陥没呼吸とは?胸骨上・鎖骨上・肋間の見方と原因を解説

臨床手技・プロトコル
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陥没呼吸とは?|吸気時に胸壁の一部が内側へ引き込まれる呼吸

陥没呼吸とは、息を吸うときに胸骨上・鎖骨上・肋間などの胸壁の一部が内側へ引き込まれる呼吸所見です。

呼吸が苦しそうな患者を観察していると、「鎖骨の上がへこんでいる」「肋骨の間が吸気のたびに引き込まれている」という場面があります。このような吸気に一致した陥凹が陥没呼吸です。

重要なのは、胸壁がもともとくぼんで見えることではありません。吸気のたびに内側へ引き込まれる動きがあるかを確認します。

陥没呼吸は、空気を取り込むために通常より強い吸気努力が必要となっていることを示し、呼吸仕事量の増加を考える身体所見の1つです。

ただし、陥没呼吸そのものが病名ではありません。気道狭窄など、呼吸負荷を高めている原因を探す入口として捉えます。

呼吸数・呼吸パターン・胸郭運動など、呼吸の視診全体から確認したい場合は、呼吸評価の基本|ベッドサイド観察と記録の型も参考にしてください。

陥没呼吸はどこを見る?|胸骨上・鎖骨上・肋間を確認する

陥没呼吸を観察するときは、吸気に合わせて胸壁の一部が内側へ引き込まれていないかを見ます。

陥没呼吸で確認する主な部位
部位 見るポイント
胸骨上窩 のどの下、胸骨上部が吸気時に内側へ引き込まれないか
鎖骨上窩 鎖骨の上のくぼみが吸気時に深くならないか
肋間 肋骨と肋骨の間が吸気時に内側へ引き込まれないか
肋骨弓下 下位胸郭の下縁付近が吸気時に引き込まれないか

ポイントは、へこんで見える場所を静止画のように見るのではなく、「吸気と同期して引き込まれるか」を確認することです。

痩せている患者では、安静時から肋間や鎖骨周囲のくぼみが目立つことがあります。そのため、胸壁の形だけで判断せず、呼吸相との関係を観察します。

陥没呼吸はなぜ起こる?|強い吸気努力と胸腔内陰圧が関係する

陥没呼吸は、空気を肺へ取り込むために強い吸気努力が必要となり、吸気時の胸腔内陰圧が大きくなることで生じます。

通常の吸気では、横隔膜などの吸気筋が働いて胸郭を拡張し、肺へ空気を取り込みます。

ところが、気道抵抗が増大するなどして空気が入りにくくなると、換気を維持するためにより強い吸気努力が必要になります。

その際に生じる強い陰圧によって、胸骨上窩や鎖骨上窩、肋間などが内側へ引き込まれて見えることがあります。

そのため、陥没呼吸を見たときは、

「吸気時に引き込まれる」→「強い吸気努力がある」→「呼吸仕事量が増えている可能性がある」

という流れで捉えると理解しやすくなります。

陥没呼吸の原因|気道狭窄など吸気負荷が高まる病態を考える

陥没呼吸を認めた場合は、空気を取り込むための呼吸負荷が増えている背景を考えます。

代表的なのは上気道・下気道の狭窄ですが、陥没呼吸を「気道狭窄だけの所見」と考える必要はありません。重要なのは、患者が強い吸気努力を必要としている理由を探すことです。

陥没呼吸を認めたときに考える主な背景
背景 合わせて見るポイント
下気道狭窄 喘鳴、呼気延長、頻呼吸、呼吸補助筋使用などを確認する
上気道狭窄 stridor、吸気困難、嗄声・発声の変化などを確認する
気道分泌物・異物など 気道への空気流入が妨げられていないかを確認する
その他の強い呼吸負荷 頻呼吸、胸郭運動、呼吸補助筋使用、全身状態を合わせて評価する

