呼吸音の種類一覧|副雑音をわかりやすく整理【聴診ポイントも解説】

評価
記事内に広告が含まれています。

呼吸音は大きく2種類に分けて考える

呼吸音を評価するときは、まず正常呼吸音副雑音に分けて考えると整理しやすくなります。

正常呼吸音は、空気が気道や肺に出入りするときに聞こえる基本的な音です。一方、副雑音は、本来の呼吸音に加えて聞こえる異常音のことで、気道狭窄、分泌物、肺胞や間質の変化、胸膜の摩擦などを考えるきっかけになります。

呼吸音の評価では、音の名前を暗記するだけでなく、次のような視点で聞くことが大切です。

  • 吸気で聞こえるか、呼気で聞こえるか
  • 連続音か、断続音か
  • 高い音か、低い音か
  • 左右差があるか
  • 咳で変化するか
  • SpO2や息切れと一致しているか

この記事では、呼吸音の種類、副雑音の分類、crackles・wheezes・rhonchiの違い、臨床での聴診ポイントを整理します。

正常呼吸音の種類

正常呼吸音は、聴診部位によって聞こえ方が異なります。

代表的には、気管支呼吸音、気管支肺胞呼吸音、肺胞呼吸音に分けて考えます。

正常呼吸音の種類
種類 主な聴取部位 特徴
気管支呼吸音 気管周囲 高めで強い音。吸気と呼気の両方がはっきり聞こえやすい
気管支肺胞呼吸音 胸骨周囲、肩甲骨間など 肺胞呼吸音と気管支呼吸音の中間のような音
肺胞呼吸音 末梢肺野 柔らかく低めの音。吸気で聞こえやすく、呼気は弱い

正常呼吸音を知っておくと、「いつもより弱い」「左右差がある」「本来その部位で聞こえにくい音が聞こえる」といった変化に気づきやすくなります。

副雑音とは?

副雑音とは、正常な呼吸音に加えて聞こえる異常な音です。

以前は「ラ音」と呼ばれることも多くありましたが、現在は音の特徴に合わせて、crackles、wheezes、rhonchi、stridor、胸膜摩擦音などに分けて表現されることが多いです。

副雑音の種類を3分類で整理した図。crackles、wheezes/rhonchi、pleural friction rubの特徴を比較している。
副雑音の大まかな分類
分類 代表的な音 考え方
断続性副雑音 fine crackles、coarse crackles プツプツ、パリパリなど短く断続する音
連続性副雑音 wheezes、rhonchi ヒュー、グーなど連続して聞こえる音
上気道狭窄音 stridor 上気道狭窄を疑う強い吸気性の音
胸膜由来の音 pleural friction rub 胸膜がこすれるような音

副雑音は、音の名前だけで疾患を決めるものではありません。音のタイミング、部位、左右差、咳での変化、バイタルサイン、画像所見などを合わせて評価します。

cracklesとは?断続性副雑音の見方

cracklesは、短く断続的に聞こえる副雑音です。

日本語では断続性ラ音と呼ばれることがあります。細かい音のfine cracklesと、粗い音のcoarse cracklesに分けて考えます。

fine cracklesとcoarse cracklesの違い
種類 音の特徴 考えやすい状態
fine crackles 細かく高めのパリパリ音 間質性肺炎、肺線維症、心不全など
coarse crackles 粗く低めのブツブツ音 分泌物、肺炎、気管支拡張症など

fine cracklesは、吸気の終わりに聞こえやすいことがあります。間質性肺疾患では、マジックテープをはがすような細かい音として表現されることもあります。

coarse cracklesは、気道内の分泌物や液体の影響で聞こえることがあります。咳や排痰で変化する場合もあるため、咳嗽前後で音が変わるかを確認します。

wheezesとrhonchiの違い

wheezesとrhonchiは、どちらも連続性の副雑音です。

どちらも気道の狭窄や分泌物が関係しますが、音の高さや考えやすい病態が少し異なります。

wheezesとrhonchiの違い
種類 音の特徴 考えやすい状態
wheezes 高めのヒュー、ピーピー音 気管支喘息、COPD、気道狭窄など
rhonchi 低めのグー、ゴロゴロ音 分泌物貯留、太い気道の狭窄など

