肘頭の触診ポイント|内側上顆・尺骨神経溝との見分け方

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肘頭の触診は後方中央の骨性隆起から確認する

肘頭は、肘を約90°曲げ、肘関節後方中央にある最も大きな骨性隆起として確認します。内側上顆は肘の内側、尺骨神経溝は内側上顆と肘頭の間にあるため、3か所を順番に触れると見分けやすくなります。

この記事では、新人PT・OT向けに、肘頭の位置、3STEPの触診方法、内側上顆・尺骨神経溝との違い、圧痛があった場合の評価、カルテ記録例まで整理します。触診所見だけで病態を決めるのではなく、次に何を確認するか判断できる状態を目指します。

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この記事でわかること

  • 肘頭の位置と触診方法
  • 内側上顆との見分け方
  • 尺骨神経溝を触れる際の注意点
  • 圧痛や腫脹がある場合の評価順序
  • 臨床で使える記録例

肘頭の位置と周囲構造

肘頭は、尺骨近位端の後方にある骨性ランドマークです。

肘関節後方の中央に位置し、上腕三頭筋腱が付着します。皮膚との間には肘頭滑液包があるため、転倒による打撲、長時間の肘つき、炎症などによって腫脹がみられることがあります。

肘周囲の位置関係は、次のように整理できます。

  • 後方中央:肘頭
  • 内側:上腕骨内側上顆
  • 外側:上腕骨外側上顆
  • 肘頭と内側上顆の間:尺骨神経が通る領域

肘を伸ばした状態では、肘頭が上腕骨の肘頭窩に入り、肘後方の輪郭が平坦に感じられることがあります。肘を曲げると肘頭が後方へ目立ちやすくなるため、最初の位置確認には約90°屈曲位が適しています。

肘頭の触診方法を3STEPで確認する

肘頭は、肘の角度を整え、後方中央を広く触れ、周囲の骨性ランドマークと比較する順番で確認します。

肘頭の位置と肘を90度屈曲して行う触診3STEP
肘を約90°屈曲し、後方中央の骨性隆起を確認してから、内側上顆・外側上顆との位置関係を確かめます。

STEP1:肘関節を約90°屈曲する

対象者を座位または背臥位とし、肘関節を約90°曲げます。前腕は無理のない位置に置き、肩から上肢全体の力を抜いてもらいます。

上腕三頭筋に力が入っていると、腱や筋の緊張が強くなり、骨性隆起の輪郭を捉えにくくなります。検査者が前腕を支え、対象者が肘の位置を保持しなくてもよい状態を作ると触れやすくなります。

STEP2:肘後方を広く触れて中央を探す

肘後方に指腹を当て、最初から一点を押すのではなく、内側から外側へ広く触れます。

その中で、後方へ最も大きく突出している硬い部分が肘頭です。骨の輪郭を近位・遠位・内側・外側へ軽くたどり、点ではなく立体的な隆起として確認します。

STEP3:内側上顆・外側上顆と比較する

肘頭を確認したら、指を内側へ移動して内側上顆、外側へ移動して外側上顆を確認します。

  • 中央後方にある大きな隆起が肘頭
  • 肘の内側に張り出す隆起が内側上顆
  • 肘の外側に張り出す隆起が外側上顆

肘頭だけを探すよりも、3点の位置関係を一緒に確認した方が、誤認を減らせます。

触診の基本フロー

  1. 肘を約90°曲げて脱力してもらう
  2. 肘後方を広く触れて肘頭を確認する
  3. 内側上顆と外側上顆を触れて位置を再確認する
  4. 必要に応じて圧痛・腫脹・熱感・運動時痛を評価する

肘頭が触れにくいときの修正方法

肘頭が分かりにくいときは、強く押すのではなく、肢位・脱力・触れ方を修正します。

肘の屈曲角度を変える

完全伸展位で輪郭が分かりにくい場合は、肘を約90°まで曲げます。疼痛や可動域制限があり90°まで曲げられない場合は、無理のない範囲で角度を少しずつ調整します。

前腕を支えて上腕三頭筋を脱力させる

対象者が自力で前腕を支えていると、上腕三頭筋や周囲筋に力が入りやすくなります。検査者の手やクッションで前腕を支え、力を抜ける姿勢を作ります。

一点ではなく面で触れる

指先で一点を強く押すと、圧痛だけを誘発し、骨の輪郭を見失うことがあります。複数の指腹で肘後方を広く触れ、最も硬く突出する部位へ絞り込みます。

健側から確認する

浮腫、腫脹、変形、疼痛がある場合は、患側だけでは位置関係を判断しにくくなります。先に健側の肘頭と内外側上顆を確認し、その後に患側を同じ順番で触れると左右差を整理しやすくなります。