とくに上気道狭窄では、陥没呼吸に吸気性のstridorを伴うことがあります。

一方、陥没呼吸だけから気道狭窄の部位や原因を確定することはできません。呼吸音、発声・会話、呼吸数、SpO2、意識状態などを合わせて確認します。

喘鳴やstridorなどの違いは、呼吸音の種類一覧|副雑音をわかりやすく整理で確認できます。

陥没呼吸は子どもだけ?|成人でもみられる

陥没呼吸は小児で目立ちやすい所見ですが、成人でも強い呼吸負荷がある場合には認められます。

乳幼児では成人より胸壁が柔らかいため、吸気時の陰圧による胸壁の引き込みが視認されやすくなります。

そのため、小児の呼吸障害では胸骨上・肋間・肋骨弓下などの陥没が重要な観察所見として用いられます。

成人では、小児ほど軽度の呼吸負荷で明瞭な陥没が出るとは限りません。そのため、成人で新たに目立つ陥没呼吸を認めた場合は、呼吸仕事量が増えている所見として、呼吸・循環・意識状態まで含めて評価することが重要です。

陥没呼吸と努力呼吸は同じ?

陥没呼吸は努力呼吸でみられる身体所見の1つであり、陥没呼吸と努力呼吸は完全に同じ意味ではありません。

努力呼吸は、安静呼吸では目立たない筋活動や身体運動まで動員し、呼吸仕事量が増加している状態を広く捉えた表現です。

そのためベッドサイドでは、陥没呼吸だけでなく次のような所見をまとめて確認します。

  • 胸鎖乳突筋など呼吸補助筋の使用
  • 肩の挙上を伴う呼吸
  • 鼻翼呼吸
  • 陥没呼吸
  • 頻呼吸
  • 呼気延長
  • 会話のしにくさ

「陥没呼吸があるか」だけではなく、「患者がどの程度努力して呼吸しているか」という全体像を見ることが重要です。

陥没呼吸と奇異性呼吸の違い

陥没呼吸と奇異性呼吸は、どちらも胸腹部の異常な動きとして見えますが、観察している現象が異なります。

陥没呼吸と奇異性呼吸の違い
項目 陥没呼吸 奇異性呼吸
主な動き 吸気時に胸壁の一部が局所的に内側へ引き込まれる 胸郭や腹部が通常とは異なる方向・タイミングで動く
見るポイント 胸骨上・鎖骨上・肋間などの局所的な引き込み 胸郭と腹部などの動き方や位相関係
次に考えること 吸気負荷・呼吸仕事量が増えている背景を評価する 胸腹部の協調性、横隔膜機能、胸壁の異常などを含めて評価する

たとえば、吸気のたびに肋間が局所的に引き込まれる場合は陥没呼吸として捉えます。

一方で、吸気時に胸郭と腹部が通常とは異なる方向に動くなど、胸腹部の動き方やタイミングそのものが崩れている場合には奇異性呼吸を考えます。

局所的な「引き込み」を見るのが陥没呼吸、胸腹部の「動き方・タイミング」を見るのが奇異性呼吸と整理すると、ベッドサイドで区別しやすくなります。

陥没する場所だけで重症度を決めない

陥没呼吸を認めても、「どの部位が陥没しているか」だけで呼吸障害の重症度を決めることはできません。

喘息発作などでは、呼吸状態の悪化に伴って胸骨上・鎖骨上から肋間へ陥没が目立つことがあります。一方で、年齢、疾患、胸壁の柔らかさなどによって見え方は異なります。

そのため臨床では、陥没の部位や目立ち方に加えて、次の所見を組み合わせます。

  • 呼吸数
  • 呼吸の深さ
  • 呼吸補助筋の使用
  • 呼吸音
  • SpO2
  • 心拍数
  • 会話が可能か
  • 意識状態
  • 前回からの変化

陥没呼吸は単独の重症度スケールではなく、呼吸窮迫や呼吸仕事量の増大を捉える身体所見の1つとして扱います。

SpO2が保たれていても陥没呼吸があれば安心とは限らない

陥没呼吸が明らかな場合は、SpO2が保たれていることだけを理由に「呼吸状態は問題ない」と判断しません。

SpO2は酸素化を見る重要な指標ですが、患者がどれだけ強い努力をして換気を維持しているかを直接表すものではありません。

とくに気道狭窄では、低酸素血症が目立つ前から、陥没呼吸、呼吸補助筋使用、stridor、頻呼吸などの呼吸窮迫所見がみられることがあります。

したがって、SpO2が保たれていても、次のような所見を伴う場合は呼吸状態を慎重に評価します。

  • 陥没呼吸が新たに出現した、または強くなった
  • stridorを伴う
  • 著明な呼吸補助筋使用がある
  • 会話が途切れる、または話しにくい
  • 呼吸数や呼吸パターンが大きく変化した
  • 意識状態に変化がある

SpO2と呼吸仕事量は分けて観察し、「数字は保たれているが呼吸努力は増えている」という状態を見逃さないことが重要です。

陥没呼吸を見つけたら何を確認する?

