SARA / ICARS / BARS の選び方【比較・使い分け】(この記事の結論)
結論、日常臨床で「短時間に重症度を追う」なら SARA 、症状を細かく分解して「研究・詳細評価」に寄せるなら ICARS 、とにかく短く「主要ドメインだけ押さえる」なら BARS が向きます。迷ったら、まず SARA を標準にして、必要なときだけ ICARS / BARS に寄せる運用が続きやすいです。
大事なのは「どれが優秀か」ではなく、同じ条件・同じ手順で繰り返せるかです。スケールが変わると比較が難しくなるため、施設内の標準(主スケール)を 1 つ決めて、例外だけルール化するとデータが生きます。
まず押さえる:3 つの立ち位置(短い/標準/詳細)が違う
SARA は、失調の重症度を 8 項目・ 0–40 点で評価する尺度です。項目数が少なく、外来フォローや病棟の経過追跡で「回しやすい」のが強みになります。合計点だけでなく、どの項目が悪いか(歩行、立位、上肢協調、構音など)を残すと介入に直結します。
ICARS は、姿勢・歩行、四肢運動、構音、眼球運動などをより細かく分解し、 19 項目・ 0–100 点で評価します。内訳が豊富で「何がどれだけ悪いか」を説明しやすい一方、忙しい現場では運用が重くなりがちです。
BARS は、主要な運動ドメイン(例:歩行、上肢、下肢、構音、眼球運動)に絞り、 5 テスト・ 0–30 点で短時間に重症度を把握する発想の尺度です。専門外来や一般外来でも扱いやすい反面、細かな変化の「どこが伸びたか」を深掘りしたいときは SARA / ICARS の方が整理しやすい場面があります。
SARA / ICARS / BARS の違い(比較表)
| 比較軸 | SARA | ICARS | BARS | 使い分けの目安 |
|---|---|---|---|---|
| 項目数 | 8 項目 | 19 項目 | 5 テスト | 忙しい現場ほど「少ない方」が続く |
| 得点範囲 | 0–40(高いほど重い) | 0–100(高いほど重い) | 0–30(高いほど重い) | 点数の単純比較は不可(別スケール) |
| 強み | 標準化しやすい/追跡しやすい | 内訳が豊富/詳細に分解できる | 短時間/主要ドメインを押さえる | 標準= SARA、詳細= ICARS、最短= BARS |
| 弱点 | 合計点だけだと介入に落ちにくい | 運用が重い/継続が難しい | 細かな要因分析はしにくい | 「続かない尺度」はデータが死ぬ |
| 向く場面 | 外来フォロー/病棟の定期再評価 | 研究/詳細評価/症状の内訳説明 | 短時間スクリーニング/一般外来 | 目的と頻度で先に決める |
選び方の結論:目的 × 運用コストで決める(3 ステップ)
使い分けは、①目的 ②頻度 ③説明相手の 3 つで決めるとブレません。先に「この患者で何を決めたいか」を言語化すると、尺度選びが速くなります。
- 目的:経過を追う(標準化)= SARA /詳細に分解する(研究・精査)= ICARS /短時間で要点を押さえる= BARS
- 頻度:毎週〜隔週で回すなら SARA /たまに深掘りするなら ICARS /毎回短く取りたいなら BARS
- 説明相手:チーム共有は SARA の内訳が便利/専門的な説明や論文化は ICARS /時間がない場面は BARS
運用のコツ:点数より「内訳」と「条件固定」で差がつく
尺度選び以上に効くのが、条件固定と内訳メモです。特に歩行や立位は、その日の疲労・靴・補助具・見守り条件で揺れやすいので、再評価の比較ができる条件を先に決めます。
記録の型(短文テンプレ)
- SARA :「 SARA ○/ 40。悪化は歩行・立位(体幹)優位。上肢協調は軽度。」
- ICARS :「 ICARS ○/ 100。姿勢・歩行 ○、四肢運動 ○、構音 ○、眼球運動 ○。」
- BARS :「 BARS ○/ 30。主因は歩行と上肢協調。構音・眼球は軽度。」
現場の詰まりどころ:よくある失敗と修正
| 詰まりどころ | NG | OK | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| 合計点だけ見る | 「点が上がった/下がった」で終了 | 内訳で “どこが変化” したかを残す | 「歩行が悪化、上肢は横ばい」 |
| 尺度を頻繁に変える | その場の気分で SARA と ICARS を混在 | 主スケールを決め、例外だけルール化 | 「普段は SARA、精査時のみ ICARS」 |
| 条件が毎回違う | 靴・補助具・見守りが毎回バラバラ | 条件固定、変更時は明記して比較を分ける | 「杖使用に変更、点数比較は注意」 |
| 運用が続かない | ICARS を毎回フルで狙い中断 | 普段は SARA /時間がない日は BARS | 「外来は BARS、月 1 で SARA」 |
ケースで理解:この状況ならどれを選ぶ?
