OH スコア別マットレス選定・介入プロトコル(成人 2026 年版)
本稿は「OH スコアをどう使うか」に特化した院内プロトコル案です。ここではスコア帯ごとの支持面(マットレス)・体位変換・踵免荷・教育・再評価の運用を 1 ページに集約します。支持面と計画的体位変換をセットで運用する、というガイドラインの趣旨を踏まえつつ、現場で回る形に落とし込みます。
スコア帯 × 介入(早見表)
下表は「支持面+体位変換」を土台に、OH スコア帯での運用例を提示したものです。皮膚所見、体圧、マンパワー、機器の種類により調整してください。
注:OH と介入を機械的に 1 対 1 で結びつける意図ではありません。スコアは判断材料の 1 つであり、所見・環境と統合して意思決定します。
| OH 合計 | 支持面 | 体位変換 | 踵免荷 | 再評価 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 標準〜静止型 | 自立支援中心 | 必要時 | イベント時 |
| 1–3(軽度) | 静止型 or 低圧保持 | ≤ 4 h | 基本実施 | 48 h 以内 |
| 4–6(中等度) | 静止型 → 圧切替を検討 | ≤ 2–4 h | 常時免荷具 | 24–48 h |
| 7–10(高度) | 圧切替/自動体位変換 | ≤ 2–3 h(実行可能性で調整) | 厳格免荷 | 12–24 h |
OH だけで決めない:同点でも介入が変わる条件
OH が同じでも、皮膚所見と運用環境で「次の一手」は変わります。迷いやすい条件を、現場の意思決定に落とすための整理です。
| 条件 | 現場でのサイン | 変えるポイント | 記録の要点 |
|---|---|---|---|
| 発赤が消えない/悪化 | 30 分以上持続、範囲拡大、疼痛増悪 | 支持面を 1 段階上げる+体位変換間隔を詰める | 部位・大きさ・皮膚温・疼痛、再評価の時刻 |
| 湿潤・失禁・発汗 | 浸軟、皮膚脆弱、汚染頻回 | 微気候対策(吸湿・皮膚保護)+清拭/交換の頻度設計 | 湿潤の原因、ケア内容、皮膚状態の変化 |
| ずれ/摩擦が強い | 頭側ずれ、剪断、ベッドアップで悪化 | ポジショニングとベッド角度の再設計+支持面の適合を見直す | 体位と角度、ずれの程度、介助方法 |
| 体位変換が回らない | 夜間人員不足、拒否、疼痛で継続困難 | 「実行可能性」優先で支持面を上げる/自動体位変換を検討 | 実施できた回数、未実施の理由、代替策 |
実装 5 ステップ(導入〜 72 時間で回す)
① 支持面選定:骨突出・微気候・ずれ/摩擦の 3 要素で優先順位を決め、必要に応じて圧切替や自動体位変換を導入します。② 体位変換:マットレス種別で最適間隔は変わるため「一律 2 時間」に固執しない。③ 踵:枕/専用具で浮かせ、ベッド角度で踵圧集中を回避します。
④ 記録:スコア内訳・皮膚所見・介入・次回再評価の時刻を必須項目にします。⑤ 教育:患者・家族へ支持面の扱い(空気量・向き・日次点検)と「やらないこと」を短く明記します。導入後の点検・見直しまで一気通貫で回す全体像は 体圧分散マットレス導入・モニタリング(親記事) にまとめています。
コピペ用:記録テンプレ(OH 版)
S)____。
O)OH __(体位変換__・骨突出__・浮腫__・拘縮__)。仙骨__/踵__。
A)リスク__(軽/中/高)。
P)体位変換 ≤ __ h、踵免荷、支持面__に変更、教育__、次回__ h 後に再評価。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 体位変換は 2 時間固定ですか?
A. 固定ではありません。マットレスの種類・皮膚所見・マンパワーで最適間隔は変わります。圧切替や自動体位変換でも「ゼロ圧」にはならないため、所見ベースで間隔と体位を見直します。
Q2. OH 4–6 点は必ず圧切替にすべきですか?
A. 「必ず」ではありません。発赤が持続する、湿潤が強い、ずれが顕著、体位変換が回らない、などの条件が重なる場合に圧切替や運用強化を検討します。スコア帯は入口で、最終判断は所見と実行可能性で決めます。
Q3. 踵免荷はいつから “常時” にしますか?
A. 中等度以上(例:OH 4 点以上)や、踵の発赤・疼痛・浮腫がある場合は “常時” を基本に設計します。ベッドアップで踵圧が上がりやすい場合は、角度とポジショニングもセットで調整します。
Q4. 円座は使ってよいですか?
A. 一般に推奨されません。局所圧が上がりやすく、悪化につながる可能性があるためです。代替は踵免荷・体位調整・支持面の最適化(必要なら 1 段階上げる)で組み立てます。
まとめ
OH スコアは 0–10 点の簡便指標で、介入の優先度付けと再評価サイクル(目安として 12–48 h)を設計するのに役立ちます。中等度以上では、支持面の再検討と体位変換の見直し、踵免荷の徹底をセットで運用するとブレが減ります。
一方で、同点でも皮膚所見(発赤の持続、湿潤、ずれ/摩擦)と実行可能性(人員、拒否、疼痛)で最適解は変わります。スコアは目的ではなく、所見と環境を統合して意思決定するための “材料” として使いましょう。
次の一手
-
体圧分散マットレスの種類と選び方
静止型/圧切替/微気候など、支持面の基本を短時間で整理。
-
Braden スコア帯の介入バンドル
「スコア帯→最優先の 1 手」を決める運用版(併用の考え方)。
参考文献(一次情報優先)
- 日本皮膚科学会ほか. 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン—2:褥瘡診療ガイドライン(2023 改訂). PDF
- 岡田 克之. 褥瘡のリスクアセスメントと予防対策. 日本老年医学会雑誌. 2013;50(5):583–591. PDF
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


