圧迫性 腓骨神経麻痺とは?|下垂足は「圧迫の起点」から整理する
圧迫性 腓骨神経麻痺は、腓骨頭部周辺を走る総腓骨神経が、脚組み・長時間座位・しゃがみ込み・固定具の当たりなどで圧迫され、下垂足や足背のしびれを起こす状態です。典型例は「急につま先が上がらない」「歩くと足が引っかかる」で、発症前後の生活場面に圧迫イベントが見つかることがあります。
この記事では、原因の総論ではなく、臨床で最初に整理したい「病歴」「筋力 4 点」「感覚 2 点」「鑑別」「再発予防」に絞って解説します。枝の障害レベルをさらに細かく整理したい場合は、腓骨神経麻痺の障害レベル推定と併用してください。
結論:病歴+筋力 4 点+感覚 2 点で圧迫性らしさを固める
圧迫性を疑う鍵は、画像より先に発症前後の姿勢・固定・当たりを具体化することです。そのうえで、背屈・母趾伸展・外反・内反の筋力 4 点と、第 1 指間・足背の感覚 2 点を固定すると、圧迫性らしさと鑑別を短時間で整理できます。
| 観点 | 見ること | 圧迫性で拾いやすい所見 | 記録の型 |
|---|---|---|---|
| 病歴 | 脚組み、長時間座位、しゃがみ込み、固定具、術後体位、急な体重減少 | 発症前後に圧迫イベントがある | 「脚組み:毎日 4 h」「ギプス縁:腓骨頭部に接触」 |
| 筋力 | 背屈・母趾伸展・外反・内反 | 背屈・母趾伸展・外反が低下し、内反は保たれやすい | 「背屈 2 /母趾 2 /外反 3 /内反 5」 |
| 感覚 | 第 1 指間、足背 | 深腓骨神経・浅腓骨神経の分布に沿って低下する | 「第 1 指間↓」「足背外側↓」 |
| 局所 | 腓骨頭部の圧痛、Tinel 様徴候、装具や寝具の当たり | 症状と圧迫部位が一致しやすい | 「腓骨頭:圧痛+/Tinel 様+」 |
原因:圧迫性で多い 6 つの起点を問診で拾う
圧迫性 腓骨神経麻痺では、「いつから」だけでなく、発症直前にどの姿勢・固定・作業が続いたかを確認します。リハでは、この起点を拾えると、圧迫解除・歩行安全・再発予防までつなげやすくなります。
| 起点 | 具体例 | 介入ポイント | 共有先 |
|---|---|---|---|
| 脚組み | 長時間の習慣化 | 禁止だけでなく代替姿勢を決める | 本人・家族・看護 |
| 長時間座位/臥床 | 転倒後の安静、車椅子座位 | 腓骨頭の接触点を確認する | 看護・介護 |
| しゃがみ込み | 農作業、現場作業、床作業 | 作業時間を分割し、休憩ルールを作る | 本人・職場 |
| 固定具/装具 | ギプス縁、サポーター、AFO ベルト | 縁・ベルト・腓骨頭部の当たりを修正する | 医師・義肢装具士・看護 |
| 術後体位 | 長時間の体位保持 | 圧点を避けるポジショニングへ変更する | 看護・病棟 |
| 急な体重減少 | 栄養不良、疾患後、ダイエット後 | クッション低下を前提に圧点対策を行う | 医師・栄養・看護 |
評価の順番:病歴→歩容→筋力 4 点→感覚 2 点→局所で固定する
評価は増やすより、順番を固定する方が実務で再現しやすくなります。初回から同じ型で残すと、病棟・外来・訪問で「前回と何が変わったか」を共有しやすくなります。
| 手順 | 見ること | 目的 | 記録例 |
|---|---|---|---|
| ① 病歴 | 脚組み、しゃがみ込み、固定具、術後体位、体重減少 | 圧迫イベントを言語化する | 「発症前:脚組み 4〜6 h/日」 |
| ② 歩容 | つま先の引っかかり、スラップ、ぶん回し | 転倒リスクを把握する | 「右遊脚期で足尖クリアランス低下」 |
| ③ 筋力 4 点 | 背屈・母趾伸展・外反・内反 | 腓骨神経麻痺と L5 神経根を切り分ける | 「背屈 2 /外反 3 /内反 5」 |
| ④ 感覚 2 点 | 第 1 指間、足背 | 深腓骨神経・浅腓骨神経の関与を整理する | 「第 1 指間:鈍麻」 |
| ⑤ 局所 | 腓骨頭の圧痛、Tinel 様徴候、装具や寝具の当たり | 圧迫部位と症状の一致を確認する | 「腓骨頭:圧痛+/当たり+」 |
鑑別:L5 との違いは「内反」をセットで見る
下垂足では、腓骨神経麻痺だけでなく、L5 神経根、坐骨神経、中枢性の問題も候補になります。圧迫性らしい病歴があっても、内反(後脛骨筋)を入れないと L5 との切り分けが甘くなります。
| 候補 | 背屈 | 外反 | 内反 | 感覚のキー | 補足 |
|---|---|---|---|---|---|
| 圧迫性 腓骨神経麻痺 | 低下 | 低下しやすい | 保たれやすい | 第 1 指間/足背 | 腓骨頭部の当たりや姿勢歴がヒント |
| L5 神経根 | 低下 | 低下しうる | 低下しやすい | 末梢神経分布と一致しにくい | 腰痛や放散痛を伴うことがある |
