- MUST( Malnutrition Universal Screening Tool )とは? 3 項目で “低栄養リスク” を 5 分で層別する方法
- MUST はどんな場面で使う?(向いている/向かないを先に整理)
- 5 分で回す MUST の手順( Step 1〜5 )
- Step 1: BMI スコア(計算式とカットオフ)
- Step 2:体重減少率( 3〜6 か月の “変化” を点数化)
- Step 3:急性疾患で “ 5 日以上食べられない” をどう判断する?
- Step 4:合計点でリスク判定( 0 / 1 / 2 以上 )
- Step 5:リスク別の初期対応( “観察” で終わらせない )
- 現場の詰まりどころ:よくあるミスと対策( PT 目線 )
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
- 参考文献
- 著者情報
MUST( Malnutrition Universal Screening Tool )とは? 3 項目で “低栄養リスク” を 5 分で層別する方法
評価を “次の一手” まで落とし込むコツを、体系で押さえたい方へ。 PT の臨床力ロードマップを見る 観察→記録→説明→再評価まで、迷いが減る整理に使えます。
MUST( Malnutrition Universal Screening Tool )は、成人の低栄養(または低栄養リスク)を短時間で抽出するスクリーニングツールです。評価項目は BMI、体重減少率、急性疾患による摂取低下の 3 つで、採血がなくても運用できます。
ポイントは「診断」ではなく「リスクの層別」です。まず MUST で “いま介入が必要か” を早く決め、必要なら GLIM などの診断フロー(表現型+病因)に橋渡しします。
MUST はどんな場面で使う?(向いている/向かないを先に整理)
MUST は、外来・地域・施設・在宅など “採血がない/すぐに結論を出したい” 場面で強みがあります。身長・体重の情報と、体重変化、食べられているか( 5 日以上の摂取低下)を押さえれば、同じ手順で回せます。
一方で、高齢者中心の現場では 「食欲・活動性・認知」なども含めて拾えるツールが便利なことがあります。高齢者の外来・施設での一次スクリーニングは MNA-SF のスクリーニング手順 もあわせて検討すると、見落としが減ります。
| 場面 | MUST が向く理由 | 次の一手(例) |
|---|---|---|
| 外来/地域包括 | 短時間で層別しやすい( BMI・体重変化・摂取) | 陽性なら “原因” を確認(疾患・嚥下・炎症など) |
| 在宅/施設 | 採血なしでも運用しやすい | 体重・摂取量を週次で追跡し、連携の根拠にする |
| 入院(急性期) | “食べられない日数” が判断できると有効 | リスク高なら早期に多職種連携(栄養士・医師) |
5 分で回す MUST の手順( Step 1〜5 )
MUST は 5 つの Step で構成されます。臨床では “ Step 1〜3 で点数化 → Step 4 でリスク判定 → Step 5 で初期対応” までを 1 セットとして扱うと、評価だけで終わりません。
最初の 5 分は 「計測(身長・体重)+体重変化の聞き取り+摂取低下の見立て」に集中します。あとは表に当てはめて合計点を出し、次のアクションを決めます。
- Step 1:BMI からスコア( 0 / 1 / 2 )
- Step 2:過去 3〜6 か月の体重減少率からスコア( 0 / 1 / 2 )
- Step 3:急性疾患で 5 日以上 “ほぼ食べられない” 可能性があるか( 0 or 2 )
- Step 4:合計点で低・中・高リスクに分類
- Step 5:リスク別の初期対応(観察/追加評価/連携)
Step 1: BMI スコア(計算式とカットオフ)
BMI は 体重( kg )÷ 身長( m )÷ 身長( m )で算出します。MUST では BMI が低いほどスコアが上がり、低栄養リスクが高い扱いになります。
浮腫・腹水・脱水・ギプス・切断などで “体重が実態を反映しにくい” ときは、まず測定条件をメモに残すのがコツです。数値の正確さより、同じ条件での再評価が臨床判断に効きます。
| BMI | スコア | 解釈(要点) |
|---|---|---|
| 20 以上 | 0 | この項目だけではリスクは低め |
| 18.5 以上 20 未満 | 1 | 境界域:体重変化と摂取低下を必ず確認 |
| 18.5 未満 | 2 | 低体重:他項目が 0 でも要注意 |
Step 2:体重減少率( 3〜6 か月の “変化” を点数化)
体重減少率は、(過去の体重 − 現在の体重)÷ 過去の体重 × 100で計算します。MUST は “現在の値” よりも、体重が落ちているスピードを評価に組み込みます。
実務で詰まりやすいのは “過去体重が不明” のケースです。このときは、家族・記録・健診など複数ソースで推定し、推定であることを明記して次回更新(上書き)します。スクリーニングは 暫定でも回すのが大事です。
| 体重減少率 | スコア | 現場メモ |
|---|---|---|
| 5 % 未満 | 0 | 直近の摂取低下がないかもセットで確認 |
| 5 % 以上 10 % 未満 | 1 | 境界:食事量・疼痛・嚥下・活動量を拾う |
| 10 % 以上 | 2 | 高リスク:介入計画(連携)まで一気に |
Step 3:急性疾患で “ 5 日以上食べられない” をどう判断する?
