IDDSIフローテストのやり方|61.5mmのシリンジで10秒後の残留量を確認します
IDDSIフローテストは、飲料の流れ方を10秒後の残留量から評価し、IDDSIレベル0〜3を確認する方法です。正しく測定するには、単に「10mLシリンジ」を使うのではなく、0〜10mLの目盛間が61.5mmの規格に合うシリンジを使用します。10秒後の残留量は、レベル0が1mL未満、レベル1が1〜4mL未満、レベル2が4〜8mL未満、レベル3が8〜10mL未満の目安です。レベル3・4では、フォークドリップテストやスプーン傾けテストなども使って性状を確認します。この記事では、実施手順からJDD2021との違いまで順番に整理します。
IDDSIフローテストの判定|10秒後に何mL残るか
まず押さえたいのは、10秒後にシリンジ内へ残った量とIDDSIレベルの対応です。レベル0〜3ではフローテストによる流れ方を確認し、レベル4では「流れない」ことだけで完結させず、別のIDDSIテストも組み合わせて確認します。
| IDDSIレベル | 日本語表記 | 10秒後の残留量 | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| Level 0 | 液体 | 1mL未満 | フローテスト |
| Level 1 | 極薄いとろみ状の飲料 | 1〜4mL未満 | フローテスト |
| Level 2 | 薄いとろみ状の飲料 | 4〜8mL未満 | フローテスト |
| Level 3 | 中間のとろみの飲料 | 8〜10mL未満 | フローテスト+フォークドリップテスト |
| Level 4 | 濃いとろみの飲料 | 10秒間で流出しない | フォークドリップテスト・スプーン傾けテストなど |
特に迷いやすいのが、1mL・4mL・8mLの境界です。境界値では測定値を感覚で丸めず、同じ試料・同じ条件で再測定して確認します。
シリンジは10mLなら何でもよいわけではありません
IDDSIフローテストでは、シリンジの容量表示だけでなく形状を確認します。同じ「10mL」と表示されたシリンジでも、筒の長さや容量が異なる製品があり、フローテストの結果へ影響する可能性があります。
IDDSIでは、10mLスリップチップシリンジを用いる場合、0mLの目盛りから10mLの目盛りまでの長さが61.5mmであることを確認するよう示しています。
- 10mLという容量表示だけで選ばない
- 0〜10mL目盛間が61.5mmか確認する
- 清潔で乾いたシリンジを使用する
- ノズルに異物や製造上の不具合がないか確認する
院内で複数製品を使用している場合は、「10mLだから同じ」と考えず、実際にフローテストへ使用する製品の寸法を確認しておくことが重要です。
IDDSIフローテストの手順
基本手順は「試料を整える→10mL入れる→10秒流す→残留量を読む→再測定する」です。手技そのものは単純ですが、シリンジ、試料の調製方法、温度、測定タイミングが異なると結果も変わり得ます。

1.試料を実際の提供条件に整える
市販のとろみ調整食品を使用する場合は、メーカーが示す使用量、混ぜ方、待ち時間に従います。十分に混和し、大きな塊や過剰な気泡がないことを確認します。
飲料の流れ方は温度などの条件でも変化するため、原則として患者へ実際に提供する条件、とくに提供時の温度で確認します。
2.筒先を塞いで10mLまで試料を入れる
シリンジからプランジャーを外し、筒先を指で塞いで試料を10mLの目盛りまで入れます。
10mLを超えたり不足したりしたまま開始せず、開始時点の量をそろえます。使用前には筒先が清潔で、プラスチック片などの異物や製造上の不具合がないことも確認します。
3.指を離すと同時に10秒を測る
シリンジを垂直に保ち、筒先から指を離すのと同時にタイマーを開始します。
10秒経過した時点で再び筒先を塞ぎ、シリンジ内に残っている量を読み取ります。
4.同じ条件で再測定する
IDDSIでは、信頼できる結果を得るために2回以上評価することが示されています。1回だけの値で決めず、同じ試料・同じ測定条件で結果が再現するか確認します。
とくに境界付近の値になった場合や、1回目と2回目で結果がずれた場合は、試料の塊、気泡、温度、調製方法、シリンジの状態などを見直します。
Level 3・4では追加テストも使って確認します
Level 3とLevel 4では、シリンジの残留量だけでなく、フォークやスプーンを用いたIDDSIテストも性状確認に利用します。
Level 3|8〜10mL未満が残る場合
10秒後に8mL以上10mL未満が残る場合は、Level 3「中間のとろみの飲料」の範囲です。
Level 3の飲料・流動性のある食品は、フォークドリップテストでも確認できます。フォークの歯の間を試料がどのように流れ落ちるかを、IDDSIのLevel 3の性状と照合します。
Level 4|10秒間で流れない場合
10秒間でシリンジから何も流出しない場合は、Level 4「濃いとろみの飲料」の範囲を考えます。
IDDSIでは、このような試料についてフローテストだけで細かく数値化するのではなく、フォークドリップテストまたはスプーン傾けテストを用いて、とろみの強さや性状を確認することが推奨されています。
フローテストで分かるのは飲料の流動特性です
IDDSIフローテストの結果だけで、その患者に適したとろみを決めることはできません。フローテストは、測定した飲料の流れ方や物性を共通の基準で確認するための方法です。
| 確認したいこと | フローテストの位置づけ |
|---|---|
| 飲料の流れ方 | 確認できる |
| IDDSI飲料レベル | Level 0〜3の分類に使用する |
| 患者に適したとろみ | フローテスト単独では決めない |
| 誤嚥の有無 | 判定できない |
| 姿勢・一口量・介助方法 | 患者ごとに別途評価する |
