エバープラウドの使い方|静止型で褥瘡予防と離床を両立する運用の型
結論:エバープラウドは、静止型の体圧分散マットレスとして、褥瘡予防と離床支援を同時に考えたい場面で使いやすい支持面です。使い方の軸は、製品機能を覚えることではなく、面を選ぶ → 背上げ時のずれを減らす → 48〜72 時間で皮膚と離床を比較するという運用の型を固定することです。
この記事では、エクストラソフト面とソフト面の使い分け、カバー選択、背上げ時の観察、記録例までを PT 視点で整理します。体圧分散マットレス全体の選び方ではなく、エバープラウドを導入した後に「どちらの面を使うか」「何を記録するか」「いつ切り替えるか」を判断するための記事です。
エバープラウドで見るべき機能は 3 つです
エバープラウドは、体圧分散だけでなく、背上げ時のずれ軽減と蒸れ軽減まで含めて評価する支持面です。静止型だから「敷いたら終わり」ではなく、背上げ・端座位・睡眠・皮膚所見を同じ流れで見ます。
特に PT が関わる場合は、仙骨部や踵部の発赤だけでなく、起き上がりや端座位の安定性も合わせて確認します。柔らかさだけで判断すると離床が進みにくくなるため、褥瘡予防と動きやすさのバランスを見ることが重要です。
- 体圧分散: 5 層フォームとリバーシブル構造で、皮膚への当たりを調整する
- ずれ軽減:背上げ時の滑り座り、骨盤後傾、衣類のよれを確認する
- 蒸れ軽減:カバー選択と寝具・室温湿度を合わせて調整する
面の使い分けは「皮膚優先」か「離床優先」で決めます
最初に決めるのは、エクストラソフト面とソフト面のどちらを使うかです。皮膚所見が不安定で、骨突出や疼痛が目立つ場合はエクストラソフト面を優先し、起き上がりや端座位を進めたい場合はソフト面を候補にします。
ただし、柔らかい面が常に正解ではありません。沈み込みが強くなると、寝返り・起き上がり・端座位が崩れることがあります。導入時点で仮決定し、 48〜72 時間後に皮膚と離床の両方で見直す運用が現実的です。
※表は横にスクロールできます。
| 面 | 優先する目的 | 向きやすい場面 | 合わないサイン | 次の調整 |
|---|---|---|---|---|
| エクストラソフト面 | 体圧分散を優先する | 骨突出が目立つ、発赤が残る、疼痛が強い | 沈み込みが強く、起き上がりや端座位が不安定 | ソフト面へ変更し、足部支持と背上げ手順を再確認する |
| ソフト面 | 体圧分散と動きやすさを両立する | 寝返り、起き上がり、端座位、移乗を進めたい | 発赤や圧痕が残る、疼痛が増える | エクストラソフト面へ変更し、体位変換と除圧計画を見直す |
カバーは清拭・通気・ドライを目的で選びます
カバー選択は、清潔管理だけでなく、蒸れや湿潤への対策にも関わります。皮膚が湿った状態では、圧やずれに対する耐性が下がりやすいため、支持面だけでなく寝具・室温・失禁対応も合わせて確認します。
清拭タイプは汚染リスクに対応しやすく、通気タイプは洗浄運用を組みやすい選択肢です。ドライタイプは蒸れが課題になるケースで検討しやすいですが、寝具の重ね過ぎがあると効果を打ち消しやすいため注意します。
| タイプ | 向く場面 | 見たいポイント | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 清拭タイプ | 汚染リスクがあり、清拭消毒を優先したい | 清拭後の乾燥、寝具の重ね方、皮膚湿潤 | 防水性を活かす一方で、蒸れが残る場合は環境調整も行う |
| 通気タイプ | 施設内で洗浄・乾燥の運用を組みたい | 洗浄後の乾燥、保管方法、交換タイミング | 洗浄できることと、皮膚湿潤が改善することは分けて評価する |
| ドライタイプ | 発汗や寝苦しさ、湿潤が目立つ | 湿潤、発赤、寝具、室温湿度、失禁対応 | 寝具の重ね過ぎ、室温湿度、失禁対策も同時に見直す |
背上げでは圧より「ずれ」を優先して観察します
