オーラル DDK( ODK )の測り方と解釈|/pa/ /ta/ /ka/ を 5 秒で再現性高く

栄養・嚥下
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オーラル DDK( ODK )の測り方と解釈|/pa/ /ta/ /ka/ を 5 秒で再現性高く

評価は「条件固定 → 記録 → 再評価」の順番を揃えると、結果がブレにくくなります。 評価 → 介入 → 再評価の型を 3 分で復習する( #flow )

オーラル DDK( ODK )は、/pa/ /ta/ /ka/ を一定時間できるだけ速く反復し、「舌・口唇の運動速度(回/秒)」をみる簡便評価です。摂食・嚥下のリスク把握や、口腔機能低下症のスクリーニングに組み込みやすい一方で、測定条件が曖昧だと数値が簡単に変わるのが落とし穴です。

本記事では、現場で再現性を上げる測定手順( 5 秒版を推奨 )、カウントと記録の型、 6 回/秒の読み方、よくある失敗の切り分けまでをまとめます。口腔機能評価の全体像は 口腔機能の評価方法(ミニセットまとめ) に整理しています。

オーラル DDK( ODK )とは?

DDK( diadochokinesis )は、反復運動を素早く切り替える能力をみる検査概念で、口腔領域では音節の反復を用います。一般に /pa/ は口唇、/ta/ は舌前方、/ka/ は舌後方の運動が主体になり、速度だけでなく明瞭さ・リズムの乱れも観察ポイントです。

口腔機能低下症( oral hypofunction )の枠組みでは、ODK は「舌口唇運動機能( tongue-lip motor function )」の指標として扱われ、一定のカットオフが提案されています。

どんなときに測る?(臨床での使いどころ)

ODK は機器がなくても実施でき、ベッドサイドや外来、訪問でも導入しやすいのが強みです。とくに「スクリーニング → 追加評価 → 連携」の入口で役立ちます。

ODK を測る場面と、得られる情報(成人・臨床向け)
場面 ねらい 観察するポイント 次アクション例
病棟・施設 摂食・嚥下のリスク把握 /ka/ の低下、リズム乱れ、息継ぎの頻度 口腔ケア、食形態・姿勢、必要時に ST / 歯科へ
地域・外来 口腔機能低下のスクリーニング 6 回/秒未満の音節、再現性( 2 試行差 ) 運動・衛生・栄養の介入、定期再評価
神経疾患・構音 運動速度と規則性の把握 速度だけでなく不規則さ、置換、努力性 構音評価、呼気・発声の評価、専門連携

測定手順:条件を固定する 5 ステップ( 5 秒版 )

数値を「比較できるデータ」にするには、条件固定が最重要です。現場では 10 秒法も見かけますが、疲労や息継ぎの影響が出やすいため、本記事では 5 秒で 2 試行(高い方を採用)を推奨します。

  1. 姿勢を統一:基本は椅子座位(端座位)。体幹が崩れる場合は背もたれ使用も可(次回も同条件)。
  2. 説明とデモ:「できるだけ速く、できるだけはっきり。息継ぎはして OK」と伝え、口形を見せます。
  3. 練習 1 回:各音節を 2〜3 秒だけ試す(本番で伸びる学習効果を減らす)。
  4. 本番 5 秒 × 2 回:/pa/ → /ta/ → /ka/ の順(順番も固定)。各試行の間は 10〜20 秒休憩。
  5. 記録:回数、回/秒、息継ぎ、明瞭性(乱れ、置換)をセットで残す。
ODK の測定条件チェック(記録して再現性を上げる)
項目 固定する内容 メモ例
姿勢 座位 / 端座位、背もたれの有無 椅子座位、背もたれあり
義歯 装着あり/なし 義歯あり
測定時間 5 秒(推奨)か 10 秒か 5 秒
試行回数 2 回(推奨)で高い方採用 2 試行、最大値採用
測定者 同一人物が望ましい 担当 PT

スコアリングと記録のコツ(カウント方法)

回/秒 =( 5 秒間の回数 )÷ 5で算出します。手動カウントでは「途中から速くなる」「終盤で崩れる」などが起きるため、可能なら録音して後で確認するとミスが減ります。

  • 推奨: 5 秒 × 2 試行 → 高い方を採用(学習効果と偶発的な失敗に強い)
  • 観察:速度だけでなく規則性(リズム)明瞭性(置換・脱落)を短くメモ
  • 比較:同一条件での経時比較を優先(測定条件が変わると数値が動く)

解釈:まずは「 6 回/秒」を目安にする

口腔機能低下症の診断基準(日本老年歯科医学会の枠組み)では、ODK は舌口唇運動機能の指標として位置づけられ、/pa/ /ta/ /ka/ のいずれかが 6.0 回/秒未満を低下の目安とする考え方が示されています。

ただし、ODK は年齢や練習(学習効果)、疲労、義歯の適合などの影響を受けます。「 6 回/秒未満 =即 NG 」ではなく、他指標(口腔衛生、舌圧、嚥下症状)と合わせて解釈し、同一条件での再評価をセットにすると安全です。

