危険因子評価票の書き方【計画書に落とす院内運用プロトコル】

臨床手技・プロトコル
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この記事の使い方(先に結論)

危険因子評価票は、「評価して終わり」にしない設計が成果を左右します。本稿は、厚生労働省の様式で拾い上げたリスクを、診療計画書・看護計画・リハビリテーション実施計画書へ確実に落とし込むための院内運用プロトコルを 1 ページで整理します。評価方法そのものではなく、転記ルール/文例/監査の見える化に焦点を当てます。

運用を標準化すると、「誰が書いても同じ質」で回せます。 評価 → 計画 → 再評価の型をまとめて見る( PT キャリアガイド ) ※内部リンクは同一タブで開きます。

結論:運用は 7 ステップで固定する

この運用は、「いつ・誰が・どこに書くか」を先に固定するとブレが減ります。病棟の交代勤務や多職種連携を前提に、下記の 7 ステップを院内標準として採用してください。

  1. 対象確認:対象は原則 ADL 自立度 B/C(施設ルールに合わせて明文化)。
  2. 実施タイミング:入棟(入所)後 24 時間以内に評価票を実施。
  3. リスク列挙:該当項目をそのまま列挙し、優先度(皮膚/体位/支持面/栄養など)で束ねる。
  4. 担当割り振り:各項目に主担当(看護/ PT /栄養/医師)を 1 つだけ割り当てる。
  5. 計画へ転記:診療計画書・看護計画・リハ計画へ院内標準の文例で転記(定型文を推奨)。
  6. 実行と観察:日々のケアとリハで観察指標(皮膚所見/疼痛/ずれ/活動量)をセットで記録。
  7. 効果判定:目安 48 時間以内に効果判定し、必要なら計画を更新(「更新日」と「理由」を残す)。

対象・前提(院内でズレやすい 3 点)

運用を開始する前に、前提を 3 つだけ揃えます。ここが曖昧だと「評価はしているのに改善しない」「監査で説明できない」状態になりやすいです。

  • 対象:原則 ADL 自立度 B/C( J/A を含めるかは施設方針で固定)。
  • 判断:1 項目でも該当したら「計画書で対策を立案」し、対応の有無が追えるようにする。
  • 記録:「評価票」だけに残さず、計画(実施)→観察→再評価まで同じ場所(同じ見出し)で追える形にする。

現場の詰まりどころ(ここを潰すと回り出す)

危険因子評価票の運用が失速する原因は、評価技術より運用設計に偏りがちです。院内教育や監査対応を見据えて、次の 4 つを先に潰しておきます。

  • 対象がブレる:「念のため」で J/A まで広げ、記録が増えて形骸化する。
  • 担当が曖昧:“誰かがやる”状態で、計画の更新が遅れる(責任の所在が見えない)。
  • 計画が抽象的:「体位変換を行う」だけで、頻度・条件・観察指標が書かれない。
  • 効果判定がない:介入後の再評価がなく、同じ介入が惰性で継続される。

病棟内で運用を回すには、教育・引き継ぎ・監査の“抜け漏れ”も一緒に整える必要があります。面談準備チェック( A4 )と職場評価シート( A4 )を使って、運用の穴を短時間で洗い出したい方は、ダウンロードページも活用してみてください。

運用フロー(院内標準ひな形)

病棟で共有しやすいように、各ステップで「主担当」「アウトプット」「期限」を固定します。電子カルテの運用に合わせて文言は調整してください。

危険因子評価票の院内運用: 7 ステップ標準(主担当/アウトプット/期限)
ステップ 主担当(例) アウトプット(何が残れば OK か) 期限(目安)
1. 対象確認 看護(受け入れ) 対象( B/C )の明記、除外基準の確認 入棟当日
2. 評価票実施 看護(一次) 評価票の実施記録(実施者・日時) 24 時間以内
3. リスク列挙 看護+ PT 該当項目の列挙、優先度(皮膚/体位/支持面/栄養) 当日中
4. 担当割り振り 病棟(カンファ) 各項目の主担当を 1 つに固定(重複を避ける) 当日中
5. 計画へ転記 看護/ PT 診療計画書・看護計画・リハ計画へ標準文例で転記 24 時間以内
6. 実行と観察 全職種 観察指標(皮膚所見/疼痛/ずれ/活動量)の記録 毎日
7. 効果判定と更新 主担当 効果判定(改善/不変/悪化)と、更新日・理由の記録 48 時間以内

記載例(看護計画・ PT 指示文・転記先)