背上げ時は、仙骨部や背部に圧だけでなく、ずれ(せん断)が加わりやすくなります。エバープラウドには背上げ時のずれを軽減する構造がありますが、現場では骨盤位置、足部支持、衣類のよれ、背抜きの有無で結果が変わります。
そのため、背上げ角度だけを記録するのではなく、背上げ前後の姿勢変化まで見ます。特に、滑り座り、骨盤後傾、踵部の圧迫感、仙骨部の発赤がある場合は、面の変更より先に背上げ手順を統一します。
- 背上げ前:骨盤の位置、足部支持、衣類・シーツのよれを整える
- 背上げ中:滑り座り、骨盤後傾、肩甲帯の引き込み、踵部の圧迫を確認する
- 背上げ後:仙骨部・踵部の発赤、圧痕、疼痛、姿勢保持を記録する
- 戻すとき:必要に応じて背抜き、衣類調整、体位修正を行う
導入後は 48〜72 時間で再評価します
導入直後の印象だけで面を固定しないことが重要です。皮膚所見、睡眠、起き上がり、端座位、移乗の変化を 48〜72 時間で比較し、褥瘡予防と離床のどちらに支障が出ているかを判断します。
静止型マットレスは設定項目が少ないため、観察のばらつきがそのまま運用の差になります。導入前、導入直後、再評価時の 3 点を同じ項目で記録すると、面の変更やカバー選択の根拠を共有しやすくなります。

| タイミング | 見る項目 | 判断すること |
|---|---|---|
| 導入前 | 仙骨・踵の発赤、疼痛、湿潤、寝返り、起き上がり、端座位 | 皮膚優先か、離床優先かを仮決定する |
| 導入直後 | 底づき、沈み込み、背上げ時のずれ、端座位の安定 | 面の選択と背上げ手順が合っているかを見る |
| 48〜72 時間後 | 発赤の持続、圧痕、疼痛、睡眠、起き上がり介助量 | 面の継続、切り替え、カバー変更、除圧計画の修正を決める |
記録は皮膚と離床を同じ型で残します
エバープラウドの運用では、皮膚だけ、離床だけの記録に分けない方が判断しやすくなります。発赤が減っても起き上がれなくなった場合、または離床は進んでも仙骨部の発赤が残る場合は、面や背上げ手順の再調整が必要です。
記録は長文にする必要はありません。部位、時間、姿勢、介助量、対応を短く残すと、看護・介護・リハ間で同じ視点を共有できます。
| 観察軸 | 記録する内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 皮膚 | 部位、発赤、圧痕、疼痛、戻り時間 | 仙骨部発赤あり。除圧後 20 分で軽減。疼痛訴えなし。 |
| ずれ | 背上げ角度、滑り座り、衣類のよれ、骨盤後傾 | 背上げ 45° で骨盤後傾と滑り座りあり。足部支持後は軽減。 |
| 離床 | 起き上がり、端座位、移乗、介助量 | 起き上がり中等度介助。端座位は 2 分保持可能。 |
| 睡眠・快適性 | 寝苦しさ、蒸れ、覚醒回数、疼痛 | 夜間覚醒 2 回。背部の蒸れ訴えあり。寝具を 1 枚減らす。 |
| 次の対応 | 面の変更、カバー検討、背上げ手順、再評価日 | ソフト面継続。背上げ前の足部支持を統一し、 72 時間後に再評価。 |
現場の詰まりどころは「面選択」と「背上げ手順」です
現場で詰まりやすいのは、エクストラソフト面を選んだ後に離床が進みにくくなる場面と、背上げ時の滑り座りをマットレスだけの問題として扱ってしまう場面です。まずは 面の使い分け と 背上げ時の観察 に戻り、評価の順番をそろえます。
特に、職員ごとに背上げ前の足部支持や衣類調整が違うと、皮膚所見も離床のしやすさも安定しません。支持面を変える前に、操作手順と記録項目を統一することが先です。
| 起きやすい問題 | 原因 | まず行う対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 起き上がりが重くなる | 沈み込みが強く、体幹を起こしにくい | ソフト面への変更を検討し、端座位の安定性を再評価する | 起き上がり所要時間、介助量、端座位保持 |
