- 結論|発熱時は38℃だけで決めず、症状とバイタルを合わせて判断する
- 38℃ならリハビリは中止?|「積極的なリハを行わない」目安として考える
- リハ前に発熱していたら|まず症状・バイタル・経時変化を確認する
- 38℃未満ならリハビリしてよい?|「基準未満」と「安全」は同じではない
- リハ中に発熱や体調変化へ気づいたら|運動を続けながら様子を見ない
- 感染が疑われるとき|PTが原因を決めるのではなく、追加情報をそろえる
- 再開判断|「解熱した」だけではなく全身状態が戻っているかを見る
- 報告・記録|「発熱あり」ではなく判断に必要な情報を残す
- よくある失敗|38℃という数字だけをYES・NO判定に使わない
- よくある質問
- 次の一手|発熱だけでなく、同時に起きている異常から次の記事を選ぶ
- 参考文献
- 著者情報
結論|発熱時は38℃だけで決めず、症状とバイタルを合わせて判断する
リハビリ前に発熱を認めたときは、体温だけで実施可否を決めません。ただし、安静時体温38℃前後は「積極的なリハビリテーションを実施しない」目安として扱われる重要な境界です。38℃未満でも、悪寒、強い倦怠感、呼吸苦、頻呼吸、SpO2低下、血圧低下、頻脈、意識変化などがあれば、予定どおり負荷をかけず再評価・相談します。
この記事では、新人PT向けに「38℃なら中止なのか」「38℃未満なら実施してよいのか」を整理し、リハ前・リハ中・再開時に何を確認するか、医師・看護師へ何を報告するかまで解説します。
先に押さえるポイント:38℃という数値は重要ですが、「37℃台なら実施可」「38℃ならすべてのリハを一律禁止」という意味ではありません。体温と全身状態を組み合わせて判断します。

38℃ならリハビリは中止?|「積極的なリハを行わない」目安として考える
日本リハビリテーション医学会の安全管理に関する基準では、安静時の高体温は、積極的なリハビリテーションを避ける条件の1つとして位置づけられています。したがって、リハ開始前に38℃前後の発熱を認めた場合は、そのまま運動・離床を開始するのではなく、まず全身状態を再評価して医師・看護師へ共有することが基本です。
| 場面 | 考え方 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 安静時38℃前後以上 | 積極的な運動・離床をそのまま開始しない | 症状、HR、BP、SpO2、RR、意識、経時変化、治療方針 |
| 38℃未満 | 体温だけを理由に「実施可」としない | 悪寒、倦怠感、呼吸・循環状態、普段との差 |
| 平熱より明らかに上昇中 | 今後の上昇も考え、予定負荷を再検討する | 前回値、測定時刻、症状の出現時刻、治療状況 |
38℃は単独で患者全体の安全性を保証・否定する値ではありません。リハビリテーション医療の対象者は病態や平熱、循環・呼吸状態、治療内容が異なるため、施設基準や医師指示がある場合はそちらも確認します。
また、資料によって38℃付近の表記には差がみられるため、38.0℃ちょうどを機械的な境界として扱うよりも、38℃前後に達した時点で「積極的に負荷をかけてよい状態か」を再評価すると考える方が実務的です。
リハ前に発熱していたら|まず症状・バイタル・経時変化を確認する
リハ開始前に発熱へ気づいた場合は、感染部位を推定することより先に、現在の全身状態で運動・離床を開始してよいかを確認します。
- 体温を確認する:今回値だけでなく、平熱や前回値からどの程度変化したかを見る
- 本人の症状を確認する:悪寒、倦怠感、呼吸苦、胸部症状、めまい、嘔気、疼痛などを確認する
- バイタルを確認する:HR、BP、SpO2、RR、意識状態を体温と合わせて見る
- 経時変化を確認する:いつから上昇したか、さらに悪化していないかを確認する
- 治療状況を確認する:医師指示、看護記録、検査予定、投薬など当日の方針を確認する
特に、発熱に加えて新たな呼吸苦、SpO2低下、頻呼吸、血圧低下、著しい頻脈、意識状態の変化、強い疲労感などを認める場合は、リハ実施の可否だけを検討する場面ではありません。負荷をかけず、患者の安全を確保して速やかに医療チームへ共有します。
