ONSとは?食事だけで不足する栄養を補う経口栄養サポート
ONS(Oral Nutritional Supplements:経口栄養補助食品)は、通常の食事だけではエネルギーやたんぱく質などの必要量を満たせない場合に、不足分を補う栄養支援の選択肢です。ただし、食事量が少ない患者すべてにONSが必要とは限りません。低栄養リスク、経口摂取の安全性、必要量と実際の摂取量を確認することが重要です。本記事では、PT・OT・ST向けに、ONSを相談する際の確認事項、摂取タイミング、リハビリテーションとの関係、記録例、再評価・終了判断を整理します。
ONSを相談する際の3つの確認事項
ONSを検討する際は、①低栄養または低栄養リスク、②経口摂取の安全性、③必要量と実際の摂取量の差分を整理します。これはPT・OT・STが多職種へ相談するための実務的な確認手順であり、ガイドラインが定めた独立した3つの適応基準ではありません。
NICEの栄養サポートガイドラインでは、安全に嚥下でき、低栄養または低栄養リスクがある患者に対して、経口栄養サポートを検討することが推奨されています。経口栄養サポートには、栄養強化食、間食、ONS、食事パターンの変更、栄養指導などが含まれます。
| 確認事項 | 確認する内容 | PT・OT・STの役割 |
|---|---|---|
| ① 低栄養・低栄養リスク | 体重減少、低BMI、筋量低下、摂取量低下、疾患負荷など | 身体機能、活動量、食事状況の変化を共有する |
| ② 経口摂取の安全性 | 嚥下機能、意識状態、姿勢、食形態、口腔状態など | 安全な摂取方法を検討するための情報を共有する |
| ③ 必要量との差分 | 通常食・補食・ONSを含む総摂取量と推定必要量 | 摂取を妨げる要因やリハとの時間的関係を伝える |
ONSは食事の代わりとして一律に使用するものではありません。通常食の調整や補食で必要量を満たせるかも含めて検討します。必要量の推定や製品・提供量の決定は、医師・管理栄養士などの関係職種と連携して行います。
ONSの導入・継続・終了を判断する5ステップ
ONSの運用は、栄養状態の確認から始まり、安全性の評価、不足量の確認、導入・調整、再評価へと進みます。次の図版は、PT・OT・STが多職種との相談に必要な情報を整理するための実務フローです。

図版の各ステップは、必ずしも一方向に進むものではありません。例えば、ONS開始後に摂取量が減少した場合は、摂取タイミングだけでなく、嚥下状態や食事環境、必要量の評価に戻って確認します。
また、ONSの適応や製品・量の決定をPT・OT・STだけで行うものではありません。リハ職は観察結果を共有し、栄養管理上の判断は医師・管理栄養士などと連携して行います。
開始・増量前に注意したい患者
ONSは経口摂取する栄養補助食品ですが、患者の病態によっては、製品の選択や栄養量の増加に注意が必要です。
- 嚥下障害:液体のONSが安全に摂取できるとは限りません。嚥下機能に応じた形態・粘度・摂取方法を確認します。
- 長期間の摂取不足:リフィーディング症候群のリスクを評価し、栄養開始・増量方法を医療チームで判断します。
- 心不全・腎疾患:水分量、電解質、たんぱく質量など、病態に応じた制約を確認します。
- 糖尿病:総エネルギー量、糖質量、摂取タイミング、血糖管理との関係を確認します。
- 食物アレルギー:製品の原材料やアレルゲン表示を確認します。
- 消化器症状:悪心、腹部膨満、下痢、便秘などが摂取継続を妨げていないか確認します。
嚥下障害があることだけを理由に、すべての経口栄養サポートが不可能になるわけではありません。嚥下評価に基づき、安全に摂取できる形態や方法を多職種で検討します。一方、安全性が確認できない場合は、自己判断でONSを提供・変更しません。
リフィーディング症候群のリスクを見落とさない
長期間の栄養摂取不足がある患者では、栄養を再開・増量することで、リン・カリウム・マグネシウムなどの電解質異常や体液バランスの変化が生じる場合があります。ONSによる経口栄養補給でも注意が必要です。
NICE CG32では、低BMI、意図しない体重減少、ほとんど栄養を摂取していない期間、栄養開始前の電解質低値などを組み合わせて、高リスク患者を判定しています。
例えば、BMIが著しく低い、短期間で大きな体重減少がある、ほとんど食べられない期間が続いている、低リン血症などが確認されている場合は、ONSを開始・増量する前に医師・管理栄養士へ相談します。
