ICU の疼痛評価は自己申告で分岐:NRS・ CPOT ・ BPS の回し方

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ICU の疼痛評価は「自己申告できるか」で分岐し、同じタイミングで回すと迷いません

ICU では疼痛が「不穏」「拒否動作」「同調不良」に見えやすく、評価が揃わないと鎮痛・鎮静・離床の判断がブレます。結論として、自己申告できるときは NRS 、できないときは行動尺度( CPOT / BPS )に分岐し、安静→刺激→介入後の同じタイミングで繰り返すと、チームの共通言語になります。

本記事は「親(まとめ)」として、分岐の判断/測定タイミング固定/記録の最小セット/中断・調整の考え方/よくある失敗を 1 ページに整理します。尺度の細部は子記事で深掘りします。

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関連:ICU の鎮静・せん妄評価( RASS → CAM-ICU )
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全体像|疼痛評価フロー( NRS → 行動尺度 → 再評価 )

親記事で最優先は「誰が見ても同じ分岐」になることです。スケール名より、分岐・タイミング・記録の 3 点を固定します。

運用が揃うと、点数の大小よりも「刺激で上がる/介入で下がる」が見えるため、鎮痛の相談や離床の可否判断が速くなります。

ICU の疼痛評価フロー:自己申告できるなら NRS、難しければ CPOT/BPS。安静→刺激中→介入後( 5 分後 )で再評価し、RASS・同調・呼吸条件を併記する。
ICU 疼痛評価フロー(分岐+安静→刺激中→介入後 5 分の固定)
ICU 疼痛評価フロー(成人・実務用)
ステップ 判断 評価 次にやること 記録の要点
1 自己申告できる NRS 安静→刺激→介入後で再評価 数値より「前後差」
2 自己申告が難しい 行動尺度( CPOT / BPS ) 同じ条件・同じタイミングで繰り返す 点数+条件(鎮静/呼吸)
3 反応が乏しい(深鎮静など) 行動尺度は過小評価に注意 安全側に負荷調整し、条件を併記 RASS・同調・呼吸循環の変化

まず分岐|自己申告できるかを 30 秒で判断する

「 NRS を取るべきか」よりも、自己申告が成立しているかが先です。結論として、短い問いかけで一貫した返答が得られるなら NRS 、難しければ行動尺度に寄せるとブレません。

反応があっても自己申告が曖昧な中間ゾーンでは、無理に数値を取らず、行動尺度で“同じ条件の反応”を追うほうが、鎮痛・負荷調整に使える情報になります。

自己申告の可否チェック(現場用)
チェック OK の目安 NG の目安 次の一手
返答の一貫性 同じ質問で一貫 揺れる/保てない 行動尺度へ
注意の持続 数十秒保てる すぐ逸れる 行動尺度+条件併記
コミュニケーション Yes/No が成立 意思疎通が困難 行動尺度へ

タイミング固定がすべて|安静→刺激→介入後( 5 分後 )

点数だけを並べても改善に繋がりません。最初に決めるのは「いつ測るか」です。おすすめは 安静→刺激→介入後(例: 5 分後 )の 3 点セットです。

この 3 点が揃うと、「刺激で上がる」「介入で下がる」が見えるため、鎮痛の相談・負荷調整・離床の継続判断が速くなります。

測定タイミング固定(安静→刺激→介入後)の目的とコツ
時点 目的 よくあるズレ 揃えるコツ
安静 比較の基準値を作る 直前のケア/吸引直後で上振れ 「何もしていない時間」を短くでも確保
刺激中 上がる刺激(トリガー)を特定 刺激が曖昧で再現できない 体位変換・ ROM ・離床移行など“刺激名”を固定
介入後( 5 分後 ) 介入で下がるか(回復)を見る 再評価が抜けて点数だけ残る 再評価時刻を最初に決めてから介入する

