OH スコア別に何を決める記事か
結論からいうと、このページの役割は OH スコア帯から、支持面・体位変換・踵免荷・再評価の初期案を決めることです。採点そのものを詳しく読むページではなく、「点数をどう介入に変えるか」に絞ることで、現場でそのまま使いやすい記事にしています。
特に迷いやすいのは、「OH が同じなら介入も同じ」と考えてしまう場面です。実際には、発赤の持続、湿潤、ずれ・摩擦、夜間人員、疼痛や拒否などで次の一手は変わります。本記事では、OH を入口にしつつ、所見と実行可能性まで合わせて判断できる形に整理します。
この記事で答えないこと:OH の採点手順の詳細、機種ごとの比較、導入後 72 時間の細かな切り分け。
OH スコア帯 × 初期介入(早見表)
まずは「支持面+体位変換」を土台に決めます。OH はあくまで入口ですが、スコア帯で初期案を置いておくと、申し送りと再評価のブレが減ります。
下表は成人の運用例です。皮膚所見、マンパワー、ベッド上活動性、離床目標に応じて上下させてください。
注:OH と介入を機械的に 1 対 1 で結びつける意図ではありません。支持面だけではなく、体位変換・踵免荷・皮膚観察・再評価をセットで設計します。
| OH 合計 | 支持面 | 体位変換 | 踵免荷 | 再評価 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 標準〜静止型 | 自立支援中心 | 必要時 | イベント時 |
| 1–3(軽度) | 静止型 or 低圧保持 | ≤ 4 h | 基本実施 | 48 h 以内 |
| 4–6(中等度) | 静止型 → 圧切替を検討 | ≤ 2–4 h | 常時免荷具 | 24–48 h |
| 7–10(高度) | 圧切替/自動体位変換 | ≤ 2–3 h(実行可能性で調整) | 厳格免荷 | 12–24 h |
現場の詰まりどころ
詰まりやすいのは、「OH 点数だけで決める」「2 時間固定に戻る」「踵とずれが後回しになる」の 3 点です。先に見る場所を決めておくと、申し送りと再評価がかなり楽になります。
- よくある失敗を見る
- 介入を 1 段階上げる条件を見る
- ずれ・摩擦・踵の基本を先に整理したいときは 褥瘡予防ポジショニング実務 を確認するとつながりやすいです。
OH だけで決めない:介入を 1 段階上げる条件
OH が同じでも、所見と運用環境で「次の一手」は変わります。支持面を上げるのか、体位変換を詰めるのか、微気候対策を足すのかを迷わないための整理です。
判断の分かれ目を先に言語化しておくと、同点でも介入理由を記録しやすくなります。
| 条件 | 現場でのサイン | 変えるポイント | 記録の要点 |
|---|---|---|---|
| 発赤が消えない/悪化 | 30 分以上持続、範囲拡大、疼痛増悪 | 支持面を 1 段階上げる+体位変換間隔を詰める | 部位・大きさ・皮膚温・疼痛、再評価の時刻 |
| 湿潤・失禁・発汗 | 浸軟、皮膚脆弱、汚染頻回 | 微気候対策(吸湿・皮膚保護)+清拭/交換の頻度設計 | 湿潤の原因、ケア内容、皮膚状態の変化 |
| ずれ/摩擦が強い | 頭側ずれ、剪断、ベッドアップで悪化 | ポジショニングとベッド角度の再設計+支持面の適合を見直す | 体位と角度、ずれの程度、介助方法 |
| 体位変換が回らない | 夜間人員不足、拒否、疼痛で継続困難 | 「実行可能性」優先で支持面を上げる/自動体位変換を検討 | 実施できた回数、未実施の理由、代替策 |
よくある失敗
OH を使っても結果が安定しにくいのは、採点の問題より「運用の置き方」がずれていることが多いです。失敗を先に潰しておくと、記録と再評価が回りやすくなります。
| よくある失敗 | なぜ詰まりやすいか | 修正の 1 手 |
|---|---|---|
| OH 点数だけで支持面を決める | 発赤、湿潤、ずれ、夜間体制が反映されず、同点でも実態がズレる | 点数の横に「皮膚」「実行可能性」の 2 行メモを必須化する |
| 体位変換を一律 2 時間固定にする | 支持面や皮膚所見に応じた調整ができず、現場負担だけ増えやすい | 間隔ではなく「次に崩れる条件」を先に共有する |
| 踵免荷を “必要時” のままにする | 仙骨に意識が寄り、踵の発赤や疼痛が後追いになる | OH 4 点以上または踵所見ありなら常時免荷を標準化する |