ただし、これらは単独でONSの可否を決めるための項目ではありません。正式なリスク評価は、NICE CG32などの基準と患者の病態に基づいて行います。高リスク患者では、栄養開始量、増量速度、電解質・ビタミン補充、検査・観察の計画を医療チームで決定します。
ONSを相談したい場面|食事量だけで判断しない
ONSを相談するきっかけは、食事摂取率の低下だけではありません。食事後半の疲労、姿勢保持の困難、疼痛、息切れ、嚥下・口腔機能の問題、リハ後の消耗などによって、必要な栄養量を確保できない場合があります。
まずは、食事摂取量と食べられない理由を分けて整理します。摂取率だけでは実際のエネルギー・たんぱく質摂取量を正確に把握できないため、必要に応じて管理栄養士が食事内容や提供量を含めて評価します。
| 場面 | 観察すること | 相談につなげる視点 |
|---|---|---|
| 食事摂取量が少ない | 主食・主菜・副菜の摂取量、食欲、食事時間 | 必要量との差分と食事調整の余地を確認する |
| 食事後半に疲れる | 摂取ペース、姿勢保持、上肢操作、覚醒状態 | 食事環境、休息、補食の必要性を相談する |
| リハ後に食事量が落ちる | リハ時間、運動負荷、疲労、食事開始時刻 | リハと食事・補食の時間調整を検討する |
| 嚥下・口腔機能に問題がある | 食形態、咀嚼、嚥下、口腔内残留、食事時間 | 安全性と栄養密度を両立できる方法を相談する |
| 疼痛・息切れがある | 食事姿勢、呼吸状態、休息の必要性 | 食事動作の負担軽減と摂取機会を検討する |
食事摂取率の確認方法については、食事摂取量の評価方法で詳しく解説しています。
ONSはいつ飲む?食前・食後・間食・リハ前後の考え方
ONSの摂取タイミングに、すべての患者へ共通する最適な時間はありません。重要なのは、ONSを摂取できることに加えて、通常食の摂取量を不必要に減らさず、1日の総栄養摂取量を確保できることです。
食前にONSを飲むと満腹感によって食事量が減る患者がいる一方、食後では満腹で飲めない患者もいます。食事量、疲労、嚥下状態、生活リズム、血糖管理、服薬、睡眠などを考慮して、摂取しやすい時間を多職種で検討します。
| タイミング | 検討する場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 食後 | 食事をある程度摂取できるが不足が残る | 満腹感で飲めない場合がある |
| 間食 | 1回の食事量が少なく、食間に摂取機会を確保できる | 次の食事量への影響を確認する |
| リハ前 | 食事・補食とリハ時間の調整が必要な場合 | 胃部不快感、嚥下安全性、血糖管理などを確認する |
| リハ後 | 運動後に摂取機会を確保しやすい場合 | 疲労や次の食事への影響を確認する |
| 就寝前 | 日中だけでは必要量を満たしにくい場合 | 逆流、睡眠、排尿、口腔ケアなどを確認する |
リハ後にONSを摂取すれば必ず筋力や身体機能が改善する、という意味ではありません。運動療法と栄養支援を組み合わせる際も、疾患、栄養状態、運動内容、総摂取量などを考慮して評価する必要があります。
PT・OT・STが確認したいONSとリハビリテーションの関係
リハ職が担う重要な役割は、ONSの処方ではなく、食事摂取を妨げる活動上の問題や、栄養支援とリハビリテーションの時間的な関係を把握することです。
PT:活動量・疲労・身体機能を確認する
PTは、離床時間、歩行練習、筋力練習、運動後の疲労などを観察します。午前中のリハ後に昼食量が低下する場合は、運動負荷、休息時間、食事開始時刻との関係を確認します。
ただし、食事量の低下をリハによる疲労だけで説明せず、病状、疼痛、睡眠、薬剤などの影響も考慮します。
OT:食事動作・姿勢・環境を確認する
OTは、食事姿勢、上肢操作、食具の使用、注意機能、食事動作の持続性などを確認します。食事後半に摂取量が低下する場合は、姿勢保持や上肢操作の負担が関係していないか評価します。
食具や環境の調整によって通常食の摂取量が改善する可能性もあるため、ONSの追加だけに解決策を限定しません。
ST:嚥下・口腔機能と食形態を確認する
STは、嚥下機能、食形態、食事時間、口腔内残留、咀嚼、食事中の疲労などを確認します。ONSの液体形態が適しているとは限らないため、患者の嚥下機能に応じた形態や摂取方法を多職種で検討します。
むせがない場合でも誤嚥を否定できないため、必要に応じて詳細な嚥下評価につなげます。