| 仙骨部の発赤が残る | 背上げ時のずれ、骨盤後傾、衣類のよれ | 背上げ前の骨盤位置、足部支持、背抜き、衣類調整を統一する | 背上げ角度、時間、発赤の戻り時間 |
| 蒸れが改善しない | 寝具の重ね過ぎ、室温湿度、失禁対応の影響 | 寝具を減らし、ドライタイプや環境調整を検討する | 湿潤、寝具枚数、室温湿度、失禁状況 |
| 転落が心配になる | マットレス厚により相対的に柵が低くなる | ベッド周囲、サイドレール、端座位時の見守りを再確認する | 転落リスク、環境調整、見守り方法 |
評価や用具選択で迷いやすい背景には、相談できる環境や学び方の不足が関係することもあります。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
最初はエクストラソフト面とソフト面のどちらを使いますか?
皮膚所見を優先する場合はエクストラソフト面、起き上がりや端座位を進めたい場合はソフト面を候補にします。ただし、最初の選択で固定せず、 48〜72 時間後に皮膚・疼痛・離床の変化を比較して見直します。
背上げで滑り座りが出る場合は面を変えるべきですか?
すぐに面を変える前に、骨盤位置、足部支持、衣類のよれ、背抜きの有無を確認します。手順をそろえても滑り座りが残る場合は、ソフト面への変更や背上げ角度の調整を検討します。
ドライタイプを使えば蒸れは解決しますか?
ドライタイプは蒸れ対策の選択肢になりますが、寝具の重ね過ぎ、室温湿度、失禁対応が残っていると改善しにくいです。カバーだけで判断せず、環境要因と皮膚所見をセットで確認します。
エバープラウドは離床を進めたい患者にも使えますか?
使えます。ただし、沈み込みが強いと起き上がりや端座位が難しくなる場合があります。離床を重視する場合はソフト面を候補にし、介助量・端座位保持・移乗時の安定性を記録して判断します。
導入後の再評価はいつ行うのがよいですか?
導入直後の確認に加えて、 48〜72 時間後に再評価するのが実務上使いやすいです。発赤の持続、圧痕、疼痛、睡眠、起き上がり介助量を同じ項目で比較すると、面の変更やカバー選択の根拠を共有しやすくなります。
次の一手
参考文献
- パラマウントベッド株式会社. エバープラウドマットレス(製品情報). Link
- パラマウントベッド株式会社. エバープラウドマットレス(ラインアップ). Link
- パラマウントベッド株式会社. エバープラウドマットレス 取扱説明書. PDF
- 公益財団法人テクノエイド協会. エバープラウド(ドライタイプ)TAIS 情報. TAIS
- EPUAP/NPIAP/PPPIA. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 2019. Link
- McInnes E, Jammali-Blasi A, Bell-Syer SEM, Dumville JC, Middleton V, Cullum N. Support surfaces for pressure ulcer prevention. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(9):CD001735. doi:10.1002/14651858.CD001735.pub5 / PubMed
- Kottner J, Black J, Call E, Gefen A, Santamaria N. Microclimate: A critical review in the context of pressure ulcer prevention. Clin Biomech (Bristol). 2018;59:62-70. doi:10.1016/j.clinbiomech.2018.09.010 / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