バイタル異常全般の初動については、リハビリ中のバイタル異常|新人PTの初期対応で詳しく整理しています。
38℃未満ならリハビリしてよい?|「基準未満」と「安全」は同じではない
38℃未満だから予定どおり実施してよい、とは判断できません。体温が37℃台でも、普段より明らかに上昇している、悪寒がある、強い倦怠感がある、呼吸数や脈拍が増えているなど、全身状態が変化していることがあります。
| 確認項目 | 見るポイント | 判断へのつなげ方 |
|---|---|---|
| 体温 | 平熱との差、前回値からの上昇 | 単一値ではなく推移を見る |
| 全身症状 | 悪寒、強い倦怠感、食欲低下、嘔気 | 普段との差が大きければ負荷を再検討する |
| 呼吸 | 呼吸苦、RR増加、SpO2低下、咳・痰の変化 | 呼吸状態の悪化を優先して評価する |
| 循環 | 頻脈、血圧低下、めまい、冷汗 | 循環動態が不安定なら実施を見合わせて相談する |
| 意識・反応 | 傾眠、反応低下、普段と違う言動 | 運動を開始せず、速やかに共有する |
つまり、38℃という値は「ここだけ見ればよい基準」ではなく、「積極的に負荷をかけない方向へ判断する重要なサインの1つ」として使います。
リハ中に発熱や体調変化へ気づいたら|運動を続けながら様子を見ない
リハ開始時に問題がなくても、介入中に悪寒、倦怠感、呼吸苦、めまいなどが出現することがあります。その場合は、予定メニューを完遂することより、いったん負荷を止めて状態を確認することを優先します。
- 運動・離床を中断する
- 転倒や転落を防げる姿勢を確保する
- 症状と意識状態を確認する
- 必要なバイタルを再確認する
- 開始前から何が変化したかを整理する
- 医師・看護師へ報告し、その後の対応を確認する
安全管理基準では、リハ中の中止判断として、強い呼吸困難、めまい、嘔気、胸痛、強い疲労感、頻呼吸、意識状態の悪化なども挙げられています。発熱の有無にかかわらず、こうした所見を認めた場合は体温だけに注目しないことが重要です。
感染が疑われるとき|PTが原因を決めるのではなく、追加情報をそろえる
発熱の原因は感染症だけとは限りません。また、感染症であってもPTが感染部位を確定する必要はありません。リハ場面では、患者の変化を捉え、診療につながる情報を医療チームへ返すことが重要です。
症状に応じて、次のような情報を確認します。
- 咳、痰、呼吸苦、SpO2やRRの変化
- 排尿時症状、尿量や尿性状の変化
- 下痢、嘔吐、腹部症状
- 創部やカテーテル周囲の発赤、腫脹、滲出液、疼痛変化
- 食事・水分摂取量の変化
- 悪寒、倦怠感、活動性低下
これらは「すべて確認しなければならない固定セット」ではありません。患者の疾患、デバイス、手術歴、症状から必要な項目を選びます。
CRPやWBCなどの検査値がすでに確認できる場合は、単独値だけでリハ可否を決めず、経時変化や臨床所見と合わせて解釈します。検査値の見方は、CRP・WBCとリハビリ判断|新人PTが次に確認することで整理しています。
再開判断|「解熱した」だけではなく全身状態が戻っているかを見る
発熱後のリハ再開に、すべての患者へ共通する「○時間解熱していれば再開」といった固定ルールを設けることは適切ではありません。体温だけでなく、発熱の原因、症状、バイタル、治療経過、前回中止した理由が改善しているかを確認します。
| 確認すること | 具体例 |
|---|---|
| 体温の推移 | 再上昇していないか、平熱へ近づいているか |
| 症状 | 悪寒、倦怠感、呼吸苦、めまいなどが改善しているか |
| バイタル | HR、BP、SpO2、RR、意識状態が安定しているか |
| 治療状況 | 医師指示や検査・治療方針に変更がないか |
| 前回中止理由 | 中止につながった所見が改善しているか |
再開できると判断した場合も、直前まで発熱や全身状態の変化があった患者では、開始直後から高負荷へ戻すのではなく、反応を確認しながら負荷量を調整します。
報告・記録|「発熱あり」ではなく判断に必要な情報を残す
報告では、体温だけでなく症状、バイタル、経時変化、リハでの対応をまとめると、その後の判断につながりやすくなります。