ONS相談の5分フロー|食事量から再評価まで
ONSについて相談する際は、「ONSが必要そうです」と伝えるだけでなく、食事量、摂取できない理由、リハとの関係、摂取しやすい時間、再評価項目を整理すると、多職種が具体的な対応を検討しやすくなります。
- 食事量を確認する:主食・主菜・副菜・水分などの摂取状況を把握する。
- 食べられない理由を分ける:食欲、疲労、疼痛、嚥下、口腔、息切れ、眠気などを確認する。
- リハとの関係を見る:活動量、運動負荷、食事前後の疲労、時間帯を確認する。
- 摂取タイミングを相談する:通常食への影響と安全性を踏まえ、多職種で調整する。
- 再評価する:総摂取量、飲み残し、身体状況、活動量、継続の必要性を確認する。
この5分フローは、ガイドラインで規定された公式手順ではなく、PT・OT・STが多職種へ情報を共有するための実務整理です。栄養管理上の判断は、患者の状態と施設の運用に応じて行います。
ONSの記録例|摂取量・理由・リハとの関係を残す
ONSに関する記録では、「飲めた」「飲めなかった」という結果だけでなく、摂取できない理由と食事量への影響を残すことが重要です。
特に療養病棟などでは、食事摂取量、ONSの飲み残し、リハ中の疲労が別々に記録され、情報が十分につながらない場合があります。リハ職は、自分が直接確認した情報と、他職種から共有された情報を区別して記録します。
| 記録項目 | 記録例 |
|---|---|
| 食事摂取量 | 昼食は主食5割、主菜3割。食事後半に摂取ペース低下。 |
| 食べられない理由 | 食事開始後に疲労が増強し、上肢操作が緩慢となる。 |
| リハとの関係 | 午前リハ後に疲労が強く、昼食摂取量が低下する傾向あり。 |
| ONSの摂取状況 | 午後の間食時間は覚醒良好で摂取可能。昼食直後は満腹感あり。 |
| 多職種への共有 | 食事摂取量と疲労の関係について管理栄養士・看護師へ共有。 |
記録をまとめる場合の文例
記録例(架空症例)
午前リハ後に疲労の訴えあり。昼食は主食5割、主菜3割で、食事後半に摂取ペースが低下。午後の間食時間は覚醒良好で、ONSの摂取が可能であった。食事量と疲労の関係、補食タイミングについて管理栄養士・看護師へ共有した。
記録例の数値や経過は説明用の架空設定であり、ONSの適応を決める基準ではありません。
ONS開始後の再評価|継続・調整・終了を判断する
ONSを開始した後は、摂取できているかだけでなく、通常食を含む総摂取量が増えているか、身体状況に問題が生じていないか、栄養支援の目的が達成されているかを確認します。
再評価の間隔は、患者の病状、栄養状態、摂取状況、治療方針によって異なります。リフィーディングリスクや代謝異常がある患者では、通常より慎重な医学的管理が必要です。
| 再評価項目 | 確認する内容 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| 総摂取量 | 通常食・補食・ONSを合わせた摂取量 | 必要量との差分を再確認する |
| ONSの摂取状況 | 飲み残し、嗜好、摂取しやすい時間 | 形態やタイミングの見直しを相談する |
| 身体状況 | 体重、浮腫、脱水、消化器症状など | 体液変動や有害事象を考慮する |
| リハへの参加 | 疲労、活動量、身体機能、ADL | 栄養状態と活動状況を総合的に確認する |
| 継続の必要性 | 通常食で必要量を継続的に満たせるか | 減量・終了を多職種で検討する |
再評価で見落としやすい問題
ONSの運用では、「飲めているから問題ない」と判断してしまうことがあります。しかし、ONSを摂取できていても、通常食の摂取量が減少していれば、総摂取量が十分に増えていない可能性があります。
また、飲み残しが続く場合は、単に摂取を促すのではなく、味、量、満腹感、疲労、嚥下状態、腹部症状などの原因を確認します。体重の増減についても、浮腫、脱水、利尿薬などの影響を考慮し、体重だけで栄養支援の効果を判断しないことが重要です。
リハ職は、食事量だけでなく、活動量、疲労、身体機能、ADLなどの変化を共有します。ただし、これらの改善・悪化をONS単独の効果と判断せず、病態やリハ内容などの影響も含めて評価します。
ONSの減量・終了を検討する場面
NICE CG32では、通常食から十分な経口摂取が確立した場合、経口栄養サポートを終了するとしています。