肘頭・内側上顆・尺骨神経溝の見分け方

3つの構造は、肘頭を起点に内側へたどり、位置、触れた感触、刺激時の反応を分けて確認します。

肘頭と内側上顆と尺骨神経溝の位置関係と見分け方
肘後方中央の肘頭を先に確認し、内側へたどると、尺骨神経溝と内側上顆の位置関係を整理しやすくなります。
肘頭・内側上顆・尺骨神経溝の比較
比較項目 肘頭 内側上顆 尺骨神経溝
位置 肘後方中央 肘の内側 内側上顆の後方で、肘頭との間
主な構造 尺骨近位端 上腕骨遠位端 尺骨神経が通る領域
触れた感触 大きく硬い骨性隆起 内側へ張り出す硬い隆起 2つの骨性隆起の間にある溝状の領域
注意点 滑液包の腫脹と骨の輪郭を分ける 前腕屈筋群の起始部と混同しない 強圧で尺側手指のしびれを誘発することがある

肘頭と内側上顆の違い

肘頭は肘の後方中央にあり、内側上顆は肘の内側にあります。また、肘頭は尺骨、内側上顆は上腕骨に属します。

見分けに迷う場合は、後方中央の最も大きな隆起を肘頭として先に固定し、そこから内側へ指を移動します。次に触れる明確な骨性隆起が内側上顆です。

肘頭と尺骨神経溝の違い

肘頭は硬い骨性隆起ですが、尺骨神経溝は肘頭と内側上顆の間にある溝状の領域です。

尺骨神経の走行には個人差があり、肘の屈伸によって位置や緊張も変化します。練習目的で繰り返し強く押したり、神経を指で転がすように触れたりする必要はありません。

尺骨神経周囲を触れる際の注意点

  • 骨の位置確認を先に行う
  • 溝を強く押し込まない
  • 電撃痛や尺側手指のしびれが出たら刺激を中止する
  • 左右で同じ強さ・同じ肢位にそろえる

肘頭を確認した後の評価の進め方

肘頭の触診は位置を当てて終わりではなく、観察、圧痛、運動、神経症状の順に評価を進めます。

1.観察する

触れる前に、肘後方の左右差を観察します。

  • 腫脹
  • 発赤
  • 皮膚損傷
  • 皮下出血
  • 変形
  • 肘を保っている姿勢

明らかな腫脹がある場合は、腫れている部分と肘頭の骨性輪郭を分けて確認します。

2.圧痛の場所を分ける

圧痛は「肘頭にある」とまとめず、位置を具体的に分けます。

  • 肘頭先端
  • 肘頭表面の腫脹部
  • 肘頭近位の上腕三頭筋腱付着部
  • 肘頭の内側または外側
  • 内側上顆後方

骨上の圧痛なのか、表層の腫脹部なのか、腱付着部なのかを分けることで、次に確認する評価を選びやすくなります。

3.運動との関係を確認する

安静時痛だけでなく、肘関節の自動運動と他動運動で症状が変化するか確認します。

  • 屈曲で肘後方が圧迫されると痛むか
  • 伸展で痛みが増えるか
  • 自動伸展で上腕三頭筋腱周囲の痛みが再現されるか
  • 可動域制限や運動時の引っかかりがあるか

外傷後や強い疼痛がある場合は、無理に最終可動域まで動かさず、必要な情報を整理して医師へ報告します。

4.神経症状を確認する

内側上顆後方の刺激で、小指・環指尺側のしびれや電撃痛が出る場合は、尺骨神経に関連する症状として記録します。

ただし、局所を押して症状を誘発することだけを目的にせず、安静時のしびれ、感覚の左右差、手指運動、肘の肢位との関係をあわせて確認します。

肘頭周囲に圧痛や腫脹がある場合

圧痛や腫脹がある場合は、触診所見だけで原因を断定せず、外傷歴と炎症所見をあわせて整理します。

肘頭周囲の症状と関連する状態として、次のようなものがあります。

  • 転倒や衝突による打撲
  • 長時間の肘つきによる局所刺激
  • 肘頭滑液包の炎症や腫脹
  • 上腕三頭筋腱付着部周囲の負荷
  • 尺骨近位部の骨折
  • 皮膚損傷に伴う感染

これらは触診だけで鑑別できません。症状が出た経緯、発赤、熱感、創傷、発熱、変形、運動困難、神経症状などを確認します。

評価を中止して報告につなげたい所見

  • 外傷後の明らかな変形や強い腫脹
  • 疼痛が強く、肘をほとんど動かせない
  • 骨折を疑う局所的な強い骨性圧痛
  • 発赤・熱感・創傷・発熱を伴う腫脹
  • しびれ、筋力低下、手指の色調変化などの神経血管症状

療養病棟では、ベッド上で肘をつく時間が長い方や、車いすのアームサポートへ肘を押しつける方に、肘頭周囲の発赤や腫脹がみられることがあります。触診だけでなく、臥床姿勢、上肢の支持位置、除圧方法まで確認すると、再発予防につなげやすくなります。

