リハ前バイタルチェックの見方|安全判断と記録例

臨床手技・プロトコル
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リハ前バイタルチェックは「測定」ではなく安全に介入する判断です

リハビリ前のバイタルチェックは、血圧・脈拍・SpO2を測るだけでは不十分です。大切なのは、普段との差、顔色、呼吸、発話、自覚症状を合わせて見て、今日のリハを実施・軽負荷・中止・報告のどれにするか判断することです。この記事では、新人PT・OT・ST向けに、リハ前に見る順番、注意サイン、記録例まで実務で使いやすく整理します。

安全管理をまとめて確認したい方へ

バイタルチェックは、評価・離床判断・中止基準とセットで考えると実務に落とし込みやすくなります。

評価ハブで全体像を見る

まず患者を見る|数値の前に確認したいこと

最初に見るべきなのは、血圧計の数値ではなく患者さんの状態です。顔色、呼吸の深さ、発汗、発話のしやすさ、意識レベル、活気、表情を短時間で確認します。

血圧やSpO2が大きく外れていなくても、反応が鈍い、冷汗がある、呼吸が浅い、会話が続かない、いつもより疲労感が強い場合は注意が必要です。療養病棟では「普段はもっと返答が早い」「昨日より顔色が悪い」といった小さな変化が、リハ内容を調整するきっかけになります。

リハ前に数値の前に確認したい観察ポイント
観察項目 見るポイント 注意したいサイン
顔色 蒼白、紅潮、チアノーゼの有無 普段より顔色が悪い、唇色が悪い
呼吸 呼吸数、呼吸の深さ、努力呼吸 浅い呼吸、肩呼吸、会話時の息切れ
発話 会話のしやすさ、返答速度 返答が遅い、会話が途切れる
意識・活気 覚醒、表情、反応 ぼーっとしている、いつもより反応が鈍い
自覚症状 息切れ、胸部症状、めまい、倦怠感 新しい症状、いつもより強い症状

リハ前バイタルチェックの実務フロー

リハ前の確認は「観察→自覚症状→血圧・脈拍→SpO2・呼吸→姿勢変化→実施判断」の順で進めると、数値だけに偏りにくくなります。

リハ前バイタルチェックの実務フローを示した図版

特に離床前後で状態が変わる患者さんでは、臥位の数値だけで判断しないことが重要です。座位・立位でめまい、ふらつき、顔色不良、息切れが出る場合は、介入内容を軽くする、休息を入れる、病棟看護師へ共有するなどの調整を行います。

リハ前バイタルチェックの5分フロー
順番 確認すること 実務での見方
1 見た目の観察 顔色、呼吸、発汗、活気、発話を確認する
2 自覚症状 息切れ、胸部症状、めまい、倦怠感、疼痛を聞く
3 血圧・脈拍 単発数値ではなく、普段との差と姿勢変化を見る
4 SpO2・呼吸数 SpO2だけでなく、呼吸数・呼吸様式も合わせる
5 実施判断 実施、軽負荷、休息、報告、中止を判断する

項目別に見るポイント

バイタルチェックでは、正常値かどうかよりも「その患者さんにとって普段と違うか」を見ることが重要です。基礎疾患、薬剤、直前の活動、食事、睡眠、発熱、脱水、病棟での様子も合わせて判断します。

新人PT・OT・STで見落としやすいのは呼吸数です。SpO2が保たれていても、呼吸数増加や努力呼吸がある場合は負荷が高い可能性があります。数値と観察所見をセットで確認しましょう。

リハ前バイタルチェックで確認したい項目別ポイント
項目 確認すること よくある見落とし
血圧 普段との差、姿勢変化、症状の有無 単発の正常値だけで判断する
脈拍 頻脈、徐脈、不整、動悸の有無 不整や症状を確認しない
SpO2 安静時、活動時、回復時間 呼吸状態を見ずに数値だけ見る
呼吸数 増加、浅い呼吸、努力呼吸 測定せず、SpO2だけで判断する
体温 発熱、悪寒、感染兆候 倦怠感や活動性低下と結びつけない
自覚症状 胸部症状、めまい、息切れ、強い疲労感 「大丈夫です」の一言で終える

中止・報告を考えるサイン

胸部症状、強い息切れ、意識状態の変化、冷汗、強いめまい、普段と異なる反応低下がある場合は、無理に開始しない判断が必要です。

中止基準は疾患、病期、医師の指示、施設方針によって異なります。そのため、詳細な数値だけを丸暗記するよりも、普段との差、症状の有無、姿勢変化、回復の速さを見て、迷ったら早めに相談することが大切です。

リハ開始前に報告・相談を考える主なサイン
場面 確認したいこと 対応の方向性
胸部症状 胸痛、胸部圧迫感、動悸 開始せず、看護師・医師へ報告する
呼吸苦 会話困難、努力呼吸、呼吸数増加 休息、酸素条件確認、報告を検討する
意識変化 反応低下、傾眠、見当識低下 急変リスクとして早めに共有する
起立時症状 めまい、ふらつき、顔色不良 姿勢を戻し、血圧変化を確認する
強い疲労感 普段より疲れている、活動性低下 軽負荷・中止・再評価を検討する

