MDS-UPDRSとUPDRSの違い|Part別の評価方法と使い分け

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MDS-UPDRSとUPDRSの違い|まず押さえる結論

MDS-UPDRSを使う前に、旧UPDRSとの違いと再評価条件を整理しておくと、スコアの解釈がぶれにくくなります

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MDS-UPDRSは、従来のUPDRSを改訂し、採点基準の曖昧さを減らすとともに、非運動症状や患者・介護者の視点を拡充した評価尺度です。新しく評価体制を整える場合はMDS-UPDRSを基本とし、過去のUPDRSデータとの連続性を確認するときに旧版を参照する整理が実務的です。

この記事では、両者の違い、Part I〜IVの役割、ON・OFFを含む評価条件の残し方、公式評価用紙と補助記録シートの使い分けを整理します。評価項目や採点文の全文は掲載せず、実施時はMDS公式の評価用紙と教材を使用してください。

UPDRSとMDS-UPDRSの違いを比較

大きな違いは、MDS-UPDRSでは評価対象と採点基準が整理され、患者・介護者が回答する項目も組み込まれたことです。旧UPDRSの単なる名称変更ではなく、構成や評価内容が改訂されています。

UPDRSとMDS-UPDRSの主な違い
観点 UPDRS MDS-UPDRS 実務上の考え方
位置づけ 従来版 MDSによる改訂版 新規運用ではMDS-UPDRSを基本にする
評価範囲 運動症状を中心に構成 非運動症状や日常生活上の経験を拡充 運動診察だけでなく生活上の影響もPart別に読む
パート構成 Part I〜IV Part I〜IV 名称は同じでも、各Partの内容と構成は同一ではない
採点 0〜4点 0〜4点 MDS-UPDRSでは各段階のアンカーが整理されている
回答者 評価者による面接・診察が中心 患者・介護者が回答する項目を含む 自己記入部分と評価者が確認する部分を区別する
日本語版 従来から日本語で使用されてきた 公式日本語版が検証されている 施設ではMDS公式の配布版を使用する
主な使用場面 旧研究・旧カルテとの比較 現在の臨床評価、経時追跡、研究 旧版と新版の点数を単純換算しない
UPDRSとMDS-UPDRSの主な違いとMDS-UPDRSのPart IからPart IVまでの全体像
UPDRSからMDS-UPDRSへの主な変更点と、Part I〜IVの役割

旧UPDRSとMDS-UPDRSは評価項目や構成が異なるため、同じ0〜4点であっても、個々の項目や合計点をそのまま置き換えることはできません。過去データと比較する場合は、使用した尺度名と版を明記してください。

MDS-UPDRSのPart I〜IVの違い

MDS-UPDRSは、非運動症状、運動症状の日常生活への影響、運動診察、運動合併症を4つのPartに分けて評価します。合計点だけでなく、どのPartに変化が出たかを確認することが重要です。

MDS-UPDRSのPart I〜IVの役割
Part 評価する内容 主な情報源 実務上の読み方
Part I 非運動症状の日常生活上の経験 評価者による確認、患者・介護者の回答 睡眠、気分、自律神経症状など生活への影響を確認する
Part II 運動症状の日常生活上の経験 患者・介護者の回答 診察室内の動作ではなく、普段の生活での困難を捉える
Part III 運動診察 評価者による診察 運動所見を同じ条件で追跡する
Part IV 運動合併症 評価者による面接・確認 ジスキネジアや症状変動の持続時間、生活への影響を確認する

理学療法ではPart IIとPart IIIに注目しやすい一方、主訴が睡眠、疲労、自律神経症状、日内変動などに関係する場合は、Part IやPart IVも含めて解釈します。

UPDRSとMDS-UPDRSはどちらを選ぶか

現在の臨床で新しく導入する場合はMDS-UPDRSを基本とし、旧UPDRSは過去データとの比較が必要な場合に参照します。

  • 新規患者の包括評価:MDS-UPDRSを使用する
  • 経時的な再評価:同じ尺度と同じ評価条件で継続する
  • 旧カルテとの比較:旧UPDRSであることを明記し、単純換算しない
  • 研究データとの比較:使用した尺度、版、評価条件を確認する

尺度を途中で変更すると、点数差に病状変化と尺度変更の影響が混在します。変更が必要な場合は、可能であれば移行時に両尺度を記録し、以後どちらを継続するか院内で統一します。