| マットレス変更で終わる | 離床、睡眠、疼痛、拒否などの副作用を追えず、継続判断があいまいになる | 導入後 24–72 時間の確認項目をあらかじめ決めておく |
導入〜 72 時間で回す実装 5 ステップ
① 支持面選定:骨突出・湿潤・ずれ/摩擦の 3 要素を優先して、初期支持面を決めます。② 体位変換:「一律 2 時間」に戻るのではなく、皮膚所見と支持面の能力で間隔を調整します。③ 踵:枕や専用具で浮かせ、ベッド角度や足部位置まで含めて圧集中を避けます。
④ 記録:OH 内訳、皮膚所見、介入理由、次回再評価時刻を必須項目にします。⑤ 再評価:発赤の変化、湿潤、睡眠、離床、拒否や疼痛まで含めて継続・強化・見直しを判断します。マットレスは「入れて終わり」になりやすいので、最初の 72 時間で条件固定と観察をそろえるのがコツです。
A4 記録シート(PDF)
院内での申し送りや再評価をそろえたいときは、下の A4 記録シートを使うと運用に落とし込みやすくなります。OH スコアの内訳、支持面、踵免荷、再評価、共有事項まで 1 枚で記録できる構成です。
記事内で PDF をプレビューする
コピペ用:記録テンプレ(OH 版)
S)疼痛・眠り・拒否・介助負担____。
O)OH __(体位変換__・骨突出__・浮腫__・拘縮__)。仙骨__/踵__。湿潤__。ずれ__。
A)リスク__(軽/中/高)。同点でも介入を上げる条件__。
P)支持面__、体位変換 ≤ __ h、踵免荷__、微気候対策__、次回__ h 後に再評価。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 体位変換は 2 時間固定ですか?
A. 固定ではありません。支持面の種類、皮膚所見、体動、夜間体制で最適な間隔は変わります。圧切替や自動体位変換でも観察は必要で、発赤や湿潤が残るなら再設計します。
Q2. OH 4–6 点なら必ず圧切替ですか?
A. 必ずではありません。発赤の持続、湿潤、ずれ、体位変換の実行困難が重なるときに、支持面の引き上げを検討します。OH は入口で、最終判断は所見と実行可能性で決めます。
Q3. 踵免荷はいつから “常時” にしますか?
A. 中等度以上(例:OH 4 点以上)や、踵の発赤・疼痛・浮腫がある場合は “常時” を基本に設計します。ベッドアップで踵圧が増えやすいときは、角度と足部位置も一緒に見直します。
Q4. マットレスを変えたら再評価は不要ですか?
A. 不要ではありません。支持面変更後は、仙骨・踵の皮膚、湿潤、睡眠、離床のしやすさ、疼痛や拒否まで含めて確認します。変更後の 24–72 時間が最もズレを拾いやすい時間帯です。
まとめ
OH スコアは、支持面・体位変換・踵免荷・再評価の優先度をそろえるための共通言語です。0–10 点の帯で初期案を置いておくと、介入開始の迷いを減らせます。
ただし、同点でも発赤の持続、湿潤、ずれ/摩擦、夜間人員、疼痛や拒否で最適解は変わります。OH は結論ではなく、所見と環境を統合して意思決定するための入口として使いましょう。
次の一手
全体像から戻って整理するなら褥瘡予防の基本フロー、導入後の観察と切り分けまで進めるなら 72 時間プロトコルがつながります。
参考文献
- 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン策定委員会(褥瘡グループ). 褥瘡診療ガイドライン(第 3 版). 日皮会誌. 2023;133(12):2735-2797. DOI
- Gillespie BM, Walker RM, Latimer SL, Thalib L, Whitty JA, McInnes E, et al. Repositioning for pressure injury prevention in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2020;6(6):CD009958. PubMed
- Shi C, Dumville JC, Cullum N, Rhodes S, McInnes E. Reactive air surfaces for preventing pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2021;5(5):CD013622. PubMed