wheezesは、特に呼気で聞こえやすいことがあります。気道が狭くなり、空気が通るときに笛のような音が出るイメージです。

rhonchiは、太い気道に分泌物があるときに聞こえることがあります。咳や排痰で変化することがあるため、音が固定しているのか、咳で変わるのかを確認します。

閉塞性換気障害の基本は、閉塞性換気障害の評価方法でも整理しています。

stridorは上気道狭窄を疑う音

stridorは、上気道の狭窄で聞こえることがある高調な音です。

特に吸気時に目立つ場合があり、気道狭窄が強いと緊急性が高いことがあります。

stridorで確認したいポイント
確認項目 見ること
吸気時に強いか 上気道狭窄を疑う手がかりになる
努力呼吸があるか 呼吸補助筋使用、陥没呼吸などを確認する
SpO2低下があるか 酸素化の悪化を確認する
声の変化があるか 嗄声、発声困難、嚥下困難などを確認する

stridorが疑われる場合は、通常の副雑音として流さず、気道確保や医師への報告を含めて早めに対応を考えます。

胸膜摩擦音とは?

胸膜摩擦音は、胸膜同士がこすれることで聞こえる音です。

ザラザラ、ギシギシと表現されることがあり、吸気と呼気の両方で聞こえる場合があります。

胸膜摩擦音の特徴
特徴 考え方
こすれるような音 胸膜由来の音を疑う
吸気・呼気の両方で聞こえることがある 呼吸運動に合わせて出る
局所的に聞こえることがある 左右差や部位を確認する
胸痛を伴うことがある 症状と合わせて確認する

胸膜摩擦音は、肺の中の空気の流れというより、胸膜のこすれに関連する音として考えます。

呼吸音から考えやすい疾患

呼吸音だけで病名を決めることはできませんが、どのような疾患を考えるかの手がかりになります。

副雑音と考えやすい疾患
聞こえる音 考えやすい状態 追加で確認したいこと
fine crackles 間質性肺炎、肺線維症、心不全など 労作時SpO2低下、画像所見、息切れ
coarse crackles 肺炎、分泌物貯留、気管支拡張症など 痰、発熱、咳での変化
wheezes 気管支喘息、COPD、気道狭窄など 呼気延長、喘鳴、吸入反応
rhonchi 太い気道の分泌物、狭窄など 咳で変化するか、喀痰量
stridor 上気道狭窄 努力呼吸、SpO2、緊急性
胸膜摩擦音 胸膜炎など 胸痛、部位、呼吸時痛

呼吸音は、画像検査や血液検査の代わりになるものではありません。しかし、患者さんの状態変化を早く拾ううえで重要な観察ポイントになります。

呼吸音を評価するときのポイント

呼吸音を聴くときは、音の名前だけでなく、聞こえ方の条件を整理します。

  • 左右差があるか
  • 前胸部・側胸部・背部のどこで聞こえるか
  • 吸気と呼気のどちらで強いか
  • 連続音か断続音か
  • 高い音か低い音か
  • 咳で変化するか
  • 体位で変化するか
  • SpO2や呼吸数と一致するか
聴診時に整理したい観察ポイント
観察ポイント 臨床での意味
左右差 無気肺、気胸、片側性病変などを考える手がかりになる
吸気・呼気のタイミング crackles、wheezes、stridorなどの整理に役立つ
咳での変化 分泌物の影響かどうかを考えやすい
SpO2との関係 音だけでなく酸素化の変化を確認できる
体位変換での変化 分泌物移動や換気の変化を考えやすい

特にリハビリ場面では、聴診所見を「運動中の息切れ」「SpO2低下」「排痰状況」「体位変換での変化」とつなげて考えると使いやすくなります。

リハビリ場面での見方

リハビリ場面では、呼吸音を診断目的だけでなく、介入前後の変化を確認する目的でも使います。

例えば、排痰前後、体位変換前後、歩行前後で呼吸音がどう変化するかを見ることで、分泌物の影響や負荷量の調整に役立ちます。

リハビリ場面での呼吸音の使い方
場面 確認すること 考え方
介入前 副雑音、左右差、SpO2 その日の呼吸状態を確認する
排痰前後 coarse cracklesやrhonchiの変化 分泌物の影響を考える
体位変換後 音の部位や強さの変化 換気や分泌物移動を確認する
歩行後 wheezes、息切れ、SpO2 運動負荷への反応を見る

