サルコペニア肥満2026|診断基準・握力・筋肉量・肥満判定

臨床手技・プロトコル
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サルコペニア肥満2026は「低握力+低筋肉量+肥満」で判定します

サルコペニア肥満は、筋力・筋肉量の低下と過剰な脂肪蓄積が併存する状態です。2026年9月14日に公表されたJWGSO 2026では、日本のサルコペニア肥満診断アルゴリズムが改訂されました。従来の年齢制限が撤廃され、5回立ち上がりテストは診断要件から外れています。

現在の判定では、肥満のスクリーニングを行ったうえで、握力、BMIで補正した四肢骨格筋量、体脂肪率または内臓脂肪面積を確認します。この記事では、PT・OT・STなどの医療従事者向けに、2026年のカットオフ値、判定の流れ、症例での計算方法、臨床記録まで整理します。

結論からいうと、肥満のスクリーニング条件を満たし、低握力・低筋肉量・肥満の3要件がそろうかが重要です。5回立ち上がりテストや歩行速度は、診断を確定するためではなく、身体機能や介入効果を評価するために使います。

JWGSO 2026の診断基準とカットオフ値

JWGSO 2026の診断は、スクリーニングと詳細評価の2段階で整理できます。肥満のスクリーニングは必須ですが、サルコペニアのスクリーニングは推奨項目です。最終的には筋力・筋肉量・脂肪量を組み合わせて判定します。

サルコペニア肥満2026の判定フロー(JWGSO 2026)
サルコペニア肥満2026の判定フロー(JWGSO 2026)

診断までの4ステップ

  1. 肥満をスクリーニングする:腹囲またはBMIで対象者を抽出する。
  2. 筋力を評価する:年齢・性別に対応した握力カットオフを確認する。
  3. 筋肉量を評価する:DXAまたはBIAで四肢骨格筋量(ASM)を測定し、ASM/BMIを算出する。
  4. 肥満を確認する:内臓脂肪面積または体脂肪率で肥満の診断要件を確認する。

サルコペニアのスクリーニングには、下腿周囲長、SARC-F、SARC-CalF、指輪っかテスト、臨床症状なども利用できます。ただし、これらの結果だけで確定診断は行いません。

握力・四肢骨格筋量のカットオフ値

低筋力は握力で、低筋肉量はASM/BMIで判定します。50〜64歳と65歳以上では基準が異なり、DXAとBIAも別のカットオフ値を使用します。

JWGSO 2026の握力・ASM/BMIカットオフ値
年齢・性別 握力 DXA:ASM/BMI BIA:ASM/BMI
50〜64歳・男性 34kg未満 0.80未満 0.90未満
50〜64歳・女性 20kg未満 0.55未満 0.63未満
65歳以上・男性 28kg未満 0.73未満 0.83未満
65歳以上・女性 18kg未満 0.52未満 0.57未満

※ASM/BMIは、四肢骨格筋量(kg)をBMIで除した指標です。ASM/身長²とは異なります。表の筋肉量カットオフは原著の表記に沿って示しています。

50歳未満では十分に検証された基準がありません。JWGSO 2026は50〜64歳の握力基準を暫定的に適用する可能性に言及していますが、正式に検証された年齢別基準として扱わないよう注意が必要です。

肥満のスクリーニングと診断要件

JWGSO 2026では、BMIが高いという理由だけでサルコペニア肥満を確定しません。腹囲またはBMIによるスクリーニングに加え、体脂肪率または内臓脂肪面積による確認が必要です。

サルコペニア肥満における肥満評価
段階 評価項目 カットオフ値
スクリーニング 腹囲 男性85cm以上/女性90cm以上
BMI 25kg/m²以上
診断の確認 内臓脂肪面積 100cm²以上
体脂肪率 男性20%以上/女性30%以上

スクリーニングでは腹囲・BMIのいずれかを満たせば対象となり、肥満の診断確認では内臓脂肪面積・体脂肪率のいずれかを満たすかを確認します。筋力・筋肉量の低下と肥満の診断要件がそろった場合に、サルコペニア肥満の判定へ進みます。