評価票の「はい/いいえ」を、そのまま計画へ貼り付けると抽象化しがちです。頻度・条件・観察指標を必ずセットで入れ、再評価につながる形にします。

「評価票 → 計画書」への翻訳文例(院内運用に合わせて調整)
該当項目(例) 転記先(例) 看護計画(例) PT 指示文テンプレ(例)
基本的動作能力 看護計画/リハ計画 2 時間ごとに体位変換を行う。日中の椅子座位中は 30 分ごとに座り直しを促し、皮膚観察を 1 日 1 回以上実施する。 座位保持訓練を 15 分 × 2 回/日実施。座面高・足台・背支持を調整し、自力座り直しを促せる手がかりを付与。観察指標は「ずれ」「疼痛」「発赤」の 3 点。
病的骨突出 診療計画書/看護計画 仙骨・踵部に除圧材を使用し、体位変換時に骨突出部の皮膚状態を観察する。移乗時のずれを避ける。 圧集中部位を確認し、推奨クッションの種類と配置を提案。移乗時に牽引が生じない介助方法を統一して指導し、写真または手順を病棟に共有。
関節拘縮 看護計画/リハ計画 安全な可動域内で定期的に体位を変更し、寝具のしわや抵抗を最小限とする。 拘縮関節の駆動域確保を目的に、他動運動・ポジショニングを週 3 回実施。介助ハンドリングを統一し、実施条件(痛み・抵抗の上限)を共有。
皮膚湿潤 看護計画 失禁状況を再評価し、パッド・交換頻度を見直す。皮膚の乾燥時間を確保する。 長時間座位は 60 分以内を目安に休憩姿勢を提案。ずれ・摩擦を最小化する移乗と体位変換の手順を教育し、観察指標は「湿潤」「発赤」「疼痛」。
浮腫(むくみ) 診療計画書/看護計画 下肢挙上など循環に配慮したポジショニングを行い、圧迫や皮膚損傷を避ける。皮膚の張り・発赤を観察する。 支持面と肢位を評価し、末梢の圧集中を回避する姿勢を提案。活動量と休息のバランスを調整し、観察指標は「皮膚所見」「疼痛」「装具・靴ずれ」。
貧血(全身状態) リハ計画 疲労・めまい・起立時の変化を観察し、無理な体位変換を避ける。 離床は段階化し、起立時の症状変化を観察。座位・立位の許容時間を計画に明記し、病棟の介助量を統一できる形で共有。
栄養状態(摂取低下) 診療計画書 摂取量の記録と食事形態の調整を検討し、必要時に栄養介入へ連携する。 活動量・離床計画を栄養側と連動し、過負荷にならない訓練量へ調整。観察指標は「摂取量」「体重」「疲労」。
スキンテア 看護計画/診療計画書 発生部位を保護材で保護し、更衣や移乗時の牽引を避ける。手順と頻度を統一する。 更衣・移乗で滑走面(スライディングシート等)を使用し、剪断力を軽減。介助手順を作成し、病棟カンファレンスで共有。

監査チェックリスト(院内用)

監査で問われやすいのは「対象」「タイミング」「計画への反映」「効果判定」の 4 点です。現場が回るように、監査項目は少なく・具体的にします。

危険因子評価票の運用に関する監査チェック(院内版のたたき台)
項目 OK(望ましい) NG(是正例) 証跡(残すもの)
対象の適正 ADL 自立度 B/C を対象に、入棟後 24 時間以内に評価を実施。 J/A を含めて漫然と実施 → 対象・除外・例外を明文化して再周知。 対象条件の運用文書/教育資料
結果の共有 評価当日中に、結果が電子カルテまたはカンファで共有されている。 翌日以降・口頭のみ → 「当日中に記録・共有」を標準手順に追加。 共有欄の記録/カンファ記録
計画への転記 計画書で用語・文例が院内標準に沿って記載されている。 表現がばらばら → 標準文例集を定型文として登録し、記録位置も固定。 定型文一覧/テンプレ更新履歴
実行と観察 観察指標(皮膚所見・疼痛・ずれ・活動量)が記録され、介入と結び付いている。 介入のみで観察がない → 観察指標を 2〜 3 個に絞って計画へ併記。 経過記録/チェック欄
効果判定 少なくとも 48 時間以内に効果判定(改善/不変/悪化)と更新が行われている。 放置 → 判定期限と更新ルール(更新日・理由)を標準化。 再評価記録/更新理由

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

「評価はしたのに、計画に反映されない」原因は?

原因の多くは、計画の記録位置が固定されていないことです。「どこに書くか」を先に決め、評価票の該当項目を同じ見出しへ転記し、担当と期限( 48 時間以内の効果判定)までセットで残すと回り始めます。

計画が抽象的になりがちです。何を足すべき?

頻度・条件・観察指標の 3 点を足します。例:「 2 時間ごと」など頻度、「座位 60 分以内」など条件、「発赤・疼痛・ずれ」など観察指標を併記すると、再評価と更新につながります。

PT が担うべきポイントはどこですか?

PT は「体位変換ができる身体づくり」と「座位・車椅子シーティングの規格化」をセットで支援します。介助方法が統一されるよう、短いサイクルで評価・修正し、病棟スタッフと共通言語で共有することが鍵です。

監査で説明しやすい“証跡”は何ですか?

「対象条件」「実施タイミング」「計画への転記」「効果判定(更新日・理由)」が追える記録です。監査は、実施の有無より運用として回っているかが問われやすいため、更新履歴まで残る運用にすると説明が簡単になります。

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参考・一次情報

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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