ケース 1:外来で進行を追いたい(毎回短時間)
まず SARA を主にして、合計点+内訳(歩行・立位・上肢協調など)を固定運用します。変化が出たときに「どこが落ちたか」が見えるため、生活指導や訓練課題の修正が速くなります。
ケース 2:研究やカンファで “何が悪いか” を細かく説明したい
内訳の説得力が必要なら ICARS が役立ちます。姿勢・歩行、四肢運動、構音、眼球運動のどこが主因かを、サブスコアとして提示できるのが強みです。
ケース 3:とにかく時間がないが、要点は押さえたい
短時間で主要ドメインを押さえるなら BARS が現実的です。詳細な要因分析が必要になったタイミングで SARA / ICARS に切り替える、という運用が無理なく回ります。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 迷ったら結局どれを標準にすればいい?
A. 迷ったら、まずは SARA を標準にするのがおすすめです。回しやすく、内訳が介入に落ちやすいからです。時間がない日は BARS 、精査や研究は ICARS 、と例外を決めておくと継続しやすくなります。
Q2. 点数が同じでも “見た目” が違うことがあるのはなぜ?
A. 合計点は同じでも、内訳(歩行優位、上肢優位、構音優位など)が違えば臨床像は変わります。点数だけでなく、どの項目が悪いかを短文で残すとズレが減ります。
Q3. SARA だけで十分? ICARS を取るべきタイミングは?
A. 普段は SARA で十分なことが多いです。 ICARS を取るのは、主因を細かく分解して説明したい(研究、専門外来、重症例の精査)ときや、介入方針の再設計で「どこが詰まっているか」を深掘りしたいときが目安です。
Q4. BARS を使うときの注意点は?
A. 短いのが最大の利点なので、条件固定と主要ドメインのメモを徹底します。詳細な要因分析が必要になったら、 SARA / ICARS に寄せて “内訳で説明できる形” に戻すのが安全です。
おわりに
失調評価は、目的を決める→短時間で標準化(主スケール)→内訳を短文で記録→同条件で再評価のリズムで回すと、点数が「臨床判断」に変わります。面談準備チェックと職場評価シート( A4 )も使うと転職・見学の整理が一気に進むので、必要なら マイナビコメディカルのまとめ(ダウンロード) も活用してください。
参考文献
- Schmitz-Hübsch T, Tezenas du Montcel S, Baliko L, et al. Scale for the Assessment and Rating of Ataxia: Development of a new clinical scale. Neurology. 2006;66(11):1717-1720. doi:10.1212/01.wnl.0000219042.60538.92 / PubMed
- Trouillas P, Takayanagi T, Hallett M, et al. International Cooperative Ataxia Rating Scale for pharmacological assessment of the cerebellar syndrome. J Neurol Sci. 1997;145(2):205-211. doi:10.1016/S0022-510X(96)00231-6 / PubMed
- Schmahmann JD, Gardner R, MacMore J, Vangel MG. Development of a Brief Ataxia Rating Scale (BARS) based on a modified form of the ICARS. Mov Disord. 2009;24(12):1820-1828. doi:10.1002/mds.22681 / PubMed / PMC
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