新人PT・OT・STによくある失敗

現場で多い失敗は、バイタルを「測ったかどうか」で終わらせてしまうことです。血圧、脈拍、SpO2を記録していても、患者さんの表情や呼吸、自覚症状、普段との差が抜けると、安全判断としては不十分です。

特に「正常範囲だから大丈夫」と判断する前に、その人の普段の値、今日の様子、症状、姿勢変化を確認しましょう。リハ前の安全確認は、数値・観察・症状・変化を組み合わせて判断する作業です。

リハ前バイタルチェックでよくある失敗と修正ポイント
よくある失敗 なぜ問題か 修正ポイント
血圧だけ測る 呼吸苦や意識変化を見落とす 顔色・呼吸・自覚症状もセットで確認する
SpO2だけ見る 努力呼吸や呼吸数増加に気づきにくい 呼吸数・呼吸様式・会話のしやすさを見る
普段との差を見ない その人にとっての異常を拾えない 前回値、病棟記録、看護師申し送りを確認する
症状を聞かない 胸部症状やめまいを見落とす 開始前に短く質問する
迷っても相談しない 急変リスクを一人で抱える 判断に迷う時点で看護師・医師へ共有する

記録例・申し送り例

リハ前バイタルチェックの記録では、数値だけでなく、観察所見と判断を残すと伝わりやすくなります。「血圧132/76mmHg、SpO2 96%」だけでは、なぜ実施したのか、何に注意したのかが伝わりにくいからです。

記録には、普段との差、自覚症状、呼吸状態、姿勢変化、実施内容の調整、報告の有無を簡潔に入れます。次の担当者や多職種が読んでも、判断の理由が追える形にしましょう。

リハ前バイタルチェックの記録例
場面 記録例 ポイント
通常実施 開始前BP 132/76mmHg、HR 82/分、SpO2 96%。顔色不良なし、息切れ訴えなし。座位保持で症状変化なく、予定通り介入実施。 数値と観察をセットで残す
軽負荷に変更 開始前SpO2 94%、会話時軽度息切れあり。安静で回復良好。歩行距離を短縮し、休息を挟みながら実施。 変更理由を書く
報告した場面 開始前より顔色不良、冷汗あり。BP 104/62mmHg、HR 108/分。本人より倦怠感強い訴えあり。リハ開始せず看護師へ報告。 中止理由と報告先を書く
姿勢変化で中止 臥位BP 126/70mmHg、端座位後にめまい訴えあり。顔色不良を認めたため臥位へ戻し休息。看護師へ共有。 姿勢変化と対応を残す

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

血圧が高い場合は必ずリハビリを中止しますか?

必ず中止とは限りません。普段の血圧、症状の有無、医師の指示、疾患背景、直前の活動、薬剤の影響を合わせて判断します。ただし、胸部症状、強い頭痛、めまい、意識変化、冷汗などを伴う場合は、開始せずに報告を優先します。

SpO2が低めの患者さんはどう判断しますか?

SpO2の値だけでなく、呼吸数、努力呼吸、会話のしやすさ、チアノーゼ、普段の値、酸素投与条件を合わせて確認します。COPDなどで普段から低めの患者さんでも、いつもより低い、回復が遅い、息切れが強い場合は注意が必要です。

呼吸数は毎回測るべきですか?

全例で厳密に1分測定する運用かどうかは施設方針によります。ただし、息切れ、発熱、感染兆候、心不全、COPD、術後、普段と違う様子がある場合は重要です。SpO2が保たれていても、呼吸数増加や努力呼吸は見落とさないようにします。

数値が正常ならリハビリを実施してよいですか?

数値が正常でも、顔色不良、冷汗、反応低下、強い倦怠感、呼吸の浅さ、胸部症状、めまいがある場合は慎重に判断します。バイタルチェックは正常値判定ではなく、安全に介入できるかを判断するための確認です。

迷ったときは誰に相談すべきですか?

まずは病棟看護師へ共有し、必要に応じて医師へ確認します。リハ職だけで判断を抱え込まず、症状、数値、普段との差、いつから変化したかを簡潔に伝えると相談しやすくなります。

次の一手

リハ前バイタルチェックは、安全管理の入口です。次は、異常に気づいた後に「どこで止めるか」「誰へ報告するか」「記録に何を残すか」を整理しておくと、現場判断が安定します。


参考文献

  • 日本リハビリテーション医学会 診療ガイドライン委員会ほか. リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン. J-STAGE
  • Royal College of Physicians. National Early Warning Score (NEWS) 2: Standardising the assessment of acute-illness severity in the NHS. Updated report of a working party. London: RCP; 2017. RCP
  • Fletcher GF, Ades PA, Kligfield P, et al. Exercise standards for testing and training: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation. 2013;128(8):873-934. doi:10.1161/CIR.0b013e31829b5b44. DOI

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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