IDDSIも、Testing Methodsは食品や飲料の流れ方・物性を提供条件下で確認するための方法と位置づけています。実際にどのレベルを患者へ適用するかは、嚥下機能や摂取場面を含む包括的な臨床評価に基づいて判断します。
測定結果がずれるときに確認すること
測定者や測定時点によって結果が違う場合は、すぐにとろみの量を変更するのではなく、測定条件の違いを確認します。
| 状況 | 確認するポイント |
|---|---|
| 測定者によって結果が違う | シリンジの種類・寸法、10秒の測定方法を確認する |
| 作るたびに結果が違う | とろみ調整食品の量、混和方法、待ち時間を確認する |
| 調製後の時間で変わる | メーカー指定の待ち時間と測定時点を確認する |
| 温度によって結果が違う | 実際の提供温度で評価する |
| 途中で急に流れなくなる | 試料の塊やノズルの閉塞がないか確認する |
| 境界値付近になる | 同じ条件でもう一度測定する |
つまり「条件をそろえること」はフローテストの目的そのものではなく、測定した飲料を正しく分類し、再測定時にも比較できるようにするための前提です。
IDDSIとJDD2021は単純換算しません
IDDSIとJDD2021は、どちらも10秒後のシリンジ内残留量を扱いますが、分類区分と境界値が同じではありません。数字が似ていても、IDDSIのLevelをそのままJDD2021の3段階へ読み替えることは避けます。
| 項目 | IDDSI | JDD2021(とろみ) |
|---|---|---|
| 分類 | 飲料Level 0〜4 | 薄い・中間・濃いの3段階 |
| 低い残留量側 | Level 1:1〜4mL未満 Level 2:4〜8mL未満 |
薄いとろみ:2.2〜7.0mL |
| 中間領域 | Level 3:8〜10mL未満 | 中間のとろみ:7.0〜9.5mL |
| 濃い領域 | Level 4:10秒間で流出しない | 濃いとろみ:9.5〜10.0mL |
| シリンジへの注意 | 0〜10mL目盛間61.5mmの仕様を確認 | 基準値作成時のシリンジと形状が異なる場合は注意が必要 |
たとえば、同じ残留量でもIDDSIとJDD2021で分類の境界が一致するとは限りません。記録や施設間の申し送りでは、「IDDSI Level 2」のように、どの分類を用いた結果なのかを明記することが重要です。
JDD2021の薄い・中間・濃いとろみや嚥下調整食全体については、JDD2021の嚥下調整食・とろみ分類の整理で詳しく解説しています。
記録ではレベルだけでなく測定条件も残します
再測定時に比較できるよう、IDDSIレベルだけでなく「何を、どの条件で測定したか」も記録します。
- 飲料・製品名
- 使用したとろみ調整食品
- 調製量・使用量
- 調製から測定までの時間
- 測定時の温度・提供条件
- 使用したシリンジ
- 10秒後の残留量
- 再測定した場合の結果
- 判定したIDDSIレベル
- Level 3・4で確認した追加テスト
「IDDSI Level 2」のみを残すよりも、飲料名、調製条件、提供時の温度、10秒後残留量を合わせて記録しておくと、次回測定時に結果が変わった理由を確認しやすくなります。
IDDSIフローテストのよくある質問
Q1.10mLシリンジならどの製品でも使えますか?
いいえ。IDDSIフローテストではシリンジの形状が結果に影響します。容量表示だけで判断せず、0〜10mL目盛間が61.5mmであることなど、IDDSIが示す条件を確認します。
Q2.残留量がちょうど4mLや8mLになったらどう判定しますか?
IDDSIの境界では、4mLはLevel 2、8mLはLevel 3側に該当します。ただし、境界値では同じ試料・同じ測定条件で再測定し、結果の再現性も確認します。
Q3.Level 4もフローテストだけで判定しますか?
10秒間で流出しないことはLevel 4の範囲を考える目安になりますが、それだけで終わらせません。フォークドリップテストまたはスプーン傾けテストを用いて性状を確認します。
Q4.フローテストの結果だけで患者に適したとろみを決められますか?
決められません。フローテストは飲料の流れ方や物性を分類する方法です。患者への適用は、嚥下機能や摂取場面などを含む臨床評価に基づいて判断します。
Q5.IDDSIとJDD2021は換算できますか?
単純換算は避けます。両者は分類区分と残留量の境界が一致していません。記録・申し送りでは、どちらの分類を使った結果なのかを明記します。
次に確認したい記事
IDDSIフローテストの手順を確認したら、患者への適用や食形態全体は別の記事と分けて整理すると理解しやすくなります。
参考文献
- International Dysphagia Diet Standardisation Initiative. IDDSI Framework and Detailed Level Definitions. IDDSI Framework Documents.
- International Dysphagia Diet Standardisation Initiative. IDDSI Testing Methods Version 2.0, Japanese. IDDSI Testing Methods.
- Steele CM, et al. Validation of the IDDSI funnel for liquid flow testing. J Texture Stud. 2024;55(2). doi: 10.1111/jtxs.12823.
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食委員会. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021. 日摂食嚥下リハ会誌. 2021;25(2):135-149. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