記録の最小セット|点数より「条件」と「前後差」を残します

疼痛評価は、数値や点数よりも 条件が重要です。最低限、次の 5 点を揃えるとチームで再現できます。

特に、行動反応は「疼痛」「呼吸苦」「恐怖」「せん妄」が混ざるため、点数だけだと解釈が割れます。刺激(何で上がったか)/介入(何で下がったか)をセットで残してください。

疼痛評価の最小記録セット( NRS / 行動尺度 共通 )
項目 書く内容
時点 安静/刺激中/介入後 安静→体位変換中→ 5 分後
評価 NRS または行動尺度 NRS __ / BPS __
刺激 何で上がったか 吸引、 ROM 、端座位移行
介入 何で下げたか 鎮痛、環境調整、休息
条件 鎮静/呼吸/循環の要点 RASS __ /同調 __ / SpO2 __
記録テンプレ(安静→刺激→ 5 分後)
時点 評価( NRS / 行動尺度 ) 刺激・介入 条件(鎮静/呼吸) 判断
安静 __ 介入前 RASS __ /同調 __ / SpO2 __ 観察継続
刺激中 __ 体位変換/吸引/ ROM など 努力呼吸 __ /表情 __ 刺激調整/鎮痛相談
5 分後 __ 鎮痛/環境調整/休息 落ち着き __ /同調 __ 継続 or 中断

中断・調整の考え方|疼痛の反応に「呼吸循環」を足します

行動尺度は不穏や呼吸苦と混ざりやすいので、疼痛の反応だけで決めず、呼吸・循環の変化とセットで判断します。ここを揃えると安全性が上がります。

「点数が上がった」よりも、「上がった刺激」「下げた介入」「下がり切らない条件」を書くほうが、次の 1 手が決まります。

中断・調整の目安(疼痛評価と合わせて見る)
状況 サイン まずやる調整 記録ポイント
刺激で上昇し、介入後も下がらない 前後差が残る 刺激量を下げる/順序変更/休息/鎮痛相談 「何で上がったか」「何で下がらないか」
呼吸の負担が増える 努力呼吸、同調不良、 SpO2 低下 体位調整/負荷を下げる/呼吸介助 同調・努力呼吸の所見
循環の変化が大きい 頻脈、血圧変動が増える 負荷を下げる/休息/共有 変化量(前後差)で書く

現場の詰まりどころ|「不穏」に見えるとき、先に揃える 3 点

ICU で詰まりやすいのは、疼痛そのものより「疼痛・呼吸苦・せん妄(不穏)」が混ざって、対応が鎮静に寄ってしまうことです。結論として、まず ①分岐(自己申告の可否)②タイミング(安静/刺激/介入後)③条件(鎮静/呼吸)の 3 点を揃えると、解釈が割れにくくなります。

特に 鎮静深度( RASS )と、せん妄評価が混ざっていると「痛みの反応」が読みにくくなります。混同しやすい場面は、関連の総論( ICU の鎮静・せん妄評価 )で“評価の順番”を先に固定すると、チームの会話が揃います。