MDS-UPDRSを実施する前に確認すること

MDS-UPDRSは公式評価用紙の順序と説明に沿って実施し、院内独自の手順で採点基準を置き換えないことが基本です。再評価では、尺度の手順に加えて薬効状態や実施環境をそろえます。

  1. 使用する公式用紙と版を確認する
    MDS公式サイトから対象言語の評価用紙を入手し、旧版や独自編集版が混在していないか確認します。
  2. 評価目的を決める
    初回の包括評価、定期的な経過確認、治療反応の確認など、今回の評価で知りたいことを明確にします。
  3. 服薬状態と時刻を確認する
    最終服薬時刻、評価時刻、ON・OFF、ジスキネジアの有無などを記録します。
  4. 患者・介護者回答を確認する
    自己記入項目は、普段の状態を反映しているか、回答期間や質問の意味を取り違えていないか確認します。
  5. 公式の指示に沿って運動診察を行う
    独自の回数、速度、声かけ、採点基準へ変更せず、評価用紙と公式教材に沿って実施します。
  6. Part別に集計して記録する
    総合点だけでなくPart別の点数、評価不能項目、実施条件、生活上の困りごとを残します。

Part IIIを行うときの観察・記録ポイント

Part IIIの採点は公式基準に従い、補助記録には採点へ影響した条件や安全管理上の情報を残します。以下は採点基準ではなく、再評価条件をそろえるための記録ポイントです。

運動診察で併記したい条件と安全管理
確認場面 固定・記録する条件 併記する所見 安全管理
発語・表情 環境音、姿勢、補聴器の使用 普段との差、疲労、緊張 聞き取りにくさを症状だけで判断しない
上肢反復運動 開始姿勢、上肢の支持、左右の実施順 疼痛、関節可動域制限、疲労 整形外科的制限を区別する
下肢反復運動 椅子、座位姿勢、足底条件 疼痛、筋力低下、装具の使用 椅子のずれや転落を防ぐ
起立 椅子の高さ、肘掛け、足部位置、手の使用 介助量、立ちくらみ、再試行の有無 後方への転倒と起立性低血圧に注意する
歩行・方向転換 歩行路、靴、補助具、介助条件 すくみ足の誘発条件、疲労、見守り量 方向転換時の転倒に備える
姿勢安定性 実施者、開始姿勢、履物、実施可否 反応、介助の有無、中止理由 十分なスペースと介助体制を確保する
振戦 安静・姿勢・動作の条件、観察時間帯 出現部位、左右差、変動 疲労や不安による変化も併記する

施設内で固定するのは、公式の採点方法ではなく、評価場所、椅子、歩行路、補助具、見守り条件、記録書式などの周辺条件です。

MDS-UPDRSで起こりやすい評価ミス

最も避けたいのは、異なる条件で得た点数を同じ条件の経時変化として比較することです。点数だけでなく、服薬状態や実施条件を必ず残します。

MDS-UPDRS運用で起こりやすいミスと対策
よくあるミス 問題点 対策 最低限の記録
ON・OFFを記録していない 薬効による差と病状変化を区別できない 評価時刻と最終服薬時刻をセットで残す 評価時刻、服薬時刻、ON・OFF
旧版と新版を混在させる 点数を同じ尺度として比較できない カルテに尺度名と版を明記する UPDRSまたはMDS-UPDRS
公式の説明を独自に変更する 評価者間で実施方法と採点がずれる 公式用紙と公式教材を使用する 使用版、未実施・評価不能項目
補助具や介助条件を残さない 動作能力の変化か条件差か分からない 補助具、手の使用、介助量を併記する 杖、歩行器、装具、見守り・介助
合計点だけで判断する 変化した症状領域が分からない Part別スコアと生活上の変化を確認する Part別合計、主訴、変化した項目群
危険な項目を無理に実施する 転倒や症状悪化につながる 安全確保を優先し、評価できない理由を残す 実施可否、中止理由、安全配慮

再評価で固定する条件と記録例

再評価では、点数と一緒に「いつ・どの状態で・どの条件で評価したか」を残します。すべての条件を完全に一致させられない場合も、前回との差を明記すれば解釈しやすくなります。

  • 評価日・評価時刻
  • 最終服薬時刻
  • ON・OFFまたは患者本人が認識する薬効状態
  • ジスキネジアの有無
  • DBSの有無と確認できる設定情報
  • 靴、装具、杖、歩行器
  • 椅子や歩行路などの環境
  • 見守り・介助条件
  • 疼痛、疲労、眠気、体調
  • 評価不能または省略した項目と理由

