ICU 再栄養リスク|リハ負荷は「上限固定」で迷いが減ります
再栄養リスクが高い場面で迷うのは、栄養の是非ではなく「今日の離床を進めてよいか」です。結論として、再栄養リスク時のリハビリテーションは中止ありきではなく、上限( RPE / 時間 / 段階 )を先に固定し、再評価条件までセットにすると判断が安定します。
このページでは、ICU の現場で使いやすい①最小セット→②上限テンプレ→③悪化サイン時の置き換え→④最小記録を表で整理します。全体フロー(入室→ 72 h → 1 週レビュー)は親ページに戻し、本記事では「再栄養リスク時にどこまで動かすか」に絞ります。
ICU の栄養×リハ連携は「全体フロー」を先に固定すると回ります
再栄養リスクだけでなく、入室時評価・ 72 h 評価・ 1 週レビューまでまとめて確認したい場合は、親記事とハブから戻れる形にしておくと迷いが減ります。
まず見る最小セット:P / K / Mg と「呼吸・循環・意識」
再栄養リスクは「採血を確認した」で終わらせず、リハ負荷の上限に反映するところまで決める必要があります。リハ側の役割は診断ではなく、負荷で崩れやすいサインを拾い、実施段階を安全に調整することです。
最小セットはP / K / Mgに加え、呼吸( RR / 努力呼吸 )、循環( HR / BP )、意識・せん妄です。項目を増やすより、見る項目を固定し、上限と再評価条件をチームで共有します。
今日の負荷を決める:上限( RPE / 時間 / 段階 )を先に固定
再栄養リスク時は「できるか・できないか」ではなく、どこまでなら実施するかを先に決めると安全に回せます。上限はRPE / 時間 / 段階の 3 点で固定し、採血や症状変化に応じた再評価条件を残します。
迷ったら、強度を上げるより短時間×複数回に分割します。悪化サインが出た場合は、離床目標を完全に捨てるのではなく、姿勢・休息比率・実施時間を置き換えます。

| 状況 | 上限( RPE ) | 時間(合計) | 段階(例) | 再評価条件 | 記録例(短文) |
|---|---|---|---|---|---|
| 再栄養リスク:高(採血フォロー中) | 3–4 | 10–15 分 | 端座位中心/立位は回数限定 | P / K / Mg 確認後に上げ幅検討 | 上限:RPE 3–4/10 分/段階据え置き(採血後再評価) |
| P 低下傾向・補正あり | 3 | 10 分 | 端座位+ ADL 練習(分割) | 補正量増/症状出現で即共有 | P 低下傾向/本日上限固定(分割で実施) |
| 呼吸仕事量が増えやすい | 3 | 5–10 分 | 休息比率↑/呼吸介助を併用 | RR ↑・努力呼吸で中断→置換 | RR ↑時は休息比率↑へ変更(置換ルール固定) |
悪化サインが出たら「別ルート」へ置き換えます
再栄養リスクの日は、「中止」か「続行」かの二択にしないことが大切です。悪化サインを拾ったら、同じ目標を姿勢・分割・休息比率で置き換えます。
下の表は、チームでの共通言語として使えるように、NG と OK を並べています。申し送りでは「何を見て、何に置き換えたか」まで残すと、翌日の上げ幅が決めやすくなります。
| 見るもの | 変化のサイン | やりがち NG | OK の置き換え | 記録の要点 | 報告優先度 |
|---|---|---|---|---|---|
| P / K / Mg | 低下・補正増 | 段階を進める | 段階据え置き+分割で回数確保 | 上限固定+再評価条件(採血後) | 高 |
| 呼吸( RR / 努力呼吸 ) | RR ↑/努力呼吸 | 同じ強度で続行 | 休息比率↑/端座位中心へ置換 | 休息比率と置換理由 | 中 |
| 循環( HR / BP ) | 立位で破綻 | 立位を繰り返す | 端座位+上肢練習/ポジショニング | 破綻した姿勢と次の代替 | 中 |
| 意識・せん妄 | 興奮・拒否増 | 時間で押し切る | 短時間×回数に分割(5 分× 2 など) | 分割回数と反応 | 中 |
最小記録テンプレ:親の「5 行」+再栄養 1 行
記録は長文より、意思決定が追える短文化が有効です。再栄養リスク時は、上限固定と再評価条件が残っていれば、翌日の負荷調整に使いやすくなります。
全体の最小記録(5 行)は親ページにまとめています。本ページでは、再栄養リスク時に追記する 1 行だけを固定します。
| 行 | 書く内容 | 例(そのまま使える) |
|---|---|---|
| + 1 | 再評価条件 | P / K / Mg 確認後に上げ幅再検討(本日段階据え置き) |
現場の詰まりどころ:ここで事故りやすい
① 採血は見ているのに、上限が決まっていない → まず 上限( RPE / 時間 / 段階 )を固定してから実施します。
② 悪化サインが出ても「中止 or 続行」で二択になる → 置き換え表で別ルートを用意します。
③ 記録が長文化して、意思決定が追えない → 親の最小記録に寄せ、再栄養は「採血後再評価」の 1 行だけ追記します。関連:ICU 栄養×リハ 最小記録(親)
評価・記録の型が職場で揃わないときは、学び方も見直しておきましょう
再栄養リスク時の判断は、個人の努力だけでなく、相談できる環境・記録の見本・チーム内の共通フォーマットに左右されます。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 再栄養リスクの日は “中止” が正解ですか?
中止ありきではなく、上限固定( RPE / 時間 / 段階 )と置き換えで回すほうが現実的です。負荷を落とす日は、強度ではなく分割・姿勢選択・休息比率で調整し、再評価条件(採血後など)まで記録します。
Q2. PT は P / K / Mg をどこまで見るべきですか?
診断や治療ではなく、負荷設計に反映できる形で見るのが役割です。低下・補正増がある日は、段階を進めずに段階据え置き+再評価条件を固定し、呼吸・循環・意識の変化も合わせて短く残します。
Q3. 上限を決めるとき、最初に固定すべき 1 つは?
段階(どの姿勢までやるか)です。段階が決まると、時間(合計)と RPE が決めやすくなります。迷ったら「端座位中心+分割」で回数を確保し、採血後に上げ幅を再検討します。
Q4. 悪化サインが出たら、どの順で置き換えますか?
おすすめは①休息比率↑→②段階を下げる(立位→端座位)→③分割(短時間×回数)です。「中止」ではなく、目標(離床回数・ ADL )を別ルートで守ります。
次の一手
- 栄養・嚥下ハブ(総合):関連テーマをまとめて確認
- 親:ICU 栄養 GL 2024(運用フロー):入室→ 72 h → 1 週レビューへ戻る
参考文献
- Nakamura K, et al. The Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024. J Intensive Care. 2025;13(1):18. doi: 10.1186/s40560-025-00785-z
- da Silva JSV, et al. ASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome. Nutr Clin Pract. 2020;35(2):178-195. doi: 10.1002/ncp.10474
- Mehanna HM, Moledina J, Travis J. Refeeding syndrome: what it is, and how to prevent and treat it. BMJ. 2008;336(7659):1495-1498. doi: 10.1136/bmj.a301
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Nutrition support for adults: oral nutrition support, enteral tube feeding and parenteral nutrition (CG32). 2006. Guideline PDF
- Singer P, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr. 2019;38(1):48-79. doi: 10.1016/j.clnu.2018.08.037
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