肘頭触診のカルテ記録例

記録は「部位・所見・誘発条件・関連所見」の順に書くと、経時変化を比較しやすくなります。

肘頭周囲の評価場面別カルテ記録例
場面 記録例
異常所見なし 右肘頭部に圧痛・腫脹・発赤・熱感なし。肘屈伸による疼痛誘発なし。
軽度圧痛 左肘頭先端に軽度圧痛あり。腫脹、発赤、熱感なし。肘屈伸による疼痛増悪なし。
腫脹あり 右肘頭表面に限局した腫脹あり。軽度圧痛と熱感を認める。皮膚損傷なし。肘最大屈曲付近で圧迫痛あり。
外傷後 転倒後、左肘頭周囲に腫脹および骨性圧痛あり。疼痛により自動屈伸困難。追加評価は中止し、医師へ報告。
神経症状あり 左内側上顆後方への軽度刺激で環指尺側・小指にしびれを訴える。強圧を避け、感覚および手指運動を左右比較。

「肘が痛い」「肘頭に圧痛あり」だけでは、再評価時に変化を追いにくくなります。肘頭先端、表面、近位、内側など、所見がある位置をできるだけ具体的に残します。

新人が間違えやすいポイント

肘頭の触診では、位置を当てることを急ぐと、強圧や周囲構造の誤認が起こりやすくなります。

  • 肘の内側にある隆起を肘頭だと思う
  • 肘伸展位のまま後方を強く押して探す
  • 上腕三頭筋腱を肘頭の一部と判断する
  • 腫脹部だけを触れて骨の輪郭を確認していない
  • 尺骨神経溝を繰り返し強く圧迫する
  • 圧痛の有無だけで病態を決める
  • 外傷機転や皮膚所見を確認していない
  • 健側との比較を行っていない

まず健側で肘頭、内側上顆、外側上顆の3点を確認し、同じ肢位と触れる強さで患側を評価すると、触診の再現性を高めやすくなります。

肘頭の触診に関するFAQ

肘頭はどこにありますか?

肘頭は、肘関節後方中央にある尺骨近位端の骨性隆起です。肘を約90°曲げると後方へ突出し、位置を確認しやすくなります。

肘頭と内側上顆はどう見分けますか?

肘頭は肘後方中央、内側上顆は肘の内側にあります。まず後方中央の大きな肘頭を確認し、そこから内側へ指を移動して次の骨性隆起を探すと、内側上顆との位置関係を整理できます。

肘を伸ばした状態でも肘頭を触れますか?

触れることはできますが、伸展位では肘頭が上腕骨側へ収まり、後方の輪郭が分かりにくい場合があります。最初の位置確認は、肘を約90°曲げて行うと分かりやすくなります。

尺骨神経溝は強く押してもよいですか?

強く押す必要はありません。内側上顆後方には尺骨神経が通るため、強圧によって尺側手指のしびれや電撃痛を誘発することがあります。軽く位置を確認し、症状が出た場合は刺激を中止します。

肘頭に圧痛がある場合は何を確認しますか?

圧痛の正確な位置に加え、腫脹、発赤、熱感、皮膚損傷、外傷歴、肘関節運動との関係を確認します。強い疼痛、変形、発熱、神経症状がある場合は、無理に評価を続けず医師へ報告します。

肘頭触診のまとめ

肘頭は、肘を約90°曲げ、後方中央にある最も大きな骨性隆起として確認します。

  • 肘頭は尺骨近位端の後方にある
  • 肘を約90°屈曲すると確認しやすい
  • 一点を押さず、後方を広く触れて輪郭を探す
  • 内側上顆・外側上顆との位置関係を確認する
  • 尺骨神経溝は強く圧迫しない
  • 圧痛は観察、触診、運動、神経症状の順に整理する
  • 強い腫脹や変形、炎症所見があれば評価を中止して報告する

新人PT・OTの方は、肘頭だけを単独で覚えるのではなく、内側上顆・外側上顆を含む3点を同じ順番で触れてみてください。基準となる骨性ランドマークを固定すると、肘周囲の圧痛や腫脹の位置をより具体的に記録できるようになります。

次の一手

肘周囲の位置関係をさらに整理する場合は、外側の骨性ランドマークも続けて確認してみてください。


参考文献

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著者情報

執筆:リハビリくん

理学療法士。療養病棟での臨床経験をもとに、新人PT・OTが評価手順を整理し、実際の臨床や記録へつなげられる情報を発信しています。

保有資格:脳卒中認定理学療法士、褥瘡・創傷ケア認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、福祉住環境コーディネーター2級。

本記事は一般的な臨床情報の提供を目的としており、個別の診断や治療を代替するものではありません。