呼吸ケアや排痰手技の考え方は、3学会合同呼吸療法認定士の勉強ルートを学ぶうえでも重要です。

報告・記録で使いやすい表現

呼吸音を報告するときは、「変な音がする」だけではなく、部位、タイミング、音の種類、変化をできるだけ具体的に伝えます。

呼吸音の報告例
情報 記録・報告例
部位 右背側下肺野で聴取
タイミング 吸気終末に目立つ
音の種類 fine crackles様の副雑音あり
変化 咳嗽後も大きな変化なし
関連所見 歩行後にSpO2低下と息切れあり

報告では、断定しすぎないことも大切です。迷う場合は、「〇〇様」「〇〇を疑う所見」として、症状やバイタルサインと一緒に共有します。

呼吸音でよくある誤解

呼吸音を評価するときは、次のような誤解に注意します。

呼吸音でよくある誤解
誤解 実際の考え方
副雑音だけで病名が決まる 症状、画像、血液検査、SpO2などと合わせて判断する
cracklesはすべて肺炎 間質性肺炎、心不全、分泌物など複数の原因がある
wheezesがあれば必ず喘息 COPDや気道狭窄でも聞こえることがある
咳で変化しない音は問題ない 咳で変化しない副雑音にも注意が必要
音が聞こえなければ安全 呼吸音減弱や左右差も重要な所見になる

呼吸音は、名前を覚えるだけでは臨床で使いにくいです。音の種類、聴取部位、タイミング、症状との関係をセットで考えることが重要です。

まとめ

呼吸音は、正常呼吸音と副雑音に分けて考えると整理しやすくなります。

  • 正常呼吸音には、気管支呼吸音、気管支肺胞呼吸音、肺胞呼吸音がある
  • 副雑音には、crackles、wheezes、rhonchi、stridor、胸膜摩擦音などがある
  • fine cracklesは細かい断続音、coarse cracklesは粗い断続音として整理する
  • wheezesは高めの連続音、rhonchiは低めの連続音として考える
  • stridorは上気道狭窄を疑うため注意が必要
  • 呼吸音は、左右差、吸気・呼気、咳での変化、SpO2と合わせて評価する

呼吸音を聴くときは、音の名前を当てることだけが目的ではありません。

どこで、いつ、どのように聞こえ、患者さんの症状やバイタルサインとどうつながるかを整理することで、呼吸評価として臨床に活かしやすくなります。

よくある質問

呼吸音の種類は大きく何に分けられますか?

大きくは正常呼吸音と副雑音に分けて考えます。正常呼吸音には気管支呼吸音、気管支肺胞呼吸音、肺胞呼吸音があり、副雑音にはcrackles、wheezes、rhonchi、stridor、胸膜摩擦音などがあります。

fine cracklesとcoarse cracklesの違いは何ですか?

fine cracklesは細かく高めのパリパリした断続音で、間質性肺炎や肺線維症などで聞かれることがあります。coarse cracklesは粗く低めのブツブツした断続音で、分泌物や肺炎などで聞かれることがあります。

wheezesとrhonchiの違いは何ですか?

wheezesは高めのヒュー、ピーピーという連続音で、気管支喘息やCOPDなどで聞かれることがあります。rhonchiは低めのグー、ゴロゴロという連続音で、太い気道の分泌物などが関係することがあります。

副雑音があれば肺炎ですか?

副雑音があるだけで肺炎とは限りません。肺炎、間質性肺炎、心不全、COPD、喘息、分泌物貯留など複数の原因が考えられます。発熱、痰、SpO2、画像所見などと合わせて判断します。

リハビリ中に呼吸音を見る意味はありますか?

あります。リハビリ前後で副雑音、左右差、SpO2、息切れ、排痰状況を確認することで、その日の呼吸状態や負荷量調整の参考になります。

参考文献

  1. Bohadana A, Izbicki G, Kraman SS. Fundamentals of lung auscultation. New England Journal of Medicine. 2014.
  2. Sovijärvi ARA, Dalmasso F, Vanderschoot J, et al. Definition of terms for applications of respiratory sounds. European Respiratory Review. 2000.
  3. 日本呼吸器学会. 呼吸器診療に関する各種診療ガイドライン.
  4. Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of COPD.