| 坐骨神経 | 低下 | 低下 | 低下しうる | より広い範囲 | ハムストリングスや足底側の所見も確認する |
| 中枢性 | 低下しうる | 末梢分布と一致しにくい | 共同運動や筋緊張の影響を受ける | 末梢神経分布に沿いにくい | 他の神経所見を合わせて確認する |
リハの優先順位:圧迫解除→転倒対策→出力練習→再発予防
圧迫性 腓骨神経麻痺では、初期から筋力練習だけに寄せず、まず圧迫の起点を止めます。次に、つまずき対策と歩行安全を整え、改善の経過に合わせて短時間反復と生活場面の再設計へ進みます。
| 優先 | 目的 | 具体策 | 再評価 |
|---|---|---|---|
| ① 圧迫解除 | 増悪と再発を止める | 脚組みの代替、腓骨頭の当たり対策、固定具の調整 | しびれ、圧痛、当たりの変化 |
| ② 転倒対策 | つまずきを減らす | 環境調整、補助具、必要時の装具検討 | つまずき頻度、歩行距離、疲労 |
| ③ 出力練習 | 背屈・母趾伸展・外反の再獲得 | 短時間・低負荷・反復で実施する | 筋力 4 点の推移 |
| ④ 再発予防 | 生活場面で圧迫を繰り返さない | 作業姿勢の分割、椅子高さ、休憩ルール | 再発トリガーの有無 |
現場の詰まりどころ:背屈だけで判断しない
現場で詰まりやすいのは、下垂足を見てすぐ背屈練習へ進み、圧迫イベントや内反の確認が抜けることです。先に評価の順番を固定し、次に介入の優先順位をそろえると、チーム内の説明コストが下がります。
続けて読む:腓骨神経麻痺の障害レベル推定(筋力と感覚で絞る)
| 失敗 | 起こること | 対策 | 記録の型 |
|---|---|---|---|
| 病歴を拾わず筋トレに寄る | 圧迫が残り、改善が鈍くなる | 姿勢・固定・当たりを具体化する | 「脚組み:毎日」「当たり:あり」 |
| 背屈だけで判断する | 枝の障害や鑑別が整理できない | 背屈・母趾伸展・外反・内反を固定する | 「筋力 4 点セットで評価」 |
| 内反を見ない | L5 神経根の可能性を見落としやすい | 後脛骨筋の内反を必ず確認する | 「内反 5(保たれる)」 |
| 固定具の当たりを放置する | しびれや圧迫が続く | 縁・ベルト・腓骨頭部の接触点を修正する | 「当たり:修正済」 |
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。
PT キャリアガイドを見るよくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 圧迫性かどうか、最初に見るのは何ですか?
最初は発症前後の圧迫イベントです。脚組み、長時間座位、しゃがみ込み、固定具の当たり、術後体位、急な体重減少などを具体化します。
Q2. 病歴が曖昧でも圧迫性はあり得ますか?
あり得ます。本人が自覚していない姿勢習慣、病棟での体位、装具や固定具の縁が起点になることがあります。筋力 4 点・感覚 2 点・局所所見を組み合わせて整理します。
Q3. 再評価で固定する項目は何ですか?
背屈・母趾伸展・外反・内反の筋力 4 点と、第 1 指間・足背の感覚 2 点を固定します。つまずき頻度、歩行距離、歩容動画も同条件で残すと比較しやすくなります。
Q4. 再発予防で大切なことは何ですか?
姿勢を「禁止」するだけでなく、代替姿勢・休憩間隔・作業高さ・装具や寝具の当たり確認まで決めることです。生活場面に落とし込むと再発予防につながります。
次の一手
まず評価の全体像を確認し、次に腓骨神経麻痺の障害レベル推定へ進むと、下垂足の整理が速くなります。
参考文献
- Baima J, Krivickas L. Evaluation and treatment of peroneal neuropathy. Curr Rev Musculoskelet Med. 2008;1(2):147-153. PMC
- Fortier LM, Markel DC. An Update on Peroneal Nerve Entrapment and Neuropathy. Orthop Rev (Pavia). 2021;13(2). Full text
- Thatte H, Mansukhani KA. Electrodiagnostic Evaluation of Peroneal Neuropathy. StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023-. NCBI Bookshelf
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


