MMT Grade 2 と 3 の違い|重力に抗せるかが分岐点です
MMT は「数字を付ける評価」ではなく、「同じ条件で再評価できる形にそろえる評価」です。
評価の型や学び方を先にそろえると、申し送りや再評価のブレを減らしやすくなります。
MMT で新人の理学療法士が特に迷いやすいのが、 Grade 2 と 3 の境界です。少し動いたから Grade 3 でよいのか、重力除去位に変えるタイミングはいつか、疼痛や代償があるときはどう考えるのか。このあたりがあいまいなままだと、同じ患者さんでも評価者によって判定がぶれやすくなります。
結論として、 Grade 3 は重力に抗して全可動域を動かせること、 Grade 2 は重力除去位なら全可動域を動かせることが基本です。本記事では、この境界を短時間で見分ける判定手順、重力除去位の作り方、誤判定しやすい場面、カルテ記載の残し方まで整理します。 MMT 全体の基礎を先に確認したい方は、MMT(徒手筋力テスト)ガイド|やり方・判定・記録用紙から読むと理解がつながりやすくなります。
MMT Grade 2 と 3 の違いとは?
MMT Grade 2 と 3 の違いは、重力に抗して動けるかどうかです。重力に抗して全可動域を動かせれば Grade 3、重力を外した条件なら全可動域を動かせる場合は Grade 2 と判定します。つまり Grade 3 は、 MMT の中でも「重力位で動作が成立するか」をみる分岐点です。
ただし、実際の臨床では筋力だけを見ているつもりでも、疼痛、可動域制限、代償運動の影響が混ざります。そのため、単に「動いた」「動かなかった」で決めるのではなく、どの姿勢で、どこまで、どの筋で動いたかを確認することが大切です。 Grade 2 と 3 の判定は、筋力そのものよりも、条件設定の正確さで差が出やすい領域です。
結論|重力に抗して全可動域を動かせれば Grade 3
まず押さえたい結論はシンプルです。 Grade 3 は「重力に抗して全可動域を動かせる」、 Grade 2 は「重力除去位なら全可動域を動かせる」です。迷ったときは、最初にこの原則へ戻るだけでも判定のぶれを減らしやすくなります。
一方で、途中までは動いた、少しだけ挙上した、痛みで止まったという場面では、すぐに Grade 3 と決めないことが重要です。とくに臨床では、筋力低下ではなく疼痛や代償で見かけ上の差が生じることがあります。判定を急ぐより、重力条件を変えて確かめることが実務では重要です。
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| Grade | 重力条件 | 判定の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 2 | 重力除去位 | 重力を外せば全可動域を動かせる | 肢位設定が不十分だと本来の筋力より低く見えます |
| 3 | 重力位 | 重力に抗して全可動域を動かせる | 途中までしか動かない、代償で動く場合は慎重に解釈します |
Grade 2 と 3 を分ける判定手順
Grade 2 と 3 の判定では、毎回の手順をそろえると迷いにくくなります。まずは標準肢位で運動を確認し、対象筋が重力に抗して全可動域を動かせるかをみます。ここで全可動域に達すれば、基本的には Grade 3 と考えます。
重力に抗した条件で十分に動かせない場合は、その時点で低い Grade をつけるのではなく、重力除去位へ変更して再確認します。重力除去位で全可動域が可能なら Grade 2 と考えます。この流れを固定しておくと、再評価や指導場面でも説明しやすくなります。
- 標準肢位で開始する
- 重力に抗して全可動域を動かせるか確認する
- 難しければ重力除去位に変更する
- 重力除去位で全可動域なら Grade 2 を考える
- 疼痛・可動域制限・代償の混入を最後に確認する
現場メモ:「動かなかった= Grade 2 以下」ではありません。まずは重力条件を変えて再確認したかをチェックすると、判定の飛ばしを減らせます。
重力除去位の作り方|上肢・下肢の基本
重力除去位とは、目標とする運動方向に対して重力の影響をできるだけ減らした肢位のことです。 Grade 2 を判定するには、この重力除去位を適切に作れることが前提になります。重力位で動かなかったからといって、すぐに Grade 2 未満と判断せず、まずは重力条件を変えて確かめることが大切です。
考え方のコツは、運動を水平面へ変換する、または肢を支持して摩擦を減らすことです。肩外転や股外転は水平面の動きに置き換えると見やすくなり、肘屈曲や膝伸展は台や検者の支持で条件を整えやすくなります。部位ごとに「どの方向へ重力がかかっているか」を意識して肢位を作ると、 Grade 2 の解釈が安定します。
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| 筋・動作 | 重力位の例 | 重力除去位の考え方 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|---|
| 肩外転 | 座位や立位で肩外転 | 水平面での外転として評価する | 肩甲挙上や体幹側屈の代償に注意します |
| 肘屈曲 | 座位で前腕を持ち上げる | 前腕を支持しながら滑らせる | 前腕回内では腕橈骨筋の代償が混ざりやすくなります |
| 股外転 | 側臥位で股外転 | 水平面での外転として評価する | 骨盤挙上や体幹側屈で強く見えやすいです |
| 膝伸展 | 座位で下腿を伸ばす | 下腿を支持しつつ水平面で動かす | 股関節回旋や体幹後傾の代償に注意します |
迷いやすい場面|代償・疼痛・可動域制限
Grade 2 と 3 の判定がぶれやすい最大の理由は、筋力そのものよりも、代償や疼痛、可動域制限が入り込むことです。たとえば体幹を傾けたり、骨盤を引き上げたりすると、目標筋以外の力を借りて動作が成立したように見えます。この代償を見逃すと、本来 Grade 2 相当でも Grade 3 と判定してしまいます。
また、疼痛があると筋力を十分に発揮できず、筋力低下のように見えることがあります。さらに、関節可動域が不足していれば、筋力があっても全可動域には届きません。評価の前後で、痛みの有無、 ROM 制限、代償の混入を切り分けて考えることが、 Grade 2 と 3 の誤判定を減らす近道です。