ODK の読み方:数値だけで決めないための整理
所見 示唆 追加で見たいもの 臨床メモ
6 回/秒未満(いずれか) 舌・口唇の運動速度低下の可能性 舌圧、嚥下症状(問診)、口腔衛生 まずは条件固定で再測定
/ka/ が特に低い 舌後方の運動が弱い可能性 食形態、咽頭クリアランス、むせ 嚥下の文脈で観察を厚く
速度は出るが不規則 協調性・制御の問題を示唆 構音、呼気・発声、疲労 「速さ」だけで評価しない
置換(/pa/→/ma/ など) 構音・鼻咽腔閉鎖などの可能性 口腔形態、鼻声、発声・構音評価 専門職( ST / 歯科 )へ相談

よくある失敗と切り分け(再現性が落ちる原因)

ODK がブレる典型パターンと、対策(現場向け)
起きていること 原因になりやすい点 対策 記録ポイント
途中から急に速くなる 説明不足 / 練習不足 練習を 1 回入れてから本番 試行 1 と 2 の差
終盤で崩れる 疲労、息継ぎ、 10 秒法の影響 5 秒法へ、休憩を確保 息継ぎ回数
声量が落ちる 呼気量不足、努力性低下 「大きな声」より「明瞭さ」優先 努力性、呼気の持続
口形が安定しない 視覚提示がない / 模倣困難 口形を見せる、ゆっくり見本 → 本番 模倣の可否
数え間違いが起きる 手動カウントの限界 録音して後で確認(可能なら) 記録者を固定

注意点・中止基準(安全管理)

ODK 実施時の注意点(臨床安全管理)
状況 リスク 対応
強い息切れ・呼吸苦 過換気、呼吸状態の悪化 中止して休憩。呼吸状態を優先して評価設計を見直す
強い咳込みが続く 気道刺激、疲労 中止。口腔乾燥や分泌物、姿勢を確認
強い口腔痛・顎関節痛 疼痛増悪 無理に行わず、疼痛コントロール後に再検
理解面が不十分 測定の信頼性低下 短い説明とデモ、練習を増やし、結果は参考値として扱う

低下したときの介入ヒント(評価とセットで)

ODK 低下は「どの音節が落ちているか」で介入の狙いが変わります。いきなり難しい課題より、明瞭さを保ったまま反復できる速度から積み上げると失敗が減ります。

  • /pa/ が低い:口唇閉鎖とリズム(短い反復 → 間隔短縮)
  • /ta/ が低い:舌尖の当てどころを安定(上顎前方の接触感を確認)
  • /ka/ が低い:舌後方の挙上を意識(無理な速度より反復の均一性)

介入の効果判定は、同一条件で ODK を再測定し、数値と観察所見(明瞭性・リズム)をセットで追うのが基本です。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

5 秒と 10 秒、どちらが良いですか?

現場では 10 秒法もありますが、終盤の疲労や息継ぎで崩れやすく、カウント誤差も増えます。本記事は 5 秒 × 2 試行(最大値採用)を推奨します。施設内で 10 秒運用が決まっている場合は、条件を固定して経時比較を優先してください。

6 回/秒未満なら、すぐに嚥下障害ですか?

いいえ。ODK は舌・口唇の運動速度を反映しますが、嚥下障害は多因子です。嚥下症状(問診)や口腔衛生、舌圧などと合わせて解釈し、必要時に ST / 歯科へ連携するのが安全です。

2 回測ると差が出ます。どちらを使う?

学習効果や偶発的な失敗があるため、 2 試行して高い方を採用すると再現性が上がります。差が大きい場合は「説明不足」「疲労」「理解面」などを疑い、条件を整えて再測定します。

/pa/ /ta/ /ka/ 以外(/pataka/ など)は使いますか?

/pa/ /ta/ /ka/ は単音節反復( AMR )として臨床で広く使われます。/pataka/ は別の能力(系列運動、 SMR )をみる目的で用いられ、同じ「速さ」でも意味が変わるため、混在させず目的に応じて選ぶのが基本です。

参考文献

  1. Minakuchi S, Tsuga K, Ikebe K, et al. Oral hypofunction in the older population: Position paper of the Japanese Society of Gerodontology in 2016. Gerodontology. 2018;35(4):317-324. doi: 10.1111/ger.12347(PubMed: 29882364
  2. Hara S, Miura H, Yamasaki K. Oral diadochokinesis among Japanese aged over 55 years: analysis of standard values. Nippon Ronen Igakkai Zasshi. 2013;50(2):258-263. doi: 10.3143/geriatrics.50.258(PubMed: 23979250
  3. Hasegawa Y, Sakuramoto A, Sugita H, et al. Does Oral Hypofunction Promote Social Withdrawal in Older Adults? Int J Environ Res Public Health. 2022;19(4):2154. doi: 10.3390/ijerph19042154(PubMed: 35206410
  4. Gadesmann M, Miller N. Reliability of speech diadochokinetic test measurement. Int J Lang Commun Disord. 2008;43(1):41-54. doi: 10.1080/13682820701234444(PubMed: 17852539
  5. Tanchip C, Liss JM, Berisha V. Validating Automatic Diadochokinesis Analysis Methods Across Dysarthria Severity and Syllable Types. Front Hum Neurosci. 2022;16:860671. doi: 10.3389/fnhum.2022.860671(PubMed: 35603045

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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おわりに

ODK は、条件固定 → 5 秒測定 → 失敗パターンの切り分け → 介入 → 同一条件で再評価のリズムにすると、短時間でも「比較できるデータ」になります。面談準備のチェックと職場評価シートは マイナビコメディカルのまとめ(DL) から一気に整えられます。

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