報告例
「リハ前に体温38.1℃を確認しました。昨日は36℃台で、本日は悪寒と倦怠感があります。HRは普段より上昇していますが、SpO2と血圧は大きな変化ありません。本日の離床は開始せず、今後の対応を確認したいです。」
記録も「発熱のため中止」だけで終えず、判断根拠が後から分かるようにします。
記録例
リハ前、安静時体温38.1℃。前日36℃台。悪寒・倦怠感あり。HR上昇を認めたため本日の運動・離床は開始せず、看護師へ報告。医療チームの方針および体温・症状・バイタル推移を確認後、再開可否を再評価する。
特に重要なのは、何度だったかだけでなく「普段から何が変わったか」「なぜ実施しなかったか」「次に何を確認するか」を残すことです。
よくある失敗|38℃という数字だけをYES・NO判定に使わない
発熱時の安全管理では、体温の数値を覚えるだけでは不十分です。次のような判断を避けます。
| 避けたい判断 | 問題点 | 修正 |
|---|---|---|
| 37℃台だから実施する | 症状やバイタル悪化を見落とす | 平熱との差と全身状態を確認する |
| 38℃ならすべての介入を一律禁止する | 患者の状態や医療上の目的を無視した判断になる | まず積極的負荷を避け、医療チームと対応を確認する |
| 発熱の原因をPTだけで決める | 診断に時間を使い、安全確認が遅れる | 必要な所見をそろえて報告する |
| 解熱したので元の負荷へ戻す | 症状や循環・呼吸状態が回復していない可能性がある | 前回中止理由まで再評価して負荷を決める |
よくある質問
Q1. 38℃なら必ずリハビリを中止しますか?
A. 38℃前後の安静時体温は、積極的なリハビリテーションを行わない重要な目安です。ただし、「38℃ならあらゆる介入を一律禁止」という意味ではありません。まず運動・離床を進めず、症状、バイタル、原因や治療状況を確認し、施設基準や医師指示も踏まえて対応します。
Q2. 37℃台ならリハビリしてもよいですか?
A. 体温だけでは判断できません。平熱からの上昇、悪寒、倦怠感、呼吸苦、HR・BP・SpO2・RR、意識状態などを確認します。38℃未満でも全身状態が悪化していれば、予定どおり負荷をかけず相談します。
Q3. 解熱したらすぐにリハビリを再開できますか?
A. 解熱だけでは決めません。発熱の原因、症状、バイタル、治療経過、前回リハを中止した理由が改善しているかを確認して再開判断につなげます。
Q4. 発熱時にPTは感染源まで評価する必要がありますか?
A. 感染部位を確定することがPTの役割ではありません。咳・痰、排尿症状、消化器症状、創部変化など、患者に応じて診療につながる所見を確認し、体温やバイタルの変化と合わせて医療チームへ共有します。
次の一手|発熱だけでなく、同時に起きている異常から次の記事を選ぶ
発熱時は、体温だけで実施・中止を決めるのではなく、症状・バイタル・経時変化を統合して判断します。新人PTとして安全管理全体の確認順を整理したい場合と、呼吸状態の悪化が目立つ場合では、次に確認する内容が異なります。
- 全体像:新人PTの情報収集・介入前確認
- 呼吸苦・SpO2低下がある:呼吸苦・SpO2低下の初期対応
参考文献
- 日本リハビリテーション医学会 リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン策定委員会 編. リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン 第2版. 東京: 診断と治療社; 2018.
- Sakai T, Jinno T, Hoshino C, Okawa A. Cancellation Criteria of Acute Rehabilitation: Rehabilitation Risk Management. Prog Rehabil Med. 2019;4:20190013. doi:10.2490/prm.20190013. PMID:32789260.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

