起立性低血圧で「起こせない」が起きる理由
起立性低血圧では、離床時に血圧が低下し、めまい・気分不良・失神などが出現します。臨床では「起こしたいけど起こせない」「離床すると倒れそうになる」という場面も少なくありません。
しかし実際のリハビリでは、“血圧を完全に正常化する”ことよりも、“症候性低血圧を減らしながら安全に離床を進める”ことが重要になります。理学療法士は、弾性包帯・腹帯・段階的離床・筋ポンプ活性化などを組み合わせながら、離床耐性を少しずつ作っていきます。
なぜ離床で血圧が下がるのか
起立時には重力の影響で、下肢や腹部へ血液が貯留します。すると静脈還流が低下し、心拍出量が減少することで血圧低下が起こります。
特に、高齢者・長期臥床後・自律神経障害を有する患者では、血管収縮反応や圧受容体反射が追いつかず、起立時の循環調節が破綻しやすくなります。
弾性包帯はどのくらい効果がある?
臨床では、起立性低血圧に対して弾性包帯や弾性ストッキングを使用することがあります。目的は、下肢静脈への血液貯留を減らし、静脈還流を保つことです。
ただし、弾性包帯を巻いたからといって、血圧低下が完全になくなるわけではありません。実際には、“血圧低下の落ち幅を弱める”“症状を軽減する”目的で使用されることが多いです。
| 変化 | 臨床での意味 |
|---|---|
| 血圧低下がやや軽くなる | 離床耐性が上がる |
| めまい軽減 | 端座位保持しやすい |
| 失神リスク軽減 | 移乗を進めやすい |
| 症状出現が遅くなる | リハビリ時間を確保しやすい |
段階的離床が重要な理由
起立性低血圧では、“急に起こさない”ことが重要です。ギャッジアップ・ダングリング・端座位などを段階的に進めることで、循環調節反応が追いつきやすくなります。
特に理学療法では、段階的離床そのものが重要な介入になります。弾性包帯だけではなく、“循環を慣らしながら起こす”ことが、離床成立に大きく関与します。

| 段階 | 確認ポイント |
|---|---|
| ギャッジアップ | 顔色・会話・症状確認 |
| ダングリング | めまい・冷汗・反応確認 |
| 端座位 | 保持耐久時間を確認 |
| 立位 | 血圧低下・下肢脱力確認 |
| 移乗 | 症候性低血圧の有無確認 |
腹帯はなぜ効く?
起立性低血圧では、下肢だけでなく腹部への血液貯留も問題になります。特に自律神経障害を伴う患者では、腹部血管床への血液貯留が大きく影響することがあります。
そのため、腹帯による腹部圧迫で静脈還流を補助する方法があります。臨床では、術後用腹帯やコルセット型腹帯を使用することが多く、下腹部を中心に圧迫します。
| 項目 | 弾性包帯 | 腹帯 |
|---|---|---|
| 主な作用部位 | 下肢 | 腹部 |
| 目的 | 下肢プーリング軽減 | 腹部プーリング軽減 |
| 使いやすさ | 比較的使いやすい | やや難しい |
| 不快感 | 少なめ | 食後不快感あり |
| 臨床での位置づけ | 導入しやすい | 重度 OH で追加検討 |
PT が見ているのは「血圧」だけではない
起立性低血圧では、数値だけでなく“症状”を観察することが重要です。実際には、血圧低下があっても症状が少ない患者もいれば、数値以上に気分不良が強い患者もいます。
そのため、理学療法士は以下のような反応を総合的に観察しながら離床を進めています。
| 観察項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 顔色 | 蒼白・表情変化 |
| 発汗 | 冷汗の有無 |
| 会話 | 反応速度低下 |
| 視線 | 焦点固定・ぼんやり感 |
| 下肢 | 脱力・膝折れ |
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危険なサイン|単なる廃用性ではないケース
弾性包帯や段階的離床を行っても、意識消失や著明な症状が出現する場合は注意が必要です。
特に以下のようなケースでは、単なる廃用性起立性低血圧ではなく、他の病態が関与している可能性があります。
| 病態 | 特徴 |
|---|---|
| 重度自律神経障害 | 起立直後から強い血圧低下 |
| 脱水 | 頻脈・口渇・尿量低下 |
| 出血 | 急激な循環不安定 |
| 不整脈 | 脈拍異常を伴う |
| 敗血症 | 発熱・意識変化を伴う |
よくある失敗
起立性低血圧では、血圧測定だけに意識が向きすぎることがあります。しかし実際には、“どう起こすか”も重要です。
| よくある失敗 | 改善ポイント |
|---|---|
| 一気に起こす | 段階的離床を行う |
| 血圧だけ見る | 症状も観察する |
| 朝イチ離床 | 状態が安定しやすい時間を選ぶ |
| 包帯だけで安心する | 総合的に評価する |
| 下肢運動なしで立位 | 筋ポンプを活用する |
現場では、“血圧を正常化する”ことよりも、“安全に活動量を落とさない”視点が重要になります。
よくある質問
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弾性包帯を巻けば起立性低血圧は防げますか?
完全に防げるとは限りません。実際には、血圧低下の落ち幅を弱めたり、症状を軽減したりする目的で使用されます。
腹帯はどの患者にも使った方がいいですか?
腹部圧迫は有効な場合がありますが、不快感や食後症状が強くなることもあります。症状や病態に応じて適応を判断します。
段階的離床はどこまで細かく行うべきですか?
患者の症状や循環状態によって異なります。ギャッジアップ・ダングリング・端座位などを挟みながら、循環を慣らしていくことが重要です。
血圧低下があっても離床していいですか?
数値だけでは判断できません。症状・反応・意識状態などを総合的に評価しながら、安全性を確認して進めます。
次の一手
起立性低血圧では、“どう起こすか”が離床成否を左右します。まずは評価・安全管理・循環反応の見方を整理し、段階的離床を組み立てられるようにしていくことが重要です。
参考文献
- Freeman R, et al. Consensus statement on the definition of orthostatic hypotension. Clin Auton Res. 2011;21(2):69-72. DOI: 10.1007/s10286-011-0119-5
- Figueroa JJ, et al. Orthostatic hypotension: diagnosis and treatment. Mayo Clin Proc. 2010;85(2):147-157. DOI: 10.4065/mcp.2009.0663
- Lanier JB, et al. Evaluation and management of orthostatic hypotension. Am Fam Physician. 2011;84(5):527-536. PubMed: 21888303
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