Step 3 は “いま食べられていない(または今後 5 日以上の摂取低下が見込まれる)” を点数化するパートです。MUST では 「なし= 0 点」「あり= 2 点」の二択で扱い、急性イベントで一気にリスクを上げられる設計です。
コツは “完食かどうか” より、必要量を満たせない状態が続くかで考えることです。例えば消化器手術前後、強い悪心・疼痛、嚥下障害、強い倦怠感などで摂取が大きく落ちるときは、迷わず “あり” として次の対応につなげます。
| 判定 | スコア | 判断の目安 |
|---|---|---|
| なし | 0 | 摂取低下が 5 日以上続く見込みが低い |
| あり | 2 | 5 日以上、必要量を満たせない可能性が高い |
Step 4:合計点でリスク判定( 0 / 1 / 2 以上 )
Step 1〜3 の点数を合計し、低・中・高リスクに分類します。MUST は “ 0 点=低リスク、1 点=中等度、2 点以上=高リスク” とシンプルなので、チーム内で共有しやすいのが利点です。
重要なのは、点数が出た瞬間に “次のアクション” を同時に決めることです。スクリーニングは、記録と連携のための “共通言語” として使うと効果が出ます。
| 合計点 | リスク | 臨床での意味 |
|---|---|---|
| 0 | 低リスク | 定期的な再スクリーニングで見落としを防ぐ |
| 1 | 中等度リスク | 短期間で再確認(摂取量・体重変化) |
| 2 以上 | 高リスク | 介入と多職種連携を前提に動く |
Step 5:リスク別の初期対応( “観察” で終わらせない )
Step 5 は “その後どうするか” の部分です。リスクが高いほど、観察だけでなく 介入の仮説(なぜ食べられないのか/何を変えると改善するのか)を立て、チームにつなげます。
PT の実務では、まず 摂取量・体重・活動量( Ex )が同じ紙(または同じ欄)で追えるようにすると、リハ計画と栄養がつながります。少なくとも “次回いつ再評価するか” を決めて記録します。
| リスク | まずやること | 記録ポイント | 連携の目安 |
|---|---|---|---|
| 低( 0 ) | 定期的に再スクリーニング | 体重推移/食事量の変化 | 変化が出たら早めに共有 |
| 中( 1 ) | 短期で再評価(例: 3 日〜 1 週 ) | 摂取量(主観でも可)/体重 | 継続低下なら栄養士・医師へ |
| 高( 2 以上 ) | 介入を前提に計画(摂取・形態・環境) | 原因仮説(疼痛・嚥下・炎症・薬剤など) | NST/栄養士/嚥下チームを早期に |
現場の詰まりどころ:よくあるミスと対策( PT 目線 )
栄養スクリーニングは “正確に 1 回” よりも、早く回して、再評価で精度を上げる方が臨床に合います。詰まりどころを先に潰すと、チームに広げやすくなります。
下表は MUST 運用で起こりやすい NG と、次にやるべき対策をまとめたものです。記録のテンプレに入れておくと、属人化しにくくなります。
| NG | なぜ困る? | OK(対策) |
|---|---|---|
| 点数だけ付けて終わる | 介入・連携につながらず、見落としが残る | Step 5 をセット化し、再評価日を必ず決める |
| 過去体重が不明で止まる | スクリーニングが回らず、初動が遅れる | 推定で暫定入力し、次回に上書きする運用にする |
| 浮腫・腹水を考慮しない | 体重が “改善” に見えてリスクを過小評価しやすい | 測定条件(浮腫・補液など)をメモし、同条件で再評価 |
| “食べられない” を完食率だけで判断 | 必要量不足の継続を見逃す | 「必要量を満たせない状態が 5 日以上続くか」で考える |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. MUST は “低栄養の診断” に使えますか?
A. MUST は “低栄養(またはリスク)” を拾い上げるスクリーニングです。診断として確定させたい場合は、スクリーニング後に GLIM のような診断基準で「表現型+病因」を確認し、重症度まで整理してからチームで介入方針を決めます。
Q2. 体重が測れないときはどうしますか?
A. まずは推定(家族の情報、衣類サイズ、健診記録、直近の入院データなど)で暫定評価し、測定可能になった時点で上書きします。スクリーニングは “止まらない運用” が最優先です。
Q3. 高リスク( 2 点以上 )のとき、PT は何をすべき?
A. ① 摂取低下の原因仮説(疼痛・嚥下・倦怠感・炎症・薬剤など)を短くメモ、② 体重・摂取・活動量( Ex )の追跡を始める、③ 栄養士・医師・嚥下チームへ “点数+背景” をセットで共有、の 3 つが現実的です。
まとめ
MUST は、BMI・体重減少率・急性疾患による摂取低下の 3 項目で “低栄養リスク” を短時間に層別できるツールです。スクリーニングは診断ではないので、点数が出たら Step 5(初期対応)→再評価までを 1 セットで回すと、評価が介入に直結します。
最後は「スクリーニング → 初期介入 → 記録 → 再評価」のリズムを作るのがコツです。面談準備チェックと “職場の評価シート” もあわせて使うと、連携・説明がさらにラクになります: /mynavi-medical/#download
参考文献
- Stratton RJ, Hackston A, Longmore D, et al. Malnutrition in hospital outpatients and inpatients: prevalence, concurrent validity and ease of use of the ‘malnutrition universal screening tool’ ( ‘MUST’ ) for adults. Br J Nutr. 2004;92(5):799-808. doi: 10.1079/bjn20041258(PubMed)
- Stratton RJ, King CL, Stroud MA, et al. ‘Malnutrition Universal Screening Tool’ predicts mortality and length of hospital stay in acutely ill elderly. Br J Nutr. 2006;95(2):325-330. doi: 10.1079/bjn20051622(PubMed)
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi: 10.1016/j.clnu.2018.08.002(PubMed)
- NICE. Nutrition support in adults: oral nutrition support, enteral tube feeding and parenteral nutrition ( CG32 ). Guideline page
- BAPEN. Malnutrition Universal Screening Tool ( ‘MUST’ ) Full. PDF
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