ASM/BMIの計算方法と78歳女性の判定例

臨床で間違えやすいのが、筋肉量を補正する方法です。一般的なサルコペニア評価ではASM/身長²も使用しますが、JWGSO 2026のサルコペニア肥満診断ではASM/BMIを採用しています。

ASM/BMIの計算式

ASM/BMI = 四肢骨格筋量(kg)÷ BMI(kg/m²)

例えば、ASMが13.8kg、BMIが26.0の場合は、13.8÷26.0=約0.531となります。測定機器が表示するSMI(ASM/身長²)を、そのままASM/BMIの基準値と比較しないようにします。

架空症例:78歳女性

以下は診断手順を説明するための架空症例です。実際の患者データではありません。

78歳女性のサルコペニア肥満判定例
評価項目 測定結果 判定
BMI 26.0kg/m² 肥満スクリーニング該当
握力 16.5kg 18kg未満:低筋力
BIAによるASM 13.8kg ASM/BMI=0.531
ASM/BMI 0.531 0.57未満:低筋肉量
体脂肪率 34% 30%以上:肥満要件に該当

この症例では、肥満のスクリーニング条件を満たし、低握力、低筋肉量、肥満の3要件もそろっています。測定条件が適切であれば、JWGSO 2026のサルコペニア肥満の診断要件を満たすと判断できます。

また、78歳は旧基準で設定されていた年齢範囲の外でしたが、2026年の改訂で年齢制限が撤廃されました。ただし、超高齢者では診断基準の妥当性に関する検証が今後も必要であり、個別の臨床判断が欠かせません。

Stage I・Stage IIの違い

サルコペニア肥満の診断要件を満たした後は、関連する合併症・障害の有無を確認します。

  • Stage I:低筋力・低筋肉量・肥満の要件を満たし、関連する臨床的合併症が認められない状態。
  • Stage II:上記に加え、代謝性疾患、身体障害、心血管疾患、呼吸器疾患などの関連する合併症を伴う状態。

症例の数値だけでStage IIと決めることはできません。関連する疾患や身体障害を確認し、チームで病態との関係を検討します。

2024年基準から2026年基準への変更点

JWGSO 2026は、2024年に公表された日本のサルコペニア肥満診断基準を、AWGS 2025の考え方に合わせて更新したものです。

  1. 年齢制限の撤廃:従来の40歳以上75歳未満という対象制限を廃止しました。ただし、若年成人や超高齢者での適用には検証上の課題が残ります。
  2. 5回立ち上がりテストの除外:身体機能検査は診断要件ではなく、予後・活動能力・介入効果を評価する指標として位置づけられています。
  3. ASM/BMIカットオフの更新:AWGS 2025に対応した年齢別・性別・測定法別の基準が採用されました。

一般的なサルコペニアの診断基準とサルコペニア肥満の診断基準は目的が異なります。サルコペニア肥満では、肥満の評価を加えたうえで、低筋力・低筋肉量・肥満の組み合わせを確認する点が重要です。

病棟で測定するときの注意点

評価では、カットオフ値を確認するだけでなく、数値を比較できる測定条件をそろえることが重要です。特にBIAによる推定筋肉量や体脂肪率は、水分状態などの影響を受けます。

握力は測定条件をそろえる

握力測定では、握力計の種類、姿勢、測定側、試行回数、採用値を記録します。疼痛、麻痺、関節可動域制限、指示理解の問題がある場合は、数値だけで全身の筋力低下を判断しないようにします。

BIAは浮腫・水分変動に注意する

BIAでは、浮腫、脱水、腹水、透析、急激な体液変動などにより身体組成の推定値が影響を受ける可能性があります。

特に療養病棟では、利尿薬の調整や全身状態の変化によって水分量が変動する症例もあります。測定時の体液状態を記録し、数値が前回と大きく異なる場合は、実際の筋量変化か測定条件の影響かを確認します。