陥没呼吸を認めたら、その部位だけを見るのではなく、呼吸相・呼吸仕事量・気道・全身状態を短時間で整理します。

陥没呼吸を見つけたときに、吸気との一致、陥没部位、呼吸仕事量、SpO2や会話・意識など全身状態を確認する流れ
陥没呼吸は、吸気との一致と部位を確認したうえで、呼吸仕事量と全身状態まで合わせて評価します。SpO2が保たれていても、強い呼吸努力があれば安心とは判断しません。

ベッドサイドでは、次の順番で確認すると分かりやすくなります。

  1. 呼吸相:吸気に一致して引き込まれているか
  2. 部位:胸骨上・鎖骨上・肋間・肋骨弓下のどこか
  3. 呼吸仕事量:呼吸補助筋使用、肩呼吸、鼻翼呼吸などを伴うか
  4. 気道・呼吸音:喘鳴、stridor、分泌物音などがないか
  5. 全身状態:RR、SpO2、HR、会話、意識状態に変化がないか
  6. 経時変化:新規出現か、前回より強くなっていないか

とくに、これまでなかった陥没呼吸が新たに出現した場合や、前回より明らかに強くなった場合は、呼吸負荷が増えている可能性を考えます。

陥没呼吸で急いで共有したい所見

陥没呼吸に明らかな全身状態の悪化が加わる場合は、単なる観察所見として経過を見るのではなく、速やかな評価・共有が必要です。

とくに注意したいのは次のような変化です。

  • 強い安静時呼吸困難
  • 著明な呼吸補助筋使用
  • 会話が困難になる
  • stridorを伴う
  • SpO2が低下する、または低下傾向を示す
  • チアノーゼを認める
  • 意識状態が低下する
  • 呼吸が浅くなる、弱くなる、または不規則になる

また、SpO2低下がまだ明らかでなくても、強い陥没呼吸やstridor、会話困難などがあれば安心とは判断しません。

とくに、これまで強く努力して呼吸していた患者の呼吸運動が急に弱くなり、同時に意識状態や換気も悪化している場合は、「呼吸が楽になった」とは判断せず、呼吸筋疲労や呼吸不全の進行も含めて速やかに評価します。

リハ中に陥没呼吸が出現したら?

運動や離床中に新たな陥没呼吸が出現した場合は、負荷をそのまま継続せず、まず運動を中断して呼吸状態を確認します。

安静時にはみられなかった陥没呼吸が活動によって出現したのであれば、その運動負荷に対して呼吸仕事量が大きく増加した可能性があります。

休息を確保したうえで、次の変化を確認します。

  • 休息によって陥没が軽減するか
  • 呼吸数や呼吸パターンが回復するか
  • SpO2・心拍数がどう変化しているか
  • 呼吸補助筋使用が軽減するか
  • 喘鳴・stridorなどを伴わないか
  • 会話や意識状態に変化がないか