実務では、ある1日の食事摂取量だけで判断せず、通常食から必要量を継続的に確保できているか、体重や身体状況に問題がないか、再び摂取量が低下する可能性がないかを確認します。
特に、食欲や覚醒状態に日内変動がある患者、感染症や心不全などで病状が変動しやすい患者、食事動作や嚥下機能に問題がある患者では、摂取量の安定性を慎重に評価します。
ONSの減量・終了は、患者の栄養目標、通常食の摂取状況、低栄養リスク、今後の治療方針などを踏まえ、医師・管理栄養士などと協議して判断します。終了後も、食事量や身体状況を継続して確認します。
速やかに相談したい変化
- 食事やONSの摂取中に、むせ、呼吸状態の悪化、明らかな嚥下困難が生じた場合
- 悪心、嘔吐、腹部膨満、下痢などが強く、摂取継続が難しい場合
- 急な浮腫、体重変動、呼吸苦などが出現した場合
- 長期間の摂取不足後に栄養摂取を再開・増量する場合
- 食事量がさらに低下し、総摂取量を確保できない場合
急性の呼吸状態悪化や誤嚥が疑われる状況では、経口摂取を中断し、施設の緊急対応手順に従って速やかに医療者へ報告します。
よくある質問
ONSは食前と食後のどちらがよいですか?
一律には決められません。食前に飲むことで通常食の摂取量が減る患者もいれば、食後では満腹で飲めない患者もいます。通常食とONSを合わせた総摂取量、疲労、嚥下状態などを確認し、適切な時間を多職種で検討します。
ONSを飲んでいれば食事量が少なくても問題ありませんか?
ONSを飲んでいることだけでは、必要な栄養量を満たしているとは判断できません。通常食・補食・ONSを合わせた総摂取量と推定必要量を比較する必要があります。また、ONSによって通常食の摂取量が減っていないかも確認します。
嚥下障害がある患者にもONSを使用できますか?
嚥下機能に応じて安全な摂取方法を検討する必要があります。液体のONSが適さない患者もいるため、ST・医師・管理栄養士・看護師などと形態や摂取方法を確認します。自己判断で粘度や形態を変更しないことが重要です。
ONSの効果は何日で判断しますか?
一律の判定日数はありません。開始直後から摂取状況や有害事象を確認し、体重や身体機能などは患者の状態に応じて継続的に評価します。再評価の頻度は栄養状態、病状、リフィーディングリスク、施設の管理方針などによって異なります。
次の一手
ONSは、食事だけで不足する栄養を補うための選択肢です。PT・OT・STは、食事摂取量、食べられない理由、リハとの関係を整理し、多職種による栄養支援の判断につなげます。
- 全体像を確認する:リハビリテーション栄養の進め方
- 必要量を確認する:必要エネルギー量の計算方法
- 食事量を評価する:食事摂取量の評価方法
参考文献
- National Institute for Health and Care Excellence. Nutrition support for adults: oral nutrition support, enteral tube feeding and parenteral nutrition. Clinical guideline CG32. Published 2006; updated 2017. NICE公式サイト.
- Volkert D, Beck AM, Cederholm T, et al. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clin Nutr. 2022;41(4):958-989. doi:10.1016/j.clnu.2022.01.024. PubMed.
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002. PubMed.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
2022年4月にrehabilikun blogを開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの経験を経て、現在は療養病院に勤務しています。
脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に、PT・OT・STが臨床で活用できる評価方法、判断のポイント、実務手順を発信しています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

