点の種類を確認する:機能障害、構造障害、実行状況、能力、阻害因子、促進因子のどれを評価するのかを明確にします。
- 評価条件と比較基準を決める:場所、補助具、人的支援、時間帯、標準環境、比較する集団や基準をそろえます。
- 評価尺度・判定基準に照合する:較正された評価器具、領域別の評価基準、明文化した施設内基準などを用いて0〜4を判断します。程度を特定できなければ8、カテゴリーを適用しなければ9とします。
- コードと根拠を記録する:評価点だけでなく、評価結果、条件、使用尺度、判断理由、評価日を残します。
同じ患者を再評価するときは、可能な範囲で前回と同じ条件・尺度を使用します。条件を変更した場合は、その変更自体を記録し、点数の変化が本人の変化なのか、環境や評価方法の違いなのかを区別できるようにします。
記録例|評価点だけでなく尺度・条件・根拠を残す
ICF評価点は、数字だけを記録すると再現性が低くなります。少なくとも、カテゴリー、評価点の種類、評価条件、使用尺度・基準、結果、根拠をセットにします。
| 記録項目 | 記載内容 |
|---|---|
| カテゴリー | コードとカテゴリー名 |
| 評価点の種類 | 機能障害、実行状況、能力、阻害因子、促進因子など |
| 評価条件 | 場所、補助具、装具、人的支援、時間帯、標準環境 |
| 尺度・判定基準 | 評価法、基準値、施設内基準の名称・版・改訂日 |
| 結果と評価点 | 観察・測定結果と0〜4・8・9の判定 |
| 根拠・再評価 | 判定理由、情報源、評価日、次回確認事項 |
記録テンプレート
【カテゴリー】__。【評価点の種類】__。【評価条件】__。【使用尺度・判定基準】__。【結果】__。【ICFコード・評価点】__。【判定根拠】__。【評価日・再評価条件】__。
活動と参加の記録例
仮に、明文化した判定基準から実行状況2・能力3と判定した場合:
d450(歩行)。実行状況は病棟内、T字杖・見守り下で評価。能力は施設で定めた標準環境と支援条件で評価した。施設内歩行判定基準Ver.2に照合し、実行状況2、能力3と判定。d450.23。評価日:20XX年XX月XX日。
この例は記録形式とコードの並び方を示すものです。「T字杖」「見守り」といった条件だけで評価点2または3になるという意味ではありません。
評価点8の記録例
d450(歩行)の実行状況は詳細不明。初回面談時点では本人・家族から有効な情報を得られず、安全な観察機会も確保できなかったためd450.8とした。次回、病棟での観察と介護者への聞き取りを実施する。
評価点9の記録例
当該カテゴリーは、本人の現在の生活状況と今回の評価目的に適用しないため非該当とした。非該当とした範囲と理由を記録し、生活上の役割や評価目的が変わった場合は適用の要否を見直す。
よくある間違い|評価者間のずれを減らす
| 間違い | なぜ問題か | 修正方法 |
|---|---|---|
| 軽介助を一律に2とする | 介助量と評価点の公式な固定換算はない | 対象カテゴリーに対応した尺度・判定基準を用いる |
| 距離や時間をそのまま%に換算する | 何を100%とするか、比較対象が定義されていない | 較正された尺度や明文化した評価基準に照合する |
| 病棟を実行状況、訓練室を能力と決める | 場所だけでは現在環境と標準環境を区別できない | 環境、補助具、人的支援、評価目的を明記する |
| 未評価項目をすべて9にする | 詳細不明と非該当が混同される | 程度を特定できなければ8、カテゴリーを適用しなければ9とする |
| 8から2への変化を改善・悪化と解釈する | 8は重症度ではなく情報が特定できない状態を示す | 経時変化は、同じ条件で判定した0〜4同士で比較する |
| 評価条件を変えて点数だけ比較する | 本人の変化と環境条件の影響を区別できない | 条件を固定し、変更した場合は変更内容を併記する |
| 環境因子の小数点とプラスを混同する | 阻害因子と促進因子が逆になる | eXXX.2は阻害因子、eXXX+2は促進因子として区別する |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップまたはクリックすると回答が開きます。
Q1.評価点1と2の境界はどう決めますか?
ICF共通の「声かけなら1、軽介助なら2」といった境界はありません。対象カテゴリーに対応した評価尺度、較正された基準、または明文化した施設内基準に照合します。使用した基準を記録し、評価者間で同じ基準を使うことが重要です。
Q2.0〜4のパーセントはどう計算しますか?
歩行可能距離や介助量を単純に割り算して算出するものではありません。公式のパーセントは、較正された評価器具や、その領域に対応した評価基準で数量的に判定できる場合の大まかな範囲です。何を100%とするのかが定義されていない状態で、独自に割合を計算することは避けます。
Q3.FIMやBarthel IndexからICF評価点へ変換できますか?
評価尺度の結果をICFカテゴリーと関連づけて整理することはできますが、FIMやBarthel Indexの点数がICF評価点へ自動的に対応するわけではありません。変換規則を使う場合は、その規則の根拠、対象者、妥当性、運用条件を確認し、どの方法で変換したかを記録します。
Q4.実行状況と能力は必ず両方記録しますか?
活動と参加をICFの基本形式でコード化する場合は、第1評価点に実行状況、第2評価点に能力を配置します。ただし、診療録や施設内データで一方だけを扱う場合は、どちらの評価点を記録したのかを明示します。両方を確認すると、本人の能力と現在の環境による影響を分けて検討しやすくなります。
Q5.評価していない項目は8と9のどちらですか?
そのカテゴリーを評価対象とするものの、情報不足で程度を特定できなければ8です。本人の生活状況や評価目的に照らしてカテゴリー自体を適用しない場合は9です。8には追加確認の予定、9には非該当とした理由を添えます。
次の一手|環境因子を阻害因子・促進因子に分ける
活動と参加の実行状況・能力に差がある場合は、補助具、人的支援、建物、制度、周囲の態度などの環境因子を確認します。評価点の差だけで原因を決めず、どの環境因子が阻害または促進しているかを個別に記録すると、具体的な環境調整につなげやすくなります。
阻害因子と促進因子の分け方、コード表記、記録テンプレートをまとめています。
参考文献
- World Health Organization. International Classification of Functioning, Disability and Health: ICF. Geneva: World Health Organization; 2001. WHO公式ページ
- 厚生労働省. 国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-(日本語版). 2002. 厚生労働省掲載ページ
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