代償で「動けたように見える」
目標筋以外の力を借りて動くと、見た目だけでは Grade 3 のように見えることがあります。肩外転なら肩甲挙上、股外転なら骨盤の引き上げや体幹側屈などが代表的です。動きの量だけでなく、どこが主役で動いているかを観察します。
疼痛で「出せない」のに筋力低下と誤認する
疼痛は随意収縮の出力を低下させるため、筋力低下と同じように見えることがあります。痛みによる抑制なのか、純粋な筋力低下なのかを分けて解釈するためにも、疼痛の部位・程度・再現性を短く残しておくと次回評価につながります。
可動域制限で「最後まで行かない」
関節可動域が不足していると、筋力があっても全可動域には届きません。この場合は単純に Grade を下げるのではなく、 ROM 制限の影響を踏まえて解釈します。 MMT だけで完結させず、必要に応じて ROM 評価とセットで考えることが大切です。
よくある失敗| Grade 3 を甘く付けてしまう場面
臨床で多い失敗は、少し動いただけで Grade 3 としてしまうことです。 Grade 3 の条件は「重力に抗して全可動域を動かせること」なので、途中までしか動けない場合や、代償で見かけ上動いている場合は慎重に解釈する必要があります。
もう一つ多いのが、重力位で動かなかった時点で、そのまま Grade 2 以下と決めてしまうことです。本来はそこで重力除去位へ変更し、動きが出るかを再確認します。判定の流れを飛ばさないことが、 Grade 2 と 3 を正しく分ける最も大切なポイントです。
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| 場面 | NG | OK | 修正ポイント |
|---|---|---|---|
| 途中までしか動かない | 少し挙上したので Grade 3 とする | 全可動域に達したかで判断する | 終末域まで動けるかを確認します |
| 重力位で動かない | そのまま Grade 2 以下と決める | 重力除去位へ変えて再確認する | 条件分岐を飛ばさないようにします |
| 代償が強い | 見た目の動き量だけで判断する | 目標筋での動作かを観察する | 体幹や骨盤の代償を抑えます |
| 疼痛がある | 筋力低下と同義で扱う | 疼痛の影響を切り分けて記録する | 疼痛部位・程度・再現性を添えます |
カルテ記載例| Grade 2 / 3 を 1 行で残す
MMT の記録では、 Grade だけを書くと再評価時に条件を再現しにくくなります。たとえば「右肩外転 MMT 3」とだけ記載すると、どの肢位で評価したのか、疼痛や代償があったのか、どこまで可動域が出たのかが分かりません。実務では、条件・代償・疼痛・可動域を短く添えることが重要です。
たとえば「右肩外転 MMT 2。重力除去位で全可動域可能、座位では 90° 未満で停止、疼痛軽度あり」や、「右股外転 MMT 3。重力位で全可動域可能、骨盤代償軽度、疼痛なし」のように残すと、再評価や申し送りに活かしやすくなります。数字だけで終わらせず、次回も同じ条件へ戻せる記録を意識すると、 MMT はぐっと使いやすくなります。
記載例は次のように考えると整理しやすくなります。
- どの筋・どの動作をみたか
- 重力位か、重力除去位か
- 全可動域か、途中までか
- 代償や疼痛があったか
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 少しだけ動いたら Grade 3 ですか?
いいえ。 Grade 3 は、重力に抗して全可動域を動かせることが条件です。途中までしか動かない場合は Grade 3 と決めず、重力除去位へ変更して再確認します。
Q2. 重力除去位で途中までしか動かない場合はどう考えますか?
重力除去位でも全可動域に届かない場合は、 Grade 2 未満の可能性があります。収縮が触知できるか、疼痛や恐怖感が強くないかもあわせて確認します。
Q3. 疼痛が強いときは、そのまま MMT を判定してよいですか?
疼痛は筋出力を低下させるため、筋力低下と誤認しやすくなります。痛みによる制限なのか、純粋な筋力低下なのかを分けて解釈し、疼痛の影響を短く記録に残すことが大切です。
Q4. Grade 2 と 3 の間で迷ったらカルテにはどう残しますか?
迷った場合は Grade だけでなく条件を残します。たとえば「重力位では途中まで、重力除去位では全可動域可能」のように書くと、次回評価や申し送りにつながりやすくなります。
次の一手
Grade 2 と 3 の違いは、 MMT の中でも基礎でありながら、実際には最もぶれやすい境界のひとつです。まずは重力位で確認する → 難しければ重力除去位で再確認するという流れを固定するだけでも、評価の再現性は上げやすくなります。
続けて読むなら、次の 3 本でクラスターがつながります。
参考文献
- Cuthbert SC, Goodheart GJ Jr. On the reliability and validity of manual muscle testing: a literature review. Chiropr Osteopat. 2007;15:4. DOI / PubMed
- Paternostro-Sluga T, Grim-Stieger M, Posch M, et al. Reliability and validity of the Medical Research Council ( MRC ) scale and a modified scale for testing muscle strength in patients with radial palsy. J Rehabil Med. 2008;40(8):665-671. DOI / PubMed
- MacAvoy MC, Green DP. Critical reappraisal of Medical Research Council muscle testing for elbow flexion. J Hand Surg Am. 2007;32(2):149-153. DOI / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