また、BIA機器の表示項目がASMなのか、全身骨格筋量なのか、SMIなのかを確認してください。指標の取り違えは判定ミスにつながります。

筋肉量が測定できない場合

DXA・BIAによるASMが確認できない場合、JWGSO 2026の確定診断要件をすべて評価したことにはなりません。

その場合は「肥満スクリーニング該当・握力低下あり・筋肉量未評価」のように確認済みの情報を明記し、必要に応じて追加評価を相談します。下腿周囲長や5回立ち上がりテストのみで確定診断を代替しません。

PTは診断後に身体機能と栄養状態を評価する

サルコペニア肥満の判定は、評価の終点ではありません。リハビリテーションでは、筋力・筋肉量・肥満に加えて、活動能力、歩行能力、ADL、食事摂取状況、運動耐容能を確認し、介入方針につなげます。

サルコペニア肥満では、体重だけを減らすのではなく、筋力と身体機能を維持・改善しながら、脂肪蓄積と活動制限を評価することが重要です。運動療法だけでなく、栄養管理、生活背景、併存疾患も含めて全体像を捉える必要があります。

介入前に確認する項目

  • 握力・下肢筋力・立ち上がり能力などの筋機能
  • 歩行速度、歩行耐久性、移乗・ADLなどの活動能力
  • 摂取エネルギー、たんぱく質摂取、食欲、体重変化
  • 心血管疾患、糖尿病、腎機能、整形外科的疼痛などの併存疾患
  • 活動制限の要因と、本人の生活目標

栄養面では、体重減少のみを目標とするのではなく、筋肉量低下や低栄養を防ぐ視点が必要です。運動療法と栄養管理を組み合わせながら、生活機能の改善につなげることが大切です。

記録例|診断要件と身体機能を分けて残す

日々のカルテでは、使用した診断基準の年版、測定法、実測値、判定結果、未評価項目、次回の評価方針を残します。

架空症例の記録例

サルコペニア肥満評価(JWGSO 2026)。78歳女性。BMI26.0kg/m²、握力16.5kg、BIAによるASM13.8kg、ASM/BMI0.531、体脂肪率34%。肥満スクリーニング、低筋力、低筋肉量、肥満の各要件に該当。Stage分類は関連する合併症・障害の確認後に判断する。BIA測定条件と体液状態を確認し、身体機能・栄養状態を追加評価する。

診断基準に該当するかどうかと、歩行・立ち上がり・ADLにどの程度の問題があるかは別の情報です。介入効果を追う際も、筋肉量の値だけでなく、生活に関わる身体機能をあわせて確認します。

まとめ|サルコペニア肥満2026で最初に確認すること

JWGSO 2026では、サルコペニア肥満を「肥満のスクリーニング→握力→ASM/BMI→体脂肪率または内臓脂肪面積」の順に整理すると判断しやすくなります。

診断の中心は低筋力・低筋肉量・肥満の組み合わせです。5回立ち上がりテストは診断要件ではありませんが、PTによる身体機能評価では引き続き重要です。

まずは、自施設で測定できる項目と、追加評価が必要な項目を分けて確認することから始めましょう。

参考文献

  1. Ishii K, Ogawa W, Kimura Y, et al. Revised diagnostic algorithm for sarcopenic obesity in Japan after the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 consensus update (JWGSO 2026). Geriatr Gerontol Int. 2026;26(9):e70815. doi:10.1111/ggi.70815.
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  3. Ishii K, Ogawa W, Kimura Y, et al. Diagnosis of sarcopenic obesity in Japan: Consensus statement of the Japanese Working Group on Sarcopenic Obesity. Geriatr Gerontol Int. 2024;24(10):997-1000. doi:10.1111/ggi.14978.
  4. Muscle imaging assessments in sarcopenia: A statement from China National Center for Orthopedics and the East Meets West Action Group of the European Calcified Tissue Society. Calcif Tissue Int. 2025. doi:10.1007/s00223-025-01447-w.
  5. Exercise, nutrition, physical agent therapy in older adults with sarcopenic obesity: A systematic review and network meta-analysis. BMC Geriatr. 2026. doi:10.1186/s12877-026-07207-1.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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