記録例

MDS-UPDRSを10時に実施。最終服薬8時30分、本人申告ではON。四点杖と普段の靴を使用。歩行は見守り、起立時に軽度のふらつきあり。前回と同じ評価室・椅子を使用。Part IIIの一部は膝痛の影響を考慮して解釈した。

記録例は公式評価用紙の代わりではありません。公式スコアと分けて、条件や解釈を補足するために使用します。

公式評価用紙と補助記録シートの使い分け

採点には公式評価用紙を使用し、院内で作成する補助シートは評価条件とPart別合計を整理する用途に限定します。

公式用紙は、International Parkinson and Movement Disorder Societyの公式ページから入手してください。施設内では、使用する版、保管方法、評価者教育、コピーや配布の扱いも確認します。

補助記録シートには、評価項目や採点文を転載するのではなく、ON・OFF、服薬時刻、補助具、実施条件、Part別合計、評価不能項目、自由記載欄などを配置すると、経時比較や申し送りに使いやすくなります。

MDS-UPDRS・UPDRS評価記録シート(A4 PDF)

評価条件とPart別の記録を1枚で整理するための補助記録シートです。公式評価用紙を置き換えるものではありません。公式用紙で採点したうえで、再評価条件や申し送り事項を整理する目的で使用してください。

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MDS-UPDRSとUPDRSのFAQ

各項目名をタップすると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

Q1. 新しく導入するならUPDRSとMDS-UPDRSのどちらを選びますか?

原則としてMDS-UPDRSを選びます。MDS-UPDRSは旧UPDRSの問題点を踏まえて改訂され、非運動症状や患者・介護者による回答も拡充されています。旧UPDRSは、過去のカルテや研究データとの比較が必要な場合に参照します。

Q2. UPDRSの点数をMDS-UPDRSへ換算できますか?

項目構成や採点基準が異なるため、個々の点数を単純に置き換えることはできません。尺度を変更する場合は、変更日、使用した版、評価条件を明記し、旧版と新版の点数を別の系列として扱います。

Q3. 評価はONとOFFのどちらで行いますか?

評価目的によって決めます。普段の生活や治療下の状態を確認する場合と、薬効による変化を確認する場合では条件が異なります。重要なのは、評価時刻、最終服薬時刻、ON・OFFを記録し、再評価でも可能な範囲で条件をそろえることです。

Q4. Part IIIだけを定期的に評価してもよいですか?

運動診察の変化を追う目的でPart IIIを重点的に使用することはあります。ただし、Part IIIだけでは日常生活上の困難、非運動症状、運動合併症を十分に捉えられません。初回や状態変化時は全体を確認し、定期評価では目的に合うPartを選びます。

Q5. 日本語版はどこから入手しますか?

MDS公式サイトから、案内に沿って入手します。インターネット上にある出所不明の転記版や、施設内で独自に改変した用紙ではなく、公式に提供されている版を使用してください。

次の一手

MDS-UPDRSの運用を始める前に、公式用紙の版、評価条件の記録欄、再評価するPartを院内で決めておきましょう。

本記事のA4補助記録シートを使用する場合も、公式評価用紙とセットで運用し、補助シートだけで採点を完結させないことが重要です。

評価方法を学べる体制や相談環境が不足している場合は、職場環境の整理も選択肢になります

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参考文献

  1. Goetz CG, Tilley BC, Shaftman SR, et al. Movement Disorder Society-sponsored revision of the Unified Parkinson’s Disease Rating Scale (MDS-UPDRS): Scale presentation and clinimetric testing results. Mov Disord. 2008;23(15):2129-2170. doi:10.1002/mds.22340
  2. Kashihara K, Kondo T, Mizuno Y, et al. Official Japanese version of the Movement Disorder Society-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale: validation against the original English version. Mov Disord Clin Pract. 2014;1(3):200-212. PubMed:25328906
  3. Movement Disorder Society. MDS-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale (MDS-UPDRS). MDS公式サイト
  4. Osborne JA, Botkin R, Colon-Semenza C, et al. Physical Therapist Management of Parkinson Disease: A Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association. Phys Ther. 2022;102(4):pzab302. PubMed:34963139
  5. Hoehn MM, Yahr MD. Parkinsonism: onset, progression and mortality. Neurology. 1967;17(5):427-442. PubMed:6067254

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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