痛み/呼吸苦/せん妄(不穏)の切り分け早見(ICU・実務用)
見え方(よくある場面) 痛みが主因のヒント 呼吸苦が主因のヒント せん妄(不穏)が主因のヒント まずやる 1 手(評価→対応) 記録の要点(最小)
体位変換/ ROM /離床移行で荒れる 刺激(接触・牽引)に合わせて表情・防御が増える/介入後に下がる 動作で努力呼吸が目立つ/ SpO2 低下や同調不良が先に出る 刺激と無関係に落ち着きがなく注意が保てない 安静→刺激→介入後で点数化( NRS or CPOT/BPS )→刺激量/順序を調整 刺激名/介入(鎮痛・体位・休息)/前後差/ RASS・同調
人工呼吸器との同調不良・拒否動作 吸引やチューブ接触で反応が強い/鎮痛後に同調が改善 換気負荷が高い(努力呼吸、呼吸数増加)/体位や設定調整で改善 見当識低下・幻覚様・日内変動/評価者が変わっても一貫して不穏 呼吸状態(同調・努力呼吸)を先に確認→必要なら疼痛を行動尺度で再評価 同調(良/不良)/努力呼吸/ SpO2 / RASS /刺激と反応
点数が高いのに原因がはっきりしない 特定の刺激で上がる(吸引・創部・ドレーン) 体位で変わる(仰臥位で悪化など)/呼吸介助で軽くなる 会話が成り立たない/注意が続かない/見当識が保てない 「刺激」を特定→刺激を減らしながら再評価(同条件で比較) 何で上がったか/何で下がったか/条件(鎮静・呼吸)
深鎮静で反応が乏しい 行動尺度は過小評価になりやすい(痛みがゼロとは限らない) 呼吸循環の変化が手がかり(頻脈・血圧変動・同調) せん妄評価そのものが困難(深鎮静) 安全側に負荷を下げる→条件を併記して経時比較(刺激で“上げて”確認しない) RASS /循環変化(前後差)/同調/評価不能の理由

よくある失敗|疼痛を「不穏」「呼吸苦」と混同して、鎮静に寄せてしまう

疼痛の表出は不穏と混ざります。行動反応が強いとき、最初にやりたいのは鎮静追加ではなく、疼痛・呼吸苦・恐怖のどれが主因かを切り分けることです。特に同調不良が強い場面では、換気・体位・分泌物などの要因が混ざりやすいです。

点数よりも、刺激(何で上がったか)/介入(何で下がったか)を残すと、次の介入が改善しやすくなります。

導入の型|最短 2 週間で「回る運用」にする

親記事のゴールは、現場で回る運用です。結論として、測定タイミング固定+記録テンプレ+共有の場をセットにすると早いです。

最初から完璧にせず、まず「同じ条件で比較できる」状態を作ると、鎮痛・離床の議論が前に進みます。

  • 1 週目:安静→刺激→介入後の 3 点セットを決める(誰がいつ測るか)
  • 2 週目:記録テンプレを揃え、申し送りで「刺激と介入」を共有する

子記事(各論)|尺度の運用はここで深掘りします

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 点数が高いとき、リハは中止でよいですか?

点数だけで中止を決めると過剰中止になりやすいです。刺激量や順序を調整し、休息や鎮痛後に再評価します。呼吸・循環の変化も合わせて判断し、前後差で記録するとチームで共有できます。

Q2. 深鎮静で反応が乏しい場合はどうしますか?

行動尺度は過小評価になりやすいので、鎮静深度や呼吸循環の条件を併記し、安全側に負荷を調整します。刺激量を上げて評価するより、体位調整や負荷低下を優先します。

Q3. 抜管後は行動尺度を続けますか?

自己申告が可能なら、原則は NRS など自己申告の尺度へ移行します。移行が不安定な期間は、短時間だけ行動尺度を補助として併記すると共有がスムーズです。

Q4. 記録で一番大事なのは何ですか?

点数そのものより、「刺激(何で上がったか)」と「介入(何で下がったか)」を残すことです。安静→刺激→介入後の 3 点セットで前後差を示すと、改善に繋がります。

次の一手

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

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参考文献

  1. Devlin JW, Skrobik Y, Gélinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46(9):e825-e873. DOI: 10.1097/CCM.0000000000003299.
  2. Payen JF, Bru O, Bosson JL, et al. Assessing pain in critically ill sedated patients by using a behavioral pain scale. Crit Care Med. 2001;29(12):2258-2263. DOI: 10.1097/00003246-200112000-00004.
  3. Gélinas C, Fillion L, Puntillo KA, et al. Validation of the Critical-Care Pain Observation Tool in adult patients. Am J Crit Care. 2006;15(4):420-427. PubMed: 16823020.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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