明らかな呼吸窮迫が続く場合や全身状態の変化を伴う場合は、運動再開を優先せず、医師・看護師へ共有して原因評価につなげます。

陥没呼吸は「部位+呼吸相+併存所見」で記録する

記録では「陥没呼吸あり」だけで終わらせず、どこが・いつ・どのような呼吸状態で陥没していたかを残します。

少なくとも、次の3つを組み合わせると再評価しやすくなります。

  • 部位:胸骨上、鎖骨上、肋間など
  • 呼吸相:吸気時に認める
  • 併存所見:RR、SpO2、呼吸補助筋使用、呼吸音など

たとえば、

「安静時、吸気に一致して胸骨上窩・肋間の陥没を認める。RR増加、胸鎖乳突筋使用あり」

のように記録すると、次回評価で部位や呼吸仕事量がどう変化したかを比較しやすくなります。

新規出現なのか、以前からみられていたのかも合わせて残しておくと、チーム内で変化を共有しやすくなります。

陥没呼吸で避けたい3つの思い込み

陥没呼吸で避けたい判断
思い込み 実際の考え方
胸がへこんでいれば陥没呼吸 吸気に一致して内側へ引き込まれるかを確認する
陥没呼吸=特定の疾患 病名ではなく、呼吸負荷増加の背景を探すための身体所見
SpO2が正常なら問題ない 酸素化だけでなく、陥没呼吸・呼吸補助筋・会話・意識など呼吸仕事量も見る

陥没呼吸のよくある質問

陥没呼吸とは簡単にいうと何ですか?

息を吸うときに、胸骨上・鎖骨上・肋間などが内側へ引き込まれる呼吸です。強い吸気努力や呼吸仕事量の増加を考える身体所見の1つです。

陥没呼吸はどこを見れば分かりますか?

胸骨上窩、鎖骨上窩、肋間、肋骨弓下などを観察します。単にくぼんでいるかではなく、吸気に一致して内側へ引き込まれるかを見ることが重要です。

陥没呼吸は喘息だけで起こりますか?

いいえ。喘息などの下気道狭窄でみられますが、上気道狭窄など、強い吸気努力が必要となる他の病態でも認められます。陥没呼吸だけで原因疾患を決めることはできません。

陥没呼吸は努力呼吸と同じですか?

完全に同じではありません。陥没呼吸は努力呼吸でみられる身体所見の1つです。努力呼吸では、呼吸補助筋使用、肩呼吸、鼻翼呼吸など他の所見も合わせて確認します。

陥没呼吸と奇異性呼吸は何が違いますか?

陥没呼吸は、吸気時に胸壁の一部が局所的に内側へ引き込まれる所見です。奇異性呼吸では、胸郭と腹部などの動き方やタイミングが通常と異なります。

SpO2が正常なら陥没呼吸があっても大丈夫ですか?

SpO2が保たれていることだけでは判断できません。SpO2は酸素化の指標であり、患者がどの程度の努力で呼吸を維持しているかを直接示すものではありません。陥没呼吸が明らかな場合は、呼吸数、呼吸補助筋、呼吸音、会話、意識状態などを合わせて評価します。

成人でも陥没呼吸はありますか?

あります。小児では胸壁が柔らかいため目立ちやすいですが、成人でも強い呼吸負荷がある場合には胸骨上や肋間などの陥没を認めることがあります。

まとめ|陥没呼吸は「吸気・部位・呼吸仕事量・全身状態」で見る

陥没呼吸は、吸気時に胸骨上・鎖骨上・肋間などの胸壁の一部が内側へ引き込まれる呼吸所見です。

最も重要なのは「胸がへこんでいるか」ではなく、吸気に一致して引き込まれているかを見ることです。

陥没呼吸は強い吸気努力や呼吸仕事量の増加を考える所見ですが、それ自体が病名や重症度分類ではありません。気道狭窄を含め、なぜ強い呼吸努力が必要になっているのかを考えます。

また、SpO2が保たれていても、陥没呼吸やstridor、著明な呼吸補助筋使用などがあれば安心とは判断できません。酸素化と呼吸仕事量を分けて見ることが重要です。

臨床では、吸気に一致するか → どこが陥没するか → 呼吸補助筋使用などを伴うか → 喘鳴・stridorがないか → RR・SpO2・会話・意識状態はどうか → 前回より悪化していないかの順で整理すると判断しやすくなります。

参考文献

  1. 独立行政法人環境再生保全機構. 陥没呼吸. ぜん息などの情報館.
  2. 独立行政法人環境再生保全機構. 発作時の対応. 小児ぜん息基礎知識.
  3. Sunder RA, Haile DT, Farrell PT, Sharma A. Coping with airway emergencies: Get, Set, Go! Indian J Anaesth. 2020;64(11):945-952.
  4. Cherry JD. Infections of the Upper Respiratory Tract. In: Feigin and Cherry’s Textbook of Pediatric Infectious Diseases. Elsevier.
  5. MSDマニュアル プロフェッショナル版. 呼吸困難の評価. MSD.